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日本消化器病学会ガイドライン

肝硬変診療ガイドライン2015改訂第2版

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-26781-1
発行年月 : 2015年10月
判型 : B5
ページ数 : 222

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本消化器病学会編集による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。今版ではGRADEシステムの考え方を取り入れ、肝硬変に関わる膨大な文献を評価し、エビデンスレベルと推奨の強さを決定。肝硬変の概念、診断、治療、合併症、予後予測、肝移植について、クリニカルクエスチョン(CQ)の形式で診療指針を明記した。

第1章 概念(病因,病態)
  CQ1-1 肝硬変の原因は何か?
  CQ1-2 肝硬変の基本的な病態はどのようなものか?
第2章 診断
 1 身体所見・一般血液検査
  CQ2-1 身体所見・血液生化学的検査所見から肝硬変の診断は可能か?
 2 画像検査
  CQ2-2 画像診断は肝硬変の診断に有用か?
 3 腹腔鏡・肝生検
  CQ2-3 肝生検組織所見(腹腔鏡および針生検)は肝硬変の診断に有用か?
第3章 治療
 1 栄養療法
  CQ3-1 肝硬変患者の低栄養状態は予後に影響を与えるか?
  CQ3-2 肝硬変に対する就寝前エネルギー投与(LES)は予後を改善するか?
  CQ3-3 肝硬変に対する分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与は有効か?
  CQ3-4 肝硬変の糖代謝異常は病態に影響を与えるか?
  CQ3-5 生魚,生肉の摂取は非代償性肝硬変では不適切か?
 2 抗ウイルス療法
  CQ3-6 B型肝硬変においてウイルス関連マーカー,HBV DNA量測定は病態のモニターに有用か?
  CQ3-7 核酸アナログはB型肝硬変におけるウイルスの陰性化,あるいはセロコンバージョンを促進するか?
  CQ3-8 核酸アナログはB型肝硬変の肝線維化,予後を改善するか?また,肝発癌を抑制するか?
  CQ3-9 ラミブジン耐性B型肝硬変にアデホビルもしくはテノホビルは有効か?
  CQ3-10 インターフェロン(IFN)はB型肝硬変の肝線維化を改善するか?また,肝発癌を抑制するか?
  CQ3-11 C型肝硬変におけるインターフェロン(IFN)療法の治療効果は慢性肝炎と同等か?
  CQ3-12 インターフェロン(IFN)療法後SVRが得られたC型肝硬変では肝線維化が改善するか?
  CQ3-13 C型肝硬変に対するインターフェロン(IFN)療法は,有害事象を誘発し予後に悪影響を与えないか?
  CQ3-14 C型肝硬変に対するインターフェロン(IFN)療法は,肝細胞癌を抑制して予後を改善するか?
  CQ3-15 初回インターフェロン(IFN)療法が無効であったC型肝硬変に対し,ペグインターフェロン(PEG-IFN),リバビリン併用療法は有効か?
 3 肝庇護療法など
  CQ3-16 抗ウイルス療法以外にウイルス性肝硬変の肝線維化を抑制する治療法はあるか?
 4 非ウイルス性肝硬変の治療
  CQ3-17 アルコール性肝硬変では禁酒により線維化進展が阻止され,予後が改善するか?
  CQ3-18 自己免疫性肝炎(AIH)による肝硬変に対して副腎皮質ステロイドを投与すると線維化の改善,予後の改善が得られるか?
  CQ3-19 原発性胆汁性肝硬変(PBC)による肝硬変に対するウルソデオキシコール酸(UDCA)あるいは副腎皮質ステロイド投与は線維化の改善,予後改善に寄与するか?
  CQ3-20 原発性硬化性胆管炎(PSC)による肝硬変に対するウルソデオキシコール酸(UDCA)あるいは副腎皮質ステロイド投与は予後を改善するか?
第4章 肝硬変合併症の診断・治療
 1 消化管出血,門脈圧亢進症
  CQ4-1 門脈圧亢進症の診断に腹部CT(MDCT),腹部MRI,MRAは有用か?
  CQ4-2 発赤所見(RC sign)は食道・胃静脈瘤出血の危険因子であるか?
  CQ4-3 b ブロッカーは食道・胃静脈瘤の出血防止に有用か?
  CQ4-4 b ブロッカーと一硝酸イソソルビドの併用は静脈瘤出血予防に有効か?
  CQ4-5 食道静脈瘤出血時に血管作働性薬の投与は有効か?
  CQ4-6 b ブロッカーは門脈圧亢進症性胃症(PHG)に対して有効な治療法か?
  CQ4-7 プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与により代償性肝硬変患者のの消化管出血を予防できるか?
  CQ4-8 食道静脈瘤に対する予防的内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)と内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)では,どちらが再発防止に有用か?
  CQ4-9 胃静脈瘤に対してバルーン下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術(B-RTO)は有効か?
  CQ4-10 原発性胆汁性肝硬変(PBC)に伴う食道・胃静脈瘤は早期に発現するか?
  CQ4-11 胃静脈瘤に対してcyanoacrylate系薬剤注入法は有効か?
 2 腹水
  CQ4-12 血清と腹水のアルブミン濃度差は肝硬変腹水診断に有用か?
  CQ4-13 白血球エステラーゼ試験紙は特発性細菌性腹膜炎(SBP)の迅速診断に有用か?
  CQ4-14 肝硬変に伴う腹水に対して減塩食は有効か?
  CQ4-15 肝硬変に伴う腹水にアルブミン投与は有効か?
  CQ4-16 肝硬変の腹水に対してループ利尿薬はスピロノラクトンより有効か?
  CQ4-17 利尿薬投与法としてスピロノラクトン単剤増量法とスピロノラクトン,ループ利尿薬併用増量法のどちらがよいか?
  CQ4-18 バソプレシンV2受容体拮抗薬は,腹水,水排泄障害の改善に有効か?
  CQ4-19 難治性腹水に対する大量腹水穿刺排液は有用か?
  CQ4-20 腹水穿刺排液の際の血漿増量薬としてアルブミン静注と合成コロイド静注のどちらが勝るか?
  CQ4-21 難治性腹水の治療に腹腔・静脈シャント(P-V シャント)は有効か?
  CQ4-22 難治性腹水に対して腹水濾過濃縮再静注法(CART)は有効な治療法か?
  CQ4-23 経頸静脈肝内門脈大循環シャント術(TIPS)は難治性腹水に有効な治療法か?
  CQ4-24 難治性腹水に対する経頸静脈肝内門脈大循環シャント術(TIPS)により患者のQOLや予後は改善するか?
  CQ4-25 難治性腹水例の治療後の生存率やQOLは経頸静脈肝内門脈大循環シャント術(TIPS)とP-Vシャントのどちらが勝るか?
  CQ4-26 肝硬変患者の経過中に特発性細菌性腹膜炎(SBP)が合併すると予後不良となるか?
  CQ4-27 上部消化管出血例,重症肝硬変腹水例への抗菌薬の予防投与は特発性細菌性腹膜炎(SBP)の防止や予後改善に有用か?
  CQ4-28 特発性細菌性腹膜炎(SBP)の既往のある患者への抗菌薬予防投与は再発予防や予後改善に有用か?
 3 肝腎症候群
  CQ4-29 超音波ドプラによる腎血管抵抗指数の測定は肝腎症候群の診断に有用か?
  CQ4-30 肝腎症候群に対してテルリプレシン,アルブミン併用投与は有効な治療法であるか?
  CQ4-31 肝腎症候群に対して交感神経作動薬やオクトレオチドは有効な治療法であるか?
  CQ4-32 肝腎症候群に対してP-V シャントは有効な治療法であるか?
  CQ4-33 肝腎症候群に対して経頸静脈肝内門脈大循環シャント術(TIPS)は有効な治療法であるか?
  CQ4-34 肝移植は肝腎症候群の予後を改善するか?
 4 肝性脳症
  CQ4-35 便通は肝性脳症の発症に相関があるか?
  CQ4-36 肝性脳症の患者が低蛋白食を摂取することで長期予後は改善するか?
  CQ4-37 肝性脳症に対して合成二糖類は有効か?
  CQ4-38 腸管非吸収性抗菌薬投与は肝性脳症を改善するか?
  CQ4-39 肝性脳症の意識障害に対して分岐鎖アミノ酸(BCAA)輸液製剤の投与は有効か?
  CQ4-40 バルーン下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術(B-RTO)などのシャント閉塞術は肝性脳症に有効か?
  CQ4-41 肝性脳症に対して分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の経口投与は有効か?
  CQ4-42 肝性脳症に対して亜鉛製剤は有効か?
  CQ4-43 肝性脳症に対してカルニチンは有効か?
 5 門脈血栓症
  CQ4-44 門脈血栓症には抗凝固薬が有用か?
 6 その他
  CQ4-45 脾摘,部分的脾塞栓術(PSE)は肝硬変の病態(腹水・低アルブミン血症・脳症・静脈瘤)改善に有効か?
  CQ4-46 血小板減少を伴うC型肝硬変に対し,脾摘または部分的脾塞栓術(PSE)後のインターフェロン(IFN)療法は有効か?
第5章 予後予測
  CQ5-1 肝硬変の予後予測に有用な項目は何か?
  CQ5-2 CTP(Child-Turcotte-Pugh)分類は肝硬変の予後予測に有用か?
  CQ5-3 MELD(Model for End-Stage Liver Disease)scoreは肝硬変の予後予測に有用か?
  CQ5-4 肥満は肝硬変の予後に影響を及ぼすか?
第6章 肝移植
  CQ6-1 肝移植は非代償性肝硬変の生存率を高めるか?
  CQ6-2 MELD(Model for End-Stage Liver Disease)scoreは,肝移植後の予後予測に有用か?
  CQ6-3 CTP(Child-Turcotte-Pugh)分類は肝移植後の予後予測に有用か?
  CQ6-4 抗ウイルス療法は肝移植後の治療に有用か?
  CQ6-5 非ウイルス性肝硬変に対する肝移植はウイルス性肝硬変に比して成績がよいか?
  CQ6-6 自己免疫性肝炎(AIH)による肝硬変に対する肝移植後の再発はどれほどか?
  CQ6-7 原発性胆汁性肝硬変(PBC)による肝硬変に対する肝移植後の再発はどれほどか?
  CQ6-8 原発性硬化性胆管炎(PSC)による肝硬変に対する肝移植後の再発はどれほどか?
索引

肝硬変診療ガイドライン作成の手順

1.改訂の背景
 日本消化器病学会は第一次診療ガイドライン作成事業の一環として肝硬変診療ガイドラインを2010年4月に刊行した。これに続いて第二次診療ガイドライン作成事業を進めるなか、先行ガイドラインの6疾患についても新たなエビデンスの集積に伴う改訂が必要と考えられた。統括委員会において、改訂版ではEBMを重視しつつ、広く受容されやすい推奨度を設定するために、第二次診療ガイドラインに引き続きGRADE システムを採用することが決定され、肝硬変診療ガイドラインもこの方針で改訂することとなった。肝硬変では複雑な病態に応じた多彩な診療手段を評価し直すという大きな課題があり、全編を新たに執筆するつもりで改訂に臨んだ。まず、クリニカルクエスチョン(CQ)の徹底した再検討が必要で、その基本方針として次のことを定めた。(1)2010年(旧)版ガイドラインはやや専門的過ぎて非専門医に利用されづらかったという意見があったため、肝硬変病態の基本的理解のために総論的なCQを準備する。(2)旧版のCQは原則的に尊重するが、ほとんど該当文献がなく、結論を得にくかったCQは削除する。(3)旧版ではエビデンスレベルが低く否定的な結論となったCQでもGRADE システムで推奨度が上がる可能性がある重要なものは残す。(4)新しいCQを追加するためいくつかのCQは統合する。このCQの改訂は文献検索開始前だけでなく、作成作業中も続けることとし、結果として99問の旧CQのうちそのまま継続したものは44問にとどまり、過半数のCQに変更を加えることになった。
 日本肝臓学会の協力を得て新たな作成委員を加えて討議を重ね、文献検索と発刊のタイムラグを最短にするために1983年.2012年6月という検索期間を超えて、委員の判断で最新の研究成果を反映させたことも特色といえる。構造化抄録作成前に文献管理担当会社との契約が切れ、各作成委員の負担は著しく増大したが、2014年末までに作成委員会でのコンセンサスが得られ、評価委員会からの提言とパブリックコメントを反映した改訂版をここに公表できる運びとなった。

2.改訂の手順
 1)診療ガイドライン改訂委員の設立
 2011年7月の第1回統括委員会を受けて、同年11月に先行6疾患の第1回改訂委員会が開催され、改訂の基本方針が確認された。新しい作成委員会、評価委員会が組織され、2012年月開催の〔改訂〕第1回肝硬変診療ガイドライン作成委員会において上記のCQ改訂に関する基本方針を決定した。
 2)作成基準
 文献検索、構造化抄録の作成は旧版の方法に従い、各CQのステートメントに関するエビデンスレベルの確定と推奨度の決定はGRADE システムに準じて行った。
 3)作成方法
 ・はじめに作成委員会で初版の問題点と世界の診療の現状を踏まえてCQの改訂を行い、評価委員会に諮ったのちにCQを確定した。これを基にCQごとに主担当者、副担当者を決定し、文献検索に移った。各ステートメントの原案は主担当者が作成し、副担当者の意見を入れて、作成委員会提出原稿を準備することとした。
 ・構成は旧版を基としたが、冒頭に概念(病因、病態)の章を設け、続いて診断、治療、肝硬変合併症の診断・治療、予後予測、肝移植の各章を設けた。さらに肝硬変合併症の診断・治療の章では肝性脳症に続いて門脈血栓症、その他の項を設けた。
 ・各CQの記載内容は他のガイドラインと統一するために、CQ、ステートメント(推奨の強さ、エビデンスレベル)、解説、文献の順とし、旧版に付した推奨のまとめ、検索式は省略することとした。
 ・英語論文の検索にはMEDLINE、Cochrane Libraryを、日本語論文の検索には医学中央雑誌を用いた。新規CQ、変更CQについては1983年.2012年6月末、旧版と同じCQについては2008年.2012年6月末を検索期間とした。この他、各作成委員がCQごとに必要に応じて最新の文献をハンドサーチで加えてよいこととし、これらは1982年以前の文献とともに検索期間外論文として文献欄に記載した。
 ・網羅的に検索された文献から重要なものを選別して、構造化抄録を作成し、ランダム化比較試験(RCT)についてはバイアスリスク評価を加えた。また可能な限り、GRADEシステムに準じて抄録内容をアウトカムごとに整理・統合して、body of evidenceとしてのエビデンスレベルの決定に努めた。これらを基にステートメントごとに最終的なエビデンスレベルの質について高いものから順にA、B、C、Dの4段階で表記した。
 ・推奨の強さはGRADE システムに従ってエビデンスレベルの高さ、益と害、患者の好み、コスト評価の4項目で評価した。この際、全員出席の委員会において各委員は担当するCQの資料を配布して説明し、推奨草案に対する同意率を投票で求めた。さらに委員会ではCQごとに繰り返し意見交換を行い、副担当者によるチェックと訂正原稿の回覧を通じて、内容のbrush upに努めた。
 ・保険適用のない治療については「解説」にその点を記載し、エビデンスレベルが高くても、推奨の強さは弱い推奨(提案する)にとどめた。
 ・2012年9月.2014年9月に第2回.第10回作成委員会を開催し、第9、10回委員会においてCQごとに推奨案への同意について投票を行った。その後も修正を繰り返し、2014年12月末に最終案を評価委員会に諮った。第11回作成委員会(2015年1月)において評価委員会の答申を検討し、修正を加えた後、同年4月3日.17日にパブリックコメントを募集した。第12回作成委員会(2015年5月)においてパブリックコメント後の修正案を確認し、同年8月末に著者校正を加えて改訂版を完成させた。

 昨秋、道半ばで病に倒れ、関係各位に大変ご迷惑をおかけした。様々な意見を調整して完成まで導いていただいた副委員長の齋藤英胤教授とご尽力いただいた委員の諸先生方に深甚なる謝意を捧げる。

3.使用法
 本ガイドラインは肝硬変の診療に関する2014年度までのエビデンスをもとに作成され、推奨・提案できる診療内容を提示することにより、臨床現場を支援するものである。肝硬変患者の病態は極めて多様で、診療手段には保険診療の枠外にあるものもある。本ガイドラインの適用にあたってはこれらの点に留意し、適切な対応を心がけられたい。

2015年9月
日本消化器病学会肝硬変診療ガイドライン作成委員長
福井博