書籍

慢性心不全のあたらしいケアと管理

チーム医療・地域連携・在宅管理・終末期ケアの実践

編集 : 百村伸一/鈴木誠
ISBN : 978-4-524-26178-9
発行年月 : 2015年11月
判型 : B5
ページ数 : 174

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

高齢社会の進行とともに心不全患者数が増加している今、予後の改善や心不全の再入院を減らすという目標達成のために、重要視される「チーム医療・地域連携・在宅管理・終末期ケア」の実践をまとめた。本領域において先進的な取り組みを行っている施設のスタッフが結集し、事例も盛込み具体的なノウハウをわかりやすく解説。心不全のケアと管理に携わる様々な職種の医療スタッフに読んでいただきたい一冊。

I 実践編:心不全のあたらしいケアと管理
 A.多職種チーム医療のつくり方と役割
  1.チームの構成メンバーをどうするか
  2.各職種の連携の仕方と役割
  3.症例から学ぶチーム医療の運営
 B.多職種チーム医療によるあたらしいケアと管理
  1.看護師が活躍−再入院を予防,入院日数を減らすための取り組み
  2.薬剤師の出番−服薬率を上げる方法
  3.栄養士が味方−栄養状態を改善させる栄養管理・指導
  4.理学療法士に任せろ−リハビリテーションを成功させるコツ
  5.みんなで支援−再入院を減らす退院指導
 C.地域ネットワークの構築と運営
  1.地域ネットワークを構築するために必要な情報とは
  2.どのように地域ネットワークをつくるか
  3.地域ネットワークの構築・運営例(1)
  4.地域ネットワークの構築・運営例(2)
 D.在宅管理によるケアと管理の実践法
  1.在宅管理における訪問看護の意義とは
  2.在宅管理におけるケアのポイント
  3.訪問看護師が行うケアの実践(必要なアセスメントとは)
  4.在宅管理における患者・家族へのケア
  5.医療ソーシャルワーカーの役割と在宅管理で知っておきたい保険の知識
  6.症例から学ぶ在宅管理の実際(1)
  7.症例から学ぶ在宅管理の実際(2)
 E.心理的ケアの実践法
  1.心不全に合併する心理的症状とは
  2.心理的症状の評価法
  3.心理的症状への対応法
 F.終末期ケアの実践法
  1.心不全における終末期ケアとは
  2.終末期ケアを行うタイミングと患者・家族への説明
  3.終末期ケアの実践内容
  4.症例から学ぶ終末期ケアの実際(1)
  5.症例から学ぶ終末期ケアの実際(2)
II 基礎編:押さえておくべき心不全の最新知識
 A.心不全の病態の理解
  1.心不全の疫学
  2.心不全の機序・分類
  3.心不全の病態生理
  4.心不全の症状と問診のポイント
 B.心不全の診断と検査法の最新知識
  1.バイオマーカーの重要性
  2.画像診断
  3.右心カテーテル検査
  4.運動負荷試験
  5.その他の検査
 C.心不全治療の最新知識
  1.薬物療法
  2.非薬物療法
   a)ASV
   b)CRT-D
   c)VAD
  3.リハビリテーション
  4.遠隔モニタリングシステム
  5.栄養療法
  6.その他の治療法
   a)心臓移植
   b)和温療法
付録 心不全のケアと管理に役立つ資料例
  1.ESC心不全疾患マネジメントプログラム
  2.ACCF/AHA心不全ステージとNYHA心機能分類
  3.薬剤一覧
  4.ガイドラインの比較表
  5.うっ血スコア
  6.欧州心不全セルフケア行動尺度(日本語版)Ver.2
索引

序文

 我が国は世界で有数の長寿国であり、健康寿命も年々伸びている。しかしながら一方で、高齢化に伴い様々な疾患が増加しており、そのひとつに心不全があげられる。心不全は単一の疾患というよりは、多様な心疾患が原因となって引き起こされる症候群である。心不全は重症化するといまだに予後が不良な疾患であるばかりでなく、労作時息切れなどの症状が出現し日常生活は制限され、QOLが低下する。また心不全が急性非代償性心不全として発症すると入院を余儀なくされ、集中的な治療を必要とし、QOLはさらに低下し、医療コストも増加する。一度心不全で入院した患者は、退院後比較的短期間で再入院する割合が高く、また退院後は入院前と同じ良好な状態に戻ることが決してない。残念ながら、入退院を繰り返すうちに不幸な転帰をたどるというのが現状である。
 我が国の心不全患者数は現在100万人以上であると推定されるが、その数は高齢化の進行とともに増えており、また心不全による死亡者数も増加していると推計されている。一方、心不全の治療も年々進歩しており、左室収縮能の低下に基づく心不全についてはレニン.アンジオテンシン.アルドステロン系阻害薬やβ遮断薬などの薬物治療が確立され、ICD(植込み型除細動器)やCRT(心臓再同期療法)などの非薬物療法も普及し、予後は着実に改善している。しかしながら、更なる予後の改善や心不全の再入院を減らすという目標達成のためには、このような個々で行われる最新の治療法の提供のみでは甚だ不十分で、優れた心不全疾病管理プログラムに基づいた患者の生活習慣の改善、セルフケアの啓発、心臓リハビリテーション、家庭環境の整備などの多面的な介入が必要である。
 これらの介入によって、心不全患者のアウトカムが大幅に改善することは以前より知られているが、それを我が国の医療現場でどのような形で実践してゆくかについての知識と経験は不足しており、なかなか普及できていなかった。その理由は、様々な職種の医療従事者が関与するチーム医療が必要とされるためである。多職種間でどのように情報を共有し、協力してゆけばよいかについての具体的なノウハウがあれば、心不全診療はさらに前進することが期待される。
 本書はこのようなニーズに応えるべく、この領域において先進的な取り組みを行っている施設のスタッフが結集し、編集・制作された。その内容は実践的かつ具体的であり、心不全のケアと管理に携わる様々な職種の医療従事者にとって大いに参考になるものと考えている。各医療機関において、それぞれの状況に即した心不全管理プログラムを策定するために本書を役立てていただければ幸いである。

2015年9月
編者を代表して
百村伸一

 慢性心不全患者は増加の一途をたどっており、心不全は循環器疾患のなかでも死因のNo.1である。その数字以上に問題なのは、心不全患者は入退院を繰り返すということである。冠動脈疾患に対する集中治療の目的で作られたCCUが、心不全患者、それも高齢の心不全患者で溢れているのが現状である。このように頻回に入院する心不全患者は本人はもとより家族や医療スタッフにとって大きな負担であるとともに、社会的コストも莫大なものになる。では、このような心不全患者の入院を減らすにはどうすればよいのであろうか。キーワードは、「心不全患者が退院しても、ほとんどの場合、元の病気は治っていない」ということである。
 状態はよくなっているので、医師も患者も「治ってよかった」と、ホッとしてしまう。しかし、元の心疾患はそのままなので、塩分制限を守れなかったり、体を動かし過ぎたり、服薬アドヒアランスが不良になれば簡単に心不全が再燃してしまう。ここに、医師だけの治療の限界がある。最近注目されているのが多職種による治療介入、すなわちチーム医療の重要性である。看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカー(MSW)などがその専門知識を活かして、チームとして一人の患者に治療介入していこうという概念である。患者の意識と生活習慣を変え、心不全に対して高い意識をもたせることにより、スムーズに退院から日常生活に移行してもらおうというものである。心不全チームはどのような構成にしたらよいのか、各メンバーの役割をどうするか、そしてどのように運用したらよいのか、精神的側面のサポートまで含めてノウハウを具体的に説明しているのが本書の特徴である。さらに、心不全患者が退院した後は地域医療機関が重要な役割を果たす。通院できずに在宅ケアにまわる高齢者も少なくない。病院とかかりつけ医とのシームレスな連携をどのように構築したらよいのであろうか。本書は具体例をあげながら、ポイントを明らかとし、ノウハウをわかりやすく述べている。心不全チームやかかりつけ医との連携でキーパーソンとなるのが看護師である。このような試みはまだ始まったばかりであるが、今後高齢者、心不全患者が激増すれば、すべての患者を病院で看取ることができない時期が必ずやってくる。終末期医療のあり方とともに、そのときを見据えて読んでおかれることをお勧めする。
 タイトルは「慢性心不全のあたらしいケアと管理」である。当然、心不全の最新治療もわかりやすく書かれているが、本書のもっともあたらしい点は心不全チーム、地域で心不全をみるというコンセプトである。間違いなくこれからの潮流となるこのコンセプトを、ぜひこの本を通じて学んでいただきたい。循環器専門医のみならず、かかりつけ医、看護師、理学療法士、薬剤師などメディカルスタッフにもぜひ手に取って欲しい一冊である。

臨床雑誌内科117巻3号(2016年3月号)より転載
評者●岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学教授 伊藤浩