書籍

好酸球性消化管疾患診療ガイド

編集 : 木下芳一
ISBN : 978-4-524-26684-5
発行年月 : 2014年7月
判型 : B5
ページ数 : 110

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

近年、報告が増加しつつある好酸球性消化管疾患について、プライマリケア医をはじめとした臨床医向けに実践的にまとめたガイドブック。免疫機構の基礎知識、厚生労働省難治性疾患研究班でまとめた診断・治療指針に基づいた診療の実際、胃食道逆流症(GERD)、過敏性腸症候群(IBS)など本疾患との鑑別が難しい疾患について詳説。診断を誤らないないために読んでおきたい一冊。

I 好酸球性消化管疾患に関する基礎知識
 1.消化管における免疫機構の基礎知識
  A.パイエル板と分泌型IgA
  B.自然免疫機構
  C.ヘルパーT細胞の分化誘導
  D.新しい細胞集団
  E.好酸球の活性化機構
  F.抗IL-5抗体による分子標的療法が示唆すること
 2.食物アレルギーはどうして起こる
  A.食物アレルギーとは
  B.食物アレルギーの病態と感作機序
  C.食物アレルギーの感作機序
  D.食物アレルギーの原因検索
 3.好酸球性消化管疾患とは野村伊知郎
  A.好酸球性消化管疾患とは
  B.わが国におけるEGE、EoEの疾患概念
  C.欧米で増加しつつあるEoE、非即時型食物アレルギーの一型である可能性
  D.IgEが関与しない食物アレルギー
  E.内視鏡所見、消化管組織の典型像
  F.好酸球数から確定診断することの困難性
  G.分子生物学的研究手段の有用性への期待
  H.重症から軽症まで存在するため、QOLが障害されているか否かで治療方針を決める必要がある
  I.年長児.成人の食事療法、6種類の食物除去の試行研究
II 好酸球性食道炎
 1.疫学・病態・発生機序
  A.疫学
  B.病態
  C.発生機序
 2.診断・検査
  A.患者基本情報
  B.症状
  C.血液検査
  D.食道X線、CT検査、超音波内視鏡検査
  E.上部消化管内視鏡検査
  F.病理組織学的所見
 3.鑑別診断
  A.胃食道逆流症
  B.アカラシア
  C.その他
 4.治療・予後
  A.プロトンポンプ阻害薬とPPI-REE
  B.薬物療法
  C.食事療法
  D.内視鏡治療
  E.維持療法
  F.EoEの自然史と予後
III 好酸球性胃腸炎
 1.疫学・病態・発生機序
  A.疫学
  B.病態
  C.発生機序
 2.診断・検査
  A.診断
  B.検査
 3.鑑別診断
  A.過敏性腸症候群
  B.炎症性腸疾患
  C.コラーゲン形成大腸炎
  D.薬剤関連腸炎
  E.その他
 4.治療・予後
  A.治療
  B.予後
IV 症例
 1.ステロイドの投与が有効であった好酸球性食道炎の1例
 2.PPIが著効した好酸球性食道炎の1例
 3.抗アレルギー薬には抵抗し、ステロイドが著効した好酸球性食道炎の1例
 4.食事療法と抗アレルギー薬投与により症状が改善した好酸球性胃腸炎の1例
 5.カプセル内視鏡で小腸病変の経過を追うことができた好酸球性胃腸炎の1例
 6.ステロイドの継続が必要であった好酸球性胃腸炎の1例
索引

疾患の頻度は時代とともに移り変わっていく。日本においても、その頻度が急速に増加していた動脈硬化を原因とした心筋梗塞や脳梗塞・出血は減少の兆しがみえている。また、胃がんや肝臓がんは少なくなり、悪性腫瘍全体をみても頭打ちとなってきたように思える。一方で気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患が増加している。アレルギー疾患は動脈硬化性疾患や悪性腫瘍と違って、社会的に活動性の高い若年者に発症しやすいことが大きな問題である。アレルギー疾患の増加は、先進国から始まり徐々に発展途上国にまで広がりつつある。好酸球性消化管疾患は以前からその存在が知られていたが、頻度は高いものではなかった。ところが1990年代の初めから、欧米を中心に好酸球性消化管疾患の中でも特に、好酸球性食道炎の急激な増加が報告されるようになってきた。現在欧米では、上部消化管の内視鏡検査受検例のうち200人に1人が好酸球性食道炎と診断される時代になっている。日本では従来、好酸球性胃腸炎の報告は比較的多かったが、最近では好酸球性食道炎の報告も珍しくなくなってきている。すなわち、日本においても欧米の現状を追いかけるように、消化管疾患の中で腫瘍、感染症、機能性疾患とともにアレルギー疾患を含む炎症性疾患の重要性がますます大きくなってきている。
 好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎を含む好酸球性消化管疾患は主に食物がアレルゲンとなって発症する遅延型のアレルギー疾患であると考えられているが その病態の解析は始まったばかりであり、診断方法も治療方法もやっとコンセンサスが得られつつある状況である。診断と治療の方法は確立、統一の途上ではあるが、患者数は増加しており診療の現場では最新情報の普及と早急な診療指針の確立が必要となっている。そこで本書は、厚生労働省の好酸球性消化管疾患の研究班で様々な検討を行っておられる専門の先生方を中心に、好酸球性消化管疾患の疫学、病態、診断、治療、予後、鑑別すべき類縁疾患に関する最新情報を診療の現場で役立つように、わかりやすくまとめていただいた。
 本書を通読していただくと、好酸球性消化管疾患の全体像がつかめるとともに、好酸球性食道炎の診断は内視鏡像に精通し生検を積極的に行えば難しくないこと、好酸球性食道炎と比べて好酸球性胃腸炎の診断は難しいこと、組織所見で胃腸の粘膜に浸潤好酸球が多いというだけでは好酸球性胃腸炎の診断をつけることができないこと、好酸球性胃腸炎の診断のためには綿密な鑑別診断とそれに加えて詳細な経過観察が必要であること、治療は好酸球性食道炎も好酸球性胃腸炎も確立していないこと、などを理解していただける構成となっている。
 好酸球性消化管疾患に関する研究は急速に進行しており、日本においても疾患の本態を把握して発症リスクを判定することを目指したgenome-wide association study(GWAS)、簡便な診断のための血液バイオマーカーを同定するための多施設研究、根本治療を目指した6食材除去食を用いた治療の試みなど多数の研究が行われている。本書を読破して好酸球性消化管疾患の基本知識を得たのちに原著論文にあたっていただき、診療の現場に最新の研究成果を反映させるように努力していただければ幸いです。

2014年6月
島根大学医学部内科学第二教授
木下芳一

 好酸球性消化管疾患(好酸球性食道炎、胃腸炎)はわが国のみならず欧米でもまれな疾患であったが、その発症数は現在全世界的に増加しつつある。しかしながら、本疾患はわが国ではやはりまだまれな疾患であり、その病因・病態は不明で、かつ有効な治療法は確立されていない。さらに長期にわたって持続するため、まさにわが国でいわれる「難病」に相当する。このため数年前から厚生労働省の難病研究班(小児グループと成人グループの2班)が立ち上がって、研究が進められてきた。本書の編集者の木下芳一教授は、成人グループの研究代表者を長くしてこられた。また本書の執筆者の多くは、とくに成人グループの班員の方々で構成されている。したがって本書は、とくに成人の好酸球性消化管疾患の班会議の現時点での集大成ととらえることができる。実際に疫学、病因・病態、診断、治療、予後などについて、最新の情報に基づいてコンパクトに、かつわかりやすく解説されている。本書を読まれる方は、本疾患の診療経験がほとんどない方が大半と思われるが、とくにそうした方々にとってぴったりで、非常に役に立つ内容である。最後に症例提示があることも、本書をさらに読みやすくさせている。
 好酸球性消化管疾患はきわめて興味深い疾患である。小児と成人の疾患の間で、さまざまな共通項があると同時に、いくつかの違いも存在する。小児から成人への移行については、疾患の歴史が浅いために十分わかっていない。また、多くの例で食物アレルギーを合併しており、広い意味でのアレルギー性疾患と考えられるが、アレルゲンがどのように疾患を誘発するのかも不明である。従来の即時型アレルギーとは異なっており、IgEは関与しないと考えられている。さらに欧米では好酸球性食道炎が多いが、わが国では胃腸炎が多いという特徴がある。この理由についても不明である。また、最近PPI投与が効果的な一群が存在することが指摘されているが、この病態の正確な位置付けもいまだ不明である。本書を読むと、こうした疑問についても、端々に「問いかけ」や「考え方」が示されており、本疾患への興味が広がるように感じる。
 好酸球性消化管疾患は、今後さらに増え続けると考えられる。患者さんが増加するのは喜ばしいことではないが、できるだけ多くの消化器医が本書を読まれることで、今まで診断がついていなかった患者さんに正確な診断がなされることを期待したい。そして、そうした臨床データの集計から、好酸球性消化管疾患の病因・病態の解明が進み、よりよい治療法が考案されることを期待したい。

臨床雑誌内科115巻5号(2015年5月号)より転載
評者●京都大学医学研究科消化器内科教授 千葉勉