書籍

日本整形外科学会診療ガイドライン

前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン2012改訂第2版

文献アブストラクトCD-ROM付

監修 : 日本整形外科学会/日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-26981-5
発行年月 : 2012年5月
判型 : B5
ページ数 : 220

在庫あり

定価4,320円(本体4,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

スポーツ膝傷害のなかでも頻度の高い前十字靱帯(ACL)損傷に関して、「疫学」「自然経過・病態・予防」「診断」「治療」について95のクリニカルクエスチョンを設け、最新のエビデンスに基づき推奨gradeを定めた。手術適応や術式・タイミングの判断、後療法、合併損傷への対処まで、ACL損傷診療の指針として、整形外科医・スポーツ外傷に携わる医療職必携の書。付録のCD-ROMには文献アブストラクトを収載。

1 はじめに
2 文献検索および選択の方法
3 クリニカルクエスチョン、エビデンスレベルと推奨Gradeの説明
4 ACL(膝前十字靭帯)損傷の概略
5 使用用語および略語について
第1章 疫学
 CQ1.ACL損傷のリスクファクターにはどのようなものがあるか
 CQ2.ACL損傷の発生率に男女差はあるか
 CQ3.ACL損傷のスポーツでの受傷メカニズムはどのようなものがあるか
第2章 自然経過・病態・予防
 CQ4.ACL損傷の自然経過は
 CQ5.ACL部分損傷は完全損傷より予後がよいか
 CQ6.ACL損傷は膝関節固有感覚に影響を与えるか
 CQ7.疹痛、膝くずれ、不安定感などの症状がある場合とない場合のACL損傷膝では、関節固有感覚に違いがあるか
 CQ8.ACL損傷後、関節固有感覚はリハビリテーションにより回復するか
 CQ9.ACL損傷予防にトレーニングは有効か
第3章 診断
 CQ10.ACL損傷を診断するうえで有効な徒手テストは何か
 CQ11.ACL損傷の診断のためにMRI検査は有用か
 CQ12.ACL損傷に合併した半月板損傷や他の関節内損傷の診断にMRI検査は有用か
 CQ13.成長期から思春期のACLおよび半月板損傷に対するMRIの診断精度は成人に比べてどうか
第4章 治療
4.1 手術適応・保存的治療
 CQ14.成長期から思春期のACL損傷は保存的治療でよいか
 CQ15.中高齢者のACL損傷に対して手術適応はあるか
 CQ16.ACL損傷で完全損傷と不全損傷で保存的治療を受けた場合には予後には差があるか
 CQ17.保存的治療の適応患者には骨形態上に何か特徴があるか
 CQ18.ACL損傷保存的治療の長期的成績は
 CQ19.ACL損傷で保存的治療を受ける場合に、専門の指導者により管理されたリハビリテーションを受けた場合とそうでない場合とでは違いがあるか
 CQ20.ACL不全膝のリハビリテーションにおけるOKC(open kinetic chain)訓練とCKC(closed kinetic chain)訓練の有効性と安全性は
 CQ21.ACL損傷の保存的治療後はどの程度のスポーツ復帰が可能か
4.2 手術時期
 CQ22.待機手術とした(受傷後経過が長い)場合、不利な点が生じうるか
 CQ23.ACL再建術の受傷後早期の施行は、術後最終経過観察時の成績に影響を与えるか
4.3 ACL再建術の評価法
 CQ24.ACL再建術の評価法の特徴・問題点は
 CQ25.ACL術後の日常生活動作、筋力、膝安定性を評価するためにパフォーマンステストを用いることは意味があるか
 CQ26.再建ACLの鏡視所見は成績と関係するか
 CQ27.MRIを用いてACL再建術後の移植腱の状態を評価することは可能か
 CQ28.ACL再建術後どのように移植腱は変化するか
 CQ29.ACL再建術後の患者自己評価とその影響因子は
4.4 ACL再建術の一般成績
 CQ30.ACL再建術の術後成績に影響を与える患者背景因子は何か
 CQ31.関節鏡視下ACL再建術(鏡視下法)と関節切開によるACL再建術(関節切開法)で術後成績に差があるか
 CQ32.一皮切ACL再建術と二皮切ACL再建術で術後成績に差があるか
 CQ33.移植腱の初期張力はACL再建術の術後成績に影響を及ぼすか
 CQ34.ACL再建術後、移植腱はどれくらいの強さまで戻るか
 CQ35.ACL再建後、関節固有感覚は回復するか
 CQ36.ACL再建術後の成績評価には関節固有感覚の改善が影響を及ぼすか
 CQ37.ACL再建術を受けると歩行動態や膝キネマティックは正常に戻るか
 CQ38.ACL再建術は変形性関節症の発症を防ぐことができるか
4.5 BTBを用いたACL再建術
 CQ39.BTBを用いたACL再建術はどのような方法で靭帯を再建するものか
 CQ40.BTBを用いたACL再建術の成績は
 CQ41.BTBを用いたACL再建術の術後成績に経年変化はあるか
 CQ42.BTBを用いたACL再建術で、移植腱採取が術後成績に与える影響は
 CQ43.BTBを用いたACL再建術後の膝の痛みはどのような痛みか
 CQ44.BTBを用いたACL再建術で、移植腱採取部位の経時的変化は
 CQ45.BTBを用いたACL再建術で、移植腱採取に伴う問題の解決法は
 CQ46.BTB採取部の痛みを軽減させる方法は
4.6 STG腱を用いたACL再建術
 CQ47.STG腱を用いてACL再建術を行う場合、健側から採取すると利点はあるか
 CQ48.STG腱を用いたACL再建術で、半腱様筋腱の単独使用と薄筋腱の併用とでは術後成績に差があるのか
 CQ49.STG腱を用いたACL再建術で、骨孔の位置は術後成績に影響を与えるか
 CQ50.STG腱を用いたACL再建術で、望ましい移植腱固定法は
 CQ51.STG腱を用いたACL再建術で、膝の屈曲力は回復するか
 CQ52.ACL再建術で採取されたSTG腱はその後どうなるか
 CQ53.BTB法とSTG法はACL再建術後のoutcomeは違うか
 CQ54.STG腱による一束再建術と二重束再建術でoutcomeは違うか
4.7 BTB、STG腱以外を用いた手術法
 CQ55.大腿四頭筋腱を用いたACL再建術はBTBによるACL再建術と手術後早期の回復に差があるか
 CQ56.大腿四頭筋腱を用いたACL再建術の術後成績は
 CQ57.大腿四頭筋腱を用いたACL再建術で、移植腱固定法は術後成績に影響を与えるか
 CQ58.同種腱によるACL再建術の成績と問題点は
 CQ59.ACL再建において自家腱と同種腱使用例の成績に差はあるか
 CQ60.人工靭帯を用いたACL再建術の中長期成績は
4.8 ACL再建術における新たなる試み
 CQ61.損傷ACLの遺残組織を残すことはACL再建術の成績に影響を与えるか
 CQ62両側同時ACL再建術を行う利点、欠点はあるか
 CQ63.ACL再建術においてコンピュータ支援システム(computer-assisted surgery system)は有用か
 CQ64.ACL再建術後のヒアルロン酸製剤の関節注入の効果は
4.9 骨端線閉鎖前症例に対するACL再建術
 CQ65.成長期(骨端線閉鎖前)におけるACL再建術は、骨成長に影響を与えるか
 CQ66.骨端線閉鎖前の若年者のACL損傷の治療に対してBTB同種移植を用いた再建術の成績は
4.10 後療法
 CQ67.ACL再建術は日帰り手術が可能か
 CQ68.ACL再建術後の疼痛の軽減に対する処置は
 CQ69.ACL再建術後の鎮痛対策は
 CQ70.ACL再建術後にドレナージ(ドレーン留置)は必要か
 CQ71.ACL再建術後の冷却療法の効果は
 CQ72.ACL再建術前のリハビリテーションの有効性は
 CQ73.ACL再建術後の装具装着の必要性は
 CQ74.ACL再建術後の早期可動域・荷重訓練の意義は
 CQ75.STG腱を用いたACL再建術で、加速化リハビリテーションを行った場合に術後成績は低下するか
 CQ76.ACL再建術後の後療法において、下肢の血流を制限した加圧トレーニングは有用か
 CQ77.有効性の認められているACL再建術後のリハビリテーション訓練は
 CQ78.ACL再建術後のスポーツ復帰の時期はいつごろか.また復帰に影響を与える因子は
4.11 合併症
 CQ79.ACL再建術後の感染と治療法は
 CQ80.ACL再建術後の可動域制限の原因は何か
 CQ81.ACL再建術後可動域制限の治療法は
 CQ82.BTBを用いたACL再建術で、移植腱採取に伴う合併症は
 CQ83.STG腱採取に際して神経損傷の合併は
4.12 術後再受傷とその治療
 CQ84.ACL再建術後の再建膝と対側膝のACL損傷の頻度はどのくらいか
 CQ85.ACL再建術後の再損傷例に対して再再建術を行う時期と成績との関係は
 CQ86.自家腱による再建ACLの再損傷例に対する再再建術の成績は初回再建と比べて劣るか
4.13 合併損傷とその治療
 CQ87.ACL再建術時に合併する半月板損傷に対する手術の適応は
 CQ88.ACL再建時に、中心部の血行のない部分の損傷半月板に対して半月板縫合術の適応はあるか
 CQ89.ACL再建術時に合併する損傷半月板を切除すると、術後成績に影響があるか
 CQ90.ACL再建術時の半月板修復術の長期成績はどのようなものか
 CQ91.ACLとMCLの合併損傷膝とACL単独損傷膝に対する靭帯再建術の成績は異なるか
 CQ92.ACLとMCLの合併損傷膝に対するACL再建術に際しMCLを修復する必要があるか
 CQ93.膝関節が脱臼した場合、ACLも損傷されるか
 CQ94.膝関節脱臼に対して、どの治療法を選択すべきか
 CQ95.膝関節脱臼に対する手術法は何を選択すべきか
索引

前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドラインの初版が2006年5月に出版されてから6年の歳月が経過した日本整形外科学会の依頼に基づき、日本膝関節学会により組織されたACL損傷診療ガイドライン策定委員会では、初版発行後に一般者向けのガイドラインの作成に着手するか、本ガイドラインの改訂に着手するかを協議し、近年、ACL損傷に対する診療に関する臨床エビデンスは確実に増加しており、初版のup-to-dateが急務であるとの意見で一致し、本ガイドラインの改訂作業に着手した。その後、日本膝関節学会が日本関節鏡学会とともに日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)に移行したのに伴い、ACL損傷診療ガイドライン策定委員会が主体となり、]OSKASが作成母体となり、ACL損傷診療ガイドライン策定委員会が改訂作業を進め、本改訂版が完成した。
 前述のように、ここ10年間、多くのACL損傷に関する無作為割り付け比較研究やsystematic reviewが報告されている。そこで本ガイドラインの改訂にあたっては、クリニカルクエスチョンに対する推奨gradeはエビデンスレベルとその数に基づき、可能な限り客観的に決定した。そのため、B(中程度の根拠に基づいている)あるいはC(弱い根拠に基づいている)が多くを占め、I(基準を満たすエビデンスがない)も散見される。しかし、これらのエビデンスが十分とはいえないクリニカルクエスチョンに対し、今後、我が国の施設からの多くの報告により、より高いエビデンスの蓄積がなされ、その推奨gradeが改善されることを期待している。
 また、今回の改訂作業における文献検索の対象の言語は英語のみとした。前述のように推奨grade決定にあたっては、エビデンスレベルとその数に基づき、客観的に決定し、有識者からの意見の介入を極力排除している。したがって、本ガイドラインの推奨grade決定には我が国の現況を考慮していないため、evidencepractice gapが小さくなく、本ガイドラインは我が国の医療基準(standard)を示したものではない。したがって、本ガイドラインを我が国の医療基準(standard)として、医療訴訟などの資料に使用することは適切でないと考えられる。しかしながら、ACL損傷に関するこれまでの世界各国の臨床エビデンスを科学的かつ客観的に評価し、標準的診療手段を選択することは限られた経済的・人的資源の中で行われている現在の医療現場では社会的にきわめて大きな意義をもつものと考えられる。したがって、本ガイドラインがスポーツ医学に従事する多くの医療関係者の方々に活用されることを希望する。
 本ガイドラインの改訂にあたっては、ACL損傷診療ガイドライン策定委員会委員の方々には4年にわたって多大なるご尽力を賜った。また、エビデンスの収集にあたり、日本医学図書館協会と日本整形外科学会の間で診療ガイドライン作成支援契約を結び、日本医学図書館協会に文献の一次抽出を依頼した。さらにJOSKAS越智光夫理事長のご配慮により、推奨文および構造化抄録の作成にはJOSKAS理事ならび評議員をはじめ、多くの会員のご協力を頂いた。また、発刊にあたっては日本整形外科学会代議員から貴重なご意見を頂戴した。構造化抄録作成の手配・管理には国際医学情報センター土田暁子氏および渡辺諭史氏に、ご尽力いただいた。
 最後に以上の本ガイドライン改訂にご尽力された皆様に心から深謝を申し上げる。

2012年4月
日本整形外科学会
前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドライン策定委員会
委員長 遠山晴一