書籍

腎生検プラクティカルガイド

より深い臨床診断へのアプローチ

編集 : 西慎一
ISBN : 978-4-524-26986-0
発行年月 : 2013年3月
判型 : B5
ページ数 : 230

在庫あり

定価7,560円(本体7,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

“臨床医向け”に腎生検から治療方針決定までをまとめた実践的なテキスト。基礎をまとめた総論と病理写真・イラストを掲載した各論、ケーストレーニングの三部構成。各論では、日常よく遭遇する疾患の病理写真と読み取り型のポイントを解説。多数の画像(光顕268、蛍光73、電顕58)を読み取ることで診断・鑑別・重症度判定・治療方針の立て方の実際が身につく。腎臓内科医必読。

序論 腎生検の歴史
T 総論
 1 腎生検の適応と患者への説明
 2 腎生検前に必要な検査と処置─抗血小板薬と抗凝固薬服用者への対応
 3 腎生検の手技と検査後管理─進め方と合併症への対応
 4 優れた腎生検標本とは
U 各論
 1 正常腎組織と加齢変化
 2 腎生検組織の評価法─低倍から高倍への観察手順
 3 糸球体腎炎像を理解するためのイラスト解説
 4 糸球体疾患の組織像
  A.原発性糸球体疾患
   1.微小(糸球体)変化
   2.微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)と巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
   3-1.メサンギウム増殖性腎炎
   3-2.膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
   4.膜性腎症(MN)
   5.管内増殖性糸球体腎炎
   6.管外増殖性糸球体腎炎(半月体形成性糸球体腎炎)
  B.続発性糸球体疾患
   1.糖尿病性腎症
   2.ループス腎炎
   3.血栓性微小血管症(TMA)
   4.パラプロテイン腎症
   5-1.Fabry病
   5-2.Alport症候群
 5 尿細管間質疾患の組織像
  1.尿細管間質の炎症性変化
  2.尿細管間質の変性像
  3.血管系組織の病変
V ケーストレーニング
 1 71歳女性、突然発症した著明な下腿浮腫
 2 25歳女性、初回妊娠時より持続する蛋白尿
 3 25歳男性、下腿を中心とした紫斑と膝関節痛
 4 41歳女性、3年間続く尿蛋白・尿潜血(B型肝炎合併)
 5 58歳男性、下腿浮腫と突然の高血圧
 6 69歳男性、骨折後の持続感染と下腿浮腫(高血圧・糖尿病合併)
 7 58歳男性、喘息発作と全身倦怠感(ステロイド治療中)
 8 66歳男性、下腿浮腫と腎機能障害(糖尿病治療中)
 9 34歳女性、円盤状皮疹と下腿浮腫(SLE治療中)
 10 72歳女性、尿蛋白・全身浮腫で血液透析導入(C型肝炎合併)
索引

本書は、日常診療で腎生検に関わり、でき上がった腎生検標本を自ら顕微鏡で観察し、診断を考えている医師向けに作成した実践的な腎生検学習書であり、病理診断アトラスとは性格が異なる。初学者向けでもあるが、腎生検に興味のある専門医の先生にも楽しんでいただける書籍ではないかと考えている。
 腎生検は、腎疾患の鑑別において極めて重要な診断法である。ただし、単に糸球体腎炎や尿細管間質性腎炎などの腎炎組織型の鑑別診断を行うための手段ではない。加齢、高血圧、肥満、耐糖能異常などにより、腎組織構造は大きな影響を被る。腎生検組織にみられる個々の症例の非腎炎要素の影響も読み取り、腎障害の本質をつかむことが腎生検診断では重要である。
 小生らは、腎生検の本質的な読み方が重要であることを、恩師である荒川正昭先生(新潟大学名誉教授)から教わった。「腎生検標本は、患者さんの顔と同様に、一人として同じ所見を呈していない」。この言葉は、荒川先生が繰り返し我々に伝えられた言葉である。そして、今もこの言葉は腎生検標本を前にすると実感する。腎生検の標本には、患者さんの全身的異常が反映される。その所見にどこまで迫ることができるのか。日々の腎生検標本の観察の中で、我々が読み取る鍛錬をしなければならない点である。
 本書では、腎生検の実践的学習書として、“腎生検の歴史”、“腎生検標本の作製法、染色法”なども必須の学習内容と考え、網羅している。“腎生検の歴史”については、恩師荒川先生に執筆をお願いし、貴重な原稿をいただいた。また腎生検標本を正しく診断するためには、糸球体病変のみでなく、腎間質、腎内血管病変の読み方を系統的に勉強することが必要である。本書においては、腎臓病理をサブスペシャリティーとして活躍されている二人の病理医、岡一雅先生と原重雄先生にこの部分の執筆をお願いした。そして、代表的な各種腎炎に関する実践的な標本の読み方は、神戸大学ならびに新潟大学で、小生とともに腎生検標本と格闘してきた仲間に執筆してもらった。あたかも臨床医がスライドガラスに載った標本を、目の前で観察しているがごとく解説を記載してもらった。それが、本書の一番の特徴である。そして、最後に「ケーストレーニング」として、「総論」および「各論」で学んだ腎生検の読み方、それが身についているかどうか腕試ししていただくための症例を用意した。是非チャレンジしてもらいたい。
 本書は、腎臓病理を専門とする医師が執筆した書籍ではない。おそらく、病理専門の先生方からみると、まだまだ未熟で間違いもあると批判を受ける箇所もあるかと思われる。その点は、今後さらに改善していきたいと思っている。ただし、治療を行う臨床家が、腎生検標本の腎炎要素そして非腎炎要素も読み取り、個々の症例に合った有効な治療を考える一助となれば、という思いで編集・執筆にあたったことをお汲み取りいただければと願う次第である。

2013年1月
西慎一

最近では慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が腎臓内科の疾患単位として大きく注目され、腎疾患をステージの数字と記号で分類する時代になってきた。しかし、2012年のKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)ガイドラインの改訂、日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』においては、CKDの分類法の中で、原因(cause)の評価が重視された。蛋白尿あるいは糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の低下などの何らかの腎障害が3ヵ月以上持続するのは、その原因があってのことであり、もっとも効果的な根治療法を行うには、正確な原因の診断をもとにその原因の治療を行うことである。このような中で、腎疾患の原因検索の基本ともいえる腎生検のガイドが刊行されたことはまさにタイムリーといえる。
 本書の編集者ならびに著書である西慎一先生は新潟大学において、腎生検の組織標本を長年にわたり見つめ、腎病理組織像を念頭に置きながら、あわせて臨床家として、個々の症例の臨床経過、治療経過を実地に体験してこられた。このような経験に裏打ちされているからこそ、本書を完成することができたのであろう。本書は顕微鏡で倍率を変えながら病理組織を見つめ、暗室で蛍光顕微鏡の緑の蛍光の分布を評価し、電子顕微鏡のグリッド上の組織の注目点を見出し、1例1例を積み重ねて得た知見に、その後の数年、数十年の臨床経過を重ね合わせることにより完成した宝物とも思える。時代は変わり、顕微鏡の接眼部はコンピュータディスプレイに変わっても、繊細で緻密な病理標本を評価するという基本は不変である。さらに疾患のデータベース化が進んでも、臨床家が、自身の症例の病理組織像、臨床経過を頭に刻んだうえで、個々の症例の治療経過の経験を蓄積していくことは、医療の基本であることも不変である。
 本書の書名は『腎生検プラクティカルガイド』となっているが、実際には腎臓病専門医ならびに専門医を志す若手医師への素晴らしい教科書でもある。さらに腎臓病を深く知りたい学生、腎病理に興味をもつすべての医療従事者への理想的な入門書でもある。腎臓病の歴史に始まり、腎生検の基本手技についてのマニュアルが腎生検初心者にも十分に理解できるように解説されている。続いて、本書の最大の特徴ともいえる、糸球体腎炎像を理解するためのイラストにより、糸球体病変の基本像を理解し、その典型像を実際の臨床標本で確認できる。原発性および続発性糸球体疾患、尿細管・間質疾患の鮮明な写真の1枚1枚から、眼で疾患の理解を深めることが可能である。さらに本書では、このような光学顕微鏡、蛍光抗体法、電子顕微鏡の組織写真としてのアトラス集に収まらず、病因に迫り、鑑別診断を頭に描くのに最適な、非常に的を射た図表がふんだんに掲載されている。そして臨床にもっとも重要な、重症度の判定から治療法までも、ポイントを絞り込みながら、きわめて実践的に記載された、まさに糸球体・尿細管・間質疾患の診断・治療マニュアルになっている。
 神戸大学に移られた現在も西先生の臨床に当たられる姿勢は容易に想像できる。そのような西先生の薫陶を受ける機会を、本書を通して神戸大学腎臓内科の諸兄だけでなく、本書を手にするすべての腎臓内科学の将来を担う若手医師が受けられることは誠にすばらしいことである。

臨床雑誌内科112巻5号(2013年11月号)より転載
評者●筑波大学医学医療系腎臓内科学教授 山縣邦弘