書籍

JOABPEQ,JOACMEQマニュアル

編集 : 日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会診断評価等基準委員会
ISBN : 978-4-524-26887-0
発行年月 : 2012年4月
判型 : B5
ページ数 : 94

在庫あり

定価1,944円(本体1,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

患者立脚型で多面的評価に耐える評価法を目指して学会主導で作成された、日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)、日本整形外科学会頚部脊髄症評価質問票(JOACMEQ)の使用マニュアル。入手法や臨床への適用例などの実際面から、統計学的処理や開発の経緯などの本評価法の根拠はもちろん、英文誌に投稿する際の注意まで、すべてを網羅して解説している。

1 なぜJOABPEQ、JOACMEQが必要なのか
2 JOABPEQ開発の経緯
3 JOACMEQ開発の経緯
4 JOABPEQ、JOACMEQの信頼性・妥当性
5 JOABPEQ、JOACMEQのダウンロードの仕方
6 JOABPEQ使用のための留意点
7 JOACMEQ使用のための留意点
8 解析の方法・注意点
9 JOABPEQの使用例
 a.腰椎椎間板ヘルニア症例
 b.JOABPEQの2群間の比較例
 c.JOABPEQの3群間の比較例
10 JOACMEQの使用例
 a.頚髄症例
 b.JOACMEQの2群間の比較例
 c.JOACMEQの3群間の比較例
11 欧米における脊椎疾患の治療成績評価法
12 JOABPEQ、JOACMEQを英文誌に載せる際
(含:JOABPEQ、JOACMEQを翻訳する場合)の注意点
13 巻末付録(JOABPEQ、JOACMEQ和欧バージョン)

参考文献
索引

日本整形外科学会が作成した脊椎疾患に対する治療成績評価法(JOAスコア)は、長い間、広く用いられてきた。頚椎に関しては、海外でも引用されている。一方、近年のEBM(evidence-based medicine)の発達によって、評価法に近代科学の柱となっている「普遍性」、「論理性」、そして「客観性」を求められるようになってきた。と同時に、Hippocrates、Osler、Macnabらが提唱しているように、その評価には医療提供側のみの視点ではなく、患者側の視点の導入も必要である。
 世界がグローバル化していく中、医療も例外ではない。評価というのは物差しであり、この物差しが世界中でバラバラでは比較検討が不可能である。近代科学の柱を構成している要素を含んだ物差しの必要性がここにある。このような時代背景のもとに、日本整形外科学会は「骨と関節の10年」のプロジェクト事業として、新しい治療成績評価法の作成を決定し、その仕事が本学会に任された。
 この新たな物差し(JOABPEQ、JOACMEQ)は、患者立脚型、そして多面的評価をその構成の重要な柱にしている。これにより、現代の科学が求めている条件は満たされている。さらに、この評価の信頼性、再現性、そして妥当性の検討もすでに終わり、立証ずみである。
 わが国でこの分野に携わる人は、この新たな物差しで、世界に各自の主張を発信してほしい。そのことが、わが国の脊椎領域の科学としての高さと信頼性を示すことになる。
2012年4月
日本脊椎脊髄病学会理事長
菊地臣ー

今から37年前、1975年12月号『臨床整形外科』(10巻12号)の1144〜1148ページに「Cervical myelopathyの保存療法」(関寛之、黒川秀、津山直一、田淵健一)と題する東京大学整形外科からの論文が掲載されており、頚部脊髄症に対する治療効果を判定するために評価基準を設けた、との記載がある。上肢機能(ボタン・書字)、下肢機能(歩行)、異常知覚(痛み、しびれ、灼熱感など)、膀胱機能(排尿状態)の4領域を無症状0点、最重症4点とし、最重症の合計を16点とした評価法である。この評価法が元となり、修正を経て1976年に日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準(日整会スコア)が創設された。この統一基準の策定により治療成績の施設間比較が可能となり、わが国における脊椎脊髄外科の飛躍的な発展の基盤となった。さらには、1981年に慶應義塾大学の平林冽先生がこの日整会スコアを用いて頚椎後縦靱帯骨化症における脊柱管拡大術の成績を英文で発表して以降、海外でもJOA scoreとして用いられる世界に誇る日本発の評価法となっている。
 この日整会スコアは、合計17点法として現在にいたるまで長らく用いられてきている。しかし、運動機能と感覚や膀胱機能を重み付けなしに合計するのは統計学的には乱暴きわまりないことであり、開発者の1人である黒川秀先生もその立場をとり、足し算してはいけない旨を明言していた。その後、この17点法のもつ統計学的な欠陥を解決すべく、重みを付けた100点法が日整会から提案されたが、煩雑であったためか普及しなかった。
 21世紀を迎えるころになり、臨床成績の判定には患者側からの評価も加味した患者立脚型の評価尺度が必須であるという考え方が世界標準となり、日整会は診断評価等基準委員会を設置し、従来の各疾患評価尺度の見直しに着手した。腰痛に関しては日整会、日本腰痛学会および日本脊椎脊髄病学会との、頚髄症に関しては日整会と日本脊椎脊髄病学会との、それぞれ共同作業により評価尺度が2007年に策定され、英文では2009年に『Journal of Orthopaedic Science』誌上で発表された。
 日整会腰痛評価質問票(Japanese Orthopaedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire:JOABPEQ)、日整会頚部脊髄症評価質問票(Japanese Orthopaedic Association Cervical Myelopathy Evaluation Questionnaire:JOACMEQ)は、いずれもわが国の脊椎脊髄病および統計学の専門家たちの英知を結集した成果であり、痛みなどの症状はもちろん、日常生活の不自由さから患者の幸福感までもカバーする優れた評価尺度である。ただし、日整会や日本脊椎脊髄病学会のホームページから入手できる使用手引きではわかりにくい部分があり、具体例をあげてこの点を補完説明することが本書発刊の目的の一つである。また、本書にはダウンロードの方法、解析の注意点、英文誌投稿時の注意まで掲載されており、かゆいところに手が届くようなきめの細かさである。欧米でよく用いられている脊椎関係の評価尺度についても的確に解説されており、論文を読むときの助けとなるのみでなく、臨床研究を立案する際にも役立つと思われる。さらに本書では、患者立脚型評価尺度開発の必要性、意義、経緯などにもページが割かれ、臨床研究の適切なあり方にも通じるわかりやすい上質な記載となっている。特に臨床研究をこれから始めようとする若手整形外科医には、評価尺度の備えるべき性能、疾患特異性、統計解析上の注意などの知識を入手する契機となるので、ぜひ本書を一読することをおすすめする。
 今後5年間あるいは10年間における使用頻度により、この優れた二つの評価法が国際的に認められるか否かが決すると思われ、そのためには本書の後押しなどにより、多くの読者諸氏が日常的にJOABPEQ、JOACMEQを使用し、さらにはその結果を国際的に発信して頂きたいと思う。
評者● 星野雄一
整形外科63巻11号(2012年10月号)より転載