書籍

緩和ケアの基本66とアドバンス44

学生・研修医・これから学ぶあなたのために

編集 : 木澤義之/齊藤洋司/丹波嘉一郎
ISBN : 978-4-524-26757-6
発行年月 : 2015年6月
判型 : B5
ページ数 : 252

在庫あり

定価4,320円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

緩和ケアにおいて知っておくべき内容を、66項目の基本事項と44項目のアドバンス事項で網羅した入門テキスト。基本的概念から評価、症状マネジメント、倫理・法的領域までを、学習到達目標と簡潔な記載、豊富な図表によって解説し、ポイントがつかめるよう工夫されている。これから緩和ケアを学ぶ人だけでなく、緩和ケア・がん診療に携わるスタッフが基本事項を再確認する際にも最適の一冊。

第I章 基本的概念
  基本01 緩和ケアの定義
  基本02 緩和ケアを開始する時期
  基本03 チームによるアプローチ
  基本04 疾患経過に応じた緩和ケア
  アドバンス01 がん対策基本法の理念
  アドバンス02 緩和ケア病棟,在宅緩和ケア,緩和ケアチームの特徴と役割
第II章 疾患の経過と包括的評価
  基本05 全人的苦痛の多面的・包括的な評価
  基本06 再評価と疾患の進行に応じたマネジメントの見直し
  基本07 生命予後を推定することの重要性
  アドバンス03 生命予後が限られた疾患について説明する
  基本08 患者・家族と現実的な目標について話し合う
第III章 症状マネジメント
 1.基本的概念
  基本09 病態を明らかにする
  基本10 病歴聴取と適切な診察
  基本11 症状の出現メカニズム
  基本12 計画,評価,見直しの重要性
  アドバンス04 緩和ケアの各治療法の理解
  アドバンス05 症状マネジメントの目標の共有
  アドバンス06 症状マネジメントに使用する薬物療法の原則
  アドバンス07 持続皮下注射や持続静脈注射の適応
 2.症状・病態のマネジメントのための計画作成
 A.痛み
  基本13 患者がもつ痛み(がん疼痛)
  基本14 痛みのアセスメント
  基本15 痛みに影響する要因
  基本16 痛みの分類
  基本17 WHO方式がん疼痛治療法
  基本18 非オピオイド鎮痛薬
  基本19 オピオイド−薬理学的特徴,タイトレーション,副作用とその対策
  アドバンス08 オピオイドスイッチング
  アドバンス09 鎮痛補助薬
  アドバンス10 鎮痛法の適応(放射線療法)
  アドバンス10 鎮痛法の適応(神経ブロック)
  アドバンス10 鎮痛法の適応(外科療法)
 B.呼吸器症状
  基本20 呼吸困難
  基本21 咳嗽
  アドバンス11 気道分泌亢進,血痰
  基本22 胸水
 C.消化器症状
  基本23 悪心・嘔吐
  基本24 便秘
  基本25 腹水
  基本26 下痢
  基本27 消化管閉塞
  アドバンス12 嚥下困難
  アドバンス13 黄疸
 D.神経症状
  アドバンス14 意識障害
  アドバンス15 頭蓋内圧亢進症状
  アドバンス16 転移性脳腫瘍
  アドバンス17 痙攣発作
  アドバンス18 腫瘍随伴症候群
  アドバンス19 末梢神経障害
 E.泌尿器症状
  アドバンス20 排尿障害
  アドバンス21 水腎症
 F.精神症状
  基本28 不安
  基本29 抑うつ
  基本30 希死念慮
  基本31 せん妄
  基本32 睡眠障害(不眠・過眠)
 G.緊急対応が必要な症状
  基本33 脊髄圧迫
  基本34 高カルシウム血症
  アドバンス22 上大静脈症候群
  アドバンス23 大量出血
  アドバンス24 心タンポナーデ(がん性心膜・心嚢炎)
 H.その他
  基本35 倦怠感
  基本36 食欲不振
  基本37 悪液質
  アドバンス25 緩和困難な症状に対する鎮静
  アドバンス26 リンパ浮腫
  アドバンス27 褥瘡と悪性潰瘍
  アドバンス28 口腔内病変とその予防,対処
 3.死が近づいたとき
  基本38 患者の尊厳に配慮した接し方
  基本39,40 死にゆく過程における身体兆候,終末期患者によくみられる症状と兆候
  アドバンス29 患者の全身状態の変化に応じた治療・ケア
 4.リハビリテーション
  アドバンス30 緩和ケアにおけるリハビリテーション
第IV章 心理社会的ケア
 1.心理的反応
  基本41 患者・家族が体験する一般的な心理的反応
  基本42 症状が患者・家族に与える心理的影響
  アドバンス31 患者・家族の心理的反応と感情
  アドバンス32 悲しみと抑うつとの相違
  アドバンス33 否認とその基本的対応
 2.患者・家族とのコミュニケーション
  基本43,44 患者・家族への共感的態度での傾聴,患者・家族への支持的接し方
  基本45,46 悪い知らせの伝え方とその影響,悪い知らせを適切に伝える能力
  基本47 患者・家族の喪失体験への理解
  アドバンス34 患者・家族の「気がかり」を聴きだす
  基本48 チームメンバーとの情報共有
  アドバンス35 チームメンバーとのよいコミュニケーションの重要性
  基本49 意思決定における患者の自律性への配慮
  アドバンス36 医療機関の円滑な連携の重要性
 3.家族ケア
  基本50 患者の同意を得た,家族やケア提供者とのコミュニケーション
  基本51 患者の家族背景の理解
  基本52 家族・ケア提供者のニーズ
  基本53 疾患が与える家族,仕事,社会的環境への影響
 4.喪失と悲嘆
  基本54 死別直後の家族への対応
  アドバンス37 死別前後で死別体験する人の支援方法,患者の苦痛や症状が家族などの悲嘆のプロセスに与える影響
  アドバンス38 死別,悲嘆のプロセス,喪失への適応に関する理論
 5.社会的問題
  基本55 患者・家族の経済的問題の理解
  基本56 がん体験者の心情,生活の変化,苦悩などへの理解
  アドバンス39 ボディーイメージ,セクシュアリティー,社会的役割への影響
  アドバンス40 患者・家族が希望する治療・療養への計画
  アドバンス41 退院支援の重要性,在宅緩和ケアにおける介護保険の役割,がん患者支援の社会的資源の役割と重要性
 6.セルフケアとストレスマネジメント
  基本57 患者・家族・医療従事者の多様な死生観
  基本58 自分の限界の認識と必要な助けを求める方策
第V章 スピリチュアリティーと文化・宗教的領域
  基本59 患者・家族の価値観,信念,文化,宗教などへの配慮
  基本60 医療者の価値観や信念を患者・家族に強要しない
  基本61 スピリチュアルペインの重要性
第VI章 倫理的領域
  基本62 自律尊重の原則,善行の原則,無危害の原則
  アドバンス42 公平性の原則
  基本63 インフォームド・コンセント,意思決定能力の判断,代理意思決定
  アドバンス43 治療の中止と差し控え,安楽死の要望,心肺蘇生の有無の決定
第VII章 法的領域
  基本64 リビングウィル,事前指示
  基本65 死亡確認の方法
  基本66 死亡診断書の書き方
  アドバンス44 終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインの要点
■付録:緩和ケアで用いる主な薬剤一覧表
索引

序文

 本書は、系統的に網羅されたわが国初の「医学生・初学者」を対象とした緩和ケアの教科書です。私が初めて緩和ケアの書籍を手にしたのは大学1年生の夏(1985年)でした。緩和ケアの教科書を日本語で読むことはできず、貧乏学生の身で初めて手にした教科書はRobert Twycross先生の書かれた“Therapeutics in Terminal Cancer”とRobert Buckman先生の書かれた“How to Break Bad News:A Guide for Health Care Professionals”でした。私自身は、「どうやったら痛みやつらさを体験している、死に瀕した方の力になれるか」を一生のテーマとし、臨床をしてきましたが、その基本を学ぶのはたいへんでした。
 本書は、わが国の専門家が作成した「大学医学部卒業時点で身につけておいてほしい緩和ケアの能力」を記述した「医学部・医科大学卒前教育における緩和ケア学習到達目標」をもとに、緩和ケアの広い領域のminimum essentialを示すことを第一の目的として作成されています。したがって、医学生・研修医はもちろん、緩和ケアに興味をもつ看護師をはじめとする多職種が、手軽に緩和ケアを「学び始める」のに好適な本だと思います。
 本書が緩和ケアの重厚で豊かな世界を知る道しるべとなり、患者・家族のケアの一助になるならば幸甚です。

2015年5月
編者を代表して 木澤義之

 わが国では、現在約3人に1人ががんで亡くなる時代を迎えており、非がん患者のケアを含めると、すべての臨床医が緩和ケアの基本的なスキルを身につけることが求められている。そのためには、卒前教育の段階から体系的な教育を行う必要があるが、実際には緩和ケアの教育は標準化されておらず、内容やボリュームも大学によってまちまちなのが現状である。卒前教育のminimum requirementであるモデル・コア・カリキュラムでは、緩和ケアに触れてはいるものの、項目も限られており、記載も「緩和医療を概説できる」、「癌性疼痛コントロールの適応と問題点を説明できる」などのようにきわめて曖昧である。さらに、臨床実習においても、多くの診療科では手術や抗がん薬治療など、がん病変の治療がメインの患者を学生に割り当てることが多く、学生が緩和ケアについて十分学ぶ機会を確保できている大学は少ない。さらに、学生・研修医が書籍で緩和ケアを学ぼうとしても、専門医向けの高度な内容であったり、いわゆる実践マニュアル的な内容であったりすることが多く、初学者向けに、基本的な内容を網羅した教科書はあまりないのが現状であった。
 今回、南江堂から上梓された「緩和ケアの基本66アドバンス44」は、おもに学生・研修医などの初学者が、緩和ケアについて体系的に学ぶために編集された本である。本書は、基本66項目、アドバンス44項目に分かれていて、学習者のレベルに合わせてどこから読み始めればいいのかわかりやすく示されている。各項目は、学習者が覚えておくべき要点がそれぞれ1〜2頁に短くまとめられているので、どこから頁を開いても無理なく学習を重ねていくことができる。なお、本書の章立ては、医学生が卒業時点で習得するべき緩和ケアに関する能力を明確化することを目的として、わが国における多くの緩和ケアの専門家の意見を、科学的手法を用いて集約した項目に基づいている。その内容は、がん疼痛をはじめとするさまざまな症状コントロールはもちろんのこと、心理社会的ケア、スピリチュアリティーと文化・宗教的領域、倫理、法的領域にいたるまで幅広く網羅されており、まさにわが国における緩和ケアの標準的な入門テキストといえるものである。基本項目には到達目標も明示されているため、学習成果の把握も容易である。
 本書は医学生・研修医のみならず、看護師など緩和ケアに関わる職種およびその学生、指導者にも大変役に立つ一冊である。ぜひ、一読をお勧めしたい。

臨床雑誌内科117巻4号(2016年4月増大号)より転載
評者●筑波大学医学医療系地域医療教育学教授 前野哲博