書籍

仙腸関節機能障害

AKA-博田法による診断と治療

編著 : 片田重彦
: 木檜晃/大佐古謙二郎
ISBN : 978-4-524-26783-5
発行年月 : 2014年5月
判型 : B5
ページ数 : 200

在庫あり

定価5,724円(本体5,300円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

関節運動学と関節神経学の理論に基づいた徒手療法である“関節運動学的アプローチ(AKA)‐博田法”について、非特異的腰痛の主な要因のひとつである仙腸関節機能障害の治療法に焦点を当てまとめた実際書。治療法のみならず、仙腸関節機能障害を理解する上で必要な理論と基礎知識、診断法、エビデンス、実症例について150枚超の写真を用いてわかりやすくまとめた。

第1章 AKA-博田法の理論と仙腸関節機能障害
 1)関節機能障害による痛み
 2)仙腸関節機能障害
 3)AKA-博田法の定義
 4)関節運動学と骨運動学
 5)仙腸関節の骨運動
 6)Wykeの関節神経学と臨床
 7)関節の副運動と臨床
 8)仙腸関節の副運動とその障害
 9)関節機能異常と副運動
 10)関節機能異常と痛みの発生
 11)仙腸関節機能障害の症状
 12)仙腸関節機能障害の成因
 13)関節軟部組織過緊張連鎖
 14)膝関節可動域の体位による違い
 15)関節軟部組織過緊張連鎖の原因
 16)関節機能異常と炎症
 17)炎症にのみ反応する侵害受容器
 18)関節痛の伝達経路
 19)関連痛の成立
第2章 仙腸関節機能障害の診断
 1)体幹の関節機能異常を利用した診断
 2)股関節の二次性関節機能異常を利用した診断
 3)SLRによる副運動1型の評価
 4)Fadirf、Fabere
 5)疼痛を生じている関節の評価
 6)仙腸関節機能障害の分類
第3章 仙腸関節機能障害の治療35
I 治療総論
 1)伝統的運動療法に対する考え方
 2)AKA-博田法を行うときの手技上の留意点
 3)画像診断をどう捉えるか
 4)手技の順序
 5)AKA-博田法の治療回数と治療間隔
 6)手技の選択
 7)禁止要件
 8)治癒の判定
II 治療技術
A.仙腸関節の副運動技術
  1)仙腸関節への2つの技術
  2)離開法
  3)滑り法
  4)操作のイメージ
  5)操作と軟部組織の緊張
  6)副運動を利用した技術を行う際の強さ
  7)用いるベッド
  8)患者の姿勢
  9)術者の立ち位置
 1 上部離開法
  a.腸骨上半部を尾側へ向かって離開していく方法
  b.環指のみで動かす場合(やや背側寄りの上部を離開する方法)
  c.母指のみで動かす場合(やや腹側寄りの上部を離開する方法)
 2 下部離開法
  a.腸骨下半部を頭側へ向かって離開していく方法
  b.環指のみで動かす場合(やや背側寄りの下部を離開する方法)
  c.母指のみで動かす場合(やや腹側寄りの下部を離開する方法)
 3 滑り法:上方滑り法と下方滑り法
  a.右仙腸関節への滑り法
  b.左仙腸関節への滑り法
 4 副運動技術のポイント
  a.離開法のポイント
  b.滑り法のポイント
  c.副運動技術の共通基本事項
B.付加的技術
 1 椎間関節(C7/T1椎間関節の場合)
 2 肋椎関節
  a.第7肋椎関節
  b.第3肋椎関節
  c.第1肋椎関節
 3 胸鎖関節
 4 胸肋関節
 5 肩関節
  a.下方滑り法
  b.前後滑り法
   1.上腕骨頭への前方滑り法
   2.上腕骨頭への後方滑り法
 6 橈舟関節
  a.舟状骨を橈骨に対して尺側方向へ滑らせる方法
  b.舟状骨を橈骨に対して背側方向へ滑らせる方法
 7 橈月関節
  a.右母指で月状骨を掌側方向へ押し下げる場合
  b.右中指で月状骨を背側方向へ引き上げる場合
 8 距舟関節
  a.舟状骨を内側前方へ滑らせる方法
  b.舟状骨を外側前方へ滑らせる方法
 9 距舟関節:別法
  a.舟状骨を足底側へ滑らせる方法
  b.舟状骨を足背側へ滑らせる方法
 10 距骨下関節
  a.踵骨外側面を左母指で押す場合
  b.踵骨内側面を左中指で引く場合
第4章 AKA-博田法のエビデンス
 1)ランダム化比較試験(RCT)とEBM
 2)慢性疼痛(特に慢性腰痛)に対するAKA-博田法のRCT
 3)急性腰痛に対するAKA-博田法のRCT
 4)AKA-博田法の健康関連QOLに対する効果
第5章 仙腸関節機能障害の臨床症例
A 腰痛
 1 総論
  1)腰部の痛み、随伴する下肢痛、しびれ
  2)椎間板ヘルニアとの鑑別
  3)下肢のしびれ
  4)間欠跛行
  5)“ぎっくり腰”(急性腰痛)
  6)仙腸関節炎
  7)慢性腰痛
  8)副運動の改善指標(SLR)
  9)AKA-博田法による腰痛の治療
 2 症例
  症例A-1 大きな誘因のない急性腰痛と下腿痛
  症例A-2 大きな誘因のある急性腰痛
  症例A-3 下肢のしびれを伴う急性腰痛
  症例A-4 側弯と辷りを伴う急性腰痛
  症例A-5 猛激痛を伴う急性腰痛
  症例A-6 硬膜外注射が無効だった慢性腰痛
  症例A-7 尖足をきたした慢性腰痛
  症例A-8 運動療法で再発した慢性腰痛
  症例A-9 超高齢者の急性腰痛
  症例A-10 MRIで異常のない下肢痛
  症例A-11 MRIで“腰椎椎間板ヘルニア”とされた下肢痛
  症例A-12 下肢のしびれが主体の間欠跛行
  症例A-13 下肢に激痛を生じる間欠跛行
  症例A-14 PG(プロスタグランジン)製剤の効かない間欠跛行
  症例A-15 足部の筋力低下のある間欠跛行
  症例A-16 辷りと狭窄を伴う慢性腰痛
  症例A-17 殿部灼熱感を伴う間欠跛行
  症例A-18 手術で悪化、インプラント抜去後AKA-博田法で軽快した慢性腰痛
  症例A-19 手術後再燃した腰痛
  症例A-20 “精神的異常”と言われた仙腸関節痛
  症例A-21 椎体圧迫骨折後の頑固な腰痛
B.股関節の痛み
 1 総論
  1)なぜ股関節の痛みが仙腸関節のAKA-博田法で治療可能か
  2)AKA-博田法は股関節痛、特に変形性股関節症には最良の保存的治療法である
  3)両側例の変形性股関節症はAKA-博田法でも再発する
  4)股関節症の副運動をどう診察するか
  5)AKA-博田法による治療法
 2 症例
  症例B-1 臼蓋形成不全の痛み
  症例B-2 関節裂隙の狭小化した股関節痛
  症例B-3 進行期股関節症における股関節痛
  症例B-4 末期股関節症における股関節痛
  症例B-5 股関節唇損傷による股関節痛が疑われた
  症例B-6 THA術後も疼痛が改善しない症例
  症例B-7 Chiari骨盤骨切り術、RAO術後の痛み
C.膝関節の痛み
 1 総論
 2 症例
  症例C-1 しゃがむとき(蹲踞時)の膝の痛み
  症例C-2 膝関節前部の痛み
  症例C-3 正座での痛み
  症例C-4 高度の膝関節変形に伴う痛み
D.肩部の痛み
 1 総論
 2 症例
  症例D-1 いわゆる五十肩
  症例D-2 石灰沈着のある肩の痛み
E.頸部の痛み
 1 総論
 2 症例
  症例E-1 McKenzie 法で出現した上肢のしびれ
  症例E-2 “頸椎椎間板ヘルニア”と診断された頸部と上肢の痛み
  症例E-3 頸椎捻挫での上肢のしびれ
F.スポーツによる痛み172
 1 総論
  1)スポーツでどの部位に疼痛を起こすか
  2)発症年齢は多岐にわたるが青少年に多い
 2 症例
  a.スポーツによる腰痛
   症例F-1 中学生のスポーツ腰痛
   症例F-2 体幹を伸展すると痛むスポーツ腰痛
   症例F-3 急性腰痛から脊柱管狭窄症になったと言われたスポーツ腰痛
  b.スポーツによる股関節痛
   症例F-4 マラソンで生じた股関節痛
  c.スポーツによる膝関節痛
   症例F-5 膝蓋靱帯部のスポーツ痛
   症例F-6 膝伸展時のスポーツ膝痛
  d.スポーツによる足部痛
   症例F-7 有痛性外脛骨
   症例F-8 マラソンによるアキレス腱痛
  e.スポーツによる肩部痛
   症例F-9 卓球による肩部痛
  f.スポーツによる下肢筋肉痛
   症例F-10 1ヵ月間続く下腿後面の筋肉痛
第6章 AKA-博田法の習得に必要なこと
 1)副運動への理解
 2)AKA-博田法を学ぶと“科学”がどういうものかを理解できる
 3)技術指導の受け方と技術習得への近道
 4)日本AKA医学会の紹介
索引

“仙骨(sacrum)”の語源はラテン語に遡り、英語に転じて“sacred”である。すなわち仙骨は“聖なる骨”であり、人の魂が宿る場所と考えられていた。人体の中心にあり、分娩で胎児が通り抜ける神聖な滑り台であることから、古来、この“聖なる骨”は人体にとって最も重要な骨と考えられてきた。その意味で仙骨の作る仙腸関節は“聖なる骨の関節”である。
 しかし、近代医学では仙骨を脊椎の単なる土台とし、機能的意味の少ない骨と考え、仙腸関節も不動関節で支持性の役割しかないものと見下げてきた。
 仙腸関節が滑膜関節で、可動性と支持性の役割を担い、ほかのすべての滑膜関節と同様に運動性では骨運動と副運動を併せ持ち、関節には関節軟骨、関節軟部組織には関節感覚受容器を多数持っているという認識が得られたのは、最近のことである。
 さらにその関節感覚受容器には、ほかの関節の感覚受容器と連携して運動器全体を巧妙にコントロールしているような機能もうかがわれる。その機能の全体像はまだ解明途中であるが、関節受容器と関節の副運動の関係、それらと周辺軟部組織との連携、そして全身に分布する筋膜などの収縮機能に関する新しい発見から、多数の関節同士が仙腸関節を中心に副運動の連鎖機能を持つという驚くべき事実も解明されてきた。
 こうした機能はAKA-博田法により仙腸関節機能障害の治療が可能となったことにより順次解明されてきたものである。
 仙腸関節機能障害とは、通常見ることができない関節包内での“副運動(関節の遊びを含む)”が障害され、本来あるべき運動機能が障害された状態である。その結果、仙腸関節原性の痛みや感覚障害のみならず、離れた部位にある関節の副運動が障害され、関連痛が生じることもあるという、従来の視点から関節機能のみを研究してきた運動学では思いもよらなかった事実が発見されてきた。
 関節の副運動が障害されれば、その関節の運動機能全体が障害される。逆に副運動をAKA-博田法により改善することができれば、その関節の運動機能は回復する。このように関節の運動は副運動と表裏一体の関係にある。AKA-博田法の副運動技術は、こうした仙腸関節機能障害を治療する安全で確実な唯一の方法である。
 AKA-博田法が従来の徒手医学と決定的に異なるのは、AKA-博田法が“関節運動学”と“関節神経学”に厳密に基づいていることであり、関節の副運動の研究成果を診断と治療の原理としていることである。
 従来の“徒手医学”、“ストレッチング”、“マニピュレーション”、“モビリゼーション”、“カイロプラクティック”、“整体”、“整骨”など運動器の矯正を目的とする手法は、目に見える関節の動きが対象であるから、医師でなくてもその技術を模倣することが可能である。医業類似業者らにすでに広範に使われていて、数百の流儀と数多くの手法が氾濫している。医師にとってはそれらの非科学性にうんざりし、決して足を踏み入れることのないアンタッチャブルな領域である。
 これらに対してAKA-博田法は“関節包内運動”という目に見えない関節の動きを対象とするので、人体解剖学に精通した医師あるいは理学療法士(作業療法士)でなければ習得できない。
 さらに、AKA-博田法の技術のなかで最も難しい仙腸関節の副運動技術を習得するには、関節運動学、関節神経学の理論を知らなければ技術が自己流に陥り、臨床応用には到底至らない。
 そこで、本書の第1章では仙腸関節機能障害を理解するうえで必要な理論と基礎的事項を述べる。おそらくそのすべてが通常の読者には新規の事項となる。その理由は医学生に向けた“関節運動学”、“関節神経学”の講座がわが国の医学部にはないからである。
 第2章では仙腸関節機能障害の診断法について述べるが、AKA-博田法は診断法も関節運動学、関節神経学の確固たる理論に基づいているので、臨床応用にあたっては理論を考えながら診断する必要がある。
 第3章は治療法であるが、大半を仙腸関節の“副運動技術”にあてている。仙腸関節の副運動技術は最も習得が難しい医療技術であると言われているが、この技術が確実にできなければAKA-博田法の臨床応用は不可能である。AKA-博田法では技術の進歩に加えて数年来にわたり指導法の改良が行われてきた。どのようにすれば短期間に技術を習得できるか、その成果が詳細に述べられている。また、AKA-博田法の初心医師でも技術習得が容易になるよう記述している。
 第4章はAKA-博田法のエビデンスである。新しい医療技術の正当性を証明するにはRCT(ランダム化比較試験)を行うことが必要であるが、わが国の整形外科では手術法はおろか、さまざまな治療法でRCTはほとんど行われていない。しかし、AKA-博田法ではすでにRCTが行われ、その結果も得られている。AKA-博田法による疼痛治療に関して行われてきたエビデンスをここで報告する。
 第5章は臨床症例であるが、臨床上の注意点を述べつつ実例を示していく。ここに掲載してある症例は決して特殊な例ではなく日常診療でみられるごく一般的な例であり、それぞれには同様の症例が数百例ずつあることを強調したい。
 AKA-博田法を著者らが日常行っていると、従来の概念ではあり得ないと思われる治癒過程をたどることに、著者らも感動をもって日々新たな経験を積み重ねているが、それが真実である。
 なお、原著である『AKA関節運動学的アプローチ博田法』(博田節夫編集)にはAKA-博田法のすべてが記載されている。本書はその一部である仙腸関節機能障害を臨床家の便のために解説した書であり、読者には原著と併読することを強くお勧めする。
 “AKA-博田法”、“AKA”という名称は、医師、理学療法士、作業療法士で日本AKA医学会、および日本AKA医学会PTOT会の認定試験に合格した者にのみ標榜を許可されている登録商標である。もちろん医師、理学療法士、作業療法士がAKA-博田法を利用して患者の治療をすることに何ら問題はないが、認定試験に合格しなければ“AKA-博田法”、“AKA”という標榜(広告宣伝など)をしてはならないことが罰則を含めて法律的に定められている。
 このことは従来、“AKA-博田法”、“AKA”と称して、医業類似業者がこの名称を集客のために無原則に利用し、患者に多大の迷惑をかけてきたことを憂い、日本AKA医学会が決定したものである。
 AKA-博田法が関節運動学、関節神経学の理論から純粋に形成されてきた独自の医療技術であることへの誇りが、こうした利益優先の医業類似業者にその名を騙られることを決して許さないとの姿勢の表明につながったわけだが、一方、真のAKA-博田法を習得せんとする意志のある先進的な医師、理学療法士、作業療法士には本書が大いなる助けとなることを期待したい。なお本書の上梓にあたって、数多くのご助言、あたたかいご支援をいただいたAKA-博田法の創始者である博田節夫先生に深甚なる感謝の意を表明する。

2014年4月
著者らしるす