書籍

これでわかる心房細動の診かたと治療改訂第2版

内科医のためのガイドラインに即した手びき

: 池田隆徳
ISBN : 978-4-524-26861-0
発行年月 : 2013年3月
判型 : A5
ページ数 : 162

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

“一般内科医の視点でみた”心房細動診療のやさしく、わかりやすい解説書。今版では、新規薬剤の登場、ガイドラインの改訂に対応して、全体を最新情報にアップデートしてさらにパワーアップ。とくに話題の新規抗凝固療法は、充実した内容としつつも平易に解説し、患者の病態に応じた処方がよくわかる。内科医に必要な心房細動診療の知識のすべてが詰まった一冊。

■不整脈治療に使用される主な薬物一覧
 ●不整脈の薬物治療に用いられる主な経口薬
 ●不整脈の薬物治療に用いられる主な注射薬
I 心房細動の疫学とその実態
 A.疫学調査からみた現在の患者数
 B.遺伝子異常との関連性
 C.今後の患者数の推移の予測
II 心房細動の分類のしかた
 A.不整脈疾患のなかでの位置づけ
 B.ガイドラインに準じた心房細動の分類
 C.自律神経を考慮に入れた心房細動の分類
III 心房細動はなぜ起こるのか
 A.発生するメカニズムを知る
 B.持続するメカニズムを知る
 C.心筋の組織構造との関連性
IV 心房細動の臨床背景について
 A.基礎疾患や心機能との関連性
 B.自律神経活動との関連性
 C.QOLおよび予後について
V 心房細動患者の診かた
 A.問診のポイントとコツ
 B.症状記録帳の活用
 C.身体所見のとりかたのポイント
VI 心房細動の心電図の読みかた
 A.心電図診断の基本
 B.典型的な心房細動の心電図
 C.例外的な心房細動の心電図
 D.鑑別を要する不整脈
VII 心房細動の検査の進めかた
 A.基礎疾患検索のための検査
 B.心エコーでのチェックポイント
 C.Holter心電図でのチェックポイント
 D.自律神経活動の評価のしかた
 E.運動負荷心電図の適応
VIII 専門病院で行われる検査
 A.経食道心エコー
 B.P波加算平均心電図
 C.心臓電気生理学的検査
IX 心房細動の治療方針
 A.最近の不整脈治療の考えかた
 B.心房細動治療のありかた
 C.アップストリーム療法の位置づけ
X 血栓・塞栓を予防する意義
 A.心房細動による心原性脳塞栓症の疫学
 B.心原性脳塞栓症患者の予後
 C.抗凝固薬を使用することの意義
 D.抗血小板療法との比較
 E.CHADS2スコアの活用
 F.新しい抗凝固薬の登場
XI 薬物治療ー抗血栓凝固療法
 A.薬物治療における抗血栓凝固療法の位置づけ
 B.ワルファリンの使いかた
 C.新しい抗凝固薬の使いかた
 D.新しい抗凝固薬を使用する場合の注意点
 E.除細動するときの注意点
 F.抜歯、外科的手術、内視鏡を行うときの注意点
 G.抗凝固薬を投与しなくてもよい患者
XII 薬物治療ーリズムコントロール療法
 A.抗不整脈薬を用いた薬物治療の指針
 B.リズムコントロール療法の薬物選択ポイント
 C.抗不整脈薬を用いたリズムコントロール療法の実際
 D.自律神経をターゲットにした薬物治療
 E.pill-in-the-pocketアプローチ
XIII 薬物治療ーレートコントロール療法
 A.レートコントロール療法の臨床的エビデンス
 B.心房細動における治療法の移り変わり
 C.β遮断薬の意義と役割
 D.レートコントロール療法に使用される薬物
XIV 副作用の防ぎかたと患者指導
 A.副作用を防止するうえでのポイント
 B.患者指導のポイント
XV 専門病院で行われる治療
 A.カテーテルアブレーションの方法
 B.カテーテルアブレーションの適応
 C.その他の観血的治療法について
XVI 治療のケースアプローチ(Q&A)
 A.心房細動の血栓・塞栓の予防について
 B.発作性心房細動のリズムコントロール療法について
 C.持続性/慢性心房細動のレートコントロール療法について
 D.カテーテルアブレーションの適応について
 E.抗不整脈薬の副作用の防止について
参考文献
索引

本書の初版が発行されて早くも5年半が経過しました。幸いにして多くの実地医家の先生方や若い先生方、さらには医療関係者の方々の支持を得て、初版は第6刷まで発行され、増刷を重ねて参りました。本書で取り扱ったのは“心房細動”というありふれた不整脈ですが、多くの先生方がその診かたと治療に手をこまねいていたことが伺えます。
 心房細動の診かたと治療について各地で講演する機会がよくあります。以前は「心房細動はどうして起こるのですか?」「心房細動患者さんではどのような検査をすればよいのですか?」「心房細動を抑えるにはどのような抗不整脈薬がよいのですか?」といった質問を講演のあとに受けることが多かったように思います。しかし、最近では「どのような患者さんに抗凝固薬を出したらよいのですか?」「心房細動のレートコントロールにはどのような薬剤を用いるのですか?」といったような質問へと変わってきています。これは、心房細動患者さんの管理で最も大切なことは、「脳塞栓症の予防」と「自覚症状・QOLの改善」であることが、近年発表された数多くの臨床的エビデンスによって裏づけられたためです。
 わが国および欧米から心房細動の管理(治療)に関するガイドラインが複数発行されていますが、初版刊行以降に2度改訂され、治療方針について初版の記載と一部矛盾する内容も出てきました。そこで、近年の動向を反映した内容に本書を改訂することにいたしました。読んでいただけるとわかりますが、抗血栓凝固療法に関する話題がかなり充実しており、またレートコントロールなどわかりやすくやさしい治療も頁数を増やして記載しています。まさに時代に即した内科医のための心房細動の診かたと治療のバイブル本になったと自負しております。
 初版と同様にご愛顧賜わることができれば幸いです。

2013年2月
池田隆徳

心房細動は、期外収縮に次ぎ頻度の高い不整脈である。基礎心疾患がなくても加齢により発生頻度が増すためわが国のような高齢社会では今後ますます患者の増加が予想される。時宣を得て本著は2007年9月に発行され、好評のため今回改訂第2版が発行された。著者は国際的にも著名な、現役バリバリの不整脈学者・臨床家である。本著『これでわかる心房細動の診かたと治療』の考えかたはここ数年大きく変わり、改訂版の発刊は、最新の情報を加えるにまさしく最適の時期であった。
 本著は140頁あまりの手ごろなサイズ、内容を16章に分け構成し、各章の頭には「point」数行の箇条書きがあり、重要事項は随時「MEMO」として個別に概説している。「心房細動の疫学とその実態」(I章)、「心房細動の分類のしかた」(II章)、「心房細動はなぜ起こるのか」(III章)では、心房細動の基本が述べられ、心房細動は比較的頻度の高いcommon diseaseであり、発作の持続時間、基礎疾患の有無、弁膜症の有無や自律神経活動の関与などからの分類、近年明らかにされた肺静脈起源心房細動などについて記載されている。また、機序として古くから知られる複数のリエントリー説よりむしろ著者自身が米国留学中に明らかにした1つのリエントリーが関与するというスパイラル理論についてもやさしく解説している。IV〜VIII章は心房細動の臨床背景、患者さんの診かた、検査の進めかたなどについて、迷走神経や交感神経の関与、心機能悪化による心房細動発生、QOLの重要性、心房細動検出や評価のためのホルター心電図やイベント心電図の利用などが要領よく記されている。専門病院における経食道心エコー、P波加算平均心電図、必要に応じ施行される電気生理学的検査などの概説もある。
 圧巻は、心房細動治療の現在と過去の治療方針の差を明確にし、現在は抗不整脈薬による心房細動自身の抑制より自覚症状・QOL・生命予後の改善を指標にすべきであるとの力説である。不整脈自身の治療には薬物治療とカテーテルアブレーションなどがあるが、心房細動では血栓塞栓症の予防が重要で、とくにこの3年間に発売された新規抗凝固薬3種(dabigatran、rivaroxaban、apixaban)について従来のwarfarinと比較した場合の利点や注意すべき点を明確にしている(IX〜XV章)。血栓塞栓症のリスク層別化のためのCHADS2スコア、近年ヨーロッパを中心に利用されているCHA2DS2−VAScスコアや抗凝固薬を投与した場合の出血リスクの層別化を示したHAS−BLEDスコアにもふれている。
 心房細動を洞調律に戻すリズムコントロールでは(XII章)、抗不整脈薬をVaughan Williams分類とSicilian Gambit分類を参考にチャネル遮断と受容体遮断作用を一目でわかるように分類、あるいは低心機能患者の薬剤の使い方の表示もある。心拍数調節を行うとするレートコントロールでは(XIII章)、β遮断薬を中心とした使用法を具体的に示している。副作用の防ぎかたと患者指導では(XIV章)、各薬剤における心電図からみた副作用と症状からみた副作用のわかりやすい表示がある。
 最終章(XVI章)では、病態の異なる心房細動患者16例をあげ、ケースごとに血栓・塞栓症予防、心房細動のリズムコントロール、レートコントロール、カテーテルアブレーション適応、抗不整脈薬副作用防止などの立場から、質疑と応答という形で例示している。日常診療であてはまるケースが多く大変参考になる。
 本書は、心房細動について内容に抜けがなくあらゆる分野を網羅し、やさしく、わかりやすく解説した名著である。実地医家、一般内科医のみでなく、循環器ひいては不整脈専門医にも知識の整理のため傍らに置き、診療の合間に読み返したい書である。

臨床雑誌内科112巻4号(2013年10月号)より転載
評者●海老名総合病院顧問、東海大学医学部非常勤教授 田邉晃久