書籍

緩和ケア・コンサルテーション

: 小早川晶
ISBN : 978-4-524-26972-3
発行年月 : 2012年5月
判型 : A5
ページ数 : 190

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

緩和ケアに先駆的に取り組んできた著者の経験に基づき、緩和ケアの知識・技術・態度を適切に学べるようまとめた新しいテキスト。緩和ケアの定義から疼痛治療の実際、疼痛以外の症状の緩和、全人的ケアまで緩和ケアのあらゆる事柄を網羅し、ベテランの緩和ケア医からコンサルテーションされているかのように、緩和ケアの実際が理解できる。

緩和ケア序章
1 緩和ケアへのアプローチ
 A 「緩和ケア」の意味
 B ホスピス・緩和ケアの歴史
 C わが国での緩和ケア
2 緩和ケアの定義
 A 緩和ケアとは?
 B 緩和ケアの定義
 C 緩和医療の定義
 D 緩和医療を実践する医師の資質と態度
 E 緩和ケアの基本
3 患者・家族へのアプローチ
 A 緩和ケアを始める時期
 B 医学・医療の進歩と緩和ケアの今日的意義
 C 患者・家族へのBad Newsの伝え方
 D 患者・家族との情報の共有
 E ホスピス・緩和ケアの橋渡し
 F End-of-Lifeにおける患者・家族とのDNARなどについての相談
 G 事前指定書(アドバンス・ディレクティブ)
4 緩和ケアの種類
 A 緩和ケア外来(緩和ケアクリニック)
 B 緩和ケア・コンサルテーションサービス
 C 緩和ケア入院病棟
 D 在宅緩和ケアサービス
 E 遺族に対するサービス
5 緩和ケアの基準
 A 日本ホスピス緩和ケア協会のホスピス緩和ケアの基準
 B 北九州市立医療センターにおける緩和ケアの基準
6 地域との連携
 A 地域の病院、クリニック、訪問看護ステーション、介護支援センターなどの医療・介護施設との連携
 B 地域住民への緩和ケアの普及・啓蒙活動
7 緩和ケアの臨床
 A 症状マネジメントの原則
 B 日常診療の心得
8 がんによる痛みの緩和
 疼痛マネジメント(基本編)
 A がん性疼痛の特徴
 B がん性疼痛の治療
 C WHOの3段階除痛ラダー
 D 痛みのアセスメント
 疼痛治療薬の基礎知識
 A NSAIDs
 B アセトアミノフェン
 C 弱オピオイド
 D 強オピオイド
 E オピオイドの副作用の原因と対策
 F レスキューについて
 G オピオイドローテーションについて
 H 持続皮下注射法について
 I オピオイド使用時の注意点
 疼痛マネジメント(上級編)―オピオイドが効きにくい痛みへの対応
 A 鎮痛補助薬について
 B セデーションについて
9 鎮痛目的以外の薬剤
10 痛み以外の症状の緩和
 A 呼吸困難感
 B 発熱
 C 不安、焦燥
 D 抑うつ
 E 嘔気・嘔吐
 F しゃっくり
 G 倦怠感
 H 食欲不振、体重減少
 I 便秘
 J 下痢
 K せん妄
11 緩和ケア内科医の指示簿
12 緩和ケア緊急症
 A 脊髄圧迫症状
 B 上大静脈症候群
 C 大量出血
13 全人的ケアによるアプローチ
 A 全人的ケアとは
 B 音楽療法
 C アロマセラピー
 D 読書療法
 E その他の文化・芸術療法
14 緩和ケアが介入すべきトピック
 A End-of-Lifeにおける輸液
 B End-of-Lifeにおける薬剤の整理
 C 死前喘鳴
 D ライフレビューの完成
 E 最期の望みの達成
 F 看取りのサポート
15 死が差し迫ったときにみられる症状とその緩和
16 臨終前後の家族へのケア
17 緩和ケアにおける医師教育
18 自分自身をケアすること
あとがき
緩和ケアに用いる主な薬剤一覧
参考図書・資料
索引

最近、医療の現場において「緩和ケア」という言葉に接する機会が増えてきた。また、「緩和ケア病棟」も増加はしているが、一般の医療に占める割合はまだまだ小さい。緩和ケア以外を専門としている科の医師が、緩和ケアに専従している「緩和ケア科の医師」にコンサルテーションしたくても、むずかしいのが現状である。また「がん性疼痛」などの知識を得ようとしても臨床に役立つわかりやすい書籍があまりない。
 そこで、一般の科の医師に「緩和ケア」について知っていただき、同時に緩和ケアを実施する際に参考になる、臨床に直結した書籍を作成することとした。
 私が医学生として医学部に在籍していた1980年代半ばから1990年頃にかけて、「緩和ケア」の講義を受けたことはなかった。医学部を卒業した後、「がんの痛み」をもつ患者を受け持つようになり、その痛みの治療をしていくうちに、やがて「ホスピス」や「緩和ケア」という言葉に出会った。
 「痛み治療」について試行錯誤を繰り返していたが、そのうちイギリスやオーストラリア、アメリカ合衆国での「ホスピス」や「緩和ケア」への取り組みが日本でも紹介されるようになった。やがて、「ホスピス・緩和ケア」
が私の進むべき道となり、爾来「ホスピス・緩和ケア医」を自分の専門職としてきた。
 「緩和ケア」については、最近国をあげて熱心な取り組みがなされている。そのひとつは厚生労働省が主幹となり、日本緩和医療学会が基軸となって「がん診療連携拠点病院」で開催されている「PEACEプロジェクト」である。2日間のスケジュールで、「がん性疼痛」、「コミュニケーション」、「呼吸器症状」、「消化器症状」などについてワークショップ形式で学ぶものである。
 がんを診断し、治療するすべての医師に対して、「緩和ケアの基礎」を習得してもらうためのプログラムがうまく組まれている。ただ、これだけでは臨床にすぐに役立つものではない。また、日本ホスピス緩和ケア協会が2011年に「緩和ケア病棟における医師研修指導指針」を作成した。これもおおまかな指針であって、実際の診療指針ではない。あくまで、学ぶべき項目を示している指針である。
 では、どうすれば「緩和ケア」についての実際の内容が学べるのであろうか。
 「緩和ケア」の知識・技術・態度を学ぶ正統な道は、緩和ケアの現場で、実際に患者・家族の担当医となって、緩和ケアの優れた指導医から手ほどきを受けることである。
 しかし、指導医の数には限りがあるし、近くにそのような優れた指導医がいるとは限らない。
 まずは適切なテキストがあれば、それで自学自習し、機会があればそのような指導医に直接指導を仰ぐことである。私自身そのようにして学習してきた。
 私は折りに触れて、緩和ケアの診療指針を作成してきた。これを私たちの緩和ケアの施設だけではなく、広く一般の科の医師や緩和ケア医を目指して修練している医師に提供したいと思い、この本を作成した。これまでの先人の教えから学んだことを継承し、私の経験や考えもそこに付け加えた。また、私の緩和ケアに関するインターネットのブログをコラムとして所々に配した。
 この本の内容を参考にしていただき、患者・家族への実際の緩和ケアに役立てていただければ、幸いである。
2012年春
小早川晶

「緩和ケア」とか「ホスピスケア」という言葉は日本人一般にとってよくきく言葉となっているが、では「緩和ケア」の「緩和」とは、「ケア」とは、「ホスピス」とは何かを問われた場合、一般の人にすぐ分かるように説明できる医師や看護師や介護施設の関係者は非常に少ないと著者である小早川晶先生は語られる。
 それは小早川先生が、日本で緩和ケア病棟を率先して開いた大阪の淀川キリスト教病院や、九州でいち早く開かれた栄光病院でホスピス部門を担当したことに始まる。また、日本ではいまだに数がきわめて少ない独立型ホスピスで、筆者が理事長をしている(財)ライフ・プランニング・センターの経営する24床の「ピースハウス病院」などで診療に加わった経験もおありだからである。小早川先生は、「緩和ケア」の「緩和」の字の意味は何か、独立した「ホスピス」とはどんな施設かを語れる第一人者であると思う。
 小早川先生は、1967年に英国のロンドン郊外にCicely Saunders女医が設立した世界最初の独立型ホスピスをみずから訪れて、がん末期患者の痛みの鎮痛法を学び、死の近いがん末期患者に、医師や看護師はどう寄り添って死を見送るかの術(すべ)を見学されたのである。
 この著書の題「緩和ケア」(英語ではpalliative care)とは何かを本当に説明できる開業医や病院勤務医は少ないのではないかと思うのだが、実は、Saunders女医とカナダ、モントリオールのロイヤルビクトリア病院の泌尿器科医師であるMount教授とが協力して、1985年に総合病院の一病棟に末期の進行がん患者を入院させ、心身ともに苦しみを軽くさせる病棟をつくり、その病棟名にこの名称を用いたことに始まる。
 小早川先生は「ホスピス」とは、「緩和ケア」とは何かを一般人にも分かりやすく平易な言葉で説明されているので、本書は患者や家族のためばかりでなく、開業医や病院の研修医が患者や家族に説明する際にどのような言葉を使ったらよいかのよい参考書にもなると思う。
 この本は項目別の分かりやすい説明があり、その他随所に青ページのColumn欄があり、普通の教育書には書かれていないような興味深いエピソードが紹介されていて、読者は引き込まれるように読んでいける本である。
 いよいよ患者の死が迫ったときの症状やその緩和法や鎮痛薬のリストもあげられている。
 最後にはこのような施設での働き手が、ストレスでバーンアウトしないような助言も書かれている。
 本書は医師にも看護師にも、またこのような施設に関係するすべての人たちのためのよき緩和ケアの手引きの本であると思い、これを推薦する次第である。

評者■日野原重明
内科111巻2号(2013年2月号)より転載