雑誌

別冊整形外科

No.54 上肢の外科

最近の進歩

編集 : 長野昭
ISBN : 978-4-524-27754-4
発行年月 : 2008年10月
判型 : A4
ページ数 : 244

在庫なし

定価6,696円(本体6,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

近年、スポーツ障害や加齢、オーバーユースなどに基づく骨折や変性疾患が増加し、上肢の外科は大きな変化を見せている。一方、臨床の現場では病態の解明、新たな診断法、治療法や固定具なども進歩を遂げている。本特集号では、病態、機能解剖、診断から肩関節、肘関節、手関節疾患の治療まで、臨床に即役立つ上肢の外科に関する最新の情報をまとめる。

I.病態、機能解剖、診断の進歩
1.肩関節
●Type II superior labrum anterior and posterior(SLAP) lesion のバイオメカニクス
●矢状面における腱板断裂サイズと棘上筋および棘下筋萎縮の関係

2.手・手関節
●手根骨の三次元機能解剖

II.肩関節疾患の治療
1.鎖骨周辺脱臼・骨折の治療
●肩鎖関節脱臼に対する吸収性アンカーを使用した烏口鎖骨靱帯再建術
●人工靱帯を用いた円錐靱帯再建術によるNeer分類groupII鎖骨遠位端骨折の治療成績
●鎖骨遠位端骨折に対するScorpion Plate固定
●肩甲骨関節窩前縁骨折(新鮮例)に対する鏡視下骨接合術
2.上腕骨近位部骨折に対する新しい内固定材とその成績
●上腕骨近位端骨折に対する新しいプレートシステムの考案
●上腕骨近位端骨折に対するNon-Contact-Bridging Plateを用いた最小侵襲手術法
●上腕骨近位端骨折に対するStraight Nail Systemの使用経験―75歳以上の高齢者および偽関節例に対する経験を中心に
3.肩のスポーツ障害の治療
●Type II superior labrum anterior and posterior(SLAP) lesionの関節鏡所見と手術成績―受傷原因による比較
4.反復性肩関節脱臼の治療
●前方1ポータル、後方2ポータル法による鏡視下Bankart修復術
●単純縫合とsuture bridgeの併用が可能なハイブリッド型鏡視下Bankart修復法―suture-reel techniqueを用いて
5.広範囲腱板断裂の治療
●広範囲腱板断裂に対する鏡視下transosseous with bone trough法
●肩甲下筋腱断裂を伴う広範囲腱板断裂の治療―上腕二頭筋長頭腱パッチ法
●広範囲腱板断裂に対する直視下surface-holding repair techniqueの治療成績

III.肘関節疾患の治療
1.肘関節部骨折に対する新しい内固定材とその成績
●新しい内固定材を用いた上腕骨遠位部骨折の治療成績―ONI Transcondylar PlateとMayo Clinic Congruent Elbow Plate System
2.離断性骨軟骨炎に対する軟骨移植術の現状
●離断性骨軟骨炎に対する自家骨軟骨柱移植術の治療成績
●肘関節離断性骨軟骨炎に対する自家骨軟骨柱移植術―斜角状骨軟骨柱による工夫
●離断性骨軟骨炎による肘の関節面欠損に対する自家骨軟骨柱移植術
●上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する肋骨肋軟骨移植術
●上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する肋骨肋軟骨移植術
3.上腕骨上顆炎の新たな治療法
●最近の上腕骨外側上顆炎の原因とそれに対する装具療法
●上腕骨外側上顆炎に対するNirshl法の治療成績
4.回内外障害に対する治療法
●変形治癒骨折による前腕回旋制限に対する治療―矯正骨切り術と前腕回旋軸の検討
●前腕回内外障害に対する軟部組織授動術
5.関節リウマチに対する人工関節の成績
●3コンポーネントを基本構造としたFINE Total Elbow Systemの開発と術後成績
●関節リウマチに対する人工肘関節の成績

IV.手関節・手疾患の治療
1.橈骨遠位端骨折の手術適応と治療法
●橈骨遠位端骨折の手術適応―スコア化の導入
●橈骨遠位端骨折の手術的治療の成績
●掌側ロッキングプレートによる橈骨遠位端骨折の治療─方形回内筋温存療法に対する前向き研究
●橈骨遠位端骨折のノンブリッジング創外固定による治療
●橈骨遠位端骨折の治療に鏡視下手術がなぜ必要か
2.手関節尺側部障害の診断
●遠位橈尺関節不安定症を呈した三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷に対する直視下TFCC縫合術とTFCC再建術
●尺骨短縮術の合併症―偽関節手術例の検討
3.Dupuytren拘縮の治療
●Dupuytren拘縮に対する横切開を用いた開放療法
●Dupuytren拘縮に対する創部開放療法の新たな試み
4.母指手根中手変形性関節症の治療
●母指手根中手関節症に対する固定術の経験
5.新しい人工指関節
●新しいコンセプトに基づいたFINE Total Finger Systemの開発と臨床応用
●関節リウマチ手指変形に対する表面置換型人工指関節
6.指切断再接着
●指尖部切断における新しい外科分類に基づいた手術戦略

V.上肢悪性腫瘍に対する手術の成績と問題点
●上腕・前腕発生軟部肉腫に対する治療成績
●上肢悪性腫瘍に対する治療の工夫
●転移性骨腫瘍による上肢病的骨折の手術的治療

人の生活において手は不可欠なものであり、人類の発展は手の機能の発展によるところが大きい。よい上肢機能を得るためには手自体のみならず、この手を目的の位置にもたらし、その機能を十分に発揮させるための器官である肩関節、肘関節および手関節に疼痛が無く、良好な安定性と運動性を有することが重要で、これらいずれが障害されても日常生活上の質の低下は免れない。
『別冊整形外科』では、1994年に「肘関節外科−診断から治療まで」、1997年に「手関節部の外科」、1999年に「肩関節−病態・診断・治療の新たな展開」と題して上肢に関する論文を募集し、多くの優秀な論文が寄せられた。それらの出版から約10年経過しているが、10年前と比較し現在は労働災害や交通外傷による上肢の外傷は減少した。一方でスポーツ障害や加齢、オーバーユースなどに基づく骨折や変性疾患が増加し、それらに対する病態の解明、新たな診断法、治療法や固定具の開発が必要となってきている。たとえば肩関節の治療においては、未だ決定的修復法が無い鎖骨遠位部での脱臼・骨折や、現在の高齢化社会において増加している上腕骨近位部骨折に対しより進歩した新しい内固定材の開発が望まれている。またスポーツ障害肩に対する小侵襲手術の更なる発展や、治療に難渋する広範囲腱板揖傷に対しても新たな方法が求められている。肘関節疾患の治療においては、肘離断性骨軟骨炎に対する治療や人工肘関節の更なる成績の向上が求められている。
手関節・手疾患の治療においては、高齢化社会で増加している橈骨遠位端骨折の手術適応と治療法が依然として大きな問題であり、また゚年増加しているDupuytren拘縮に対する新しい方法や関節リウマチなどに対する人工指関節の開発も重要な課題である。更に頻度は少ないが、上肢に悪性腫瘍が発生した場合、その機能を温存しながらもしっかりと切除縁を確保することは互いに矛盾する要求で、これを如何に解決するかも重要な課題である。
 このような幾多の解決すべき問題に対し、新しい観点からそれらの研究および治療法についてこの10年の最新の情報を、「上肢の外科−最近の進歩」と題してまとめたいと考えて論文を募集したところ、編者の期待する論文が多く寄せられたことは誠に幸いであり、本書は大変読み応えのある内容になっていると自負するとともに、読者の上肢の外科の診療に大きく貢献するものと確信している。これも、ご多忙にもかかわらず、本企画に賛同してご寄稿頂いた執筆者の先生方のおかげであり、執筆者に心から深甚なる謝意を表する次第である。
2008年9月
浜松医科大学教授
長野 昭