雑誌

別冊整形外科

No.68 整形外科領域における移植医療

編集 : 大川淳
ISBN : 978-4-524-27768-1
発行年月 : 2015年10月
判型 : A4

在庫あり

定価6,804円(本体6,300円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

整形外科領域での移植医療の臨床の現状を明らかにする論文を収載。テーマは四肢外傷・脊椎椎体骨折・軟部腫瘍に対する人工・生体材料、組織細胞移植の臨床成績、骨以外の靭帯や神経組織に対する組織・細胞移植に加え、人工材料の手術成績、新規人工材料の開発、骨バンク、骨関節感染症の組織移植までと多岐にわたる。移植医療の今がわかる一冊。

I.総論
 1.新規人工材料の開発と課題
  良性骨腫瘍切除・掻爬後の巨大骨欠損に対する人工骨による再建
  新規骨補填材−多孔質ハイドロキシアパタイト/コラーゲンの開発
  大腿骨頭壊死症に対する骨頭温存手術−日本における細胞移植医療の現状と課題
  骨髄間葉系幹細胞移植による骨再生とその課題
  直径10μm以下のβ-リン酸三カルシウム微小顆粒は間葉系幹細胞に貪食され石灰化能を促進する
  骨移植に対する精密加工技術の応用
  三次元積層造形法を用いた人工骨の開発
  神経損傷に対する柔軟性の高い人工神経の開発−人工多能性幹細胞移植を併用したハイブリッド型人工神経による再生医療をめざして
 2.同種骨移植と骨バンク
  Massive allograftを使用した人工股関節再置換術の臨床成績
  人工股関節再置換術における認定組織バンクから供給された保存同種骨の安全性と有用性
  北里大学病院骨バンク提供同種骨におけるトレーサビリティを用いた安全性の検証
 3.骨関節感染症に対する移植医療
  脛骨感染性偽関節に対する血管柄付き腓骨移植の工夫
  感染を合併した広範囲組織欠損に対する遊離組織移植を用いた治療戦略
  抗生物質含有リン酸カルシウムセメントの椎間板腔内移植で治療した脊椎インストゥルメンテーション術後感染の1例
  化膿性関節炎に対し抗菌薬含浸β-リン酸三カルシウムを用いて治療した関節リウマチ例の中期成績
II.骨および軟骨に対する人工・生体材料,組織細胞移植の臨床成績
 1.脊椎
  椎体骨折後偽関節に対するリン酸カルシウム骨セメントによる椎体形成術の中・長期成績
  人工骨(ハイドロキシアパタイト)を用いた頚椎前方除圧固定術の長期成績
  頚椎前方除圧固定術における緻密質・多孔質複層ハイドロキシアパタイトの有用性
  頚椎前方椎体間固定術における新しい人工骨−多孔質ハイドロキシアパタイト/コラーゲンの有用性
  ハイドロキシアパタイトセラミックス椎弓スペーサーによる頚椎椎弓形成術の中・長期成績
  β-リン酸三カルシウムと局所骨を用いた腰椎後側方固定術の検討
 2.四肢外傷および傷病
  上腕骨近位部骨折骨接合術における骨内支柱としての人工骨移植
  手根背屈変形を有する舟状骨偽関節に対する血管柄付き第2中手骨基部骨移植術
  Impaction bone grafting法を用いた人工股関節大腿骨側再置換術後平均10年の成績
  大腿骨顆部特発性骨壊死に対する骨軟骨柱移植術の中・長期成績
  アテロコラーゲンゲル包埋自家培養軟骨細胞移植
  早期骨癒合が期待できる自家骨棘移植を併用したオープンウェッジ高位𦙾骨骨切り術
  自家腓骨採取後の骨欠損に対しβ-リン酸三カルシウム人工骨を用いた腓骨再生の経験
 3.骨・軟部腫瘍への対応
  単純性骨嚢腫に対するハイドロキシアパタイト製中空ピンによるドレナージ法
  良性骨腫瘍搔爬後の骨欠損に対するハイドロキシアパタイト配向連通多孔体の短期治療成績
  骨腫瘍手術の骨欠損に対する多孔質ハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体構造をもつ新しい人工骨移植の短・中期臨床成績
  悪性骨腫瘍における巨大骨欠損に対する血管柄付き腓骨と自家処理骨による再建
  無茎腓骨移植術を用いた骨盤悪性腫瘍切除後の骨盤輪再建術
  橈骨遠位端骨巨細胞腫切除後の骨欠損に対する非血管柄付き遊離腓骨近位端移植の経験
  骨・軟部腫瘍切除後の広範囲骨欠損に対する加温処理骨移植術−術後10年以上の長期成績
  液体窒素処理を行った自家腫瘍骨を用いた骨幹端部巨大骨欠損への対応の実際
  悪性骨腫瘍に対する処理骨を用いた再建の長期成績



 『別冊整形外科』では2005年に「骨・軟骨移植−最近の知見」を取り上げた。当時、臨床利用に向けて盛んに基礎研究が行われていた人工骨・軟骨移植や細胞移植治療は、臨床応用開始から数年が経過したものもあり中・長期成績を知ることができる時期になった。とくに、ハイドロキシアパタイトやβ-TCPなど生体活性人工骨は、使用する部位に適した強度や気孔率、形状が用意されるようになり、外傷や骨・軟部腫瘍治療における骨欠損の補填材料として日常診療において欠かせない医療材料になった。また、使用する際にリン酸カルシウム系の粉体と水系の硬化液を練って使用する自己硬化型の骨補填材や、スポンジ状のハイドロキシアパタイト・コラーゲン人工骨などが開発されて利便性も向上し、脊椎外科手術においても人工骨の使用が一般化した。一方、大きな骨欠損に対してはいまだ自家骨あるいは同種骨移植に頼らざるを得ないものの、同種骨に関しては骨バンクによる安全な供給が徐々に確立しつつある。生体組織移植は、自身の骨・軟骨・神経の移植に加え、培養細胞の移植治療が開始されている。
 本号の目的は、こうした整形外科領域における移植医療の臨床の現状を明らかにすることである。組織再生の3要素とされる素材・成長因子・足場、それぞれに関する研究開発の課題、人工骨および自家骨の利用上の工夫や骨関節感染症治療に対する移植医療、すでに確立された治療における中・長期成績に関して多くの論文が寄せられた。そのなかで、単純な組織欠損の補填だけでなく人工骨や同種骨あるいは培養細胞と、加熱・凍結処理自家骨や金属インプラントあるいは薬剤との組み合わせでさまざまな手術が行われていることが示された。将来的に臨床応用が期待されるiPS細胞や幹細胞による再生医療開発に向けて、現時点での整形外科移植医療を俯瞰できる内容になったと自負している。

2015年10月
東京医科歯科大学整形外科教授
大川淳