書籍

“どうすればよいか?に答える”せん妄のスタンダードケア Q&A 100

編集 : 酒井郁子/渡邉博幸
ISBN : 978-4-524-26902-0
発行年月 : 2014年3月
判型 : B5
ページ数 : 174

在庫あり

定価2,700円(本体2,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

「せん妄にどう対応すればよいか?」に答える実践書。せん妄ケアに先駆的に取り組んできた執筆陣が、蓄積された臨床知や研究をまとめ、Q&A方式で解説。早期発見、対応、予防など目的・ケア別に章が分かれ、必要な情報を調べやすい構成。具体的な実践例、実践で活用できるコツとともに、一歩進んだアドバンスな内容を「もっとくわしく」で紹介。初心者からエキスパートまで、多様なニーズに応える一冊。

第1章 せん妄って何だろう?
 患者さんからみたせん妄
  Q1 せん妄の体験は当事者からどう語られているのですか?
  Q2 せん妄は患者さんの回復や予後にどのような影響を及ぼすのですか?
 医療者からみたせん妄
  Q3 せん妄ケアはなぜむずかしいのですか?
  Q4 せん妄は看護師にとってどのような影響があるのですか?
  Q5 せん妄は医療チームにとってどのような影響があるのですか?
  Q6 せん妄は医療組織にとってどのような影響があるのですか?
 せん妄とそうでないものを区別する
  Q7 不穏、危険行動,混乱,意識障害,興奮など,せん妄様の状態を表現するいろいろな用語がありますが,どう違いますか?
  Q8 せん妄の具体例にはどのようなものがありますか?
  Q9 せん妄と認知症の違いは何ですか?
  Q10 せん妄と環境への不適応との違いはどう判断すればよいですか?
第2章 せん妄ケアの見取り図
 せん妄ケアの基本的な考え方
  Q11 せん妄ケアの基本は何ですか?
 治療の基本的な考え方と実際
  Q12 せん妄のとらえ方や治療方針は,診療科ごとに異なるのですか?
  Q13 精神科医はせん妄の治療をどう考え,どう行いますか?
  Q14 内科医はせん妄の治療をどう考え,どう行いますか?
  Q15 外科医はせん妄の治療をどう考え,どう行いますか?
  Q16 老年科医はせん妄の治療をどう考え,どう行いますか?
 ガイドラインを現場で活用する
  Q17 ガイドラインって何ですか?具体的にどう役立つのですか?
  Q18 せん妄治療ガイドラインにはどのようなものがありますか?
  Q19 「ガイドラインを現場で活用する」というのは,具体的にどうすることですか?
第3章 せん妄を早くみつけるために
 せん妄のアセスメント・診断
  Q20 そもそも……アセスメントとは?診断とは?評価とは?
  Q21 怪しいなと思ったとき,まず何に注目したらよいですか?
  Q22 ナースコールを何度も押して,つじつまの合わない言葉を繰り返しますが,これはせん妄ですか?
  Q23 せん妄はどのように診断しますか?
  Q24 せん妄の診断・評価が簡便にできる基準やツールはありませんか?
  Q25 せん妄にはいくつかのタイプがあるのですか?
 せん妄の発症を予測する
  Q26 なぜ,せん妄発症を予測する必要があるのですか?
  Q27 せん妄を発症しやすい患者さんはどう見分けますか?
  Q28 せん妄を起こすことは直観的にわかっても,具体的な対応・ケアがうまくできず困っています.どうしたらよいですか?
第4章 せん妄は起きたら,こう対応しよう
 せん妄への対応方法の基本
  Q29 せん妄の重症化を防ぐためにできることは何ですか?
  Q30 せん妄の長期化を防ぐためにできることは何ですか?
  Q31 夜間にせん妄が起こった……どうすればよいですか?
  Q32 1対1の局面で患者さんがせん妄を発症しているところに遭遇したら,どう対応したらよいですか?
  Q33 せん妄を誘発・エスカレートさせるコミュニケーションとはどのようなものですか?
 ICUにおけるせん妄
  Q34 ICUにおいて低活動型せん妄がとくに危険なのはなぜですか?
  Q35 ICUにおいて患者さんがせん妄になると予後がよくないって本当ですか?
  Q36 ICUで患者さんのせん妄のアセスメントに使われるCAM.ICUは,具体的にどう使うのですか?
  Q37 せん妄を鎮めるにはサーカディアンリズムの調整が必要と聞きますが,ICUではどうしても治療が優先されてしまう……どう調整すればよいですか?
  Q38 ICUでは転倒転落事故やカテーテル・チューブ類の計画外抜去を予防するため,身体拘束を積極的に行う方がよいのですか?
 術後せん妄
  Q39 術前からの不安緊張とせん妄に関連はありますか?どのようなケアをすればよいですか?
  Q40 術後の経過とせん妄に関係はありますか?
  Q41 術後疼痛とせん妄に関係はありますか?
  Q42 ドレーンやカテーテルなどのライン類の管理において,どのようなせん妄ケアを行えばよいですか?
 終末期におけるせん妄
  Q43 終末期にはどのようなせん妄ケアを行えばよいですか?
 認知症患者さんのせん妄
  Q44 認知症の患者さんのせん妄ケアでとくに注意することは何ですか?
第5章 家族に何を伝えるか
 家族に何を伝えるか
  Q45 せん妄のハイリスク患者さんの家族に何を伝えればよいですか?
  Q46 術後のせん妄リスクについて,家族または本人に伝えるタイミングはいつがよいですか?
  Q47 せん妄を起こすことを想定していなかった患者さんが発症したとき,家族に何を伝えればよいですか?
第6章 こころがけたい,普段のせん妄予防策
 せん妄予防の効果と評価
  Q48 せん妄予防の効果がわかりにくいです.どのように評価するとよいですか?
 せん妄を誘発しにくい環境をつくる
  Q49 せん妄を誘発しにくい環境づくりとはどのようなものですか?
 生活リズムと生活機能を維持する
  Q50 生活リズムとは何ですか?
  Q51 生活リズムと生活機能を維持・回復することは,せん妄患者さんにとってどのような効果があるのですか?
  Q52 急性期の病棟で生活リズムを整えるコツはありますか?
第7章 身体拘束とせん妄ケア
 身体拘束とせん妄ケア
  Q53 そもそも身体拘束はどんな人に,何の目的で,どのような手順で行われるのですか?
  Q54 厚生労働省の介護保険施設における身体拘束3原則とは何ですか?
  Q55 身体拘束について家族に誰がどう説明したらよいのですか?
  Q56 一般病院での身体拘束には,どのような法律的・倫理的問題があるのですか?
  Q57 せん妄になっている人に身体拘束をすると,どんなことが起こるのですか?
  Q58 どういうときに抑制すべきなのか,解除すべきなのかあいまいです.どうしたらよいですか?
  Q59 急性期病院に入院する高齢者がせん妄を発症した場合に身体拘束は必要ですか?
  Q60 急性期病院で身体拘束を行わないということが可能ですか?
第8章 せん妄ケアで安全を確認するために
 患者安全からみたせん妄ケア
  Q61 患者安全に向けた病院全体の取り組みとせん妄ケアはどうのように関連していますか?
  Q62 せん妄になりかけている人の転倒を予防したい……効果的な方法はありますか?
 鎮静の判断と実際
  Q63 鎮静に関する基本的な考え方がわかりません.医師によっても微妙に違います.原則は何ですか?
 暴力から身を守る
  Q64 患者さんが暴れ自分の身の危険を感じたとき,どうすればよいですか?
第9章 チームとしてせん妄ケアに取り組もう
 せん妄に強い組織をつくる
  Q65 多職種チームにおけるせん妄ケアにはどんな効果がありますか?
  Q66 せん妄ケアを提供するためのチームにはどのようなものがありますか?また,どのようにつくったらよいですか?
  Q67 せん妄ケアでは医師の治療方針と看護方針の調整がむずかしいことが多いのですが,
 それはなぜですか?またどうしたらよいですか?
  Q68 慣習的な治療や処方が病棟からなくなりません……どうすればよいですか?
  Q69 せん妄の患者さんへの治療とケアの統一がむずかしい……どうすればよいですか?
 せん妄ケアの記録方法
  Q70 継続的にせん妄ケアに関する記録を行うためにはどうしたらよいですか?
  Q71 せん妄ケアにおいて,最低限記録しなければならない事柄は何ですか?
 せん妄ケアにおけるストレスマネジメント
  Q72 せん妄ケアの際の看護師のストレスマネジメントについて,効果的な方法はありますか?
  Q73 自分の置かれた状況を突き放してみられるユーモアの大切さってどういうことですか?
  Q74 せん妄ケアに困難感が強い……どうしたらよいですか?
  Q75 自分にはできない,手に余ると思ったらフロントラインに行かない,ということが許されますか?
 せん妄ケアチームの構築と運営
  Q76 リエゾンチームはどのように構築すればよいですか?
  Q77 リエゾンチームの運営で大切なことは何ですか?
  Q78 病院全体のせん妄ケアを改善するために,責任者としてどのように取り組んだらよいですか?
  Q79 せん妄ケア実践のためのコミュニティについて教えてください.
第10章 あらためて,せん妄とは何か
 せん妄とは何か
  Q80 そもそもせん妄の定義は何ですか?
  Q81 療養の場の違いでせん妄の頻度に違いはありますか?
  Q82 せん妄の原因によって症状・経過が異なることがありますか?
 せん妄はなぜ,どのように生じるのか
  Q83 せん妄の原因となる準備因子,誘発因子,直接因子とは何ですか?
  Q84 せん妄はどのようなメカニズムで発症するのですか?
  Q85 せん妄が発症するとき,身体に何が起こっているのですか?
  Q86 せん妄が発症するとき,脳で何が起こっているのですか?
  Q87 せん妄が発症するとき,細胞レベルで何が起こっているのですか?
  Q88 せん妄を起こす直接の原因にはどのような疾患がありますか?
  Q89 せん妄を誘発してしまうのはどのような要因ですか?
  Q90 せん妄が発症しやすい人はどのような人ですか?
第11章 せん妄を起こすくすり,鎮めるくすり
 せん妄を起こしやすいくすり
  Q91 せん妄を起こしやすいくすりには何がありますか?
  Q92 薬剤性せん妄を起こしやすいのはどんな患者さんですか?
  Q93 ベンゾジアゼピン系薬剤はせん妄を起こすことがあるため使わない方がよいですか?
 せん妄を鎮めるくすり
  Q94 せん妄を鎮めるくすりには何がありますか?
  Q95 メジャートランキライザーって何ですか?
  Q96 抗精神病薬で定型・非定型とは何ですか?
  Q97 鎮静薬を使うタイミング,解除のタイミングはどう考えればよいですか?
  Q98 せん妄状態が落ち着いている日は,くすりを使わなくてもよいですか?
 薬剤の副作用をみる
  Q99 せん妄の症状が薬剤による副作用なのかを見極めたいときはどうすればよいですか?
  Q100 せん妄を起こすので本当はこのくすりは使いたくないと思っても,医師から投薬指示が出てしまって困っています.そのような場合,どうしたらよいですか?
索引

せん妄は、患者さん・ご家族にも医療者側にとっても大きな混乱・困惑・危険を招く、頻度の高い合併症です。にもかかわらず、その対策への集学的な取り組みは未だ十分とは言えません。ことに、激しい精神運動興奮の状態では、安全の確保や医療処置の継続のために、鎮静や薬剤選択に関心が傾きがちです。鎮静薬の一時的使用は、やむを得ない処置のこともありますが、それは、せん妄の根本的な治療ではありません。「治療を安全確実に継続する」ための、医療者側の都合のこともあるのです。また、せん妄は人手の手薄な夜間に顕在化するという特性もあって、事前の準備や事後の頻繁な観察が不十分になった結果、思わぬ医療事故を招き、患者家族側、医療者側双方に本来避けられるはずの苦悩を与えることも少なくありません。
 せん妄ケアには、エビデンスに基づいた標準化された治療ケアの提供システムと、その場その時に臨機応変に患者志向で対応する援助スキルと、医療者の人格的強さが求められます。そして専門職連携実践能力が重要です。
 本書は、そのようなせん妄ケアに関する100個の質問と答えから成り立っています。執筆の方々は、千葉大学医学部附属病院をはじめとする急性期医療の場でせん妄の治療・ケアにあたっている医師、薬剤師、看護師と、せん妄ケアに関する研究者です。また本書の編集を担当した酒井と渡邉は、所属する組織においてせん妄ケア研究会、専門職連携教育、チームマネジメントに関してのプロジェクトを運営した経験から本書に深く携わることになりました。
 私たちは、千葉大学でせん妄ケア研究会を長く開催してきました。そのきっかけは、看護師たちの、「患者さんもご家族も、スタッフもつらい思いをする、せん妄症状への対応をなんとかしたい!」という強い思いでした。一ヵ月に一度、カンファレンスルームで非公式に開催されていた研究会はいつしか、大きくなり、協力者も増えました。そして千葉大学では、専門職連携教育(亥鼻IPE)が開始され、大学病院では多職種チームが当たり前のことになりました。せん妄ケア研究会は、大学病院の公的な委員会に位置付けられる「多職種せん妄ケアマネジメントチーム」へと成長しました。このような経過の中で、ベッドサイドで、患者さんとご家族、そして医療者がせん妄ケアの困難に直面し、解決しようとしてきた事柄がたくさんありました。この本には、私たちがであった、せん妄ケアに関する困難を解決する糸口となるヒントが詰まっています。
 本書は、「せん妄が起きたときにどうするか?」という問いだけでなく、「せん妄を防ぐにはどうするか?」「いかに、初期段階で患者さんの変化をキャッチし、早期ケアするか?」にも主眼が置かれています。そして、そのような早期発見と早期ケアを実行するための多職種チームづくりについてもページを割いています。
 せん妄を「薬剤鎮静任せ」にするのではなく、発症自体を減らしていく試みは、医療判断・技術の共有化、患者本位の医療の推進にもつながる今日的テーマです。そして、「良い医療の担い手になる」という志をもって入職したのに、いつの間にか、ルーチン業務の忙しさに追われ、仕事に疲弊してしまう私たちの現実を見直し、転換するきっかけにもつながるものです。
 もちろん、この本を編んだ第一の目的は、日々現場で悩みながら実践している読者の皆さんに、「すぐに役立つ」ものを作りたいということでした。ベッドサイドで、勤務室で、ぱっと読めて、具体的な示唆があること、根拠に裏付けられていること、知りたい答えがそこにあること、多職種で共有すべき基本的で確かな知識がわかりやすく示されていること。これまでチームで活動してきた人たちおよび全国の研究者、実践者と、そのような本を目指しました。それぞれの分担執筆者の文章の行間に垣間見る、「多職種協働を軸とした医療実践モデルとしてせん妄ケアを実現したい」という思いを感じていただけたら、編集者として何よりの喜びです。

2014年3月
酒井郁子
渡邉博幸