書籍

木村 理 膵臓病の外科学

  • 新刊

: 木村理
ISBN : 978-4-524-25934-2
発行年月 : 2017年9月
判型 : B5
ページ数 : 324

在庫あり

定価19,440円(本体18,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

膵臓外科学の第一人者であり、臨床外科医として最前線を歩み続けてきた著者が、膵臓病に対する理念をはじめ、後世に伝えるべき手術手技の要点・コツ、診断・治療から周術期に及ぶすべてを惜しげもなくつづった渾身の一冊。

I章.基本・応用手技のポイント
II章.解剖と病理
 1.膵臓の外科解剖
  (1)区域
  (2)膵管
  (3)動脈系
  (4)静脈系
  (5)癒合筋膜
  (6)膵頭神経叢
 2.膵周囲の外科解剖−胆道・肝十二指腸間膜
 3.病理
  (1)膵ランゲルハンス島の孤立巣の成因
  (2)高齢者胆膵疾患の臨床と基礎病理
  (3)十二指腸(Vater)乳頭部
III章.各疾患の診断・治療
 1.膵癌の疫学と生活習慣病
 2.膵癌と栄養
 3.通常型膵癌(浸潤性膵管癌,PDAC)
  (1)膵頭神経叢浸潤
  (2)進展様式と外科治療
  (3)膵頭神経叢切除術
  (4)膵体尾部癌に対する標準的膵体尾部切除術
  (5)局所進行膵体部癌に対するAppleby手術とDP-CAR
 4.膵嚢胞性病変の診断・手術適応決定
  (1)膵嚢胞性病変の分類
  (2)IPMN
  (3)IPMNの悪性度−体積測定(volumetry)と組織亜型
  (4)MCN
  (5)漿液性嚢胞腫瘍(SCN)
  (6)非腫瘍性真性膵嚢胞およびSPNなど
 5.膵頭十二指腸切除術
  (1)われわれの膵頭十二指腸切除術
  (2)膵頭十二指腸切除術後,Child変法再建における器械吻合の導入
 6.膵切除術後のドレナージ
  (1)膵のドレナージ
  (2)膵頭十二指腸切除術後のドレナージの簡略図と方法
  (3)膵体尾部切除術後のドレナージ
  (4)膵全摘術後のドレナージ
 7.膵手術の周術期管理
 8.脾動静脈を温存した脾温存膵体尾部切除術
 9.急性膵炎
  (1)急性膵炎の病態・診断・治療
  (2)高齢者の急性膵炎−特に原発性化膿性膵炎について
  (3)急性膵炎に対するドレナージ
 10.慢性膵炎
 11.膵神経内分泌腫瘍
  (1)膵神経内分泌腫瘍(PNET)の発生論
  (2)膵神経内分泌腫瘍の診断・治療
  (3)膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインについて
 12.十二指腸(Vater)乳頭部腫瘍切除術
 13.膵外傷
索引

序文

 外科医は手術をすればするほど、様々な手技を、そしてその要点・コツを日々更新している。手術に必要な解剖学的知識やメスの動かし方、そして周術期管理など、ブラッシュアップするべきものは多岐にわたる。しかし、それらすべてを「原著」として世に出すには日本の外科医が持っている論文執筆の時間は少なすぎる。すべてを英語の論文にするには細かい手技を表現するだけの英語力もない。外科医が行うべきことは他にも山ほどあるのだ。
 私は自分の得た手術手技について“Publish or Perish(論文発表か、ゴミ箱にうっちゃるか)”のAll or Noneでは何にもならないので、多くの出版社から依頼される原稿に「すべて」を書きつづってきた。私の執筆した依頼原稿は、出版社が違い、題名が似ていてもそれぞれ少しずつ進化してきたのである。
 本を書くには著者の身体の内から、心の中から、止めても止めてもあふれ出てくるような意志、内容、意欲がなくてはならない。私は膵臓の手術をするたびに、「1つひとつの手技について、そのコツと要点を後世に伝えていかなければならないものがある」と考えてきた。いや、手術手技だけではなく、その疾患をみたときにすべきこと、考えるべきこと、手術を含めた診療・治療なども後世に伝えていくべきである、という思いが強く、19年にも及ぶ多忙な教授生活の中で、それを実践してきた。日本語でもどんな手段でもよい、とにかく文字にして書きつづっておこう、と。私は依頼原稿に昨日・今日手術で得たこと、今日カンファレンスで得たことをどんどん書くようにしたのである。誰かがまねしてくれればよい。もし誰かが英語にしてその手技のコツを書いてしまうなら、それでもよい。ともかくそれは私の考え、手術手技が少しずつでも次第に世界中に伝わっていくことを意味しているからだ。それによって世界中の外科手術がうまくいき、世界の患者さんの一人でも多くが病気から生還してくれればよいのだ。そのような思いから多くの依頼原稿の執筆を重ねているうち、「私は先生の追っかけです」という膵臓外科医や、「先生は私の心の師匠です」という膵臓外科医も現れた。それらの言葉は私への最高の賛辞であった。
 本書はそのようにして書きつづってきた原稿を元にまとめたものである。長年書いておかねばと思って書けなかったものは、書き下ろしとして本書のみに執筆した。さらに本書には最近の知見とそれに対する私自身のコメントをできる限り加え、修正した。入りきらなかったものは山ほどある。それでも今の時代に行われ、考えられてきた膵臓病学の、膵臓外科学の足跡の一端を示せたと思う。少しでもよりよく、より多くの患者さんたちを助けたい、よい手術を提供したい、という日々の息吹が伝われば幸いである。
 手術・周術期管理を一緒に行ってくれた山形大学大学院医学系研究科医学専攻外科学第一講座の仲間の医局員たちとは、日々患者さんを診て手術について討論した。他科の医師たち、メディカルスタッフの方々にも教えられた。杉山孝男氏、熊澤光氏はじめ南江堂の皆様には、本書を書き進める勇気を与えていただいた。皆様にこの場を借りて心からお礼を言いたい。
 最後に、ずっと支え、見守ってくれた妻園子に感謝します。

2017年9月
木村理