書籍

SHORT SEMINARS水・電解質と酸塩基平衡改訂第2版

Step by Stepで考える

: 黒川清
ISBN : 978-4-524-22422-7
発行年月 : 2004年9月
判型 : B6
ページ数 : 226

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

とかく「とっつきにくい」「むずかしい」という感じをもたれている水・電解質・酸塩基平衡の領域を、わかりやすく、step by stepで解説した定評ある1冊。今改訂では、第一線の臨床教育者が執筆協力に加わり、より理解が深まるよう実践的な症例を追加し、充実した索引も加えた。臨床志向の実践的テキストとして、教育や研修の場で活用されるものとなっている。

はじめに

SHORT SEMINARS
I. 水・電解質代謝
 1. 水・電解質異常へのアプローチ
 2. ナトリウムの代謝
 3. 水代謝異常
 4. 低ナトリウム血症(1)
 5. 低ナトリウム血症(2)
 6. 高ナトリウム血症
 7. 体液量と輸液
 8. カリウムの調節系
 9. 高カリウム血症
 10. 低カリウム血症
 11. カルシウムの調節系
 12. 低カルシウム血症
 13. 高カルシウム血症
 14. リンの代謝調節系
 15. 低リン血症
 16. 高リン血症
 17. マグネシウムの調節系
 18. 低マグネシウム血症
 19. 高マグネシウム血症

SHORT SEMINARS
II. 酸塩基平衡
 20. H+バランスの生理
 21. 腎によるH+分泌、排泄とその調節
 22. 血液ガスの読み方
 23. 分析のすすめ方:症例1
 24. 分析のすすめ方:症例2
 25. 分析のすすめ方:症例3
 26. 分析のすすめ方:症例4
 27. 代謝性アルカローシス(1)
 28. 代謝性アルカローシス(2)
 29. 分析のすすめ方:症例5
 30. 分析のすすめ方:症例6、7

SHORT SEMINARS
III. 応用問題演習
 31. 脱力感のある26歳の女性
 32. 尿が出なくなった72歳の男性
 33. 長期に食欲が低下してしまった74歳の女性
 34. 意識障害のある糖尿病患者

参考書
索引

初版が出版された1996年からずいぶん時間がたった。このあいだにわたしと仲間たちにも多くのことが起こった。わたしは東海大学医学部長として医学教育や大学病院改革、新しい卒後臨床研修制度等に深くかかわっており、いつもこの本が気になっていたのだが、改訂するには時間がなかった。さらに、思いもかけないことに日本学術会議の副会長、会長に選出され、行政改革の真っ只中のこの組織の運営の重責を担うことになった。国際的にも科学アカデミー機能強化へ向けての動きが大きく、日本の科学者を代表する日本学術会議の責任者としてこのかかわりも大きく、時間がなかった。わたしの発言も多くなり、これらを知ってもらおうとホームページ(www.KiyoshiKurokawa.com)も開設した。ぜひ訪ねてほしい。
 初版から第2版までのあいだに日本の医療を取り巻く社会状況も急速に変化した。20%が65歳以上という高齢社会、医療制度改革は待ったなし、情報時代であることもあって医療事故の有り様も変化した。国民の意識変化も大きい。経済は調子が悪い、国際社会も急変している。といっているうちに国立大学や国立病院の法人化が始まり、あれよあれよという間に日本はすっかり様変りしている。しかし、まだまだ次への出口が見えない。
 しかし、多くの方たち、特に意識の高い学生や研修医たちからこの本は高い評価を受けていることを知らされていた。この分野でのわかりやすい、日常に役に立つ本のないことが気になっていたので、本当にうれしく思っていた。初版にはいくつもの明らかな間違いもあり、何人かの方からの親切な指摘も受けた。今回、ようやく改訂第2版を出版できることになった。単に初版に少し手を入れるだけでなく、何例かの実践的な症例を加えた。いまや臨床教育や臨床研修がますます重要視されるようになり(これは医師として当たり前のことなので、もしそうでなかったとすれば、そこにこそ問題があったということなのだが)、「混ざる他流試合」が進みつつある中で、このような臨床志向でしかも実践的テキストがなかったという認識もあって、この改訂版がいっそう教育や研修の現場で使われることを期待している。
 帰国してから、臨床腎臓学や水電解質調節機能のメカニズムのABCを一緒に共有した人達ともいつも交流している。本書の改訂に際して、彼らの中で腎臓学、水電解質の基礎に基づいた臨床教育で高い評価を受けている優れた「教育者」である深川雅史、宮崎正信、内田俊也の三先生の協力を受けた。心から感謝する。
2004年8月
日本学術会議会長
東海大学教授
東京大学名誉教授
黒川 清
(一部改変)

まるで探偵小説でも読み進んでいるかのように、一行一行が楽しい内容の臨床教則本が誕生した。黒川 清教授による、『水・電解質と酸塩基平衡(改訂第2版)』である。ある事件(病態)が起こると、果たして取り上げるにふさわしい事件かどうか(定義)をまず吟味する。事件の鍵(データ)を分析し、複雑に絡み合った糸(症状や理学所見)を一つ一つ解きほぐし(病態生理学的解釈)、最後に犯人を割り出し(診断)、ついにはその動機(発生機序)まで突き止めて、最後に断(治療)を下す。本書の水・電解質異常へのアプローチは、まさしくベッドサイドにおける探偵シャーロックホームズの手法である。

 臨床医学は種々の病態の謎解きである。同時に、臨床医学の真髄は「症状や身体所見は病態生理学的」に、「病変は病理学的に」解釈する行為の演繹だといわれる。

 腎臓の機能は糸球体濾過と再吸収または分泌に集約され、水、Na、K、Cl、Ca、Mg、P、H+、HCO3−などが、どの機能によって調節されているのかを学ぶところからこの本ははじまる。その調節機能には、これらの各物質の変化に基づくシグナル(浸透圧、体液量:水分圧、物質濃度、その他)が生まれ、センサーによって感知される。そこから腎臓へのメッセージが送られ、尿細管での再吸収、または分泌の増減により尿中の排泄量が決定される仕組みなのである。また、その仕組みに介在する種々のホルモンや作用部位などがきわめて複雑であるが、この著書ではそれらが容易に理解できるように記述されている。

 従来、「水と電解質」は医療者にとって、どこかとっつきにくい、難解な分野のように受け止められてきた。その理由は、記述に欠かせない数字のオンパレードにある。しかし、この本を読んでいると、確かに数字は多いけれども、すべては謎解きに必要な論理にかなった数字であり、医療者がえてしていやがる数式といえば、ときどき、対数計算(log)が顔を覗かせる程度であって、多くは加減乗除にとどまる小学校高学年程度の数式の範疇に収まるものである。しかしその奥は深い。

 本書のもう一つの大きな特徴は、数多いフローチャートやアルゴリズムを駆使した明解な論理と、記憶すべき数値表のまとめである。読み進む中で、各章に織り込まれたこれらの図表が、どれほど読者の理解に役立つことか。補液の内容による体内分布のダイアグラムなどはその好例であり、症例や応用問題を駆使した各章の展開も、理解を深めるのに大いに預かっている。

 臨床は、知識や技能の集積のみでは実地には役に立たない。臨床的センスが重要であると、筆者は考えている。本書にはキラリと光る真珠のようなその臨床のセンスが随所にちりばめられている。たとえば、腎機能が正常な体重 60kg の人に 1lを飲水させた場合の血漿浸透圧や、血中 Na 濃度への影響の計算方法、あるいは水を飲めなくなった患者に 1l の排尿を確保するのに、いくら補液をすればよいかの計算方法、高 Ca 血症の項で例示される「症状のすべてが癌のせいではありません」などは、そのよい例である。また、白血球増多に伴う「偽性高K血症」の証明の仕方や、低 Na 血症における細胞外液量の推定法などは、臨床的で実に巧みである。

 頻度の高い common conditions を常に最優先する縦の配列に配慮し、何が重要であるかがわかりにくい本邦特有の並列の記載を極力、避けている。ベッドサイドを重視してきた臨床家のみがなしうる所作である。

 今日、本邦における初期臨床研修必修化の中で、医育機関の指導医たちが大きな戸惑いの中で立ち往生を余儀なくされている。“What to teach and how ?”を知らない。また、研修医たちも、“What to learn and how ?”を知らない。この著書はその“What and how ?”を、「水と電解質異常」を例に取って step by step に教えてくれる。研修医には“how to learn”を、研修医相手に日夜奮闘している指導医には“what and how to teach”を、懇切丁寧に教えてくれる格好の教則本である。

評者● 宮城征四郎(群星沖縄臨床研修センター長)
臨床雑誌内科95巻4号(2005年4月号)より転載