書籍

インスリンポンプ療法マニュアル改訂第2版

CSII療法導入・管理のための手引き

編集 : 小林哲郎/難波光義
ISBN : 978-4-524-26666-1
発行年月 : 2014年5月
判型 : B5
ページ数 : 214

在庫あり

定価4,320円(本体4,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本先進糖尿病治療研究会のメンバーが総力を結集。CSII導入・管理に必要な知識を余すことなく網羅した実践的なマニュアル。経験豊富な執筆陣により、適応、機器の取り扱い、食事、運動、日常生活での注意点、シックデイや低血糖への対応などを図表をまじえわかりやすく解説。明日から使える知識が身につく。糖尿病専門医・内科医だけでなく、療養指導に携わるメディカルスタッフにもおすすめの一冊。

1 インスリンポンプ療法(CSII療法)の有用性、EBM
 A.CSII療法の変遷
 B.CSII療法の原理と有用性
 C.CSII療法のEBM
2 インスリンポンプ療法の適応
3 インスリンポンプの機器と設定
 A.ポンプの機能比較
 B.注入回路の比較
 C.パラダイム722の特徴と使用方法
 D.トップ8200の特徴と使用方法
 E.日本初のリアルタイムCGMと連動したポンプが登場
4 導入時のインスリンの種類、基礎インスリン注入量、追加インスリン注入量の決定法
4-1 基礎インスリン注入量の決定法
 A.体重をもとにした決定法
 B.CGMと短時間絶食試験を応用する方法
4-2 追加インスリン注入量の決定法
 A.追加インスリン注入量の決定法の原則
 B.糖質摂取量をもとにした決定法
4-3 補正インスリン注入量の決定法
 A.補正インスリン
 B.インスリン効果値(ISF)の設定
4-4 小児における決定法
 A.どんな小児にはじめるか
 B.CSII療法実施への注意点
 C.使用インスリンの種類:速効型と超速効型、希釈インスリン
 D.基礎インスリン注入量(暁現象、薄暮現象、運動時減量)
 E.食事追加インスリン量の設定
 F.補正追加注入量の設定
 G.CSII療法の中断もしくは中止
 H.CSII療法時の継続チェックポイント
5 血糖コントロールの目標と評価法
 A.血糖コントロールの目的
 B.血糖コントロールの評価法と指針
 C.血糖コントロール目標の実際
6 CGMの適応と効果
 A.CGMとは
 B.CGMの適応
 C.1型糖尿病の血糖変動
 D.CSII療法の基礎インスリン注入量の投与パターン
 E.CGMの効果:CGMを用いたCSII療法の導入
7 CGMを使用したCSII療法の実際
 A.暁現象に対する調整
 B.絶食試験を用いた基礎インスリン量の調整
 C.カーボカウントを用いた調整
8 インスリンポンプ療法における食事療法
 A.追加インスリン注入法の種類
 B.食品交換表に基づく食事を摂取する際のインスリンポンプの使用法
 C.ボーラスウィザードの設定
 D.糖質以外の栄養素の血糖値への影響
 E.脂質による血糖上昇への実践的な対応方法
 F.経験則に則った食事での具体的な調整方法
 G.リアルタイムCGMに基づく食後血糖管理の重要性
9 インスリンポンプ療法における運動療法
 A.運動の生理
 B.1型糖尿病における運動
 C.自験例での運動中および運動後のポンプの調整
10 インスリンポンプ療法における日常生活の注意点
 A.入浴、シャワー、サウナ、日光浴
 B.睡眠:眠前に、接続と血糖の確認
 C.食事(外食)、残業
 D.服装の工夫
 E.旅行時の注意点
 F.検査時のポンプ取り外し
11 シックデイへの対応
 A.シックデイの病態
 B.CSII療法施行例のためのシックデイ・ルール
 C.トラブルでインスリンポンプが一時的に使用できなくなった時
12 低血糖への対応
 A.低血糖の病態生理と症状
 B.糖尿病患者における低血糖
 C.無自覚性低血糖
 D.CSII療法と低血糖
 E.CSII療法施行時の低血糖の原因と対応
 F.低血糖への対処
13 ケトーシス、ケトアシドーシスへの対応
 A.まずするべきこと
 B.治療
 C.その他
14 特殊な状況におけるインスリンポンプ療法
14-1 妊娠とインスリンポンプ療法
 A.妊娠時の病態とインスリンポンプ療法の意義
 B.妊娠例におけるインスリンポンプ療法の実際
14-2 外科治療とインスリンポンプ療法
 A.手術に伴う代謝状態・血糖コントロールへの影響
 B.血糖管理の目標値
 C.血糖管理の実際
14-3 糖尿病慢性合併症とインスリンポンプ療法
 A.食後高血糖・血糖変動
 B.糖尿病慢性合併症とCSII療法
 C.糖尿病胃弛緩症とCSII療法
 D.副腎皮質ホルモン投与とCSII療法
 E.インスリン抵抗性の強い2型糖尿病へのCSII療法
 F.インスリンアレルギーとCSII療法
15 小児におけるインスリンポンプ療法
 A.小児におけるインスリンポンプ療法
 B.小児におけるインスリンポンプの選択と操作
 C.小児におけるインスリンポンプ療法の導入
 D.基礎インスリン注入量(ベーサル注入量)の設定
 E.追加インスリン注入量(ボーラス注入量)の調整
16 インスリンポンプ療法におけるトラブルシューティング
 A.トラブルの予防
 B.インスリン注入の中断
 C.穿刺部位の問題
 D.トラブルを減らすためのカニューレの選択
 E.インスリン注射による対処
 F.医療施設の対応
17 インスリンポンプ療法の指導におけるチーム作り
 A.インスリンポンプ療法の指導におけるチームアプローチの必要性
 B.国内および海外での現状
 C.チームを作るために必要なトレーニング
 D.実際の診療での役割分担
 E.チームリーダーが注意すべき点
18 インスリンポンプ療法の今後
 A.CSII療法の優位性
 B.CSII療法の汎用性
 C.CSII療法から人工膵島への試み
 D.日常生活におけるCSII療法
付録 インスリンポンプ療法の医療経済
 A.CSII療法の実際
 B.インスリンポンプのレンタル契約の経緯
 C.患者が自分のために行うSMBG
 D.患者会の活用
 E.今後の課題
索引

このたび「インスリンポンプ療法マニュアル」を改訂することとなった。その経緯にはマニュアル初版の発行以来、今日までの本邦での糖尿病の治療環境、特にインスリンポンプ治療をはじめとする強化インスリン療法におけるソフトとハード両面での環境変化が著しいことが挙げられる。
 2008年の医療費の改訂によりインスリンのポンプ加算が認められ、さらに2012年4月には持続血糖モニター(CGM)が保険収載、さらには2014年4月にsensor augumented pump(SAP)に関する診療報酬が新設された。
 ハード面の変化をみると、国内メーカーも含めいくつかの新型のインスリンポンプが次々と発売され、2014年中には長時間の寿命を持つセンサーに対応したSAPが上市される。その結果、患者の負担増が問題となっており、また医療側も必然的に、その診療体制の強化が求められる時代となりつつある。
 このような現状に鑑み、日本先進糖尿病治療研究会は、“CSIIおよびCGMに関するステートメント”を発表する予定である(学会誌『糖尿病』2014年6月号に収載予定)。この“ステートメント”には研究会としてのEBMに基づいた、インスリンポンプ療法、CGMをめぐる種々の指針が小児科領域を含めて示されている。そして今回の改訂では、このステートメントに携わった研究会の多くのメンバーにご参加いただくことができた。その結果、本書も多面的でup dateなインスリンポンプ療法のマニュアルの改訂になったと自負している。
 新しい時代にこの新訂されたマニュアルを、適応面、運用面など具体的な問題に対処する際にご活用いただければ、編者としてこれに過ぎる喜びはない。

2014年5月
小林哲郎、難波光義

 インスリンポンプ療法(CSII)が登場した1970年代後半は、1型糖尿病のインスリン療法にはウシ由来のインスリン製剤が主流で、その種類も速効型と中間型の2種類しかなく、自己注射の保険適用さえ論議されていた時代であり、患者のQOLに対する配慮はもとより、血糖の厳格な管理はほとんど不可能な状況であった。そうしたなか、シリンジを内蔵し、持続的にインスリンを皮下に注入するCSIIは、まさに夢の治療法として大きな期待とともに受け入れられたのである。その後、血糖持続モニターシステムを備えたクローズドループ型人工膵臓が開発されるに及び、爾来、これを小型ポンプに組み入れる試みは永くなされてきたが、その実用化には多くの技術的な障壁を乗り越えなければならなかった。しかし近年、インスリンポンプの飛躍的な改良とCGMの登場により、ようやく実用機が世に出ようとしている。
 インスリンポンプとCGMが保険収載されたことによって、これらのデバイスが急速に普及しつつあるが、糖尿病専門医にとってもそのハードルは決して低いとはいえない。本書は、実臨床における問題点を念頭に、これからインスリンポンプ療法を開始しようとする医療者の立場に立って、導入から管理まで平易に解説した入門書である。執筆陣はいずれもわが国を代表する方々ばかりであるが、ページをめくりながら感銘を受けたのは、実際にポンプ療法を始めるにあたって医療者が直面する問題点が、すでに事細かく網羅されていることである。一般にこの種の解説書は、概念的な記載から始まって、専門用語を駆使し、初学者を寄せ付けない印象を与えるきらいがあるが、本書では必要なことが平易かつ簡潔に説明されており、読み進めていくうちに、あたかも患者を目の前にして指導している錯覚さえ覚えるほど、その内容が具体性を帯びている。また、インスリン注入量の決定法や食事療法の章にみられるように、米国の成書に書かれていることを紹介しながら、日本人独自の問題に対比しつつ、その対処法を解説している。たとえばカーボカウントに食品交換表を利用する例などが該当するが、このような記述は従来の翻訳本にはなかったことであり、まさに執筆陣の意気込みが感じられる。さらに、CGMのデータの解釈と注入プログラムへの応用の解説は、CSIIのみならず、通常のインスリン療法の在りかたを知るうえでも、大変興味深い。その他、運動療法や日常生活上の注意点など、心配りは仔細にわたっている。
 本書はまさに、日本人1型糖尿病のインスリンポンプ療法のために編まれたものであって、筆者はかかる類書が他にあることを知らない。これから指導を始めようとしている、あるいは指導中の糖尿病を専門とする医療者にとって、必読の書である。ぜひ、お手元に置かれることをお奨めする。

臨床雑誌内科115巻5号(2015年5月号)より転載
評者●東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授 宇都宮一典