書籍

臨床頭頸部癌学改訂第2版

系統的に頭頸部癌を学ぶために

編集 : 田原信/林隆一/秋元哲夫
ISBN : 978-4-524-23089-1
発行年月 : 2022年10月
判型 : B5
ページ数 : 388

在庫あり

定価14,300円(本体13,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

診断,検査,治療から,治療後のフォロー,多職種での連携までをまとめた“頭頸部癌の教科書”.免疫チェックポイント阻害薬,光免疫療法など最新の内容を盛り込み,外科,内科,放射線科など各領域の第一人者が解説.耳鼻咽喉科医,腫瘍内科医,放射線治療医はもちろん,集学的治療を求められる癌診療に関わる医療者に必携の一冊.

第T章 総論 
1.疫 学
2.分子生物学と発癌機序
 A.頭頸部扁平上皮癌
 B.甲状腺癌
3.診療ガイドライン・薬物療法ガイダンス
4.インフォームドコンセントとセカンドオピニオン
 
第U章 診 断
1.発生部位と症状
2.病理診断
 A.頭頸部癌
 B.唾液腺癌
 C.甲状腺癌
3.検査と診断
 A.診断に至るまでの検査
 B.画像診断
  1)総 論
  2)上咽頭
  3)口 腔
  4)中咽頭
  5)喉頭・下咽頭
  6)頸部リンパ節転移
 C. 内視鏡診断
4.TNM 分類
 
第V章 治 療
1.治療方針決定の手順
2.外科治療
 A.総 論
 B.切除術
  1)口 腔
  2)鼻腔・副鼻腔
  3)上咽頭
  4)中咽頭
  5)下咽頭
  6)喉 頭
  7)甲状腺
  8)唾液腺
  9)聴 器
  10)頸部郭清
  11)経口的手術
 C.形成・再建術
 D.救済手術
3.放射線治療
 A.総 論
 B.外部照射
 C.小線源治療
 D.粒子線治療(陽子線・重粒子線・BNCT)
 E.化学放射線療法
 F.動注化学放射線療法
 G.内用療法
 H.緩和的放射線治療
4.薬物療法
 A.総 論
 B.導入化学療法
 C.再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法
 D.根治切除不能甲状腺癌に対する薬物療法
 E.緩和ケア
5.治療の効果判定
6.QOL 評価
7.急性期の合併症と有害事象管理
 A.外科治療
 B.放射線治療/化学放射線療法
 C.薬物療法
8.晩期の合併症と有害事象管理
 A.外科治療
 B.放射線治療
 C.薬物療法
 
第W章 フォローアップとチーム医療
1.治療後のフォローアップと生活指導
2.多職種連携
 A.多職種連携の重要性
 B.薬剤師の役割
 C.歯科の役割
 D.看護師の役割
  1)皮膚炎管理
  2)嚥下評価
 E.管理栄養士の役割
 F.言語聴覚士の役割
 G.ソーシャルワーカーの役割
 
第X章 今後の展望
1.新たなターゲットとバイオマーカー
2.今後,注目される治療法
 A.ロボット支援下手術
 B.光免疫療法(アルミノックス治療)
 C.放射線治療
 D.薬物療法

改訂第2版の序

 「我が国で頭頸部癌に関して診断・検査・治療・治療後のフォロー・多職種の役割など系統的に学べる教科書を提供したい」という趣旨をもとに本書の初版が2016 年に発刊され,頭頸部癌診療に携わる多くの医療従事者に愛読されてきた.各領域の第一人者に執筆を担当していただき,「系統的に頭頸部癌を理解できる」教科書を提供してきたと自負している.しかし,6 年も経過すると,新たなエビデンスが創出され,新たな治療が誕生しており,改訂の必要性を感じた.
 癌治療の進歩の中で,とりわけ薬物療法の進歩は目覚ましい.特に免疫チェックポイント阻害薬は,再発・転移頭頸部扁平上皮癌の二次治療のみならず,いまや一次治療の標準治療となっている.また,2020 年9 月に局所進行および再発頭頸部癌に対して世界で初めて承認された光免疫療法は,今日では実臨床で使用可能となっている.
 現在,検出された腫瘍の遺伝子変異に応じて分子標的治療薬を処方するがんゲノム医療が様々な癌腫にて進展している.甲状腺癌は,治療に結びつくアクショナブルな遺伝子異常の頻度が約60%と比較的高いために,様々な分子標的治療薬が開発中である.2022 年2月にRET 遺伝子異常を有する甲状腺癌に対して承認されたセルペルカチニブのコンパニオン診断システム(CDx)が,実施医療機関の制限のないオンコマインDxTT となり,RET 遺伝子異常以外の遺伝子異常の情報も入手可能となった.今後,甲状腺癌にもがんゲノム医療の推進が期待される.
 こうした進歩を受けて,「再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法」,「根治切除不能甲状腺癌に対する薬物療法」,「光免疫療法」として新たに項目を設けて解説した.
 放射線治療においても新たな治療選択肢が増えた.2018 年4 月に頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)に対して陽子線治療および重粒子線治療が,2020 年6 月に切除不能な局所進行または局所再発頭頸部癌に対してホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が保険収載された.これを踏まえて,本改訂では新たに粒子線治療を概説する項目を追加した.また,頭頸部癌患者に緩和照射を行うことが多いため,「緩和的放射線治療」の項目も追加した.
 治療法以外の部分もアップデートがあった.2017 年にTNM 分類が第8 版へ,2018 年に『頭頸部癌取扱い規約』が第6 版へ改訂され,口腔癌にN3b の概念の導入,HPV 関連中咽頭癌の大幅なステージの変更などがあったことを受け,本改訂ではTNM 分類の変更点を解説した.また,『頭頸部癌診療ガイドライン2022 年版』の刊行に伴い,この内容に対応するように見直しを行った.
 上記以外においても,各執筆者の先生方に現状に則した最新の内容へアップデートいただいた.
 本書が複雑となった頭頸部癌治療の理解に少しでも役立つこと,頭頸部癌に興味を持っ改訂第2版の序てくれる医療従事者が少しでも増えることを切望する.また,本書が日常診療に活用され,頭頸部癌患者の治療成績向上に少しでも寄与することを願っている.


2022 年9 月
田原  信
林  隆一
秋元 哲夫

 南江堂から出版されている『臨床頭頸部癌学―系統的に頭頸部癌を学ぶために』が大幅にアップデートされ第2版として刊行された.本書は「系統的に頭頸部癌を理解できる」教科書として2016年に初版が発刊されたので6年目での改訂となる.この間に免疫チェックポイント阻害薬が一次標準治療となり,光免疫療法が開始になり,また放射線領域でも陽子線治療,重粒子線治療,そしてホウ素中性子補捉療法が保険収載された.また甲状腺癌を中心にゲノム医療の導入が始まっている.本書はアップデートされたこれらの情報も含めた包括的な教科書となっている.
 各論について述べると,第W章「フォローアップとチーム医療」というテーマで多職種によるチーム医療に焦点を当てているのも本書の特徴といえる.看護師のみならず,薬剤師,歯科,管理栄養士,言語聴覚士,ソーシャルワーカーの果たすべき役割について詳細に述べられている.外科領域でのほかの教科書にはない章立てでありたいへん参考になる.
 本誌の読者の中で本書が特に役に立つと思われるのはやはり食道外科医であろう.頭頸部癌と食道癌が合併しやすいということについては多くの読者のよく知るところであると思われるが,特に食道外科医にとって下咽頭癌は非常になじみ深く,また基礎的知識がある程度必要とされる領域でもある.下咽頭癌と食道扁平上皮癌は親和性が高い一方で,大きく異なる治療方針も存在する.導入化学療法については食道癌治療とは目的がやや異なる(食道癌:予後の延長,頭頸部癌:臓器温存または予後の延長)が,多数の無作為化比較試験(RCT)が行われており,外科手術的には早期口腔癌に対する選択的頸部郭清術の優越性が大規模RCTで証明されている点や,再発転移頭頸部癌に対してcetuximabが有効である点も異なる.光免疫療法に関しても多くの食道外科医が興味をもっている分野であろう.また,頭頸部癌領域で関心がもたれている遺伝子変異についても知ることができる.
 本書は一般外科医必読の本とはいえないが,食道外科を志す外科医はもっていて損はない教科書といえる.また,すでに食道外科医として働いている者にとってはたいへん勉強になる一冊である.

臨床雑誌外科85巻2号(2023年2月号)より転載
[順天堂大学上部消化管外科教授・峯 真司]

Oncologyの最新の進歩と優秀なoncologistの技術・心意気を通覧できる希有な教科書

 本書が目指したのは「系統的に学べる教科書」である.癌の体系はもともと外科学のなかで臓器別につくられ,薬物療法は各臓器を診る内科が担うようになった.しかしながら,それが多臓器の集合体である頭頸部の癌となると難しい.眼窩腫瘍,口腔癌,甲状腺癌,副甲状腺癌はどの診療科で手術するのか? また,その薬物療法をどの診療科が担うのか? これらについては,各施設で任意に決められているのが現状である.「系統的」というからには,内容が各執筆者の所属診療科,研究テーマや好みに偏ることなく,一定の方針に基づいている必要がある.これを実現するには多くの困難が予想されるなか,初心を貫いた改訂第2版が完成した.
 本書の総論には広く応用のきく基本的な記述を含み,他分野の専門家にとっても読むのが楽しいだろう.さらに,図とグラフを用いながら解説していることで,読者の興味を大いにそそるものとなっている.
 初めて患者を診るときには,全診断過程の的確なシミュレーションが大切だが,それは臨床経験のなかで少しずつ身につくものとされてきた.それを本書では,発生頻度,要因,症状,病理を「診断」というカテゴリーで括る大胆な章立てによって,書籍から学ぶことを可能にしている.
 領域郭清術を腫瘍切除術から独立した項目としたのは頭頸部癌ならではであろう.頸部のセンチネルリンパ節生検の意義を評価する第V相試験が日本から報告された(JCO2021).従来,経口的手術は舌癌などで行われるのみであったが,内視鏡的切除術の進歩によって適応が広がり,注目されている.まだなじみのない読者でも,本書に掲載されているMRI画像や多くの手術写真によって,イメージをつかめるだろう.
 頭頸部癌はその90%を占める扁平上皮癌と特殊な組織型の癌で構成され,遠隔転移や播種が少ないことから,放射線療法が有効な症例は多い.しかし,解剖が複雑で重篤な放射線障害を起こしやすい臓器が隣接しており,十分な照射体積と線量を得ることが困難であった.この点が従来の小線源治療に強度変調放射線療法,陽子線治療,重粒子線治療,ホウ素中性子捕捉療法が加わることによって大きく改善されたが,本書ではこれら最先端の放射線療法を漏れなく学ぶことができる.また,化学放射線療法は1980年代に肺癌で始まり,頭頸部癌において最も発展した.本書では,動注化学放射線療法も含めて15頁弱が割り当てられており,読み応えがある.これらの項目が「放射線治療」のなかに置かれていて,ここに編集者の気遣いと自信が感じられる.内用療法に関する説明と図も充実しており,これだけでも本書を買う価値がある.放射線同位元素の説明は放射線治療病室などにおける内用療法の管理に有用であるし,甲状腺濾胞細胞におけるヨード移送の説明は,甲状腺癌に対する131I療法実施時のヨード摂取制限の理解を助ける.
 口腔粘膜バリア機能が物理的に障害された頭頸部癌では,好中球減少時に細菌が侵入しやすく,化学療法による治療関連死が数%とほかの領域より2〜3倍高い.そこでシスプラチン,5—FU,ドセタキセルによる3剤併用療法を,しかも根治を目指した導入療法として行うのである.本書では,その際の注意事項を徹底的に解説しているので,ぜひ読んでほしい.光免疫療法などの最新トピックは読んでのお楽しみということで.
 頭頸部領域は,呼吸,咀嚼と嚥下という生命に直結する機能をもち,さらに発声を司るとともに,“顔”というコミュニケーションの主体を形成している.頭頸部癌の治療とリハビリテーションにはさまざまな医療専門職との連携が重要で,本書はこの点も抜かりなく解説している.
 実は,本書は「頭頸部癌」を題材にして“oncology”の最新の進歩とともに,優秀な“oncologist”の技術と心意気を通覧できる希有な教科書なのである.本書が内科全体を総覧する本誌「内科」で紹介される理由である.

臨床雑誌内科131巻5号(2023年5月号)より転載
評者●筑波大学医学医療系臨床腫瘍学 教授 関根郁夫

9784524230891