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達人が教える!PCI・カテーテル室のピンチからの脱出法119

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 村松俊哉
ISBN : 978-4-524-26758-3
発行年月 : 2014年4月
判型 : B5
ページ数 : 590

在庫なし

定価13,200円(本体12,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

PCI手技中やカテーテル室内で起こるトラブルを想定し、その解決策を経験豊富な医師らが解説。術前の戦略の立て方から、穿刺法、ワイヤー・バルーン・ステントの操作、イメージングモダリティの活用法、合併症対策、止血法、PCI後療法まで、実際の流れに沿った目次立てでPCI手技の全てを網羅。トラブルに備えてしっかり準備をしておきたい循環器医、研修医必携の一冊。

I PCI前の戦略を熟知する!
 001 EBMと臨床をどうつなげるのか?PCI術者が知っておくべきエビデンス
虚血の同定
 002 虚血の同定はなぜ必要か?
 003 多枝病変での虚血同定をどうする?
正しい冠動脈造影はどう撮影するか?
 004 分岐部病変がよく写らないとき
 005 左主幹部がよく写らないとき
 006 慢性完全閉塞がよく写らないとき
治療法決定に迷うとき
 007 左主幹部病変はPCIかCABGか?
 008 左回旋枝入口部90%狭窄をどう治療すればよいか?
 009 多枝病変をどう治療すればよいか?
 010 石灰化病変はすべてロータブレーターで治療可能か?ほかの治療法は?
 011 抗血小板薬の継続投与がむずかしい患者をどう治療すればよいか?
 012 Polyvascular diseaseに伴うPCI治療はどうするか?
 013 治療適応のある慢性完全閉塞病変は?適応のない慢性完全閉塞病変は?
II 穿刺法のトラブルも解決!
大腿動脈穿刺
 014 大腿動脈穿刺が刺さらないとき
 015 大腿動脈の屈曲が強くてガイドワイヤーが進まないとき
 016 ガイドワイヤーが大血管穿孔を起こしたとき
橈骨動脈穿刺
 017 橈骨動脈穿刺が刺さらないとき
 018 橈骨動脈スパズムを起こしたとき
 019 橈骨動脈の屈曲が強くてガイドワイヤーが進まないとき
 020 ガイドワイヤーが上腕動脈穿孔を起こしたとき
III ガイディングカテーテルを使いこなす!
 021 右冠動脈起始異常でガイディングカテーテルが挿入できないとき
ガイディングカテーテルで冠動脈入口部損傷時
 022 右冠動脈入口部
 023 左主幹部
 024 ガイディングカテーテルが同軸性に挿入されずバックアップが不十分なとき
 025 TRIでガイディングカテーテルのバックアップが不十分なとき
IV ガイドワイヤーを使い倒す!
ガイドワイヤー通過困難時
 026 高度屈曲病変で屈曲を越えないとき
 027 ステント再狭窄病変でステントストラットに当たって挿入できないとき
 028 石灰化病変でガイドワイヤーが挿入できないとき
 029 分岐部病変側枝のワイヤーが通過しないとき
 030 慢性完全閉塞病変でテーパー型ガイドワイヤーが通過しないとき
 031 慢性完全閉塞病変でスティッフ型ガイドワイヤーが通過しないとき
 032 ガイドワイヤーがすぐに抜けてしまうのはなぜ?
 033 ガイドワイヤーがステントストラットに挟まり抜けないとき
 034 ガイドワイヤーがステントストラットを通過しないとき
 035 ガイドワイヤーが偽腔に迷入し、真腔に再挿入できないとき
 036 ガイドワイヤー先端が冠動脈内で壊れ変形してしまったとき
 037 ガイドワイヤー断裂を起こしてしまったとき
 038 ガイドワイヤー冠動脈穿孔を起こさないために
V バルーンのピンチも乗り越える!
バルーン通過困難時
 039 高度屈曲病変でバルーンが通過しないとき
 040 石灰化病変でバルーンが入らないとき
 041 分岐部病変の側枝にバルーンが通過せず、KBTもできないとき
 042 分岐部病変にKBTはいつ必要か?
 043 ステントストラットをバルーンが通過しないとき
 044 慢性完全閉塞病変でバルーンが通過しないとき
 045 病変が硬くバルーンインデンテーションがとれないとき
 046 バルーンが冠動脈内で破裂したとき
 047 バルーンが冠動脈内でdeflateできないとき
VI ステントの困難だって克服する!
ステント挿入困難時
 048 高度屈曲病変で屈曲を越えないとき
 049 入口部病変にうまくステントの位置合わせができないとき
 050 高度石灰化病変で病変にステントが挿入できないとき
 051 分岐部狭窄病変で側枝にステントが挿入できないとき
 052 ステント再狭窄病変でステントストラットにひっかかって挿入できないとき
 053 慢性完全閉塞病変でステントが挿入できないとき
 054 血管径2.0mm 以下の病変にステント留置が必要になったとき
 055 ステントが冠動脈内でdeformationしたとき
 056 ステントが冠動脈内で脱落したとき
 057 ステントバルーンが拡張中に破裂したとき
 058 ステントが冠動脈内から抜去困難になったとき
VII ロータブレーターのトラブルも対応できる!
 059 ロータワイヤーが狭窄病変を通過しないとき
 060 ロータブレーターが石灰化病変を切削困難なとき
 061 高度石灰化にて2.0mm ロータブレーターにても切削不十分なとき
 062 ロータブレーター後、低血圧、slow flowが発現したとき
 063 ロータバーが石灰化病変から抜去困難なとき(ロータブレーターバー・スタック)
VIII イメージングモダリティも上手に使える!
IVUS
 064 IVUSガイド活用:ステント不十分拡張時
 065 IVUSガイド活用:左主幹部、分岐部ステント挿入時
 066 IVUSガイド活用:石灰化病変
 067 IVUSガイド活用:慢性完全閉塞
 068 IVUSガイド活用:血栓性病変
 069 IVUSガイド活用:冠動脈穿孔
 070 IVUSカテーテルが病変に挿入できないとき
 071 IVUSカテーテルが病変から抜去困難なとき
 072 IVUSカテーテルが冠動脈内で断裂を起こしてしまったとき
FFR
 073 FFRガイド活用:中等度病変
 074 FFRガイド活用:tandem病変
 075 FFRガイド活用:分岐部病変
 076 FFRガイド活用:PCI終了時
 077 FFR値測定が不良なとき
 078 FFRガイドワイヤーが病変を通過しないとき
OCT
 079 OCTガイド活用:PCI適応の評価
 080 OCTガイド活用:分岐部病変
 081 OCTガイド活用:血栓性病変
 082 OCTガイド活用:石灰化病変
 083 OCTガイド活用:ステント再狭窄
 084 OCTガイド活用:PCI終了時
 085 OCT画像がきれいに描出されないとき
IX 合併症もドンと来い!
 086 穿刺部出血、血腫形成
 087 造影剤アレルギー
 088 術中脳塞栓症
 089 冠動脈内空気塞栓症
 090 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
 091 冠スパズム
 092 Spiral dissection形成
 093 Slow flow現象、no reflow現象
 094 末梢塞栓症
 095 ステント留置後、急性血栓性閉塞を繰り返すとき
冠動脈穿孔時
 096 ガイドワイヤー末梢冠動脈穿孔時
 097 バルーン後、冠動脈穿孔時
 098 ステント拡張後、大穿孔時
 099 心タンポナーデが発生して心.穿刺がむずかしいとき
 100 カテ室内でのショック発現への対応
X 止血法も困らない!
 101 用手止血困難で止血されないとき
 102 止血デバイスにて止血されないとき
 103 PCIに関連した出血性ショック時
 104 穿刺部動脈瘤形成時
 105 コンパートメント症候群
XI PCI後療法もうまくやる!
 106 抗血小板薬長期投与困難時
 107 超遅発性ステント血栓症発生時
 108 ステント再狭窄を繰り返すとき
 109 Stent fracture,malappositionを見たとき
 110 造影剤腎機能障害
 111 コレステロール塞栓症(CES)
 112 放射線障害
XII 術者としてピンチ!
 113 女性インターベンション医としてやってきたこと
 114 カテラボ内の状況悪化時、心がけてきたこと
 115 Failed case後、どう自分と向き合うか?
 116 インターベンション専門医になるために
 117 一流になるためにしてきたこと
 118 新しい発想をどう構築するか?
 119 慢性完全閉塞の壁をどう乗り越えてきたか?
索引

今から20年以上前に、昭和のにおいの残る場末の小病院で偶然にも運よく(悪く?)心臓カテーテル室の立ちあげに携わることになった。当初、循環器科患者は3名のみであったと記憶している。それから、ここには記しきれない紆余曲折をへて現在に至っている。その間、覚束ない技術で危ない目にあった(あわせた)ことなど数えきれないが、それを救ってもらったのは選良な仲間の存在とこの業界の諸先輩方が学会やライブデモなどでおしげもなくその技術、知識を披露していただいたお蔭である。現在、わが国のモノづくりは天下一品であるが、このインターベンションの世界も同様である。EBMだけでは届かない、諸先輩方が築き上げたわが国の匠の技が脈々と受け継がれている。残念なことに、この匠の技はあまりに崇高で細かな局面でかつ少数例に発揮されるためなかなか書にできなかった。しかし、これらの高レベルな技、知識を学ばせてもらったことで何回危機を乗り越えたかわからない。なんとか、自分が目にしてきたこのわが国の技、知識を後輩諸君に伝えられないかと思案していた。長いことこの世界にいるお蔭でわが国を代表する卓越したインターベンション医とたくさん知り合いになれた。幸い、南江堂からお話をいただき、実際のまれな(しかし重要な)危機状況を119のテーマにまとめ、この書を作成することになった。小職の無理難題な危機テーマを執筆者の先生方には多忙な中、これまた見事な匠の技、知識を散りばめ後輩諸君へのエールとして金科玉条のごとくまとめていただいた。小職が改めて読んでもあちこちでふむふむと頷いてしまうような納得の一冊になった。文献を読むような姿勢でなくとも、カテの合間、移動中や就寝前の一時にも楽しんで手に取っていただける内容になったのではないかと思う。
 最後に、本書の執筆者が全員思っているように、この書が後輩諸君の明日のよりよいわが国のインターベンションの一助になることを切に願っている。

2014年春
村松俊哉

冠動脈インターベンション(PCI)において成功率の高い初期成績を得るには、他の外科的手技と同じように多くの症例の経験が必要である。合併症やトラブルなども一度経験すれば、次回からは事前に回避することが可能であるし、もし発現しても速やかな対処が可能である。「修羅場、土壇場、正念場が人を育てる」とは、総合商社である三井物産社長の飯島彰己氏の名言である。現地の言葉を駆使して世界のプロと渡り合う一流の商社マン。三井物産には、社員をそんな人材に育て上げる徹底した仕組みがある。まず社員は入社から5年以内に、語学もおぼつかない状況で海外の現場に放り込まれるそうである。経験が人を育てるという考えであろう。PCIの術者育成にも共通した部分がある。
 しかしながら、合併症やトラブルに関してPCIに携わる多くの術者おのおのがすべての事象を経験することは困難である。また、手技中にはただちに対応することが求められる。医局に帰って本を読んでよく考えて、明日対処するというような一般内科的な対応は許されない。つまり、術中の難局を“今”切り抜けることが要求されるのである。そのためには、術者にあっては、起こりうるすべてのトラブルに関する対処法を理解し、発生時にただちに対応することが求められる。
 本書を読んでまず、欲ばった本であるという感想をもった。なぜなら、PCIの難局を乗り切るための解決法が一つ残らず網羅されているからである。また、村松先生が厳選されたテーマについて、各執筆者が重要点をもらすことなく端的に、村松先生をうなずかせるほどの説得力でまとめられている。PCIから遠ざかりつつある私には、かなり新鮮味のある内容でもある。多忙にもかかわらず、思わず読み込んでしまった。
 チェズレイ・サレンバーガー三世は、乗客乗員155人が乗ったUS エアウェイズ旅客機が両エンジン停止状態に陥った際、冷静な判断でハドソン川への不時着水を成功させた機長として知られている。彼が事後のインタビューで「訓練してきたことをやっただけ、自慢も感動もない」と言ったとされているが、まさに、術者もトラブル解消後にもつべき心境であろう。さらに、「急いでやらなくてはならないことの一つは、妻に電話して“今日は夕飯はいらない”と断ることだ」と追加したのは、まことにウイットに富んだコメントだが、本書の執筆者たちは彼に負けず劣らずウイットに富んだ講演をされるので、ぜひ彼らの講演も傾聴されることをお勧めする。
 本書を読むことにより、PCIの修羅場、土壇場、正念場を疑似体験することが可能である。何度も熟読し、明日からのPCIに備えていただきたい。

臨床雑誌内科114巻4号(2014年10月号)より転載
評者●西宮市立中央病院西宮市病院事業管理者/大阪大学大学院医学系研究科先進心血管治療学寄附講座特任教授 南都伸介

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