書籍

日本消化器病学会ガイドライン

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-26782-8
発行年月 : 2016年11月
判型 : B5
ページ数 : 154

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本消化器病学会編集によるガイドライン。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)に関する膨大な文献を評価し、GRADEシステムの考え方を取り入れてエビデンスレベルと推奨度を決定。IBDの臨床像、診断、治療、合併症、癌サーベイランスにおける診療上問題となるテーマについてクリニカルクエスチョン形式で診療指針を示す。一般内科医・非専門医向け。

クリニカルクエスチョン一覧
第1章 IBDの臨床像
 CQ1-1 IBDの定義,病態は?
 CQ1-2 IBDの疫学は?
 CQ1-3 UCの原因,危険因子は何か?
 CQ1-4 CDの原因,危険因子は何か?
 CQ1-5 IBDの病態・分類・重症度の評価は?
第2章 診断
 CQ2-1 IBDの診断はどのように進めるか?
 CQ2-2 IBDを疑う症状,身体所見は?
 CQ2-3 IBD診断に有用な臨床検査は?
1 内視鏡(組織採取を含む)
 CQ2-4 UCの診断に内視鏡はどのように用いるか?
 CQ2-5 CDの診断に内視鏡はどのように用いるか?
2 画像検査
 CQ2-6 UCの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)
 CQ2-7 CDの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)
第3章 治療総論
 CQ3-1 IBD患者は禁煙すべきか?
 CQ3-2 IBD患者は禁酒すべきか?
第4章 IBDに対する治療介入法
 CQ4-1 IBD治療における5-ASA製剤の有益性・有害性と適応は?
 CQ4-2 IBD治療における副腎皮質ステロイドの有益性・有害性と適応は?
 CQ4-3 IBD治療における免疫調節薬の有益性・有害性と適応は?
 CQ4-4 IBD治療における抗菌薬,probioticsの有益性・有害性と適応は?
 CQ4-5 IBD治療における抗TNF製剤の効果は?
 CQ4-6 IBD治療における栄養療法の有益性・有害性と適応は?
 CQ4-7 IBD治療における血球成分除去療法の適応と,治療効果および有害性は?
 CQ4-8 IBDの外科的治療の有益性・有害性は?
第5章 潰瘍性大腸炎の治療
1 軽症.中等症の活動期遠位大腸炎
 CQ5-1 軽症.中等症の活動期遠位UC治療における5-ASA製剤の適応は?
 CQ5-2 軽症.中等症の活動期遠位UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?
 CQ5-3 軽症.中等症の活動期遠位UC治療におけるその他の治療の適応は?
 CQ5-4 直腸炎タイプの軽症.中等症の活動期遠位UCの治療は?
2 軽症.中等症の活動期広範囲大腸炎
 CQ5-5 軽症.中等症の活動期広範囲UC治療における5-ASA製剤の適応は?
 CQ5-6 軽症.中等症の活動期広範囲UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?
 CQ5-7 軽症.中等症の活動期広範囲UC治療におけるその他の治療の適応は?
3 重症の活動期潰瘍性大腸炎
 CQ5-8 重症の活動期UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?
 CQ5-9 重症の活動期UC治療における免疫調節薬の適応は?
 CQ5-10 重症の活動期UC治療における抗TNF製剤の適応は?
 CQ5-11 重症の活動期UC治療における血球成分除去療法の適応は?
4 寛解期の維持治療
 CQ5-12 寛解期のUC治療における5-ASA製剤の適応は?
 CQ5-13 寛解期のUC治療における免疫調節薬の適応は?
 CQ5-14 寛解期のUC治療において抗TNF製剤はどのように用いるか?
 CQ5-15 その他の治療法はいつ適応となり,どのように用いるか?
5 外科的治療
 CQ5-16 UCに対する外科的治療の適応は?
 CQ5-17 UCの外科的治療ではどのような手術を行うか?
 CQ5-18 UCの外科的治療における合併症とその治療は?
第6章 クローン病の治療
1 軽症.中等症の活動期
 CQ6-1 軽症.中等症の活動期CDの治療は?
2 中等症.重症の活動期
 CQ6-2 中等症.重症の活動期CDの治療は?
3 重症.劇症の活動期
 CQ6-3 重症.劇症の活動期CDの治療は?
4 肛門周囲病変
 CQ6-4 CDの肛門周囲病変における内科的治療は?
5 消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)
 CQ6-5 CDの消化管合併症(1):瘻孔に対する治療は?
 CQ6-6 CDの消化管合併症(2):狭窄に対する治療は?
 CQ6-7 CDの消化管合併症(3):出血に対する治療は?
 CQ6-8 CDの消化管合併症(4):膿瘍に対する治療は?
6 その他の消化管病変
 CQ6-9 CDの上部消化管病変における治療は?
7 寛解期の維持治療
 CQ6-10 寛解期CDの再燃を予防するためにどのような生活上の注意が必要か?
 CQ6-11 寛解期CDの再燃を予防するためにどのような治療を行うか?
8 外科的治療
 CQ6-12 CDの外科的治療の適応は?
 CQ6-13 CDの外科的治療ではどのような手術を行うか?
 CQ6-14 CDの外科的治療における合併症とその治療は?
第7章 消化管外合併症
 CQ7-1 IBDの消化管外合併症とその治療は?
第8章 癌サーベイランス
 CQ8-1 UCの癌のスクリーニングとサーベイランスは?
 CQ8-2 CDの癌のスクリーニングとサーベイランスは?
第9章 特殊状況のIBD
 CQ9-1 IBD患者における妊娠・出産の際の治療は?
 CQ9-2 高齢者のIBDにおける留意点は?
索引

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成の手順

1.改訂の経緯と目的
 潰瘍性大腸炎診療ガイドラインの初版として,厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班のプロジェクトグループにより開発された「エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン」が2006年に公開された.続いて同研究班によりクローン病診療ガイドラインの開発が予定された時期に,日本消化器病学会によりIBDを含む6疾患の診療ガイドライン開発計画が立ち上がり,厚労省研究班は本学会と歩調を合わせ,共同開発することとなった.ただし,潰瘍性大腸炎ついてはその公表から年月が浅く,“double standard”を避けるため,クローン病のみを対象とした診療ガイドラインが開発され,2010年に公表された.
 その間2009年には,潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版の内容を生かしつつ新しいエビデンスの集積や新たに承認された治療法などを追加する改訂計画が,厚労省研究班において進行中であった.しかしながら日本消化器病学会により消化器6疾患の診療ガイドライン改訂が計画され,2011年には統一化された作成方法も定められたため,クローン病診療ガイドラインの改訂に合わせて潰瘍性大腸炎も含めたIBD診療ガイドラインの最新版を作成することとなった.やや困難であった点は,潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版は,クローン病とは異なる作成手法を用いていたことである.したがって本IBD診療ガイドラインは,改訂というよりも新規作成に近く,予想を超えた時間と労力を必要とした.開発方法が異なるため,初版と改訂版の相違点は少なくない.要点を表1にまとめた.
 診療ガイドラインの目的は,言うまでもなく当該疾患の診療にかかわる医療提供者および患者に,適正な診療指標を提供し,患者アウトカムを改善することにある.本診療ガイドラインでは,利用対象としてIBD患者を診る機会のある消化器医を中心とした医療提供者と想定して開発された.

2.改訂の手順
1)診療ガイドライン改訂委員会の設立
 2011年7月に日本消化器病学会の第1回統括委員会が開催され,新たな4疾患のガイドライン作成と先行6疾患の改訂が行われることが決定された.これを受け2011年11月に先行6疾患の第1回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.また初版作成時の作成委員長および評価委員長は原則留任としたが,改訂委員会および評価委員会の構成員には次回改訂を考慮して一部若手を採用することが決定された.この決定により,新しい作成委員会と評価委員会が組織された.
2)基本方針
 新規4疾患および改訂6疾患と共通の作成基準を原則的に用いた.すなわち海外の多くの診療ガイドラインで用いられるようになったGRADE システムの基本概念をできるだけ取り入れ,(1)システマティックレビューによるエビデンス総体を重視した診療指標の作成,(2)エビデンスレベルと必ずしも相関しない推奨度の決定を基本方針とした.
3)作成方法
 CQは全面的に見直された.UC診療ガイドライン初版はCQ形式を取っておらず,また疾患併合による肥大化に対処する必要があった.1.IBDの臨床像,2.診断,3.治療総論,4.IBDに対する治療介入法,5.潰瘍性大腸炎の治療,6.クローン病の治療,7.消化管外合併症,8.癌サーベイランス,9.特殊状況のIBD,の9カテゴリーを構成し,計59のCQを抽出した.
 各CQに対し,ステートメント(推奨の強さ,エビデンスレベル),解説,文献を順に記載した.
 診療行為の保険適用の有無については解説に記載した.
 エビデンス収集には,英文論文はMEDLINE,Cochrane Libraryを用い,日本語論文には医学中央雑誌を用いた.各CQに対し1983年〜2012年6月を文献検索期間とした.しかし第1次検索が終了した時点の2013年10月のガイドライン統括委員会において,委託業者との契約解消が報告されたため,2次検索と論文の収集はすべて個々の作成委員に委ねられることとなった.また上記期間以外の論文検索も作成委員により行われた.
 論文のエビデンスレベルは,研究デザインによりhigh/moderate/low/very lowの4段階に初期設定され,研究方法の吟味によりバイアスリスクを評価し,必要な下方修正がなされた(上方修正されたものはなかった).最終的なエビデンスの質をA,B,C,Dの4段階で表した.GRADE システムの骨子ともいえる複数の論文の質的・量的合成は実際上困難で,代わりに既存のメタアナリシスを重視した.なお,最近では観察研究を量的に合成したメタアナリシスが決して少なくない.これらは介入研究のメタアナリシスとはエビデンスの質が当初から異なるため,引用文献には「メタ・観察」と付記して区別した.
 推奨の有無と強さの決定は,診療行為の介入に関するステートメントのみを対象とした.ステートメントの文言の適切性を13名の作成委員が独立して評価した.評価は9段階で(9=最も適切,1=最も不適切),13名の評価の中央値が9または8の場合を強い推奨(推奨する),7の場合を弱い推奨(提案する)とした(Delphi評価).結果として全ステートメントで推奨合意(中央値7以上)が得られたが,一部のステートメントで評価のばらつきがあり,再評価による合意形成を必要とした.
 作成委員会案を評価委員会に提出し,評価コメントを集約し担当作成委員にフィードバックし,必要な修正を行った.この過程をもう一度繰り返し,最終案が策定された.
 最終案は2016年5月13日〜27日まで,日本消化器病学会のホームページに掲載されパブリックコメントを募集した.また最終案は厚労省研究班のIBDを専門とする医師に配信され意見を募った後,2016年7月の研究班総会で報告され,質疑応答が行われた.日本消化器病学会員によるパブリックコメントと厚労省研究班員の意見を反映した修正が行われ, 最終的に「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016」が策定された.
4)厚労省研究班の協力
 潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版は厚労省研究班のプロジェクトグループにより開発され,クローン病診療ガイドライン初版も同班の協力のもとに開発された.今回も厚労省研究班の協力を必要とした理由は,“double standard”を避けるためわが国唯一の診療ガイドラインを公表すべきと考えたこと,そして研究班より毎年公開される診療指針との整合性を図ることが必要であったことである.さらに日本のIBD専門医のほとんどすべてが参加する研究班における意見交換や評価が,内容の妥当性を担保するうえで望ましいと考えられた.

3.使用法
 本ガイドラインは,IBDの疾患概念,診断,治療,経過観察などに関する標準的な内容を記載し,臨床現場での意思決定を支援するものである.日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成・評価委員会のコンセンサスに基づいて作成し,記述内容に関しては責任を負うが,個々の治療結果についての責任は治療担当医に帰属すべきもので,日本消化器病学会および本ガイドライン作成・評価委員会は責任を負わない.
 また,本ガイドラインの記載内容は,医療訴訟などの法的根拠として用いられるものではない.

4.診療アルゴリズムの構成
 本ガイドラインでは,以下の診療アルゴリズムをフローチャートで示した.図は9点となり,煩雑との印象を持たれるかもしれないが,病態ごとに治療選択が異なるIBDでは,最大限簡素化しているつもりである.
  潰瘍性大腸炎の診断的アプローチ(図1)
  軽症〜中等症の活動期遠位潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療(図2)
  軽症〜中等症の活動期広範囲(左側を含む)潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療(図3)
  重症の潰瘍性大腸炎に対する治療(図4)
  寛解期の潰瘍性大腸炎に対する維持治療(図5)
  クローン病の診断的アプローチ(図6)
  活動期のクローン病に対する寛解導入治療(図7)
  クローン病の消化管合併症に対する治療(図8)
  寛解期のクローン病に対する維持治療(図9)

5.今後の展望
 日本でのIBD診療の動向は海外からも注目されている.できるだけ早い時期に英語版を作成し,日本における診療を広く海外に発信するため,学会誌等で公表する準備が進行中である.
 内外で現在開発中のIBD治療薬は数多い.新たなエビデンスの蓄積や,新たな治療薬の承認により,IBDの治療体系は今後数年で大きく変わる可能性が予測できる.4〜5年をめどに改訂が必要となることと思われる.

2016年10月
日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成委員長
上野文昭