教科書

柔道整復師と機能訓練指導

機能訓練指導員養成テキスト

監修 : 公益社団法人全国柔道整復学校協会
編集 : 遠藤英俊/細野昇
ISBN : 978-4-524-25759-1
発行年月 : 2016年3月
判型 : B5
ページ数 : 252

在庫あり

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

高齢社会を迎え、柔道整復師が機能訓練指導員として活躍するうえで必要な介護に関する知識、関連する諸制度や他職種とのかかわり、さらに機能訓練指導の流れや実際に提供する運動の要点について、豊富な図とわかりやすく平易な文章で解説。介護などの場面で活躍される先生方により執筆され、学生だけでなく現場の柔整師にとっても必要な知識が詰まった一冊。

1 柔道整復師と介護保険
 A 介護保険の目的と理念
 B 介護保険制度における柔道整復師
  1 柔道整復師の業務
  2 柔道整復師に求められるスキル
  3 柔道整復師の職務
2 発達と老化の理解
 A 人間の成長と発達の基礎的理解
  1 発達
  2 学習
 B 老年期の発達と成熟
  1 ストレーラーの老化の基準
  2 老化の原因とメカニズム
  3 エイジズム
  4 老年期の発達課題
 C 老化に伴う心と身体の変化と日常生活
  1 サルコペニアとフレイル
  2 生活不活発病
  3 運動機能低下
  4 生理機能低下
 D エイジング理論
  1 老化
  2 老化の心理的影響
 E 高齢者と健康
  1 健康寿命
  2 高齢者にみられる疾患の理解
  3 高齢者の三大生活習慣病
  4 その他の高齢者疾患
  5 高齢者医療に関する知識の必要性
  6 薬物療法のポイント
3 認知症の理解
 A 認知症の定義
 B 認知症を取り巻く状況
  1 認知症の歴史
  2 認知症に関する行政の方針と施策
  3 オレンジプランと新オレンジプラン
  4 認知症のケアパスについて
  5 認知症高齢者の実態
  6 認知症高齢者のケア
 C 医学的側面からみた認知症の基礎
  1 認知症の症状
  2 認知症の原因疾患
  3 認知症の簡易検査
  4 認知症の重度評価
 D 認知症に伴う心と体の変化と日常生活
  1 中核症状
  2 周辺症状
  3 認知症介護の環境
 E 連携と協働
 F 家族への支援
  1 レスパイトケア
  2 ピア・カウンセリング
 G 認知症予防
  1 認知症予防のための疾病管理
  2 認知症予防について
  3 コグニサイズ
4 介護保険制度
 A 介護保険
 B 要介護度
  1 要介護者
  2 要支援者
  3 非該当者
 C 要介護認定
  1 要介護認定
 D 介護保険の給付
 E 介護サービスの利用
 F 介護サービスの受給パターン
  1 居宅サービスと施設サービス
  2 医療系サービスと福祉系サービス
  3 居宅介護支援
 G 介護サービス事業所
  1 居宅系事業所
  2 施 設
 H 介護関連職種
  1 介護支援専門員(ケアマネージャー)
  2 介護福祉士
  3 社会福祉士
  4 訪問介護員(ホームヘルパー)
  5 看護師
  6 その他の介護関連職種
 I 居宅介護サービスの受給
 J 施設サービスの受給
 K 地域包括ケアシステム
 L 医療介護総合確保法による今後の予想される変化
5 介護の過程
 A 介護過程の意義
 B 介護過程
  1 情報収集
  2 アセスメント(課題分析)
  3 課題・目標の設定
  4 個別援助計画の立案
  5 サービスの実施
  6 モニタリングおよび評価
 C 情報収集と課題の優先順位
  1 情報収集の方法
  2 課題の優先順位
 D 介護過程の実践的展開
  1 ケアマネジメント
  2 ケアプラン
  3 サービス提供
  4 モニタリング
  5 評価
  6 サービスの終結
6 高齢者介護とICF
 A 高齢者介護
  1 高齢者介護の目標
  2 QOLの向上
  3 ノーマライゼーション
  4 高齢者介護の原則
 B ICF
  1 成立過程
  2 ICFの特徴
  3 ICFの活用
  4 ICIDHとICF
  5 ICFの特性
  6 ICFの構成要素
 C リハビリテーションとICF
  1 リハビリテーション医学
  2 臨床的活用
 D 機能訓練とICF
  1 目標指向型機能訓練
  2 目標指向型機能訓練の特徴
  3 目標指向的アプローチ
  4 生活行為の評価
7 介護予防と生活機能の向上
 A 介護予防の問題点と対策
 B 運動器機能の向上と健康寿命の延伸
  1 「長寿」から「元気で長生き」へ
  2 機能低下に対する運動の効果
  3 運動器の機能向上訓練が目指すべき基本的考え方
  4 健康長寿のための生活機能低下予防
 C 生活機能低下予防での介入
  1 個別の評価に基づく包括的な介入
  2 地域の高齢者生活支援
 D 介入研究の結果
  1 運動器の機能向上プログラムの効果に関する総合的評価・分析
  2 地域でのサービスに関する評価
 E これからの介護予防の考え方
8 介護予防・日常生活支援総合事業
 A 介護予防・日常生活支援総合事業の趣旨
  1 基本方針
 B 生活支援サービスの充実
 C 総合事業を構成する各事業の内容および対象者
  1 介護予防・生活支援サービス事業
  2 一般介護予防事業
9 ロコモティブシンドローム
 A 原因
  1 運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)
  2 加齢による運動器機能不全
 B 「寝たきり」や「要介護」の主要な原因
 C ロコモティブシンドロームと運動器不安定症との相違
 D ロコチェック(ロコモーションチェック)
 E ロコトレ(ロコモーショントレーニング)
  1 目的
  2 方法
 F 転倒予防
  1 転倒
  2 転倒予防の介入とその効果
  3 転倒・骨折の要因
  4 転倒予防法
  5 日常の歩行
10 高齢者自立支援の理解
 A ポジショニングとシーティング
  1 ポジショニング
  2 シーティング
 B 口腔ケア
  1 口腔のもつ機能
  2 摂食・嚥下機能障害がもたらすもの
  3 軽度介護者への口腔ケアの重要性
  4 口腔体操(口の動き)
 C 栄養改善
  1 「栄養改善」支援のねらい
  2 高齢者にとっての「食べること」の意義
  3 サービス提供の実際
 D 閉じこもり予防
  1 サービス提供の実際
  2 同居家族への理解,協力のよびかけ
 E 認知症のある利用者の支援
  1 物忘れ
  2 被害妄想
  3 見当識障害
  4 人物誤認
  5 異食
  6 徘徊
  7 幻覚
  8 人格変化
  9 不潔行為
  10 夜間せん妄
  11 性的行動
11 機能訓練指導員と機能訓練
 A 機能訓練指導員
 B 介護予防・機能訓練指導員認定柔道整復師
 C リハビリテーションと機能訓練との相違
  1 リハビリテーションと機能訓練
  2 柔道整復師が行う機能訓練指導の特性
 D 「機能訓練」の対象となる「障害」の捉え方
  1 WHOの障害に関する分類
  2 「機能訓練」の「機能」の捉え方
  3 「活動制限(能力障害)」の構造
  4 「参加制約(社会的不利)」の構造
 E 機能訓練指導員の業務
  1 通所介護でのサービス実施までの手順
  2 通所介護事業所内でのサービス実施手順
 F 機能訓練指導とケアカンファレンス(サービス担当者会議)
  1 ケアカンファレンスの目的
  2 ケアカンファレンスの中心的な議題
  3 ケアカンファレンスの開催手順
  4 ケアカンファレンスの協議事項の例
 G 機能訓練の評価
  1 評価表で考慮すべき事項
  2 疼痛・姿勢バランスの評価
 H 個別機能訓練実施計画書
  1 基本方針
  2 本人の希望・家族の希望
  3 リスク
  4 自宅訓練の計画
  5 機能訓練終了の目安・時期
  6 参加=主目標
  7 活動=すべて実行状況
  8 心身機能・構造
  9 その他
 I 機能訓練指導員の保持すべき知識・能力
  1 利用者像の理解
  2 機能訓練指導員に必要な能力
  3 「寝たきり」か「寝かせきり」か
  4 可逆的要素のチェック
  5 危機管理
  6 利用者・家族のモチベーション
  7 デマンドとニーズ
  8 拘縮のある利用者の機能訓練
  9 疾患別の問題点の把握
  10 感染症に対する対応
 J 福祉用具の知識
  1 福祉用具の使用
  2 車椅子(自走用標準型車椅子・普通型電動車椅子・介助用標準型車椅子)
  3 特殊寝台
  4 歩行補助用具
  5 移動用リフト
  6 ポータブルトイレ
12 機能訓練で提供する運動と要点
 A 機能訓練の手順
  1 事前アセスメント
  2 個別サービス計画の作成
  3 プログラムの実施
  4 事後アセスメント
 B 器具を用いない運動
  1 背臥位で行う軽運動
  2 運動開始前の予備運動
  3 立位で行う上肢・体幹のストレッチング
  4 立位で行う下肢のストレッチング
  5 床上で行う上肢・体幹のストレッチング
  6 上肢・体幹の筋力を向上させる運動
  7 椅子を使って腹筋,腸腰筋,下肢前面の筋力を強化する運動
  8 立位で腹筋,腸腰筋,下肢前面の筋力を強化する運動
 C 簡単な器具を用いて行う運動
  1 運動に用いる器具
  2 ボールを使った運動
  3 チューブ(ゴムバンド・セラバンド)を使う上肢・体幹の筋力向上運動
  4 チューブ(ゴムバンド・セラバンド)を使う下肢の筋力向上運動
  5 プラスチックアレイを使った運動
  6 ポール(棒)を用いた肩の運動
  7 バランスボードを用いた運動
 D 股関節の運動能力を高める運動
 E 身体各部の運動
  1 首・肩の運動
  2 手・指の運動
  3 背部・腰部の運動
  4 下肢の運動
  5 腸腰筋・腹筋の運動
  6 足部の運動
 F 運動メニューの例
  1 腰痛予防・改善を目的とした運動
  2 膝痛予防・改善を目的とした運動
 G 運動プログラムの例
  1 訓練期間1クール(3ヵ月間・12回)の構成例
  2 1回の訓練内容の構成例
  3 1ヵ月目の運動プログラムの構成例
  4 2ヵ月目以降の運動プログラムの構成例
  5 自宅での宿題運動プログラムの構成例
  6 自宅での宿題運動プログラムの構成例
索引

序文

 柔道整復師は、医療制度はもとより、介護保険制度においても避けて通れないものとなっている。介護支援専門員や介護サービスとの連携や運営においても深い関係が構築されてきている。特に介護予防における機能訓練指導を担当することも制度上可能であり、柔道整復師は医療に留まらず、今後はますます介護予防や自立支援にかかわることが大きくなるものと考えられる。要介護者等に対する重度化の防止または改善、非該当者の生活機能の維持や向上を目指すことが求められる。その遂行には柔道整復師が高齢者の心理、加齢に伴う身体機能の変化、フレイルやサルコペニア、高齢者特有の疾病や症状、認知症の理解など高齢者介護に必要な知識を身に付け、新しい知識をベースに本来の柔道整復師の技術を適用することが必要である。
 介護保険制度の見直しが行われ、介護予防事業は介護保険事業から地域支援事業へと位置づけられた。これにより機能訓練は介護保険事業から切り離されるが、それでも地域の虚弱高齢者には必要なサービスである。機能訓練はますます重要なものとなり、介護予防の質と量を支える事業となる。柔道整復師が機能訓練を行う場合には、普段の知識や経験をもとに、適切で丁寧な指導が重要である。その一方で、これらの事業の運営委託は地方自治体、広域連合に任せられるため、より地域の自主性がみられる。本書を利用し、柔道整復師が全国共通の方法で機能訓練を適切に運営することで、地域の信頼を得て、機能訓練事業が拡大されることを期待したい。

2016年2月
遠藤英俊

9784524257591