書籍

甲状腺・副甲状腺診療ゴールデンハンドブック

監修 : 宮内昭
編集 : 網野信行
ISBN : 978-4-524-26899-3
発行年月 : 2012年11月
判型 : 新書
ページ数 : 234

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

甲状腺、副甲状腺疾患の診療エッセンスをポケットサイズにまとめた。診療の進め方から各疾患の病因や症状、検査、鑑別診断、治療や予後までを網羅し、多忙な臨床現場で、知りたいことがその場ですぐ確認できる。疾患別項目だけでなく救急対応が必要な病態や検査、病態生理もわかり、巻末には「患者からよくある質問Q&A」、「治療薬一覧」まで掲載。研修医や一般内科医にもおすすめの一冊。

T章 緊急対応が必要な甲状腺・副甲状腺病態
 1.甲状腺クリーゼ
 2.抗甲状腺薬による無顆粒球症
 3.バセドウ病周期性四肢麻痺
 4.粘液水腫性昏睡
 5.甲状腺術後テタニー
 6.気道閉塞
 7.術後出血
 8.高度の高カルシウム血症
U章 甲状腺疾患
 1.甲状腺疾患の問診・触診と診断の進め方
 2.甲状腺中毒症を示す疾患
 3.バセドウ病
 4.無痛性甲状腺炎
 5.亜急性甲状腺炎
 6.急性化膿性甲状腺炎
 7.医原性甲状腺中毒症
 8.橋本病(慢性甲状腺炎)
 9.甲状腺機能低下症
 10.単純性びまん性甲状腺腫
 11.妊娠と甲状腺疾患
 12.低T3症候群
 13.遺伝子異常に起因する甲状腺疾患
  A.甲状腺ホルモン不応症
  B.甲状腺ホルモン合成障害
  C.TSH受容体異常症
 14.TSH産生下垂体腫瘍
 15.hCG産生腫瘍と甲状腺中毒症
 16.甲状腺腫瘍 (1)良性腫瘍
  A.甲状腺嚢胞
  B.甲状腺腺腫
  C.プランマー病
  D.腺腫様結節
  E.腺腫様甲状腺腫
 17.甲状腺腫瘍 (2)悪性腫瘍
  A.乳頭癌
  B.微小癌
  C.濾胞癌
  D.髄様癌
  E.悪性リンパ腫
  F.低分化癌
  G.未分化癌
 18.甲状腺腫瘍 (3)多発性内分泌腫瘍
V章 副甲状腺疾患
 1.原発性副甲状腺機能亢進症
 2.二次性副甲状腺機能亢進症
 3.副甲状腺機能低下症
 4.家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症
W章 臨床検査
 1.TSH、FT4、FT3
 2.TSH受容体抗体(TRAb)
 3.抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)
 4.サイログロブリン(Tg)
 5.尿中ヨウ素
 6.PTH、カルシウム(Ca)、リン(P)、FECa
 7.カルシトニン、CEA(癌胎児性抗原)
 8.甲状腺血流定量測定
 9.TRH負荷試験
 10.パークロレイト(過塩素酸カリ)放出試験
 11.甲状腺代謝指標の関連検査
 12.核医学検査
 13.画像検査
 14.穿刺吸引細胞診、病理組織検査
 15.発声機能検査
 16.遺伝子検査
X章 甲状腺・副甲状腺の病態生理
 1.甲状腺の生理作用と調節
 2.副甲状腺の生理作用と調節
Y章 患者からよくある質問Q&A
付録
 1.甲状腺・副甲状腺疾患治療薬一覧
 2.略号一覧
索引

隈病院は昭和7年(1932年)に初代院長隈鎮雄によって一般外科病院として創立された。当時より多くの甲状腺疾患患者を治療していたが、1967年に第二代院長隈寛二によって甲状腺専門病院となり、2001年より宮内が第三代院長を務めている。世界水準の高レベルの診療をすべての患者に提供することを目標としてきた。その結果、お陰様で病院は順調に発展し、常勤医師数は27名、昨年の外来患者数は16万人、新患数は1万5千人、手術件数は2千例をいずれも超えた。今年は、創立80周年を迎えた。これを契機として、隈病院の総力を挙げて、診療に役立つハンドブックを作成することとなった。
 本書は、甲状腺・副甲状腺疾患の診療にあたる研修医、専修医、実地医家およびコメディカルを対象として、日常診療にすぐに役立つものとして企画した。第T章では緊急対応が必要な甲状腺・副甲状腺病態を取り上げ、第U章では頻度と臨床的重要性の高い甲状腺疾患について簡潔に解説し、頻度は低くても間違ってはいけない疾患、臨床的に注目すべき疾患も取り上げた。第V章では副甲状腺疾患について同様の観点から解説した。理解を深めるため診療に必要な血液検査や画像診断については第W章に、甲状腺・副甲状腺の病態生理は第X章にて解説した。第Y章では患者からよく聞かれる質問と説明について、長年の経験から看護本部長が解説した。
 本書の企画・編集は当院学術顧問網野信行博士が担当したことを記し、その努力に深謝する。このハンドブックが甲状腺・副甲状腺の診療に携わる多くの人々に有効に利用されることを願っている。

2012年11月吉日
医療法人神甲会隈病院院長
宮内昭

東京電力福島第一原子力発電所事故以来、「放射線と甲状腺」の関係に注目が集まると同時に、甲状腺疾患そのものに対する知識と理解が深まったように思える。そのような中で日常診療における甲状腺のイロハを、創立80周年を迎えた神戸の隈病院の経験豊かなスタッフが中心となり、簡易ポケット版として発刊された。意外と見逃している甲状腺疾患として、潜在性の甲状腺機能異常症には総合的なアプローチが必要である。たとえば、高齢者の心房細動や心身症、女性では不妊や更年期障害等の女性特有の症状に隠れた甲状腺疾患の存在である。また、頻度が高い甲状腺がんも超音波画像診断により早期に発見されることが多くなりつつある。チェルノブイリの原子力発電所事故後に小児甲状腺がんが激増したことはよく知られているが、その原因として単なる検診効果ではなく、事故直後に放射性ヨウ素に汚染されたミルクを常飲した乳幼児〜小児において過剰な甲状腺内部被曝が大きな影響を与えたとされている。福島原子力発電所事故後にいち早くとられた食の安全管理からは、チェルノブイリと福島では健康影響に大きな違いがあるが、福島県では事故当時18歳以下の全県民約36万人に対する甲状腺超音波検査が長きにわたり健康見守り事業として展開されている。これにより多くの甲状腺異常が発見されることは容易に想像される。たとえば微小がんの取り扱いや潜在性の甲状腺異常症等への治療方針の決定については慎重な対応が必要となる。また、遺伝子異常に基づく甲状腺疾患の臨床所見も多彩であるため、甲状腺腫についての鑑別診断にも熟知する必要がある。
 本邦における甲状腺疾患への関心の高さから、ベッドサイドでの確認のためには正確な情報とコンセンサスが得られ臨床知見に基づく診療が不可欠である。迅速な対応と同時に、知識の整理のために編集された本ハンドブックは、緊急性の高い甲状腺と副甲状腺疾患の病態理解と対処方法から順次要約されている。さらに基本的な甲状腺と副甲状腺疾患の知識と臨床検査をもとに、診療現場における適切な治療の選択、それに長期にわたるフォローアップの必要性が簡潔明瞭に説明されている。巻末のQ&Aや治療薬一覧も大変参考になる。
 日常臨床の現場にあり、科学的エビデンスを重ねることでより優れた臨床技量を身に付けると同時に、論理的思考を深めることに大いに役立つ本書は、研修医のみならず、内科、外科等の専門性を問わず有用な手引書であるといえよう。甲状腺疾患のベッドサイドでの確認や整理に幅広く活用されることを期待したい。

評者■山下俊一
内科111巻4号(2013年4月号)より転載