これからのコミュニティファーマシー[電子版付]
| 編集 | : 恩田光子/岡田浩 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-40459-9 |
| 発行年月 | : 2025年12月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 312 |
在庫
定価5,720円(本体5,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)「B 社会と薬学」の内容を「コミュニティファーマシー(地域薬局)」の視点から扱う教科書.個人と集団双方のwell-beingに貢献できる力を養う.注目のトピックスに関してコラムを掲載したほか,「プロフェッショナリズム」,「デジタル技術」,「アウトカムの可視化」など,新たな学修事項にも対応.各章末にはグループディスカッション用のテーマを掲載.
第T部 薬剤師の責務
1章 薬剤師に求められる倫理観とプロフェッショナリズム
1 プロフェッショナリズムの概念
A プロフェッションとプロフェッショナル
B プロフェッショナリズム
2 職業観の形成
A 国際的にみる薬剤師の役割
B 社会と薬剤師
C 薬剤師の従事場所
D 薬局薬剤師
E 薬剤師が地域で果たす役割
3 生命倫理及び研究倫理の歴史や諸原則(ヘルシンキ宣言等)
A 生命倫理学
B 研究倫理の諸原則
C 研究不正
D 薬剤師と臨床研究
4 医療や研究における患者及び研究対象者の自立尊重
A 診療の倫理
B 生命倫理・医療倫理の4原則
5 倫理的感受性の涵養と葛藤の解決
事例1
事例2
事例3
6 生命の誕生,終末期,先端医療に伴う倫理的課題
A 生殖医療
B 終末期医療
C 先端医療
7 成人学習理論を活用し,同僚や後輩との協働やフィードバックを実践する
A 生涯学習
B 生涯職能開発
C 認定薬剤師・専門薬剤師制度
D 薬剤師認定制度認証機構
E 協働やフィードバック
2章 患者中心の医療
1 患者の基本的権利
A 患者の権利章典
B 患者の権利に関するリスボン宣言
2 患者・患者家族の心理
A クラインマンの説明モデル
B フィンクの危機モデル
C 治療や回復に抵抗を示す心理
D 患者家族の心理
3 全人的医療
A 全人的医療の経緯
B パソジェネシスとサルトジェネシス
C 全人的医療とは
D 服薬指導等に関する技能と患者ケア
E 在宅医療
4 患者のナラティブ
A ナラティブとは
B 薬剤師によるNBM実践のプロセス
5 インフォームド・コンセント
A インフォームド・コンセント
B 共同意思決定
6 守秘義務,個人情報の保護,情報開示,説明責任
A 薬局で取り扱う個人情報
B 個人情報を取り扱うときの規則
7 医療者 - 患者関係が治療に及ぼす影響
A 病人役割
B 医師 - 患者関係の一般的なモデル
C エマニュエルの医師 - 患者関係4つのモデル
D 医療者 - 患者関係の中で生じる感情
8 ヘルスリテラシー,健康行動理論
A ヘルスリテラシー
B 健康行動理論
9 ライフサイクル理論
A 乳児期:基本的信頼 対 基本的不信
B 幼児期:自律 対 恥と疑惑
C 遊戯期:自主性 対 罪の意識
D 学童期:勤勉 対 劣等感
E 青年期:アイデンティティ 対 アイデンティティ拡散
F 前成人期:親密 対 孤立
G 成人期:ジェネラティヴィティ 対 停滞
H 老年期:インテグリティ 対 絶望と嫌悪
10 エンド・オブ・ライフケア
A 悪い知らせ
B 人生の最終段階を受容する過程
C 緩和ケア
D 多職種チームとして終末期医療や緩和ケアに取り組む際の薬剤師の役割
11 生まれ持った個性や価値観,信条,宗教等の多様性や人間性を尊重する意義
A 生まれ持った個性
B 信条・宗教
コラム がん患者が考える“がん患者に求められる支援”とは
3章 薬剤師の社会的使命と法的責任
1 薬剤師の社会的使命と遵守すべき行動規範
2 薬学・薬剤師に関わる歴史的・社会的背景
3 憲法と薬剤師の任務
A 法令遵守の重要性とその理由
B 日本国憲法
4 薬事関連法規(薬剤師法,薬機法)
A 薬剤師法
B 薬機法
5 医療・介護関連法規(医療法,医療保険関係法,介護保険法)
A 医療法
B 医療保険関係法
C 介護保険法
6 薬剤師の業務に関わる民事責任
A 民法における損害賠償責任の基本原則
B 製造物責任法
C 薬剤師の民事責任に関する具体的な判例
7 薬剤師の業務に関わる刑事責任
A 刑法における刑事責任の基本原則
B 個人情報保護法
C 薬剤師の刑事責任に関する具体的な判例
8 医薬品等によって生じた健康被害(薬害,医療事故,重篤な副作用等)
第U部 薬剤師に求められる社会性
4章 対人援助のためのコミュニケーション
1 医療コミュニケーションの技法(傾聴,受容,共感,質問法,伝え方,解釈モデル 等)
A 言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション
B 傾 聴
C 受 容
D 共 感
E 質問法
F 解釈モデル
2 全人的な評価
3 対人関係に関わる心理的要因
5章 多職種連携
1 多職種によるチーム・ビルディング
A 病院と居宅の違い
B チーム医療とは
2 他の医療,保健,介護,福祉関係者の職能の理解
A 医療現場で関わる多職種について理解する
B 介護現場で関わる多職種について理解する
C チームの構成例
D 在宅医療の場面におけるチーム医療・介護
E さまざまな情報伝達方法
3 相手の意見を尊重しつつ自身の考え方や感情を適切に伝えるためのアサーティブコミュニケーション(DESC等)
A 3つの自己表現
B DESC法
4 多職種連携におけるリスクコミュニケーション(リスクマネジメント,コミュニケーションエラー防止策等)
A リスクコミュニケーションの失敗例
B コミュニケーションエラー
5 地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割
第V部 社会・地域における薬剤師の活動
6章 地域の保健・医療
1 生活習慣病と健康増進に係る施策
2 地域包括ケアシステムの概要と,地域の保健・医療に関わる機関・組織
A 地域包括ケアシステム
B 地域の保健・医療に関わる機関・組織
C ソーシャルキャピタル(社会関係資本)としての薬局
3 地域住民のセルフケア,セルフメディケーションにおける薬剤師の役割
A セルフケアとセルフメディケーション
B セルフメディケーションにおける薬剤師の役割
C オーラルケア
D オーラルケアにおける薬剤師の役割
4 地域特性による保健医療ニーズの違い
A 都市部における保健・医療ニーズ
B 山間部(へき地)における保健・医療ニーズ
C 離島における医療ニーズと遠隔医療の活用
5 薬剤師の業務範囲と役割の拡大(国内外の動向)
A 日本における薬剤師業務の現状とセルフケア支援
B 薬剤師の業務拡張に関する海外の事例
コラム 学校保健,学校薬剤師の役割
コラム 患者を支える薬局の力 ーがん患者と薬剤師のオンライン交流会で見えた役割と可能性ー
コラム 災害と薬剤師について ー2011年東日本大震災後の災害医療ボランティアの経験の紹介ー
7章 医療・介護・福祉の制度
1 社会保障制度の概念,仕組み,財源と使途・その推移,今後の動向
A 社会保障制度の概念
B 社会保障制度の仕組み
C 社会保障制度の財源と使途
D 今後の社会保障制度の動向
2 医療保険制度の役割,成り立ち,仕組み
A 医療保険制度の成り立ちと変遷
B 医療保険制度の役割
C 医療保険制度の仕組み
3 保険医療機関,保険薬局,保険薬剤師の役割,療養担当規則
A 医療機関・医師,薬局・薬剤師と保険医療機関・保険医,保険薬局・保険薬剤師の違い
B 健康保険制度における,保険医療機関,保険薬局,保険薬剤師の役割
C 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)
4 公費負担医療制度の概要
5 介護保険制度の概要
A 介護保険制度が創設されるまでの背景と,制度の特徴
B 介護保険制度の仕組み
C 介護保険の財源構成と規模
D 介護保険で提供されるサービス
6 薬局薬剤師業務に関わる調剤報酬,介護報酬
A 薬局と薬局薬剤師に関わる調剤報酬
B 薬局・薬剤師業務の評価が「対物業務」から「対人業務」にシフトしてきた背景について
C 調剤報酬制度の仕組み
D 薬局と薬局薬剤師に関わる介護報酬
8章 医療資源の有効利用
1 医療費の内訳と動向
A 制度区分別の動向
B 診療種類別の動向
2 国内外の医薬品市場の規模と動向
A 諸外国の医療保障制度
B 国内外の医薬品市場の規模と動向
3 医薬品の価格決定方法
A 薬価基準
B 新医薬品の薬価算定方式
C 既収載医薬品の薬価算定(改定)方式
4 公的医療保険における医療技術評価
A 医療技術評価とは何か
B 医薬品等の費用対効果評価
5 薬物療法の経済評価手法
6 医療費の適正化に薬剤師が果たす役割
A 薬物療法の適正化
B 薬剤師が果たす役割
第W部 医薬品等の規制
9章 特別な管理を要する医薬品等
1 麻薬及び向精神薬取締法
A 薬局における麻薬の取り扱い
B 薬局における向精神薬の取り扱い
C その他の薬物の取り扱い
2 覚醒剤取締法
A 薬局における覚醒剤原料の取り扱い
B 覚醒剤
3 毒物及び劇物取締法
A 薬局における毒物,劇物の取り扱い
4 薬機法
A 薬局における毒薬,劇薬の取り扱い
B 指定薬物の取り扱い
第X部 情報・科学技術の活用
10章 保健医療統計
1 日本の保健医療統計
A 人口統計(静態・動態)
B 疾病統計(患者調査)
C 国民健康・栄養調査
D 医療施設・医療従事者統計
E データの読み方
2 保健医療統計と疾病対策
A が ん
B 生活習慣病
C 喫 煙
D 感染症
E 女性の健康
F メンタルヘルス(自殺,認知症)
3 医療保健統計と薬局薬剤師
A がん検診
B 栄養・運動サポート
C 禁煙対策
D ワクチン接種
E 女性の健康
F メンタルヘルス
4 国際保健と薬局薬剤師
11章 デジタル技術・データサイエンス
1 情報科学技術を取り扱う際に必要な倫理観,デジタルリテラシー
A 情報を取り扱う際の倫理観
B 情報を取り扱う際のデジタルリテラシー
2 医療,保健,介護,福祉におけるデジタル技術・ビッグデータに関連する法規制
A ヘルスケア情報の関連法規
3 医療,保健,介護,福祉におけるデジタル技術の活用例
A ヘルスケア分野におけるデジタル技術の活用事例
4 医療,保健,介護,福祉におけるビッグデータの活用例
A ビッグデータの種類
B ビッグデータの活用
C 活用事例
5 人々の健康に関する課題の抽出とデジタル技術及びビッグデータを活用した解決策を提案する
コラム 薬局でのICTの活用 ー腎排泄型薬剤処方監査支援システムの開発ー
12章 アウトカムの可視化
1 薬剤師の任務とファーマシューティカルケア
2 薬剤師の活動が社会・地域にもたらす成果(アウトカム)
3 薬局薬剤師が臨床研究に取り組む意義
4 医療の質とアウトカム
5 臨床研究の手順
A 臨床疑問を研究仮説にする
B 先行研究のレビュー
C 研究計画書の作成と倫理審査
D 研究のデザイン
E データの収集
F データの分析・考察
6 研究の紹介
事例1
事例2
事例3
事例4
事例5
事例6
事例7
7 まとめ
確認テスト解答
皆さんは,「セブンスター薬剤師」という言葉をご存知でしょうか?
これは,FIP(国際薬剤師・薬学連合)が提唱する,薬剤師に求められる7 つの特性――ケア提供者,意思決定者,コミュニケーター,リーダー,生涯学習者,マネージャー,教育者――を表した概念です.薬剤師が専門職として社会にどのように関わっていくべきか,その指針となる考え方でもあります.
私たち薬剤師は,科学的な知識と実践力を備えた専門職であると同時に,地域の人々の暮らしに寄り添う存在でもあります.近年では,地域薬局が担う役割が大きく広がっており,薬局は医療機関と家庭のあいだをつなぐ,身近で安心できる「場」として,ますます期待が高まっています.
だからこそ,薬剤師は住民の不安や悩みに耳を傾け,ときに医療へとつなげ,ときに生活習慣を支える伴走者として,健康とウェルビーイングを支える大切な存在となっているのです.
こうした変化は,日本だけでなく世界各国でも進んでいます.高齢化の進行,医療費の増加,自然災害の頻発など,地球規模の課題に直面するなかで,カナダやイギリス,オーストラリアなどでは,薬剤師が軽度の疾患に対する処方や慢性疾患のマネジメントに積極的に関与しています.日本においても,薬局薬剤師による生活習慣病の継続支援に関する臨床研究の成果が制度にも少しずつ反映され始めており,薬剤師の職域は今後さらに広がっていくでしょう.
このような時代にあって求められるのは,目の前の患者さんや地域の声に耳を傾けながら,自らの専門性をどう活かしていくかという実践力です.そのためには,常に自分自身を見つめ直し,学び続ける姿勢が欠かせません.FIP がセブンスターに加えて重視している“ライフロング・ラーナー(生涯学習者)”という姿勢は,すべての薬剤師にとって大切な価値であり,倫理の土台といえるでしょう.
本書では,地域に根ざす薬剤師のあり方と,これからのコミュニティファーマシーの可能性について,多角的かつ実践的に学べるよう構成しました.薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4 年度改訂版)に沿いながら,薬学生には将来の展望を,現役薬剤師には地域での実践に役立つヒントを,それぞれの立場で得られるよう工夫しています.各章末には,学びを深めるためのクイズやワークも収録しました.日々の対話や実践のきっかけとして,ぜひご活用ください.
未来の自分を思い描きながら,地域に生きる薬剤師としての第一歩を,この本とともに踏み出してみませんか.薬局という「まちの健康拠点」で,あなた自身が地域の未来を支える主役になる日が,もうすぐそこまで来ています.
2025 年10 月
恩田 光子
岡田 浩
優良業種とみなされた薬局の倒産がニュースとなる昨今である。薬局の未来に対して「これでいいのか」と考える薬剤師は増えつつあるのではないか。現在の業務や経営について、改善点や新たなアイデアを求めている人に「これからの」という言葉は刺さるだろう。本書を手にするのは主に薬学生だと思うが、上記のように疑問を抱く薬剤師にもおすすめの本である(電子版も付属している)。すぐに使えて明日の業務に役立つマニュアルが書かれたハウツー本、ではないが、急がば回れ、基本に立ち返って考える上で非常に参考になる本書をぜひご一読頂きたい。
薬学部が6年制となり20年、この間の社会情勢の変化は凄まじく、それに伴って医療をめぐる環境も激変した。その変化を見越しての年限延長であったが、この間2度の薬学教育のカリキュラムの改訂が行われ、令和4年度改訂版モデル・コア・カリキュラムの「B.社会と薬学」がカバーする範囲は拡大の一途に見受けられる。この「社会と薬学」の内容に基づき、特に地域住民の「健康とwell-being」を支える存在としての薬剤師についてまとめられたものが本書である。本書全体を眺めて、薬学教育の変遷がここに凝縮されていると感じた。すなわち、いわゆる「薬局業務」の最先端に止まらない、いわば日本の医療の変化に基づく地域医療のあり方と、それを支える技術・教育・研究が「コミュニティファーマシー」という言葉に包含されているとの印象を持ったのである。本書の冒頭には、倫理観とプロフェッショナリズムの章があり、低学年の薬学生にはなかなか難しいかとは思うが、学習の進展に併せ何度もこの章に立ち戻って理解を深めるのが良いと思う。また本書の大きな特徴として、デジタル技術の活用や、データサイエンスなど、今後の薬局に必要となるであろう項目が具体例とともに紹介されている。さらに、アウトカムの可視化として、臨床研究について述べられており、薬局で行う実例が紹介されている。製薬企業の行う治験は、極めて多くの人員と時間、そして経済力を必要とするが、薬局で行う臨床研究は、患者のケアに直結するものでありながら、費用は決して莫大なものではない。医療の発展に薬局が直接貢献できる臨床研究は、今後ぜひ一般化し定着していただきたいものである。
1970年代半ばからの医薬分業の進展に伴い、「薬局」は処方箋調剤モデルが一般化し、保険薬局は一般的に「調剤薬局」と認識されるようになった。もちろん、薬剤師の専権業務は調剤であり、その責務は医薬品の適正使用にある、というのは全ての根幹である。しかし一方で薬剤師法第一条にある通り、薬剤師は、「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」ものである。確かに第一条の前半については、技術的にも大きく進歩し、実績も上げている。しかしこの文章の謳う最終目的は「国民の健康な生活を確保するもの」であり、前半部分を全うすればこの究極の目的は達成されると無邪気に考えるのが許されたのは、前世紀までのことであろう。
薬学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂が始まろうとしている。次の改訂では間違いなく、薬剤師のプロフェッショナリズムに基づく活動の教育が拡大すると考えられる。本書はその方向性を予見するものとして、優れた未来予測の書と言えるだろう。
評者●神戸大学名誉教授/京都大学医学研究科特任教授 平井みどり


動画
ご案内