書籍

ウォーキング指導者必携Medical Walking

監修 : 宮下充正
編集 : 矢野英雄/渡會公治/川内基裕
ISBN : 978-4-524-26883-2
発行年月 : 2013年10月
判型 : B5
ページ数 : 260

在庫あり

定価2,160円(本体2,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

さまざまな疾患・障害、対象者に対する適切なウォーキングスピード・距離・フォームなどの指導の要点、リスク管理、実際の効果を、豊富な具体例に基づいて示したメディカルウォーキング実践書。病棟・外来でのウォーキング指導のみならず、ウォーキングクラブでの活動やノルディック・ウォークの実際まで紹介。運動指導・リハビリテーションに関わる医療者はもちろん、健康運動指導士、ウォーキング指導員など、ウォーキング指導にあたるすべてのスタッフに最適の一冊

I 人はどんな歩き方をしているのだろうか
 A 足跡からみた歩き方
 B 歩くときのエネルギー消費
 C 子どものウォーキング
 D 歩行のニューロバイオメカニクス
 D-1 歩行の解析
  1 起立二足歩行の背景
  2 歩行運動の姿
  3 下肢の交替動作と体重の左右移動−体幹回旋運動からみた歩行
 D-2 歩行のバイオメカニクス
  1 歩行中の重心の動き
  2 歩行中の筋活動
  3 関節にかかる力
 D-3 運動の神経システム
  1 関節運動の制御システム
  2 姿勢の制御システム
  3 脳幹システムと脊髄神経システム
  4 大脳と小脳の運動制御
 D-4 股関節
  1 股関節の形態
  2 股関節症と歩行
 D-5 歩行運動中の筋活動の姿−筋活動電位からの考察
II よく歩く人は長命である
  1 「養生訓」と世界の長寿国
  2 職種の違いによる死亡率
  3 高齢になって歩けるスピードが遅いと寿命が短い
  4 スポーツ選手だった人は長命か?
III 成人にみられるウォーキングによる健康の改善
 A 体力の回復
  1 歩くスピードの回復
  2 “ねばり強さ”の回復
  3 “力強さ”の回復
 B 成人にみられる心の健康と認知症
 B-1 ウォーキングと心の健康、認知症
  1 ウォーキングと心の健康
  2 ウォーキングと認知能力の保持
  3 “歩く”は認知症を予防する可能性が高い
  4 “うつ症状”になる確率は、1週間の運動量と相関がある
 B-2 認知症と診断された人に対するウォーキング指導の臨床例
  1 認知症とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 B-3 うつ病:ウォーキングは気持ちを軽くさせる
  1 うつ病とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 C 成人にみられる代謝系の健康
 C-1 肥満
  1 “歩く”で、メタボを退治する
  2 ウォーキング習慣と肥満
  3 ウォーキングにより食欲が亢進し、食べ過ぎないか?
 C-2 糖尿病:ウォーキングはインスリン感受性を改善させる
  1 糖尿病とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 D 心血管系の疾患
 D-1 血圧
  1 血中脂質濃度の改善
  2 ウォーキングは高血圧症を改善させる
  3 心臓がやや悪くなっても、脚力は回復し歩く能力はよくなる
 D-2 閉塞性動脈硬化症:ウォーキングは下肢の血流障害を改善させる
  1 疾患・障害とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 D-3 大動脈解離
  1 大動脈解離のある人のウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 D-4 狭心症
  1 狭心症のある人のウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 E 成人にみられるそのほかのからだの健康
 E-1 ウォーキング実践と免疫能力
 E-2 ウォーキングによる免疫能力の改善
  1 免疫能力とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
IV 高齢者のウォーキング
 A 75歳以上の高齢者にもウォーキングはよい運動である
  1 高齢者とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例(1)
  3 ウォーキング指導の臨床例(2)
 B 転倒予防としてのウォーキング
  1 転倒の実態と転倒予防として目指すもの
  2 転倒はウォーキングだけでは防げない
  3 転倒リスクとその対応
  4 転倒予防のための具体的な運動
 V 女性とウォーキング
 A マタニティウォーキング:妊婦にウォーキングはよい運動である
  1 妊娠中の運動とウォーキング
  2 ウォーキング指導の臨床例
 B ウォーキングと骨密度
  1 骨密度の保持に役立つウォーキング
  2 骨密度低下とウォーキング
  3 ウォーキング指導の臨床例
VI リハビリテーションとしてのウォーキング
 A 神経障害患者のウォーキング
 B 片麻痺患者のウォーキング
 C パーキンソン症候群患者のウォーキング
 D 心臓病患者のウォーキング
VII ウォーキングの医学的問題
 A 心臓のトラブルとウォーキング
 B 脱水、熱中症とウォーキング
 C アレルギーとウォーキング
 D 呼吸器疾患とウォーキング
 E 消化器疾患・そのほかの疾患とウォーキング
 F 薬物治療とウォーキング
 G 足腰のトラブルとウォーキング
 H 軍隊の行進、ウォーキングに関連した競技(競歩、ノルディック・ウォーク、クロスカントリースキーなど)のスポーツ障害
VIII いろいろなウォーキングの楽しみ方
 A 水中ウォーキング
 B ノルディック・ウォーク
 B-1 ノルディック・ウォークの普及
 B-2 高齢者に多い歩行困難な人へのノルディック・ウォーク
 B-3 股関節ほか関節症に対するノルディック・ウォークと彎曲ポールの有用性
 B-4 彎曲ポールのノルディック・ウォーキング効果
 C やってみよう雪上ウォーキング
 D むすび:とにかく歩こう!
IX ウォーキング継続と実践に向けて
 A 地域密着型ウォーキング習慣の育成事例1−「江東区健康センター主催健康ウォーキング12週間」から生れた事例
 B 地域密着型ウォーキング習慣の育成事例2−「健寿の駅」多摩の取り組み
 C 老人クラブを基盤とした地域密着型ウォーキング習慣の育成
 D 中年・高齢者における日常的ウォーキング習慣の育成に向かって−ウォーキングの享受能力を高める支援方法
付録 電気角度計を用いた歩行中の下肢関節の屈伸運動の解析
索引

物質に重さ(質量)を与える素粒子“ヒッグス粒子”が存在する兆候が見つかった、というニュースが2011年12月13日に報道された。その日は、ちょうど本書の出版にかかわるスポンサーと出版社の人たちと相談した日であった。
 重さが感じられる地球上に誕生した人類は、不安定な直立二足歩行を選択した。そのことによって、手が自由に使え脳の発達を促し、脳の発達は手をじょうずに使えるようにしたという相互作用が、人類の文明・文化の発展に寄与したとする人類学者の説明は納得しやすい。
 しかし、重い荷物を背負っての歩行や重労働と食料不足は、人類の寿命を短くしてきたことは明らかである。そのことは、20世紀後半ころからの機械化による労働の軽減と食料の充足率の高まりとが、人類の寿命を延長させてきたことからわかるだろう。他方で、歩く距離の減少、労作業の軽減と過食は、多くの人びとにいわゆる生活習慣病をもたらすことになった。そこで、ふつうの人たちの運動不足に対し、ウォーキングがすすめられるようになったのは周知の事実である。
 ところで、歩くときは、下肢はもちろん、上肢、体幹、頭部は重力の影響を受けるため、絶えずバランスを崩し、それを補正するという動きをくり返さざるを得ない。このことは、乳児から幼児にかけて、“歩く”を身につける過程を観察すればよくわかる。そして、“歩く”は自動的にできるようになり、中枢パターン生成器という仮定の下で説明されている。
 高度な医療技術と手厚い保険医療制度は、生活習慣病の多発にもかかわらず、高齢者人口の増加をもたらし歩行困難者が多く見られるようになった。それらは、“歩く”ことによって生じるバランスの崩れにただちに対応する神経・筋系機能の衰え、変形性関節症の発症など運動器の不具合が主たる原因である。しかし、それ以外の原因で“歩く”ことが困難になる人も存在する。
 そこで近年、電子機械工学の分野で、電気的に制御可能な歩く補助具の開発が目立つようになった。しかし、数千万人に達する高齢者や歩行困難者をかかえるわが国では、すべてをまかなうことは到底不可能である。それよりも、からだが持つ適応能力をじょうずに引き出し、困難な症状を有する人たちに“歩く”ことを指導し、その能力を回復させたり、向上させたりすることを選択したい。
 ふつうの人たちへの“歩く”指導は、すでにテーラーメイドの方式が確立している。しかし、歩行困難者への“歩く”指導は、オーダーメイドにならざるを得ない。そこで、本書ではこれまで臨床的に指導されてきた人びとの協力を得て資料をまとめ、指導に当たる医師、看護師、理学療法士、健康運動指導士、ウォーキング指導員などが参考にしやすいマニュアルを提供することを意図して作成した。本書が、多くの人びとの役に立てば幸甚である。

2013年9月
宮下充正