教科書

シンプルシリーズ

シンプル生理学改訂第7版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

: 貴邑冨久子/根来英雄
ISBN : 978-4-524-26664-7
発行年月 : 2016年3月
判型 : B5
ページ数 : 378

在庫なし

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

1988年の初版刊行から長い間版を重ねてきた医療系学部学生対象の生理学の定番教科書。医学部生の入門用、試験前の通読用としても活用されている。初学者でも通読しやすい内容で、読者の興味を惹く生理学的実験やエピソードも多数紹介。今版では章項目の再編成と細部にわたる記述内容の見直しを行い、読者・採用者からの指摘要望にも対応し、またフルカラー化を実現した。

1.生理学の基礎
 1 生理学とは
 2 人体を構成する要素
 3 ホメオスタシス
 4 細胞の機能的構造
  A.核
  B.小胞体とリボソーム
  C.ゴルジ装置
  D.リソソームとペルオキシソーム
  E.中心小体
  F.細胞骨格
  G.ミトコンドリア
  H.細胞膜
2.神経の基本的機能
 1 神経細胞の形態
  A.ニューロンとその支持細胞
  B.ニューロンの変性と再生
 2 静止膜電位
  A.拡散電位と平衡電位
  B.静止膜電位形成のしくみ
 3 活動電位
  A.活動電位とは
  B.活動電位発生のしくみ
 4 閾刺激
 5 全か無かの法則
 6 不応期
 7 イオンチャネル
  A.細胞膜とイオンチャネル
  B.電位作動性チャネル
  C.リガンド作動性チャネル
 8 興奮の伝導
  A.活動電位はどのようにして軸索に沿って伝わるか
  B.興奮伝導の三原則
  C.跳躍伝導
  D.興奮の伝導速度
 9 複合活動電位
 1 0興奮の伝達
  A.シナプス
  B.興奮性シナプスと抑制性シナプス
  C.化学伝達物質
  D.シナプス伝達の特徴
  E.シナプス接続の型
  F.シナプス前抑制
  G.シナプスの可塑性
3.筋肉の基本的機能
 1 筋肉とは−筋肉の種類
  A.骨格筋の役割と特徴
  B.平滑筋の役割と特徴
  C.心筋の役割と特徴
 2 骨格筋の構造
 3 筋収縮のしくみ
 4 筋細胞膜を興奮させるしくみ
 5 骨格筋の収縮の仕方
  A.筋肉の張力と負荷
  B.等尺性収縮と等張性収縮
  C.単収縮
  D.収縮の加重と強縮
 6 筋肉の長さと張力の関係
 7 筋収縮のエネルギー
  A.筋の収縮・弛緩とATP
  B.エネルギー供給のためのATP産生過程
 8 筋の熱発生
 9 筋電図
 10 平滑筋
  A.平滑筋の構造
  B.平滑筋を支配する神経
  C.単ユニット平滑筋
  D.多ユニット平滑筋
  E.平滑筋の収縮のしくみ
 11 心筋
4.神経系の構成
 1 反射と反射弓
 2 脳-脊髄神経系の構成
 3 脊髄と脊髄神経,脳幹と脳神経
 4 体性神経系と自律神経系
5.感覚系の構成と機能
 1 感覚の一般的性質
  A.感覚器
  B.受容器における電気現象
  C.順応
  D.感覚情報の伝導と新皮質感覚野
  E.感覚の種類
 2 視覚
  A.眼の構造
  B.結像の機序
  C.光受容機序
  D.視覚の伝導路
  E.新皮質視覚野
  F.色覚
  G.視野と両眼視
 3 聴覚
  A.耳の構造
  B.音
  C.聴覚の伝導路と新皮質聴覚野
 4 前庭感覚
  A.平衡感覚系
  B.前庭器官の構造
  C.電気活動
  D.前庭感覚の伝導路
 5 嗅覚と味覚
  A.嗅覚
  B.味覚
 6 体性感覚(皮膚感覚,深部感覚)
  A.皮膚感覚
  B.深部感覚
  C.体性感覚の伝導路
  D.新皮質体性感覚野
 7 内臓感覚
  A.内臓痛覚
  B.関連痛と放散痛
6.自律神経系と内臓機能
 1 交感神経系と副交感神経系
 2 化学伝達物質
  A.コリン作動性線維とアドレナリン作動性線維
  B.アセチルコリンとアドレナリンの生合成
  C.受容体
 3 効果器支配の様式
 4 自律神経遠心性線維の分布と作用
 5 いろいろな内臓反射と中枢
  A.内臓-内臓反射
  B.体性-内臓反射
  C.内臓-体性反射
7.体性神経系と運動機能
 1 運動機能概説
 2 姿勢の定義
 3 骨格筋の感覚器
  A.筋紡錘
  B.ゴルジ腱器官
 4 いろいろな体性反射と中枢
 5 脊髄の運動機能
  A.脊髄反射
  B.反射の協調
  C.臨床診断上有用な脊髄反射
  D.脊髄の損傷
 6 脳幹の運動機能
  A.除脳固縮
  B.脳幹における体性運動反射
 7 小脳の運動機能
  A.小脳の構造
  B.小脳による随意運動の協調と姿勢の保持
  C.小脳の運動学習機能
  D.小脳の障害による運動失調
 8 大脳基底核の運動機能
  A.大脳基底核の構造と神経回路
  B.大脳基底核の機能
  C.大脳基底核の障害による運動失調
 9 新皮質運動野の運動機能
  A.新皮質運動野の構造
  B.新皮質運動野の機能区分
  C.新皮質運動野による運動機能の調節
8.中枢神経系の高次機能
 1 大脳皮質,視床,脳幹の一般構造
  A.大脳皮質
  B.視床
  C.脳幹
 2 大脳皮質の活動レベル,覚醒と睡眠
  A.脳波(脳電図)
  B.ノンレム睡眠とレム睡眠
  C.睡眠中の生理機能
  D.睡眠のリズム
  E.睡眠中枢と睡眠物質
  F.睡眠誘発のメカニズム
 3 新皮質の構造と神経連絡
  A.層構造と神経細胞の種類
  B.皮質分野(ブロードマンの地図)
  C.新皮質の機能分化
  D.新皮質の神経連絡
 4 新皮質連合野の統合機能
  A.後連合野から前連合野への情報の流れ
  B.学習・記憶
  C.言語
 5 辺縁系と視床下部の機能
  A.辺縁系の構造
  B.視床下部の構造
  C.辺縁系-視床下部系の機能
  D.食欲と摂食行動
  E.性欲と性行動
  F.恐れと怒り,逃避行動と攻撃行動
9.内分泌系の機能
 1 概説
 2 ホルモンの一般的性質
  A.定義
  B.化学的組成
  C.産生と放出
  D.分泌調節
  E.作用機序
 3 視床下部のホルモン
 4 下垂体前葉のホルモン
  A.下垂体の構造
  B.下垂体前葉のホルモン
  C.下垂体前葉の内分泌細胞
  D.成長ホルモン(GH)
  E.プロラクチン(PRL)
 5 下垂体後葉のホルモン
  A.バゾプレッシン(VP)
  B.オキシトシン(OXY)
 6 甲状腺のホルモン
  A.甲状腺の構造
  B.甲状腺ホルモン
  C.甲状腺ホルモンの分泌調節
  D.甲状腺ホルモンの生理作用
  E.甲状腺の機能異常
 7 骨代謝の内分泌性調節
  A.骨の構造
  B.骨の細胞
  C.骨の形成と成長
  D.骨の改造
  E.カルシウム(Ca)とリン(P)の代謝
  F.カルシウム代謝のホルモンによる調節
  G.上皮小体ホルモン
  H.カルシトニン
  I.ビタミンD
  J.骨の病気
 8 副腎皮質のホルモン
  A.副腎皮質の構造
  B.副腎皮質ホルモン
  C.副腎皮質ホルモンの分泌調節
  D.副腎皮質ホルモンの生理作用
  E.副腎皮質の機能異常
 9 副腎髄質のホルモン
  A.副腎髄質の構造
  B.副腎髄質ホルモン
  C.副腎髄質ホルモンの分泌調節
  D.副腎髄質ホルモンの生理作用
 10 膵臓のホルモン
  A.膵島の内分泌細胞
  B.インスリン
  C.グルカゴン
 11 糖代謝の内分泌性調節
  A.体液性調節
  B.神経性調節
 12 白色脂肪細胞のホルモン
  A.白色脂肪と肥満
  B.メタボリックシンドローム
10.生殖機能
 1 性染色体とその異常
 2 性分化
  A.生殖腺の性分化
  B.副生殖器の性分化
  C.思春期における身体の性差
  D.脳の性分化
 3 ゴナドトロピン
  A.ゴナドトロピンの化学
  B.ゴナドトロピンの分泌パターン
  C.ゴナドトロピンの分泌調節
  D.ゴナドトロピンの作用
  E.精巣ホルモンと卵巣ホルモン
 4 男性の生殖機能
  A.男性の生殖器系の構成
  B.精子形成
  C.男性におけるゴナドトロピンと精巣ホルモンの分泌調節
 5 女性の生殖機能
  A.女性の生殖器系の構成
  B.卵巣の構造の周期的変化
  C.卵巣周期に伴う子宮の変化−月経周期
  D.女性におけるゴナドトロピンと卵巣ホルモンの分泌調節
  E.妊娠と分娩
 6 生殖機能の加齢変化
11.栄養と代謝
 1 概説
 2 生体に必要な食物成分とエネルギー
  A.摂取が必要な食物のエネルギー(熱量)
  B.望ましい三大栄養素摂取の割合
  C.必要なミネラル(無機質)
  D.必要なビタミン
 3 三大栄養素の中間代謝
  A.吸収期
  B.空腹期
  C.中間代謝の調節
 4 三大栄養素のエネルギー代謝
  A.各栄養素のエネルギー産生量
  B.各栄養素のエネルギー量の計測法
  C.代謝量(代謝率)
  D.化学エネルギーから活動のためのエネルギーを産生
12.消化器系の機能
 1 消化器系の役割
 2 消化管の運動と分泌機能
  A.消化管の基本的構造
  B.消化管の運動とその調節
  C.消化管の分泌機能とその調節
 3 消化管の消化と吸収機能
  A.消化
  B.吸収
 4 消化管ホルモン
  A.消化管ホルモンの特徴
  B.分泌調節と作用
 5 肝臓
  A.肝臓と胆道系の構造
  B.肝臓のはたらき
  C.胆汁
13.血液の生理
 1 血液の機能
  A.運搬機能
  B.ホメオスタシスの維持
  C.止血機構
  D.生体防御機構
 2 血液の組成
  A.体液の区分
  B.血液の成分と量
  C.血漿
  D.細胞成分
 3 血液型
  A.ABO式血液型
  B.他の血球凝集原
  C.輸血
 4 止血機構
  A.止血の機序
  B.凝固の機序
  C.止血の異常
 5 生体防御機構
  A.免疫系器官
  B.免疫系の細胞
  C.免疫応答のしくみ
14.循環系の機能
 1 概説
 2 心臓
  A.心臓の構造
  B.心筋の基本的性質
  C.心電図
  D.心臓のポンプ機能
  E.心機能の調節
 3 血管系とリンパ管系
  A.血管の構造と機能
  B.リンパ管の構造と機能
 4 循環の調節
  A.血液循環の物理学
  B.動脈血圧(血圧)
  C.神経性調節
  D.体液性調節
 6 局所循環
  A.局所性調節
  B.脳循環
  C.冠循環
  D.肺循環
  E.皮膚循環
  F.骨格筋の循環
15.呼吸の生理
 1 呼吸とは
 2 呼吸器の構造
 3 呼吸機能の構成
 4 換気
  A.換気のしくみ
  B.肺胞内圧と胸膜腔内圧
  C.換気量と残気量
  D.肺胞換気量と死腔
  E.呼吸のための仕事
 5 ガス交換とガス分圧
 6 血液中の酸素の運搬:ヘモグロビンの役割
  A.ヘモグロビン
  B.ヘモグロビンの酸素解離曲線
  C.ヘモグロビンと酸素の結合に影響する因子
 7 一酸化炭素中毒
 8 血液による二酸化炭素の運搬
 9 呼吸を調節するしくみ
  A.呼吸の周期性の形成
 10 肺換気量の調節
  A.酸素受容器
  B.二酸化炭素受容器
 11 呼吸の異常
  A.呼吸頻度と呼吸の深さの異常
  B.呼吸型の異常
 12 人工呼吸
  A.口から口への人工呼吸法
  B.機械的人工呼吸装置
16.尿の生成と排泄
 1 腎の機能的構造
 2 糸球体ろ過
 3 糸球体ろ過量,腎血漿流量,クリアランス
 4 尿細管における再吸収
  A.ナトリウムイオン(Na+),塩素イオン(Cl−)の再吸収
  B.水の再吸収と排泄
  C.グルコースの再吸収
  D.アミノ酸の再吸収
 5 尿細管における分泌
  A.有機酸の分泌
  B.水素イオン(H+)の分泌
  C.カリウムイオン(K+)の分泌
 6 尿の成分
 7 排尿
  A.膀胱内圧測定(シストメトリー)
  B.排尿反射
17.体液とその調節
 1 体液の区分と水バランス
 2 体液のイオン組成
 3 体液の恒常性を維持するしくみ
  A.体液浸透圧と体液量の調節
  B.体液ナトリウム(Na)濃度の調節と体液量
  C.体液酸塩基平衡の調節
18.体温とその調節
 1 体温
 2 体温の生理的変動
 3 体内における熱の産生
  A.基礎代謝・作業・運動による熱産生
  B.ふるえによる熱産生
  C.非ふるえ熱産生
  D.食事誘発性産熱反応
 4 熱放散
  A.熱放散の物理的しくみ
  B.熱放散を調節する生理的しくみ
 5 行動性体温調節
 6 熱平衡
 7 体温調節機構
 8 うつ熱と発熱
  A.うつ熱
  B.発熱
 9 低体温
付録
 1 生理学で使われる単位
  A.長さ
  B.重さ
  C.体積(容積)
  D.速度,加速度,力
  E.圧力
  F.温度
  G.溶液の濃度
  H.周波数(振動数)
 2 略語集
索引

改訂第7版のはしがき

 『シンプル生理学』の改訂第6版を出版して5年が経過した頃に、新知見を取り込み、古い記述を削除あるいは圧縮したいという意向を著者らから南江堂に申しいれたところ、南江堂からも咋今の生理学教科書は色刷りが通例になっていることからカラー化をしたいとの希望が出て、相談の上、4色を基本とした紙面とする「改訂第7版」の出版を目指そうということで合意ができた。ただし、この合意は2013年9月で、刊行の目標も2015年2月であったが、原稿の遅延はもとより、図版のカラー化に思いの外の時間がかかり、ようやく2016年3月の刊行にこぎ着けた。年半の難工事の末、ほとんど新しくなったと自負する『シンプル生理学』を学生の皆さんにお届けできることを大変うれしく思っている。
 まず、カラー化以外の改訂内容であるが、生体機能の調節に重要な役割を果たす「神経系」と「内分泌系」の章構成について見直しを行った。これまで「神経系の機能」として一つの章にまとまっていた「神経系の構成」「自律神経系と内臓機能」「体性神経系と運動機能」「中枢神経系の高次機能」をそれぞれ章として独立させ、さらに理解をしやすい構成とした。また、「内分泌系の機能」の章より「生殖機能」を独立させ記述の充実をはかった。
 難工事の最大の原因は、カラー化にあたり、各図版の「色づけの根拠」にこだわったことにあった。ほとんど当初から自由な色使いが許されたことは幸せであったが、他方で、人のからだ全体の「構造と機能」を網羅して解説する生理学教科書の膨大な数の図版を色づけするうえで、「なぜこの色をここに」という「色づけの根拠」を欠くと、美しくはあるが、生理学という科学から外れたものになる可能性があり、そのうえ、全図版を通して統一性がとれたものとすることが困難であろうとも考えられた。
 そこで「色づけの根拠」を求め、試行錯誤した結果、からだの各細胞、組織、器官が、規則的に3つの胚葉から発生してくることに着目し、各図版で取りあつかう細胞、組織、器官の色づけを、その由来する胚葉にもとづいて行うことに決めた。その結果がこの改訂第7版である。簡単にいうと、外胚葉由来のものは「青色」系統、内胚葉由来のものは「黄色」系統、中胚葉由来のものは「赤色」系統で色づけをした(次頁参照)。系統、という意味は、例えば外胚葉の青色であっても、薄い青色から赤みの入った青色などまで幅をもたせるということで、よって複雑な構造・機能に対応させた。液体、気体、温度などにも色の決まりをつくった。
 このユニークな発想にもとづく図版の色づけは、この教科書を、単に時代にあわせてカラフルにしただけではない。例えば、長さ約4cmという指1本で届く範囲の肛門も、その外側半分は外胚葉性で敏感だが、内側半分は内胚葉性なので痛みを感じないという現象の理解に役立つ可能性をももたせたかもしれない。『シンプル生理学改訂第7版』は、このようなカラー化によって、思いもかけないジャンルにまで拡大したアップデートを果たすことができたともいえよう。
 『シンプル生理学改訂第7版』はこのようにできあがったが、内容、また特に図版の色づけにはまだまだ不備があることと思う。読者のかたがたからのご指摘も覚悟しているところである。最後に、カラー化作業にイラストレーターとして努力を惜しむことなく関わってくださった榎本星和氏、また改訂全般にわたり力を尽くしてくださった南江堂教科書出版部諸氏にこの場を借りて心からお礼申し上げます。

2016年2月
貴邑冨久子
根来英雄

9784524266647