書籍

β遮断薬を臨床で活かす!

エキスパートからのキーメッセージ50

編集 : 伊藤浩
ISBN : 978-4-524-26739-2
発行年月 : 2013年12月
判型 : A5
ページ数 : 182

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

“降圧薬”に分類されるβ遮断薬が、実は循環器系薬剤の中でも強い生命予後の改善効果を持つことは意外に知られていない。冠動脈疾患や心不全、不整脈だけでなく、従来禁忌とされた糖尿病、慢性腎臓病、閉塞性肺疾患や末梢動脈疾患などへの効果も認められ、その用途は劇的に広がっている。また有用性が期待される貼付剤の登場など、β遮断薬のパラダイムシフトに関して第一線のエキスパートがわかりやすく解説。実地医家が苦手とする薬剤であるβ遮断薬を、強い味方へと変えてくれる心強い一冊。

I β遮断薬のパラダイムシフト
 1 β遮断薬は生命予後改善薬である
 2 エビデンスのあるβ遮断薬は?
 3 β1選択性β遮断薬とαβ遮断薬の相違
 4 titrationの重要性
 5 貼付剤としてのβ遮断薬をどう使う?
II 冠動脈疾患とβ遮断薬
 6 ACC/AHA/ESCのガイドラインにおけるβ遮断薬の位置づけ
 7 β遮断薬はなぜ冠動脈疾患に有効か?
 8 心筋梗塞におけるβ遮断薬のエビデンス
 9 心筋梗塞急性期からβ遮断薬を使用する意義は?
 10 労作性狭心症におけるβ遮断薬のエビデンス
 11 血行再建後もβ遮断薬を使用すべきか?
 12 心筋梗塞後の左室リモデリングとβ遮断薬
 13 冠攣縮性狭心症にβ遮断薬を用いる時の注意点
III 心不全とβ遮断薬
 14 収縮不全におけるβ遮断薬のエビデンス
 15 β遮断薬が収縮不全に効く機序
 16 収縮不全患者にβ遮断薬をどのように導入するか?
 17 超低心機能にβ遮断薬を投与する工夫
 18 何を目標にβ遮断薬を増量する?
 19 β遮断薬の効果をみるのに最適な指標は?
 20 なぜ心拍数の低下が心不全の改善に寄与するのか?
 21 β遮断薬投与中の心不全患者が急性増悪したら
 22 低心機能患者でβ遮断薬とACE阻害薬のどちらを先行させるか迷ったら
 23 中止されたβ遮断薬を再開させる時の注意点
 24 拡張不全患者におけるβ遮断薬の役割
IV 不整脈とβ遮断薬
 25 どのような不整脈にβ遮断薬を使用するか?
 26 心臓突然死予防にβ遮断薬
 27 心房細動の発症予防においてβ遮断薬が効く症例とは?
 28 心房細動患者のレートコントロール
V 慢性腎臓病とβ遮断薬
 29 慢性腎臓病は交感神経の亢進状態にある
 30 慢性腎不全患者の生命予後を改善するβ遮断薬のエビデンス
 31 慢性腎臓病患者に使用できるβ遮断薬は?
 32 透析患者にβ遮断薬を使用する意義
VI 糖尿病とβ遮断薬
 33 メタボリックシンドローム、2型糖尿病におけるβ遮断薬の役割
 34 糖尿病患者におけるβ遮断薬の心血管イベント予防エビデンス
 35 糖代謝、脂質代謝を悪化させないβ遮断薬の選択
VII 閉塞性肺疾患とβ遮断薬
 36 気管支喘息、閉塞性肺疾患患者におけるβ遮断薬の選択
 37 閉塞性肺疾患患者においてβ遮断薬は予後を改善する
 38 気管支喘息の既往患者に用いる時の注意点
VIII 周術期心筋梗塞を予防する
 39 非心臓手術に意外と多い心筋梗塞、そしてそれは患者予後を規定する、そしてそれは血行再建で予防することができない
 40 β遮断薬は周術期心筋梗塞を低下させる:そのエビデンス
 41 β遮断薬の術前投与の実際
 42 周術期における短時間作用型β遮断薬ランジオロールの使い方、使いどころ
IX 降圧薬としてのβ遮断薬
 43 どのような高血圧患者がβ遮断薬の適応か?
 44 non-dipper、早朝高血圧と交感神経系:β遮断薬の役割
 45 高血圧患者で心拍数を低下させることの意義
 46 β遮断薬との組み合わせで推奨される降圧薬は?
X その他
 47 末梢動脈疾患患者の生命予後を改善する
 48 β遮断薬を投与している患者が徐脈あるいは失神した
 49 冠動脈CT検査におけるβ遮断薬の前投与
 50 神経調節性失神とβ遮断薬
索引

“Beta-blocker treatment for chronic heart failure.The frog prince”
 これは1994年Circulation誌に掲載されたReviewのタイトルです。1974年Waagsteinが世界で最初に、心不全患者にβ遮断薬を投与しました。彼の話によると、“まさに戦いの連続であった”ということです。最初は同僚、次にスタッフ、さらに専門家から多くの批判を浴びせられたということです。その後のエビデンスの蓄積により、β遮断薬はいまや心不全治療に欠かせない薬となりました。すなわち、醜いカエルから輝くばかりのプリンスになった、まさしくおとぎ話のようなことが心不全治療で起きたのです。
 このようなβ遮断薬のパラダイムシフトは循環器のさまざまな分野で起きています。そして、それは必ずしもβ遮断薬の降圧薬としての作用を期待したものではありません。しかし、不幸なことにβ遮断薬の分類は“降圧薬”です。降圧効果も弱く、副作用も懸念されることから、日本では降圧目的での使用は10%に満たないのが現状です。実地医家にとって、もっとも使いたくない薬剤のひとつではないでしょうか。そのため、『高血圧治療ガイドライン2014』からは、降圧治療の第一選択からもβ遮断薬は外れる方向で検討されています。
 いま、われわれがβ遮断薬に期待しているのは生命予後の改善効果です。循環器系薬剤の中でももっとも高い生命予後の改善効果が認められますが、その事実があまりにも知られていません。収縮不全患者における心機能と生命予後の改善、抗不整脈作用と突然死予防作用は、降圧が得られない量でも認められます。冠動脈疾患患者にβ遮断薬を用いると生命予後が改善することから、欧米ではβ遮断薬が強力に推奨されています。また、心房細動患者における心拍数コントロールの第一選択薬でもあります。さらに、従来使用が控えられていた糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、そして閉塞性肺疾患においても、β遮断薬を使用することにより、心血管イベントを予防し生命予後が改善することが明らかになってきました。
 このように、現在起こりつつあるβ遮断薬のパラダイムシフトに関する情報を臨床の現場に伝えるのが、本書の目的です。β遮断薬をどのようにして臨床に活かしたらよいのか、薬剤の選択から投与量、そして注意点まで各分野のエキスパートにわかりやすく解説していただいています。目の前の患者に長生きしてもらうために、明日から役立つβ遮断薬の実践マニュアルとしたい、それが筆者一同の願いです。

2013年11月
伊藤浩