遺伝医学への招待改訂第7版
| ISBN | : 978-4-524-27155-9 |
|---|---|
| 発行年月 | : 2026年8月 |
| 判型 | : A5判 |
| ページ数 | : 216 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

遺伝医学のコンパクトな入門教科書として多くの学生に広く支持されているテキスト.基礎から臨床まで,医療を志す学生が知っておかなくてはいけない遺伝医学の知識を,わかりやすく,親しみやすい文章で解説.豊富な用語解説,コラムが理解を手助けする.今改訂では情報のアップデートはもちろん,コラムや分かりやすい図をさらに充実させ,より理解しやすい内容とした.
T 遺伝学とは?
A.遺伝医学の小史
B.遺伝医学の特性
C.遺伝医学の役割
D.遺伝性疾患の分類
a.単一遺伝子病(メンデル遺伝病)
b.ミトコンドリア遺伝病
c.多因子疾患
d.染色体異常症
e.ゲノム構造変化による疾患(ゲノムコピー数のバリアントによる疾患)
f.エピジェネティック疾患
E.家系図のとりかた
◦コラム1 メンデルは知っていた?
◦コラム2 ミーシャーの予言?
◦コラム3 ヒトの最初のメンデル形質とその後
◦コラム4 バリアント・変異・mutation・多型の歴史的背景と現在の用語法
◦コラム5 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)
◦コラム6 現代人にも受け継がれるネアンデルタール人やデニソワ人の遺伝子
U 遺伝子とDNA,RNA
A.核酸の構造とDNAの複製
B.ヒトのゲノムの構成
C.遺伝子の構造
D.遺伝子の発現
E.非コードRNA(ノンコーディングRNA)の重要性
F.翻訳間際でのタンパク質の発現調整ゲノム変化と疾患の分子病理
G.翻訳後のタンパク質の機能の調整
H.ゲノム変化と疾患の分子病理
a.疾患原因としてのバリアント─コード領域のバリアント
⑴ ミスセンスバリアント
⑵ ナンセンスバリアント
⑶ フレームシフトバリアント
⑷ コピー数変化
⑸ 遺伝子変換
⑹ 反復配列の反復数変化
b.疾患原因としての異常の機序
⑴ スプライシングの異常
⑵ 調節領域の変化
⑶ 終止コドンの変化
⑷ 反復配列の反復数変化
⑸ オルガネラの形成異常
◦コラム7 多様なRNA の働き
V 遺伝子の担体としての染色体
A.染色体の形態と分類
B.染色体異常と発生機構
a.数的異常
b.構造異常
c.モザイクとキメラ
d.親由来の異常
C.染色体異常症
D.X染色体の不活化
E.染色体異常の発生頻度
a.配偶子中の染色体異常
b.自然流産胎児中の染色体異常
c.周産期死亡児中の染色体異常
d.新生児における染色体異常
F.腫瘍と染色体異常
◦コラム8 細胞の寿命を決めるテロメア
◦コラム9 古くなる卵子
◦コラム10 食べやすいがつくるのが大変な種なしスイカ
◦コラム11 オリンピックにおける選手の性別チェック
W ヒトのメンデル遺伝
A.遺伝形質と遺伝型,接合性
B.常染色体顕性遺伝
a.概念と一般原則
b.常染色体顕性遺伝病発症に影響する因子
⑴ 浸透率と表現度の差異
⑵ 生殖適応度と新生バリアント
⑶ 性腺モザイク
⑷ 遺伝的表現促進
⑸ 表現型の差異
⑹ 共顕性遺伝
⑺ 遺伝的異質性
⑻ 創始者(入植者)効果
C.常染色体潜性遺伝
a.概念と一般原則
b.常染色体潜性遺伝病発症に影響する因子
⑴ 近親婚
⑵ 遺伝的隔離と創始者効果
⑶ 遺伝的複合
⑷ 座位異質性と相補性
⑸ 片親性ダイソミー
D.X連鎖顕性遺伝
a.概念と一般原則
⑴ X連鎖顕性遺伝病の表現型の性差
⑵ 偽常染色体遺伝
E.]連鎖潜性遺伝
a.概念と一般原則
b.X連鎖潜性遺伝病発症に影響する因子─女性発症機序
⑴ 血族婚
⑵ 欠失
⑶ X染色体不活化
F.Y連鎖遺伝
G.遺伝型から表現型へ(遺伝子産物としてのタンパク質と疾患発症の関係)
a.機能喪失型バリアント
b.機能獲得型バリアント
c.正常タンパク質の機能を阻害する顕性阻害効果
d.遺伝子産物の過剰
e.異常タンパク質蓄積による組織・細胞傷害
f.異所性・異時性発現
◦コラム12 用語の問題
◦コラム13 分離比3:1はヒトの遺伝病ではほとんどみられない!
◦コラム14 三毛猫ホームズの真実
X メンデル法則に従わない遺伝
A.ミトコンドリア遺伝病
B.エピジェネティクス関連の疾患
C.多因子遺伝
◦コラム15 共生体としてのミトコンドリア
◦コラム16 刷り込み遺伝子
Y 集団におけるアレル頻度のふるまい
A.アレル頻度
B.遺伝的バリアント
C.ハーディ・ワインベルクの法則
D.バリアントと進化,疾患アレル
E.多型と進化
F.多因子遺伝とバリアント
G.関連解析とバリアント
H.多因子遺伝病や連続形質のポリジェニック・リスク・スコア
Z 遺伝医学におけるライフサイエンスの知識と技術
A.制限酵素と逆転写酵素
B.組換えDNAと遺伝子クローニング
C.ハイブリダイゼーション法
D.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法
E.染色体蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法
F.DNAマイクロアレイ法と比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)法
G.次世代シークエンスとエクソーム解析
H.連鎖と遺伝子地図
I.遺伝学を用いた疾患機序解明
J.遺伝子改変と再生医学
K.ヒトゲノム計画と遺伝医学
L.RNA干渉(RNAi)
M.ゲノム編集
N.細胞1個の遺伝子発現やゲノム自体の構造の解析
O.遺伝子診断法
◦コラム17 冗談に由来する名前
◦コラム18 個人的ゲノム解析
◦コラム19 批判を受けたゲノム編集ベビーの誕生
[ 病気の遺伝学
A.先天性疾患
a.染色体異常,微細染色体異常,ゲノムコピー数バリアントの異常
b.単一遺伝子異常による先天異常
B.多因子疾患
C.がん
a.がん原遺伝子の活性化
b.がん抑制遺伝子の機能喪失
c.発がんのプロセス
d.遺伝性のがん
D.正常バリアント形質
◦コラム20 まれな遺伝性疾患の解析はメジャーな疾患の治療薬開発のヒント
◦コラム21 小太りは危険
◦コラム22 耳あか型が教える日本人の起源
\ ゲノム医療と倫理
A.予防医学
B.ヒトゲノムを対象とした遺伝学的検査
a.医療の範疇の遺伝学的検査
b.医療の範疇外の遺伝学的検査
C.出生前診断法
a.羊水検査
b.絨毛検査
c.母体血による胎児DNA診断
d.着床前診断
D.高精度医療(プレシジョン・メディシン)と薬理遺伝学
E.遺伝カウンセリング
a.カウンセラーの資格と心得
b.相談内容とクライエント
c.遺伝予後(再発率)
F.遺伝子治療
G.遺伝医学と生命倫理
◦コラム23 下戸は遺伝する
遺伝医学は,もはや一部の専門家だけの学問ではありません.いまや,すべての医療者にとって欠かすことのできない基盤の1 つとなっています.先天異常,発達症,希少疾患のみならず,がん,循環器疾患,神経疾患,感染症,さらには薬剤に対する反応の個人差に至るまで,遺伝学の視点なしには十分に理解できない時代になりました.遺伝情報は,病気の原因を探るための重要な手がかりであるだけでなく,診断,予後の見通し,治療法の選択,予防,そしてご家族への支援にまで深くかかわっています.遺伝医学は,現代医療の様々な場面に,静かに,しかし確実に広がってきています.
この十数年における分子遺伝学の進歩は,まことに目覚ましいものがあります.次世代シークエンスの普及によって,単一遺伝子疾患の原因解明は飛躍的に進み,エクソーム解析やゲノム解析は,研究の場にとどまらず,日常診療にも取り入れられるようになってきました.さらに,長鎖リード解析の発展により,これまでとらえにくかった構造異常や反復配列領域,複雑なゲノム再構成も,より精密に理解できるようになっています.加えて,エピゲノム,トランスクリプトーム,単一細胞解析,空間オミクスなどの発展は,遺伝子そのものだけでなく,遺伝子が「いつ,どこで,どのように働くのか」を立体的にとらえる道を開きました.遺伝学は,単に塩基配列を読む学問から,生命現象を総合的に理解する学問へと大きく発展しています.
一方で,遺伝学の進歩は,新たな課題も私たちに投げかけています.得られた情報をどのように解釈し,それを患者さんやご家族にどのように伝え,医療としてどのように生かしていくのかという問題です.バリアントの意義判定,遺伝子と疾患との関連の評価,二次的所見への対応,遺伝カウンセリング,倫理的・社会的配慮など,遺伝医学には常に科学と人へのまなざしの両方が求められます.遺伝医学は,単に知識を増やす学問ではなく,人を理解し,支えるための学問でもあります.
本書は,このような時代の要請をふまえ,遺伝学を初めて学ぶ学生の皆さん,医療系専門職を目指す方々,そして臨床の現場で遺伝医学を必要とする方々に向けて,基礎から臨床までをできる限りわかりやすく,しかも本質を損なうことなく学べるように構成いたしました.遺伝子,染色体,ゲノム,バリアント,遺伝形式といった基本概念から,分子診断,ゲノム医療,遺伝カウンセリング,さらには社会的・倫理的課題に至るまで,現代の遺伝医学を学ぶうえで必要な視点を,一冊の中にまとめています.
遺伝学は,生命の成り立ちを学ぶ学問であると同時に,人の多様性を理解し,病いを抱える方々とそのご家族に寄り添うための学問でもあります.本書が,遺伝学の広がりと奥深さに触れる最初の一歩となり,読者の皆さんそれぞれの学びと実践へとつながっていくことを,心より願っております.
2026 年6 月
太田 亨
吉浦孝一郎
三宅 紀子

