教科書

微生物学実践問題

基礎と臨床をつなぐ500題

監訳 : 瀬谷司
ISBN : 978-4-524-26361-5
発行年月 : 2011年8月
判型 : A4変
ページ数 : 190

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

微生物学・免疫学を“問題を解き、解答・解説から習得できる”演習書。各微生物の基礎的な事項から、感染症や免疫疾患などの臨床に即したものまで、約500題の問題が、豊富なフルカラーの写真や病理像とともに収載されている。問題を解き、詳しい解説を読むことで、教科書的知識を覚えるだけにならない学習が可能。知識が実際の臨床ではどう活かされるのかも明快になる。医学部からコメディカル・生命科学系学生まで、教科書のサポートや自学自習に必携の一冊。

Lippincott's Illustrated Q & A Review of Microbiology & Immunology
Bonnie A.Buxton、Lauritz A.Jensen&Randal K.Gregg

第1章 細菌学
第2章 ウイルス学
第3章 真菌学
第4章 寄生虫学
第5章 感染症学
第6章 基本免疫学
第7章 臨床免疫学
索引

学生さんと話していて、どうすれば専門家になれるかと聞かれることがある。将来を期待するなら、まず学生時代に1つの領域に真剣に向き合うことである。研究とは、華やかな表舞台の裏にそれを支える多くの地味な貢献があり、その中に専門性が培われる。努力せずに達成できる専門はないし、努力したからそれが報われるという保証もない。しかし、日本がどのように変わろうと、怠けている者に福音が訪れることは決してない。
 感染症は視診で鑑別診断し、鏡検で微生物を同定して確定診断する場合が多い。しかし、近年多くの感染症を診療の現場で見なくなってから久しい。教育の場から「教官として見たことのないものを教える」ということには問題を感じている。さらに原虫や寄生虫の領域では専門家といわれる方々も不在に近い状況になっている。「教える」とは専門家が自分の経験を学生さんに伝える場合に成立する。学生さんも「見たこともない細菌やウイルスの名前を覚えて疾患名を丸暗記する」のが微生物学だという授業に問題を感じているであろう。多くの教科書を通読したが、感染症自体が減少しているためか病原体が「見えて」来ず、ましてその背景にある宿主の微生物応答など机上の空論に近い。多くのレポートから、学生さんにとって感染免疫が面白い学問といえない理由の1つはこのあたりに原因があろうと感じる。これは講義を担当する側の問題でもあるという思いも拭えない。日本中の大学がこのことをおかしいと認識せずに授業を繰り返している背景には文部科学省の教育指導があり、講義担当者よりお役人の感覚麻痺にむしろ問題がありそうで、問題は根が深い。
 このような日本の教育背景のもと、本書が翻訳出版されるのは有意義である。多数の写真が微生物と疾患に臨場感を生み出し、医療現場を再現してくれる。質問形式で感染症の理解と鑑別診断の知識を広げてくれる。学生さんのみでなく、講義担当の教員にも貴重な知識の源泉となる。本書は授業の参考図書としてだけでなく、医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師などの国家試験対策にも有用であろう。
 レーベンフックによって微生物が記載されたのは1674年、やがて19世紀の病原細菌ハンティングの時代、ウイルスハンティングの時代があり、今は微生物と宿主応答の理解が日進月歩で進んでいる。これはインターフェロンの発見から遺伝子クローニングの時代の先駆をなすものでもあった。さらに微生物とはいえないタンパク質や核酸そのものが伝染して発病するプリオン病、ウイロイドが見つかり、さらに癌細胞自体が動物の個体差(免疫学的識別機構)を越えて「移る」ことまで証明された。これらを含めて「広義の感染症」という時代が来る。歴史を紐解くと同時代に歓迎される研究と理解されずに終わる研究がある。しかし、講義は微生物の理解に留まらずその時代を駆け抜けた研究者の理解でもある。優れた仕事は時代を越えて甦るものである。
 本書の翻訳にあたっては部局を越えて全学の感染症領域の講義担当者と相談し合い、学部を越えた翻訳陣で望むことができた。部局に線を引いても感染免疫講義の必要性は全学に共通であり、多くの専門家の結集によって達成されるとの配慮である。
2011年7月吉日
訳者を代表して 瀬谷司