教科書

薬系 有機化学

  • 新刊

編集 : 安藤章/山口泰史
ISBN : 978-4-524-40334-9
発行年月 : 2018年4月
判型 : B5
ページ数 : 454

在庫あり

定価6,480円(本体6,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

薬学部向けの有機化学のスタンダードな教科書。初学者がつまずきがちな項目について、図表を多く用いて丁寧に解説している。また、例題や節末問題、章末問題も豊富に配し、理解度の確認ができるよう工夫している。実生活や臨床とのつながりを意識したコラムも掲載。初学者が抵抗感なく興味をもって有機化学の勉強に入れる一冊。

Chapter1 構造と化学結合
 1.1 物質の構成粒子
 1.2 原子の中の電子配置
 1.3 最外殻の電子数と元素の性質
 1.4 結合の種類
 1.5 イオン結合
 1.6 共有結合
 1.7 安定な希ガスの電子配置と比較する
 1.8 電子殻と電子の軌道
 1.9 第2周期の元素の電子配置
 1.10 共有結合の成り立ち
 1.11 メタンの構造
 1.12 エタンの構造
 1.13 エテンの構造
 1.14 二重結合は回転できない
 1.15 cis−trans異性体
 1.16 エチンの構造
 1.17 エタン,エテン,エチンの結合距離とs性
 1.18 分子の形と性質
 1.19 骨格構造式
 1.20 3次元の構造を2次元で表す
 1.21 Lewis構造式
Chapter2 極性共有結合,官能基,酸と塩基
 2.1 双極子モーメント
 2.2 極性分子とは,双極子モーメントをもつもの
 2.3 四塩化炭素とクロロホルムを比較する
 2.4 水とアンモニアの極性
 2.5 cis−1,2−dichloroetheneとtrans−1,2−dichloroetheneの比較
 2.6 官能基が分子の性質と反応性を決める
 2.7 アルキル基
 2.8 ハロゲン化アルキル,一,二,三級の分類
 2.9 アルコールとフェノール,一,二,三級の分類
 2.10 エーテル
 2.11 アミン,一,二,三級の分類
 2.12 アルデヒドとケトン
 2.13 カルボン酸,エステル,アミド
 2.14 ニトリルとニトロ基
 2.15 イオン間力
 2.16 分子間力
 2.17 沸点
 2.18 溶解度
 2.19 酸と塩基
 2.20 曲がった矢印の使い方とその意味
 2.21 酸塩基の強さ
 2.22 構造と酸性度の関係
 2.23 共役塩基の安定性
 2.24 アミンの塩基性度
Chapter3 IUPAC命名法の基礎
 3.1 命名法の基礎
 3.2 アルカンの命名
 3.3 枝分かれアルカンの命名
 3.4 ハロゲン化アルキルの命名
 3.5 アルコールの命名
 3.6 シクロアルカン,二環式化合物の命名
 3.7 アルケン,シクロアルケンの命名
 3.8 アルキンの命名
Chapter4 有機反応の基礎
 4.1 反応の書き方
 4.2 有機反応の種類
 4.3 エネルギー図
 4.4 触媒と酵素
Chapter5 芳香族化合物(性質)
 5.1 ベンゼン誘導体の命名法と代表的な化合物
 5.2 ベンゼンの性質とKekule構造
 5.3 ベンゼンの安定性
 5.4 ベンゼンの構造と安定性
 5.5 Huckel則
 5.6 アヌレン
 5.7 芳香族イオン
 5.8 芳香族複素環化合物
 5.9 生化学や薬学領域における芳香族化合物
Chapter6 芳香族化合物(反応)
 6.1 芳香族求電子置換反応
 6.2 ハロゲン化,ニトロ化,スルホン化
 6.3 Friedel−Craftsアルキル化とアシル化
 6.4 置換基の影響
 6.5 置換基を見分ける
 6.6 三置換ベンゼン誘導体の合成
 6.7 芳香族複素環化合物の求電子置換反応
Chapter7 アルカンとシクロアルカン
 7.1 物理的性質と構造の関連性
 7.2 シグマ結合と結合回転
 7.3 ブタンの立体配座解析
 7.4 シクロアルカンの相対的安定性と環のひずみ
 7.5 シクロヘキサンの立体配座
 7.6 置換シクロヘキサン
 7.7 1,3−ジアキシアル相互作用
 7.8 cis−trans異性とシクロヘキサンの立体配座・・152
Chapter8 立体化学
 8.1 構造異性体と立体異性体
 8.2 不斉炭素原子とエナンチオマー
 8.3 立体配置の表示法
 8.4 キラルな化合物の性質
 8.5 不斉中心を2個以上もつ化合物
 8.6 メソ化合物
 8.7 Fischer投影式
 8.8 窒素,リン,硫黄の不斉中心
 8.9 軸不斉をもつ化合物
Chapter9 ハロゲン化アルキル
 9.1 炭素−ハロゲン共有結合は分極している
 9.2 ハロゲン化アルキルの代表的な反応
 9.3 SN2反応
 9.4 SN1反応
 9.5 SN1とSN2反応に影響する因子
 9.6 脱離反応
 9.7 E2反応とE1反応
 9.8 Zaitsev則
 9.9 E2反応の立体化学
 9.10 置換反応vs脱離反応
Chapter10 アルケンとアルキン
 10.1 アルケンのジアステレオマー
 10.2 アルケンの相対的安定性
 10.3 アルケンの水素化とシン付加
 10.4 アルキンの水素化
 10.5 アルケンへの求電子付加反応
 10.6 アルケンへのハロゲン化水素の付加
 10.7 カルボカチオンの構造と安定性
 10.8 オキシ水銀化−脱水銀化
 10.9 ヒドロホウ素化−酸化
 10.10 ハロゲンの付加反応
 10.11 立体特異的なハロゲンの付加反応
 10.12 水存在下でのハロヒドリンの生成
 10.13 カルベンの構造と反応
 10.14 四酸化オスミウムによるシン−1,2−ジヒドロキシ化
 10.15 アルケンの開裂反応
 10.16 アルキンへの付加反応
Chapter11 ラジカルの構造と反応
 11.1 ラジカルの生成
 11.2 結合解離エネルギーとラジカルの安定性
 11.3 メタンの塩素化
 11.4 アルキルラジカルの構造
 11.5 アリルラジカルとベンジルラジカル
 11.6 ラジカル中間体を経由するアルケンへの付加反応
Chapter12 アルコール,エーテル,チオール
 12.1 代表的な化合物と命名
 12.2 アルコールとエーテルの物理的性質
 12.3 アルコールの合成
 12.4 アルコールから脱離基への変換
 12.5 Williamsonのエーテル合成
 12.6 エーテルの開裂反応
 12.7 クラウンエーテルの包接現象
 12.8 エポキシドの合成と開環反応
 12.9 硫黄を含む重要な官能基と命名法
 12.10 生化学や薬学領域におけるチオールとジスルフィド
Chapter13 フェノール
 13.1 代表的な化合物と命名
 13.2 合成法
 13.3 フェノールの酸性度
 13.4 芳香族求電子置換反応
 13.5 Claisen転位
Chapter14 カルボニル基:酸化還元と有機金属
 14.1 カルボニル基の構造
 14.2 カルボニル基への求核付加反応
 14.3 カルボニル化合物の還元反応
 14.4 アルコールの酸化反応
 14.5 有機金属試薬
 14.6 カルボニル化合物からアルコール誘導体の合成
Chapter15 共役不飽和化合物
 15.1 共鳴構造
 15.2 代表的なポリエン化合物の命名法
 15.3 ブタ−1,3−ジエンの構造と電子の非局在化
 15.4 共役ジエンの1,2−付加と1,4−付加
 15.5 Diels−Alder反応
Chapter16 アルデヒドとケトン
 16.1 アルデヒドとケトンの命名法
 16.2 アルデヒドとケトンの物理的性質
 16.3 アルデヒドとケトンの合成法
 16.4 アルデヒドとケトンへの求核付加反応
 16.5 アルコールの付加反応
 16.6 アミンの付加反応
 16.7 シアン化水素の付加反応
 16.8 Wittig反応
 16.9 Baeyer−Villiger反応
Chapter17 カルボン酸と関連化合物
 17.1 カルボン酸の命名法
 17.2 カルボン酸の酸性度
 17.3 代表的なジカルボン酸
 17.4 代表的なカルボン酸関連化合物
 17.5 カルボン酸の合成法
 17.6 求核的アシル化反応とアシル化合物の反応性
 17.7 酸ハロゲン化物の合成と反応
 17.8 酸無水物の合成と反応
 17.9 エステルの合成と反応
 17.10 環状エステル
 17.11 アミドの合成と反応
 17.12 ニトリル
 17.13 環状アミド
 17.14 アミノ酸の脱水縮合によるペプチドの生成
Chapter18 カルボニル基のα置換と縮合反応
 18.1 エノールとエノラートイオンの生成
 18.2 α置換
 18.3 マロン酸エステル合成法
 18.4 アセト酢酸エステル合成法
 18.5 アルドール反応
 18.6 交差アルドール反応,分子内アルドール反応
 18.7 Claisen縮合反応
 18.8 分子内Claisen縮合反応
 18.9 Michael付加反応,Robinson環形成反応,Mannich反応
Chapter19 アミンと複素環
 19.1 代表的な化合物と命名法
 19.2 アミンの物理的な性質
 19.3 アミンの塩基性度
 19.4 合成法
 19.5 亜硝酸とアミンの反応
 19.6 ジアゾニウム塩の置換反応
 19.7 芳香族求核置換反応
 19.8 スルホンアミドとサルファ剤
 19.9 生物学的に重要な化合物
 19.10 インドールアルカロイド,キノリン・イソキノリンアルカロイド
本書における薬学教育モデル・コアカリキュラム対応一覧
索引

序文

 6年制薬学部は幾度かの薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂を経て、医療薬学を主体とした教育制度改革が定着してきた反面、有機化学に対する関心は希薄になってきたようである。しかし薬剤師が医療現場で用いる医薬品の多くは有機化合物であり、有機化学の知識は医薬品の構造と活性の解明や調剤における問題への対応などあらゆる医療分野において役立つものである。また、生体内で起こる反応も多くは有機化学反応であり、その機構を理解するうえでも有機化学は必須である。
 ところで、薬学部の有機化学の講義では海外の著名な教科書の翻訳本が主に使用されている。しかしこれらは内容的には非常に優れているものの、どちらかといえば理工系学生に向けて書かれたもので、現在の薬学教育における有機化学の教科書として、特に初学者には高度で扱いきれない内容と思われる。そこで、より分かりやすい有機化学の入門書的な教科書が作れないかと数年来検討してきた。高校での化学の履修状況を見ると受験のための内容が中心で、覚えることに主眼が置かれているように感じる。したがって学部初年次の学生諸君は高校化学の延長として有機化学をとらえ、多くの学生が教科書に出てくる沢山の反応は覚えるもの、暗記しなければいけないものと考えてしまう。そのため当初から拒絶反応を示し、有機化学が嫌いな、あるいは苦手な科目となっているようである。しかし有機化学は決して暗記するだけの学問ではない。基本的な考え方を学び、理解できれば、それを色々な反応の理解に応用することができる。そこで、なるべく抵抗感なく興味をもって有機化学の勉強に入れるような教科書ができないものかと考え、本書をまとめることにした。
 有機化学反応は結合の開裂と形成であり、これは分子を構成する原子の電子がどのように移動するかによって決まる。電子の動きが理解できれば、反応のほとんどを理解したことになるといっても過言ではない。そのため本書では随所に反応における電子の動き、移動を矢印で示すことで反応の起こり方が明瞭に分かるようにしている。初めの4つの章では5章以降の反応を理解するために必要な有機化学の基礎的事項をなるべく平易に記述し、学生諸君が分かりやすいように留意した。これらの基礎的事項は5章以降の反応だけでなく生命科学、生物化学、医薬品化学など関連科目の反応を理解するうえでも非常に重要であるため、詳細な理解に努めてほしい。また例題や節末問題、章末問題を豊富に配し、理解度を確認できるようにしている。なお、編集段階での不手際からの思い違いや用語の不統一などは、読者諸氏のご指摘により将来改訂の機会をいただければ幸いである。
 最後に企画、編集において終始ご尽力いただいた南江堂の内田慎平氏、佐竹剛季氏に深く感謝いたします。

2018年2月
安藤章
山口泰史