書籍

実地医家のための結核診療の手引き

編集 : 日本結核病学会
ISBN : 978-4-524-25975-5
発行年月 : 2016年6月
判型 : A5
ページ数 : 120

在庫あり

定価2,160円(本体2,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

『結核診療ガイドライン(改訂第3版)』(日本結核病学会編集)のエッセンスをまとめた一冊。実地医家、結核診療に携わる医療スタッフのために、結核に関する疫学・診断・検査・治療・医療者への対策について、臨床で必須の内容を精選して解説。日本結核病学会認定資格「抗酸菌症エキスパート」取得をめざしているスタッフにもおすすめ。

I章 結核の現状
 1.世界の結核の状況
 2.日本における結核患者の発生動向
 3.日本の結核の特徴
 4.日本における結核対策
II章 結核の診断
 1.結核の感染,発症,治癒過程について知る
 2.臨床症状の特徴は
 3.結核の画像所見と画像診断の注意点
 4.喀痰結核菌検査の臨床上の注意点
 5.喀痰検査以外の検査
 6.ハイリスク者の結核
 7.肺外結核の症状と診断について
III章 結核菌検査
 1.抗酸菌検査について
 2.検査材料ごとの処理方法と注意点
 3.塗抹検査
 4.培養検査
 5.同定検査
 6.薬剤感受性試験
 7.核酸増幅法検査
IV章 結核患者の管理
 1.患者の発生届について知る
 2.保健所による積極的疫学調査への協力
 3.入退院の基準
 4.結核医療費の公費負担制度とは
 5.感染症診査協議会とは
 6.保健指導と治療支援
 7.DOTSについて知る
V章 結核の治療
 1.結核治療に対する考え方
 2.化学療法を行うにあたって
 3.標準治療の実際(活動性結核)
 4.標準治療が行えないとき(活動性結核)
 5.抗結核薬の副作用・相互作用マネジメント
 6.化学療法以外の治療
 7.小児,妊婦および合併症がある場合の治療
 8.潜在性結核感染症の治療
 9.主な抗結核薬の分類と種類について知る
VI章 潜在性結核感染症
 1.潜在性結核感染症(LTBI)とは
 2.「化学予防」ではなく「LTBI治療」
 3.感染症法上のLTBIの取り扱い
 4.LTBI治療の対象:どのような場合に治療を勧めるか
 5.結核感染のスクリーニング方法
 6.接触者健診によるLTBIの早期発見と発病予防
 7.LTBI治療の実際
VII章 医療従事者への結核対策
 1.医療従事者の感染対策
 2.医療機関における感染対策
 3.組織的な対策
 4.環境上の感染対策(作業環境管理)
 5.個人が行う感染対策(作業管理)
 6.結核患者が発生したときの対応
 7.気管支鏡検査時の感染対策
 8.救急診療における感染対策
参考文献
索引

序文

 このたび、日本結核病学会から「結核診療の手引き」を発刊することになりました。いままで同様のものとして「結核診療ガイドライン」を2009年に初めて発刊し、その後「同改訂第2版」を2012年に、「同改訂第3版」を2015年に発刊し、医師の方々に大変ご好評をいただいておりました。
 しかし、結核を専門としない医師、医師以外の医療従事者の方にとりましてはやや専門的であります。そこで「結核診療ガイドライン改訂第3版」の内容をもとに、新たに「結核診療の手引き」を作成することになりました。それは「結核診療ガイドライン」と項目立ては同じですが、内容をできるだけ箇条書きにし、簡潔かつ平易にわかりやすくするようにしました。また、新しく気管支鏡検査時の感染対策、救急診療における感染対策などを追加し、さらに、内容を刷新している項目もあります。
 さて、日本の新登録結核患者数は2014年に初めて2万人を下回り、結核罹患率も減少傾向にあります。その中で結核患者の高齢化はさらに進み、外国出生者の結核患者も増加傾向にあります。
 結核集団感染事例における最近の医療機関での発生は約20%近くとなり、医療従事者の結核感染・発病リスクではとくに女性看護師の結核罹患率が年々増加している状況もあります。
 さらに、地域DOTSでは外来でのDOTSによるさまざまな職種との連携も必要であり、最近では潜在性結核感染症治療指針が出され、新薬としてデラマニドが承認されています。結核菌の核酸増幅法検査や耐性結核菌の遺伝子診断の進歩も著しく、クォンティフェロンTBゴールドと同じくTスポットTBが保険適用となり、また、レボフロキサシンが抗結核薬に追加されました。
 本書は、これらのこともコンパクトにまとめられており、実地医家・一般内科医などで結核を専門とされない医師の方々をはじめ、結核診療に携わる保健師、看護師、薬剤師などの方々にも、日常の診療に十分活用できるものであると考えております。
 最後に、短い期間にもかかわらず執筆いただきました先生方に深謝いたします。本書が広く読まれ、活用されることを切に望みます。

2016年5月一般社団法人日本結核病学会 理事長
鈴木公典

 本書は「第I章 結核の現状」、「第II章 結核の診断」、「第III章 結核菌検査」、「第IV章 結核患者の管理」、「第V章 結核の治療」、「第VI章 潜在性結核感染症」、および「第VII章 医療従事者への結核対策感染」から構成されている。また、全体でも100頁少々の小冊子であり、短時間で容易に通読することができる。
 わが国の結核罹患率(人口十万あたりの年間患者発生件数は、2010年18.2、2014年15.4)は、徐々に下がっているとはいえ、欧米先進諸国に比べ3倍以上である。ただし、長期的なスパンでみると、わが国における医療の進歩に伴って、結核罹患率は劇的に低下している。かつて結核が国民病であったこと、また国民皆保険制度の充実による医療資源が豊富であったことも結核診療の質を高めた要因であると考えている。このような歴史を有することから、結核診療に関して、わが国は先進国のなかでもっとも多くの診療情報を有しているといっても過言ではない。
 本書は、わが国において蓄積された結核診療の多くの知見を、「手引き」という形でまとめたものである。まず感じたのが、本書の記載内容が結核診療を実践的な視点で捉えている点である。その理由として、執筆された先生方が、臨床現場で結核診療を行っている、結核に精通した多数の医師から構成されていることがあげられる。それぞれの項目ごとに図・表がふんだんに使用されており、カラー写真も含まれ、また青字で要点を強調するなど、ビジュアル的にも工夫されている。
 私は結核病床を有する琉球大学医学部附属病院に勤務する医師であり、とくに基礎疾患を有する重症結核患者の診療に携わっている。日本結核病学会指導医でもある私が、本書でとくに感心したのは、最新の内容が初心者でも理解しやすいよう、簡潔、かつ平易に記載されていることである。本書のタイトルにも示されているように、実地医家を読者対象として企画されていることから、重要なポイントをきわめてコンパクトに記載している。また、第VI章の潜在性結核感染症においては、新しい概念が紹介されており、実地医家にとってもっとも有用な章であると考える。さらに巻末に示されている参考文献が新しいことも本書の特筆すべき優れた点である。全体を通して、結核診療における、made in Japanの診断、および治療がちりばめられている。この本を通読し、あらためて結核診療はわが国が世界をリードしていると感じた。その理由は本書の執筆に加わった先生方が、わが国の結核診療の向上に多大な貢献を継続されてきたからであると考える。
 本書は、コンパクトにまとめられた結核診療の手引きであり、その内容はきわめて明快、かつ実践的なものである。文献も最新のものが多数引用されており、学問的裏付けも十分になされている。筆者の方々のご尽力に心から敬意を表したい。専門医以外の先生にとっても、読みやすく、かつわかりやすい良書であるので、多くの実地医家の先生方に活用していただきたい。

臨床雑誌内科118巻5号(2016年11月号)より転載
評者●琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科)教授/同医学部附属病院長 藤田次郎