書籍

オペ室必携心臓血管外科ハンドブック

編著 : 末田泰二郎
ISBN : 978-4-524-26914-3
発行年月 : 2013年6月
判型 : 新書
ページ数 : 190

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士など、心臓血管外科手術に携わるスタッフが共通して知っておくべき知識をコンパクトに解説。代表的な術式や心臓麻酔、体外循環、経食道心エコーなど、手術室で必須の知識をすぐに確認できるポケットマニュアル。姉妹書「新病棟必携心臓血管外科ハンドブック」と二冊合わせて使うことで、術前・術中・術後にわたる知識を網羅している。

Chapter1 心臓麻酔
 A 術前評価
  1 病名、術式
  2 術前検査
  3 内服薬
  4 循環器以外の合併症
  5 身体診察
  6 術前指示
 B 手術中のモニタ
  1 心電図
  2 血圧計
  3 パルスオキシメータ
  4 筋弛緩モニタ
  5 体温
  6 中心静脈圧(CVP)
  7 肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)
  8 脳波モニタ(BIS、エントロピー)
  9 近位赤外線酸素飽和度モニタ(INVOS、NIRO、TOS)
 C 麻酔薬
  1 鎮静薬
  2 鎮痛薬
  3 筋弛緩薬
 D 麻酔導入
  1 モニタ装着
  2 静脈路確保
  3 気管挿管
  4 経食道心エコー挿入
  5 肺動脈カテーテル・中心静脈カテーテル挿入
 E 麻酔維持
  1 体外循環前
  2 体外循環中の管理
 F 集中治療室への移動
  1 モニタの付け替え
  2 集中治療室での管理
 G 合併症への対応
  1 出血
  2 輸血による副作用
  3 心不全
  4 致死的不整脈
 H 主な疾患における麻酔管理上の注意点
  1 大動脈弁狭窄症
  2 大動脈弁逆流症
  3 僧帽弁狭窄症
  4 僧帽弁逆流症
  5 冠動脈疾患
  6 大動脈解離
Chapter2 経食道心エコー
 A 経食道心エコーの挿入(全身麻酔導入後の場合)
 B 経食道心エコーの禁忌と合併症
  1 禁忌
  2 合併症
 C 基本操作
  1 前進、後退
  2 時計回転、反時計回転
  3 前方屈曲、後方屈曲
  4 走査面の回転
  5 左方屈曲、右方屈曲
 D 基本画像
  1 中部食道四腔像(ME four chamber)
  2 経胃基部短軸像(TG basal short axis)
  3 経胃中部短軸像(TG mid short axis)
  4 深部経胃長軸像(deep TG long axis)
  5 中部食道上行大動脈短軸像(ME ascending aorticshort axis)
  6 中部食道僧帽弁交連像(ME mitral commissural)
  7 中部食道二腔像(ME two chamber)
  8 中部食道長軸像(ME long axis)
  9 経胃二腔像(TG two chamber)
  10 経胃長軸像(TG long axis)
  11 中部食道大動脈弁短軸像(ME aortic valve shortaxis)
  12 中部食道右室流入出路像(ME right ventricleinflow-out flow)
  13 中部食道大動脈弁長軸像(ME aortic valve longaxis)
  14 中部食道上行大動脈長軸像(ME ascending aorticlong axis)
  15 中部食道上下大静脈像(ME bicaval)
  16 経胃右室流入路像(TG right ventricle inflow)
  17 下行大動脈短軸像(descending aortic shortaxis)
  18 下行大動脈長軸像(descending aortic longaxis)
  19 上部食道大動脈弓長軸像(UE aortic arch longaxis)
  20 上部食道大動脈弓短軸像(UE aortic arch shortaxis)
 E 基本画像のオリエンテーション
  1 基本系統
  2 大動脈弁系統
  3 僧帽弁系統
  4 (経胃)左心室系統
  5 右室系統
  6 大動脈系統
 F 代表的疾患の画像診断
  1 大動脈弁狭窄症
  2 大動脈弁逆流症
  3 僧帽弁狭窄症
  4 僧帽弁逆流症
  5 大動脈解離
  6 冠動脈疾患
  7 心房中隔欠損症
  8 心室中隔欠損症
 G ピットフォール
  1 アーチファクト
  2 誤診しやすい正常構造物
Chapter3 体外循環
 A 人工心肺装置の構成
  1 人工心肺装置
  2 送血ポンプ
  3 人工肺(膜型)
  4 貯血槽
  5 血液回路
  6 送血ラインフィルタ
  7 ベント・吸引ポンプ
  8 熱交換器
  9 血液濃縮器
  10 各安全監視モニタ
  11 冷温水供給装置
  12 心筋保護装置
  13 自己血回収装置
 B 充填液
  1 充填液の組成
  2 充填液による血液希釈
  3 血液希釈コントロール
 C 心筋保護装置の構成と保護液の組成
  1 心筋保護の目的
  2 心筋保護液の投与方法
  3 心筋保護液の組成
  4 広島大学病院における心筋保護液
 D 人工心肺の灌流量の決め方
  1 適正灌流量
  2 Fick法による灌流量の決定
  3 灌流圧と血管抵抗
  4 灌流量と酸素消費量の関係
  5 組織代謝とモニタリング
  6 推奨流量
 E 特殊な体外循環(脳分離体外循環)
  1 超低体温下循環停止法
  2 逆行性脳灌流法
  3 選択的脳灌流法
 F 体外循環法のリスクマネジメント
  1 空気混入に関する事例(送血回路からの空気送り込み)
  2 回路の抜けや破損に関する事例(人工肺の破損を含む)
  3 ガス交換不良に関する事例(脱血回路の静脈血酸素飽和度が低い)
  4 心筋保護灌流に関する事例(心筋保護液の注入圧異常)
  5 温度の異常に関する事例(冷却復温できない)
  6 停電や装置の停止に関する事例(送血ポンプの故障)
  7 異常な溶血に関する事例
  8 血液の凝固や詰まりに関する事例(人工肺の目詰まりや凝固)
  9 汚染や感染に関する事例(充填液や灌流血液の汚染)
Chapter4 代表的心大血管手術の手順
 A 先天性心疾患
  1 心房中隔欠損症(ASD)
  2 心室中隔欠損症(VSD)
  3 Fallot四徴症
 B 弁膜症
  1 大動脈弁
  2 僧帽弁
  3 三尖弁
  4 心房細動手術
 C 冠動脈疾患
  1 冠動脈バイパス術
  2 左室形成術
  3 僧帽弁手術
  4 心室中隔穿孔手術
 D 大動脈手術
  1 大動脈基部手術
  2 弓部大動脈瘤手術
  3 大動脈解離手術
  4 胸腹部大動脈瘤手術
 E 経カテーテルステントグラフト法
  1 胸部下行大動脈瘤へのステントグラフト
  2 弓部大動脈瘤へのdebranchステントグラフト手術手技
  3 腹部大動脈瘤へのステントグラフト
Chapter5 付録 オペ室使用薬剤
  1 カテコラミン製剤
  2 昇圧薬
  3 血管拡張薬
  4 抗不整脈薬
  5 抗狭心症薬
  6 抗凝固薬
  7 電解質製剤
索引

2012年に出版の運びとなった「新 病棟必携心臓血管外科ハンドブック」は、心臓血管外科を目指す若い外科医や心臓血管外科後期研修医に、心臓血管外科の入院診療における必須の診療技術や知識について、箇条書きにして最低限の知識と技術について確認するためのハンドブックとして評価を受けた。
 一方で、手術室の中で手術の協力者であり当事者でもある麻酔科医、手洗い看護師、人工心肺を運転している臨床工学技士達から、心臓麻酔の方法と使用する薬剤、経食道心エコーの操作法と画像の実際、人工心肺の構成、充填液、運転の実際、さらに各種心臓血管外科手術のルーチンワークや医療材料について、お互い良く理解していないとの御意見を頂いた。私自身も心臓麻酔や経食道心エコーの知識は乏しく、充分には理解していない。そこで、心臓麻酔、経食道心エコー、体外循環、代表的心臓血管外科手術のルーチンワークが一冊で分かるハンドブックを作り、心臓麻酔科医、臨床工学技士、手洗い看護師、心臓外科初期研修医、後期研修医達に役立ててもらおうと考えて本書の出版に到った。
 各分野ともに膨大な知識と経験に裏打ちされた技術であり、そのすべてが一冊のハンドブックに収まるものではないが、それぞれの技術のエキスと実用に役立つ事柄だけを、麻酔科 原木先生、臨床工学技士 高橋さんに書いて頂いた。最小限の記載であり、至らぬ点をご指摘頂ければ本書の改訂に繋がるものと心待ちにしている。心臓手術に携わるすべての皆さんのお役に立てば幸いである。

2013年4月
末田泰二郎

本書は2012年に刊行され好評を博した『新病棟必携心臓血管外科ハンドブック』に続き、手術室での利用を目的として出版された。近年の心臓外科手術手技、体外循環、各種モニタリングの発達はめざましく、この十数年でも新しいものが次々と導入され、より専門化、より細分化されつつある。このように高度に専門化した心臓手術では、心臓外科医のみでなく、麻酔医、看護師、臨床工学技士と、多岐にわたる医療スタッフとの連携が必須である。本書は手術の協力者であり当事者でもある麻酔医、看護師、臨床工学技士、研修医がお互いの仕事内容を理解し、連携の手助けとなることを目的としている。
 Chapter1は心臓麻酔である。各種モニタリングや薬剤について解説している。体外循環という心臓手術特有の状況において、各々の場面で麻酔医が注意する点が手技順に記載されているのは興味深い。また個々の疾患別に麻酔管理上の注意点もあげられており、より実践的である。
 Chapter2は経食道心エコーである。現在の心臓血管手術において、経食道心エコーは病態の把握、心機能の評価、弁形成後の評価など、欠かすことのできないモニターである。具体的な操作方法や基本画像が、わかりやすく図示されており、普段経食道心エコーを見慣れていないコメディカルにも理解しやすい解説となっている。
 Chapter3は体外循環である。「第二の術者」といわれるほど、心臓外科手術において重要な役割を占めており、重大事故にもつながることがあるのが体外循環である。装置の構成に始まり、心筋保護、脳分離体外循環と濃密な内容をわかりやすく簡潔に記載してある。また問題事例のリスクマネジメントとして、具体例、原因、対処法が記載してあり、このような多数の経験に基づくアドバイスは心強い。
 Chapter4では代表的な術式の手順を、図を多用することで初心者にもわかりやすく解説している。典型的な開心術はもちろんのこと、近年症例が増加しているステントグラフト術にも言及している。特に著者らが先達してきた不整脈手術の項目は意義深く必見である。
 ハンドブックであるため、項目を絞って簡潔な説明にとどめてはいるが、ところどころに「ちょっと一言」と脚注が入っており、百戦錬磨のベテラン外科医が耳元でコツを語ってくれているような感じを覚える。
 著者も本書の中で述べているが、技術の改良や技師の教育、安全に関するガイドラインの普及などで安全性は向上してきているが、技術を駆使し対策を講じても、個人が起こす人的ミスは完全にはなくならない。ミスを事前に発見し重大な事故につながらないようにするためには、医療チーム全体で潜在的な問題点を理解し、情報を共有し、各々の技術に互いに注意を払っていくことが大切である。本書は麻酔医、看護師、臨床工学技士、初期研修医、後期研修医を含む心臓手術に携わるすべてのスタッフにとって、心臓外科手術のルーチンワークや仕組みについて互いに理解を深め、よりよい連携をつくるために役立つ1冊になると考える。

胸部外科66巻13号(2013年12月号)より転載
評者●帝京大学心臓血管外科教授 下川智樹