書籍

日本消化器病学会ガイドライン

胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015改訂第2版

編集 : 日本消化器病学会
ISBN : 978-4-524-26778-1
発行年月 : 2015年10月
判型 : B5
ページ数 : 164

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本消化器病学会編集による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。胃食道逆流症(GERD)に関わる厖大な文献を吟味し、診療する上で問題となるクリニカルクエスチョン(CQ)に対して、推奨グレードとエビデンスレベルを明記して診療の指針を示す。GERDの疫学、病態、診断、内科的治療、外科的治療、上部消化管術後食道炎、および食道外症状の現時点での標準的治療がわかる。

第1章 疫学
 1 有病率
  CQ1-1 日本人のGERDの有病率はどれくらいか?
  CQ1-2 日本人のGERDの有病率は増加しているか?
 2 GERD患者の身体的特徴と合併症
  CQ1-3 GERDの有病率は過体重者に多いか?
  CQ1-4 GERDは食道裂孔ヘルニアに合併するか?
  CQ1-5 GERDでは食道狭窄,出血が合併するか?
第2章 病態
 1 GERDの病態
  CQ2-1 胃酸のGERはGERDの食道粘膜傷害の主な原因か?
  CQ2-2 食道裂孔ヘルニアは食道の胃酸曝露の原因になるか?
  CQ2-3 食道運動障害は食道の胃酸曝露の原因になるか?
  CQ2-4 胃酸のGERのメカニズムは?
  CQ2-5 胃酸以外のGERはGERDの原因になるか?
  CQ2-6 非びらん性GERDの病態は,びらん性GERDの病態と同じか?
 2 世界との比較
  CQ2-7 H.pylori感染でGERD有病率は低下するか?
 3 胃食道逆流(GER)の要因
  CQ2-8 激しい肉体運動はGERDの誘発因子になるか?
第3章 診断
 1 自覚症状の評価
  CQ3-1 胸やけ症状は患者に正しく理解されているか?
  CQ3-2 GERによりGERDの定型的食道症状以外の症状(食道外症状)が出現することがあるか?
  CQ3-3 GERにより食道外症状のみを呈する患者はいるか?
  CQ3-4 自己記入式アンケートはGERDの診断,治療効果の評価に有用か?
  CQ3-5 食道粘膜傷害の内視鏡的重症度は自覚症状の重症度と相関するか?
  CQ3-6 PPIテストはGERDの診断に有用か?
 2 内視鏡診断
  CQ3-7 びらん性GERDの内視鏡的重症度分類にロサンゼルス分類は妥当か?
  CQ3-8 内視鏡検査でみられるminimal changeはどう取り扱うべきか?
  CQ3-9 GERDの診断において画像強調観察・拡大内視鏡観察は有用か?
  CQ3-10 PPI抵抗性GERDは酸のGERによらない病態か?
 3 逆流現象の評価
  CQ3-1124 時間食道pH モニタリング,24時間食道インピーダンス・pH モニタリングはGERD診療に有用か?
第4章 内科的治療
 1 治療の目的
  CQ4-1 GERD治療の目的(目標)は何か?
 2 治療手段
  CQ4-2 生活習慣の改善・変更はGERDの治療に有効か?
  CQ4-3 酸分泌抑制薬はGERDの治療に有効か?
  CQ4-4 アルギン酸塩,制酸薬はGERDの治療に有効か?
  CQ4-5 PPIはGERDの第一選択薬か?
  CQ4-6 消化管運動機能改善薬,漢方薬などPPIとの併用で上乗せ効果が期待できる薬剤はあるか?
  CQ4-7 常用量のPPIで効果が不十分な場合はどうするか?
  CQ4-8 GERDの長期治療戦略は何か?維持療法,間欠療法,オンデマンド療法,ステップダウン療法はどう使い分けるか?
  CQ4-9 GERD治療薬の長期維持療法は安全か?
第5章 外科的治療
 1 外科的治療適応対象の基準
  CQ5-1 外科的治療の適応となるGERDはどのような病態のものか?
 2 外科的治療の効果
  CQ5-2 GER防止手術の長期成績はPPI治療と同等以上か?
  CQ5-3 外科的治療はPPI治療よりも費用対効果比が良好か?
  CQ5-4 GER防止手術の成績は外科医の経験と技能に左右されるか?
  CQ5-5 開腹手術に比べ腹腔鏡下手術は有用か?
  CQ5-6 びらん性GERDの外科的治療として,Nissen法はToupet法より優れているか?
  CQ5-7 GERDに対する経口内視鏡的治療は有効か?
第6章 上部消化管術後食道炎
 1 定義
  CQ6-1 術後食道炎の原因となる食道粘膜傷害性を持つ逆流内容物は何か?
 2 要因
  CQ6-2 術後食道炎の発生に影響する要因は何か?
 3 術後食道炎の病態評価
  CQ6-3 術後食道炎の病態評価の診断に有用なものは何か?
  CQ6-4 術後食道炎に特有な病理組織像はあるか?
 4 術後食道炎の治療
  CQ6-5 術後食道炎の治療に生活指導は有用か?
  CQ6-6 術後食道炎の治療に薬物治療は有用か?
  CQ6-7 術後食道炎の治療に手術療法は有用か?
 5 術後食道炎の長期経過と合併症
  CQ6-8 術後食道炎の自然経過はどうなるのか?
第7章 食道外症状
 1 非心臓性胸痛
  CQ7-1 GERにより虚血性心疾患と見分けのつかない胸痛が生じるか?
 2 慢性咳嗽
  CQ7-2 GERにより慢性咳嗽が生じるか?
 3 咽喉頭症状
  CQ7-3 GERにより慢性咽喉頭炎(自覚症状のみのものを含む)が生じるか?
 4 喘息
  CQ7-4 GERにより喘息が生じるか?
 5 睡眠障害
  CQ7-5 GERにより睡眠障害が生じるか?
 6 その他の食道外症状
  CQ7-6 GERによりその他の食道外症状が生じるか?
第8章 Barrett食道
  CQ8-1 Barrett食道はどのように定義されるか?
  CQ8-2 Barrett食道の発生にGERが関係するか?
  CQ8-3 一般日本人および日本人GERD患者のなかでBarrett食道の合併頻度は,それぞれどれくらいか?
  CQ8-4 術後食道炎からBarrett食道は生じるか?
  CQ8-5 日本人のBarrett食道からの発癌頻度はどれくらいか?
  CQ8-6 日本人のBarrett食道はすべて内視鏡による経過観察が必要か?
索引

胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン作成の手順

1.改訂ガイドライン作成の目的
2009年に、1983年から2007年までの文献エビデンスに基づいて、胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインを出版してからすでに6年が経過している。この間にGERD診療に関しては多くの進歩、変化があった。特に日本国内の疫学データや薬剤の副作用に関する情報収集が大きく進み、多くの論文が出版された。また、Barrett食道に関する知識が増加するとともに日本と欧米の違いが整理されてきた。本ガイドラインは刊行後も毎年新しい発表エビデンスをチェックし、診療に大きなインパクトを与える場合にはannual reviewの形で追記が行われてきたが、いよいよ全面改訂が必要な時期となったと考えられた。このたびの改訂は、初版刊行後のGERD研究の進歩をガイドラインに取り入れることを目的に行われた。

2.改訂ガイドライン作成の実際
 1)GRADE system
 今回の改訂では、新しくガイドライン作成の標準となりつつあるGRADE systemに準じて作成が行われることとなった。GRADE systemでは採用文献を決めるときに臨床的に重要性の高い評価項目を用いたものを重視している。また、文献エビデンスの評価にあたっては研究のデザインだけではなく、割り付けの妥当性、盲検化の有無、脱落例数、対象症例数、各種バイアスの有無、効果の一貫性と大きさ、臨床的重要性など、研究の内容を評価するためにバイアスリスク表を作成しエビデンスレベルを決定する。さらに推奨度を決めるときにもエビデンスだけではなく、患者の好みや、実現可能性、副作用やコストなども考慮することが明記されている。すなわち、GRADE systemはエビデンスを基本としながら、より臨床の現場で使用しやすいガイドラインの作成を目指した柔軟な作成基準であると考えられている。
 2)CQ作成
 改訂版作成のプロセス自体は初版の作成時とほぼ同じで、協力学会として日本消化管学会と日本食道学会の会員にも参加をしていただき協力して作成委員会の委員と評価委員会の委員を決定した。今回の作成委員会のメンバーの選定にあたっては今後の定期的な改訂作業も見越して若返りを意識しながら選定が行われている。作成にあたってまず最初に、作成委員会でCQ(clinical questions)案を検討した。初版と同じでよいもの、修正が必要なもの、削除するべきものをまず選び出し、その後、新たに追加するべきCQが作成された。新たなCQの作成にあたってはできるだけPICO(patients,intervention,comparison,outcome)に沿ったCQが作成されるように配慮がなされた。完成したCQは疫学関係が5、病態関係が8、診断関係が11、内科的治療が9、外科的治療が7、術後の食道炎が8、食道外症状が6、Barrett食道が6の合計60件であり、初版の53件に比べて7件増加してより充実したものとなっている。これらのCQのうちBarrett食道に関するものはほとんどが今回新たに作成されたCQである。CQの原案は作成委員会で決定後、評価委員会でも検討評価が行われ、作成委員会では評価委員会からのコメントに従った修正が行われた。
 3)文献検索
 その後、系統的な文献検索が行われ、初版のガイドラインで採用されなかった新しい文献の収集と評価が行われた。新しいCQや改訂したCQでは、新たに1983年以降2012年6月までの文献が収集された。また、初版と同じCQでは初版のときには検索されなかった2007年以降2012年6月までの文献に関して検索が行われた。これらの文献に関して構造化抄録が作成された後、RCTの研究を含む論文ではバイアスリスク表も作成され、論文のエビデンスレベル決定の参考とされた。なお、本ガイドラインでは解説文の作成にあたって検索期間外(1982年以前、2012年7月以降)の文献を必要に応じ一部加えている。これらについては検索期間外であることが明示されている。
 4)ステートメントの作成と推奨度の決定
 次いで、これらの文献エビデンスに加えて患者の好み、実施可能性などを考慮して各CQに対するステートメントが作成された。ステートメントにかかわる文献全体のエビデンスレベル(エビデンス総体)の決定と推奨度の決定は作成委員が集まって討議を十分に重ねた後に無記名投票を繰り返して決定した。その後、フローチャートの作成、ステートメントの解説文の作成を行い、作成委員会で討論と討論に基づく修正を行った後に、評価委員会においてチェックが行われた。その後、最終的な修正を作成委員会で行った後に、日本消化器病学会のホームページを通じて広く会員にパブリックコメントを求めた。パブリックコメントで寄せられたコメントをもとに、ステートメントと解説文の一部の修正を行って、このたび、2015年度改訂版の胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインとして発表することとなった。

3.今後の予定
 今後、一般向けの簡易解説版ガイドラインを作成するとともに、英文版を作成し、日本のガイドラインを世界に発信していく予定である。また、本改訂ガイドラインの検索期間内では、まだ臨床データに関する論文が発表されていなかったが、本年より逆流性食道炎の初期治療にも維持療法にも使用することができる新しいタイプの強力な胃酸分泌抑制薬の使用が開始されている。この新しい種類の胃酸分泌抑制薬であるpotassium competitive acid blocker(P-CAB)、ボノプラザンの臨床データの集積が進み臨床的な論文が発表されれば、本ガイドラインの追補版の作成や早期の改訂も視野に入れた検討を行っていくことが必要であろうと考えられる。

4.おわりに
 最後に、本ガイドラインをまとめるにあたって、常に一緒に仕事をしていただき、調整作業にあたっていただいた作成委員会副委員長の岩切勝彦先生、評価委員会委員長の本郷道夫先生、さらに、それぞれの仕事で多忙なところ文献の収集や評価、そのまとめに多くの時間を割いていただいた作成委員、評価委員の先生方、作成の進行モニタリング、委員間の連絡、会議の調整、記録のまとめなど事務的な仕事に多くのサポートをいただいた日本消化器病学会事務局と南江堂のみなさんに深謝いたします。

2015年9月
日本消化器病学会胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン作成委員長
木下芳一