書籍

AKI(急性腎障害)のすべて

基礎から臨床までの最新知見

編集 : 和田隆志/古市賢吾
ISBN : 978-4-524-26985-3
発行年月 : 2012年10月
判型 : B5
ページ数 : 220

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

近年、腎臓領域において急速に研究・整備が進み、臨床現場に浸透しつつあるAKI(急性腎障害)について、現時点での最新知見をすべて網羅した一冊。整備されたばかりの診断基準や病理、原因疾患ごとの病態とその治療、予防から予後管理といった臨床面はもとより、基礎研究や現在の課題、今後の研究の見通しなどまで解説している。

Part 1 臨床総論
 1 AKIの診断
 2 AKIとバイオマーカー
 3 AKIの発症予測
 4 AKIの病期分類
 5 腎病理
 6 AKIと臓器連関
 7 AKIの予防
 8 AKIの治療
 9 AKIの予後と再生療法
Part 2 臨床各論
 1 薬剤性腎障害
  a NSAID
  b 造影剤
  c 降圧薬
  d 抗菌薬
  e 抗がん剤
  f カルシニューリン阻害薬
  g その他の薬剤(抗ウイルス薬、ビスホスホネート製剤)
 2 運動後AKI
 3 ICUにおけるAKI
 4 敗血症とAKI
 5 種々の病態におけるAKIの特徴
  a 血液疾患
  b 肝疾患
  c 心不全
  d 横紋筋融解症
Part 3 基礎
 1 実験モデル
 2 病態・機序
 3 AKIの新規治療法
おわりに
 1 これからのAKI研究と臨床
索引

今回、機会を得て「AKI(急性腎障害)のすべて―基礎から臨床までの最新知見」を上梓できることに対し、本書の企画から執筆に関わった多くの先生方に深く感謝申し上げます。AKIは新しく導入された概念であり、臨床および基礎の両面から大変多くの注目を集めています。このAKIの書籍を若輩者が上梓するのは、汗顔の至りではありますが、造詣の深い先生方に御賛同・御指導いただきましたことを篤く御礼申し上げます。本書を企画するにあたり、基本的な診療マニュアルであることとともに、最新の基礎的知見も織り交ぜ、今後の展開も含めた内容を盛り込むことができました。
 AKIに関しては、RIFLE分類やAKIN分類が提唱され、2012年はKDIGOからAKIのガイドラインが出されました。これらを背景に具体的な共通の基準のもと、多くの臨床研究が進められています。その成果として、尿中バイオマーカーや長期予後、あるいは他臓器連関といった、これまでになかった多くの知見が短期の間に次々と集積されてきました。このように、AKIの概念が徐々に浸透し、その臨床的意義や新たな基礎的な知見が次々と明らかになる一方で、新たな基礎的あるいは臨床的な課題も明らかになってきていると思われます。
 本書のタイトルは「AKI(急性腎障害)のすべて」であり、新しい臨床知見や基礎的な知見も積極的に取り上げ、それらにも少なからぬ頁を割く構成・内容としました。したがいまして、本書がベッドサイドで読み進まれる際にはベンチサイドでの実験とそのわくわくするような結果が、一方、ベンチサイドで手に取っていただく際には臨床での病態が思い浮かぶような内容になっていると思われます。本書が、AKIを取り扱う臨床医や研究者の共通のプラットフォームの1つとなり、実地臨床、臨床研究あるいは基礎研究の促進にお役立ていただけることを心より祈念しております。
2012年10月
清秋の金沢にて
和田隆志
古市賢吾

Overview
 これまでの古典的な急性腎不全の概念は、正常または正常に近い腎機能が急激に廃絶する病態、すなわち急激な腎機能の低下の結果、体液の恒常性が維持できなくなった状態と定義されてきた。しかし、これらは腎機能が明らかに不全状態を示すレベルの障害を対象としたものである。本書でも取り上げたように、急性の腎障害は例え軽度であっても集中治療室(ICU)で加療される患者においては、生命予後に影響する重要な因子であることが認識され、AKI(acute kidney injury、急性腎障害)が提唱されるに至ったことは、近年の腎臓病学の進歩といえる。さらに、AKIは慢性腎臓病あるいは末期腎不全のみならず、non-renal outcomeへも影響することがメタアナリシスでも示されている(Kidney Int 81:442-448, 2012)。
 このAKI分類として、糸球体濾過量あるいは血清クレアチニン値と尿量を評価したRIFLE分類あるいはAKIN分類が用いられ、危険(Risk)、障害(Injury)、不全(Failure)、あるいはステージ1〜3を段階的に評価し、非AKI症例と比較したAKIの相対的死亡危険率はRiskで2.4倍、Injuryで4.15倍、Failureで6.37倍とされている(Kidney Int 73:538-546, 2008)。さらに、これらを統一したAKIの定義とステージがKDIGOより提唱された(Kidney Int Suppl 2:19-22, 2012)。このように現在の分類は、臨床的には簡便で有用と考えられてきた。しかし、AKI診療における今後の展望を考えるならば、早期診断・早期加療を実現するために、新たなバイオマーカーの開発とこれを考慮した臨床分類が求められる。本書でも紹介されるように、さまざまな候補分子が探索され、その有用性が検討されている。さらに、現在の分類で示される腎機能評価に、新たに探索されたバイオマーカーによる障害度を加えることで、より正確なAKIの評価を可能とする新たな分類案が提唱されており、今後の動向が注目される(Nat Rev Nephrol 7:209-217, 2011)。
 さらに、AKIの病因を考えると従来の急性腎不全では虚血性と腎毒性因子による急性尿細管壊死(acute tubular necrosis:ATN)が主体と考えられてきたが、高齢化社会を迎えた臨床の場では、ATN以外の急性腎疾患(乏尿性急性糸球体腎炎、急性間質性腎炎、溶血性尿毒症症候群、血管内凝固症候群、多発性骨髄腫など)の重要性が増している。さらに、新たな病態認識として正常血圧性虚血性急性腎不全(normotensive ischemic acute renal failure)(N Engl J Med 357:797-805, 2007)が提唱され、本来の自動調節能のレベルであっても糸球体濾過量が低下する病態が認識されてきた。この因子として高齢、細動脈硬化症、高血圧症、慢性腎臓病などに加えて血管拡張性プロスタグランジンの産生を抑制する非ステロイド抗炎症薬(NSAID)や輸入細動脈の収縮を促進するシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害薬ならびに敗血症、高カルシウム血症、肝腎症候群、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス水和物)が挙げられる。同じく、慢性腎不全患者に脱水、感染症、抗菌薬やビタミンD製剤の過剰投与などによって発症する「acute on chronic」も臨床的には見逃せない重要な病態である.
 今後、これらの病態を踏まえたAKI発生予防と早期治療による予後の改善が進むことを期待して「Overview」としたい。
金沢医科大学医学部腎臓内科学
横山仁

腎臓病領域において、過去数十年にわたり治療方法と治療成績にほとんど進歩がみられなかった疾患が急性腎不全(ARF)である。ARF単独で重症化することは少なく、多臓器不全(MOF)の一部分症として相変わらず死亡率はきわめて高い。しかしながら近年になり、より早期から病態の変化が起こっていることが徐々に判明し、ARFから急性腎障害(AKI)に概念の前倒し、早期化がなされ、これまでの停滞が嘘のように急速に病態の理解が進んだ。
 こうした背景のもとに上記書籍を手にした。内容からして、今日の背景に時機を得た企画である。このタイムリーな企画の編集業務を金沢大学のお二人が担当されている。この人選は腎臓内科医はもちろんのこと、血液浄化療法にも携わり、リウマチ・膠原病診療にも造詣が深く、さらに基礎研究者としてもわが国を代表する腎疾患研究のお二人であり、誠にピッタリという表現しかない。ひとたび本書をひも解けば、素晴らしい執筆陣が実現している。これは編集のお二人の人柄が反映した人脈からしか実現しえないものである。
 さて、本書を読み進めていくといくつかの特徴がある。まずAKIという概念は、基本は症候群としての疾患概念が共通項で理解されている。この部分は臨床総論として、診断・病態の理解と分類・治療としてまだまだコンセンサスとまではいたっていない最新の概念と理論が惜しげもなく注ぎ込まれている。一読者としては、AKIに対する腎生検と腎病理所見の解説が詳しいことは新鮮な驚きであった。なかなかAKI症例には腎生検を頭に浮かべるものの実行はためらうことも多かったが、今後は本書の実に美しい腎病理所見に導かれて積極的な病理所見に取り組んでいこうという気になった。このようにAKIは総論が強く意識される病態で、症候群であるにもかかわらず、本書はあえて臨床各論として病因論より5つに分類し、さらに細分化も試みたうえでAKIの個々の病態を別個に論じている。これは本書における大いなる特徴となっている。各章は個々の病態の特徴を余すことなく伝えており、各章の差異を際立たせる努力が行われている。これは編者の努力のみでは困難であり、選りすぐられた著者らの尽力の賜物と思われる。著者人選の確かさを改めて感じる。最後に近年著しく進んだ基礎研究の項が組まれている。最新情報が盛り込まれており、優れたAKI基礎研究の総説がまだまだ少ない中で、日本語で読める確かな総説として楽しめる。この基礎の項は未完成かと思わせる記述も多く、今後の研究の進展を予感させる。なおAKIでなくARFやMOFの治療に欠かせない血液浄化療法の記述が多くない点は当方にはやや寂しさが残った。おそらく本書ができ上がったARFでなく早期からのAKIにこだわった結果と好意的に理解している。
 いずれにしても腎臓内科医や救急医以外の医師にも必須な情報が満載であり、若い医師にも一読を勧めたい。また臨床工学士や看護師はもとより、放射線技士や薬剤師などの医療従事者にも有用な1冊である。

臨床雑誌内科111巻6号(2013年6月増大号)より転載
評者●和歌山県立医科大学腎臓内科教授/血液浄化センター長 重松隆