書籍

よくわかる肺移植

編集 : 近藤丘/岡田克典
ISBN : 978-4-524-26682-1
発行年月 : 2014年10月
判型 : A5
ページ数 : 166

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日常、移植の対象となるかもしれない肺疾患を診療しているすべての医師、移植前後のフォローアップを担当する可能性のあるメディカルスタッフ必読の1冊。肺移植の適応疾患や除外条件、一般施設での移植前後の経過観察に必要な合併症や免疫抑制療法はもちろん、患者の自己管理やリハビリテーション、肺移植の流れや移植コーディネーターの役割といった肺移植の知識を網羅した。

第I章.肺移植の概要
 1.肺移植の歴史と海外の現状
 2.日本の肺移植の現状と課題
第II章.肺移植の適応疾患・除外条件:どのような疾患の患者が適応となるのか
A 脳死肺移植と生体肺移植
 1.脳死肺移植
 2.生体肺移植
B 代表的疾患と疾患別の注意点
 1.特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)/遺伝性PAH(HPAH)
 2.肺リンパ脈管筋腫症(LAM)
 3.特発性間質性肺炎(IIPs)
 4.造血幹細胞移植後の肺障害
 5.その他の肺移植適応疾患
C 適応を考える上での問題点
 1.人工呼吸器の装着
 2.B型肝炎
 3.C型肝炎
 4.悪性腫瘍
 5.気道感染症
 6.その他の併存症
D 小児の特殊性
 1.小児肺移植の現状
 2.疾患別の肺移植実施施設紹介のタイミング
 3.小児肺移植の特殊性
第III章.肺移植の登録と待機
 1.日本臓器移植ネットワークへの登録まで
 2.登録後どのように待機するのか
 3.待機中の管理
 4.ドナー発生時移動手段
 5.生体肺移植の場合はどうなるのか
第IV章.肺移植手術
 1.移植手術が決まったら
 2.入院から手術までに行うこと
 3.施行手術の違いによる手術時間
 4.その他手術にまつわること
第V章.肺移植術後管理と合併症
A 脳死肺移植
 1.集中治療室(ICU)における術後管理
 2.一般病棟における術後管理
 3.肺移植後合併症
B 生体肺移植
 1.レシピエント手術の特殊性
 2.生体ドナー手術
 3.術後管理の特殊性
第VI章.免疫抑制と外来・日常の管理
A 免疫抑制療法の概要と注意点
 1.肺移植の免疫抑制療法
 2.免疫抑制薬の種類
 3.免疫抑制療法の注意点
B 外来管理、定期検査
 1.外来管理
 2.定期精密検査
C 日常の自己管理、食事、運動など
 1.感染症の予防
 2.食事
 3.運動
 4.内服薬の管理
 5.健康管理表
第VII章.リハビリテーションの重要性
 1.呼吸リハビリテーションとは
 2.運動耐容能評価
 3.運動療法
 4.移植前
 5.移植後早期
 6.移植後
第VIII章.レシピエント移植コーディネーターの役割
 1.移植登録準備期間
 2.移植待機期間
 3.移植後入院期間
 4.移植後遠隔期
第IX章.費用と医療福祉制度
 1.移植に関わる費用
 2.医療福祉制度
文献
索引

−肺移植医療における情報の非対称性解消のために−
肺移植をより広く知っていただくために

 肺移植の研究に携わるようになって40年近くになる。研究をスタートさせた当初はもとより、学位を取得し、海外に研究留学し、そこで実際の肺移植の臨床を目にし、という月日の経過を経てもなお、日本では脳死臓器移植ができるようになるのかどうかさえ定かではなかった。そのような長く、ある意味不遇な時代を過ごしてきた身としては、自らの経験をもとにして肺移植のテキストブックを出版するなど、まるで夢のまた夢のようなお話で、今回本書を発行できたことについては、ただひたすら感無量としか言葉がない。このような時代を生きることができためぐり合わせに感謝するとともに、自分の歩く道をともに拓き、支え、突き固め舗装してくれた多くの方々に、この場をお借りして心から感謝をし、本書を捧げたいと思う。
 臓器移植は、脳死下での臓器提供が始まって15年以上を経た現在でも、わが国では特殊な医療という位置づけのままであると言える。なかでも、肺移植は市中病院で実施しうる医療ではなく、現状はもちろん、将来的にも医療としての特殊性はきわめて高いものである。そのため、市中病院の医療従事者がその実施を経験する機会はほとんどないと言ってよいのであるが、肺移植の対象となるような疾患を日常的に診療しているのは、実はそのような病院なのである。よく言われる情報の非対称性が、臓器移植領域では医療現場に発生していると言って過言ではない。このような情報の非対称性が患者の不利益に繋がることは言うまでもないことである。
 本書は、わが国ではまだまだ知られていない肺移植医療について、情報の非対称性を極力解消すべく、肺移植の対象となるような疾患を日常的に診療する機会を有するすべての医師に読んでいただくために、その全行程に関してできるだけ分かりやすくまとめてみたものである。1人でも多くの医師とメディカルスタッフ、そしてその先にある患者さんに、肺移植に関わる有用な情報が正しく伝わることを切に願う次第である。

2014年9月
近藤丘
岡田克典

 本書は、まさしく、その出版が待ち望まれていた書である。その理由は、呼吸器疾患の診療に従事する医師にとって、肺移植は特殊な医療であることに変わりはないが、徐々に身近な治療選択肢になりつつあるからである。わが国では、1998年に国内初の生体肺移植が岡山大学において実施され、呼吸器病診療に携わる医師は驚きと大きな感動を覚えたものである。そして、2000年には東北大学と大阪大学において国内初の脳死肺移植が実施され、日本においても脳死肺移植が難治性呼吸器疾患の治療選択肢のひとつとして認識される時代が拓かれた。しかし、ドナー不足のため脳死肺移植件数は伸び悩んでいたが、2010年7月に改正臓器移植法が施行された以降は平均約15件/年と増加し、脳死肺移植は着実に身近な治療選択肢として認知されるようになった。一方、近藤 丘教授・岡田克典准教授が本書を企画した意図のように、情報の非対称性が存在する。肺移植が必要となる難治性呼吸器疾患の患者を日常的に診療するのは、われわれ一般の呼吸器内科医であるが、肺移植の実際は十分には理解されていない。本書にあるように、日本の肺移植成績は世界標準よりも良好であり、日本の患者は良質な移植医療を享受できる環境にある。そのためには、難治性呼吸器疾患の患者を診療しているわれわれが移植医療をよく理解し、肺移植を必要とする患者を適切なタイミングで移植施設に紹介することが求められる。
 本書は、肺移植の概要から、適応・除外基準、移植登録と待機期間中の管理、移植手術についての説明、と順々に構成され、移植が必要となるかもしれない患者を受けもつ医師が読み進むにつれて移植医療をイメージしやすいよう構成されている。とくに第II章では、肺移植が適応となる代表的疾患について疾患別に注意点と移植施設へ紹介するタイミングが解説されていて、実践的である。第IV章は脳死および生体肺移植が実際どのような手順で進められるのか、わかりやすく書かれている。筆者は何度か肺移植の手術室に入って見学したことがあるが、手術室の情況がイメージでき、改めて理解を深めることができた。第V章以降では、術後管理、そして退院後の外来管理についてまとめられている。免疫抑制薬による拒絶反応の管理のみならず、非薬物療法としての生活管理や指導、呼吸リハビリテーションの重要性も述べられている。最後は、なかなか一般呼吸器内科医の意識が向きにくいところであるが、移植に必要な医療福祉制度についても記載されており、とても配慮が行き届いている。
 肺移植はチーム医療である。本書の表紙絵に、著者たちのその思いを感じることができる。第VIII章の「レシピエント移植コーディネーターの役割」を読むと、一人の患者の肺移植にかかわるさまざまな医療職や患者・家族を、円滑にそして有機的に連携する多彩な役割に驚かされる。同時に、本書を読み終えると、将来肺移植が必要となる可能性がある患者を診療しているならば、自分もチームの一員としてすでに移植医療にかかわっていることが理解できるであろう。チームの一員として、折に触れて何度も読み返したい本である。

臨床雑誌内科116巻1号(2015年7月号)より転載
評者●順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学先任准教授 瀬山邦明

 肺移植に特化した待望の書籍が発刊された。編集・執筆ともすべて、東北大学で実際に肺移植医療に携わっているエキスパートが担当している。東北大学グループは、肺移植を日本でもっとも古くから研究しており、2000年3月に日本ではじめての脳死肺移植を成功させた。脳死肺移植に関しては、日本でもっとも多くの実施数を誇っている。一施設でまとめた書籍ではあるが、きわめて客観性に富んだ記載となっており、日本のすべての肺移植認定施設や今後肺移植認定をめざす施設の医療従事者に役立つものと思われる。
 日本には、各疾患別の肺移植適応ガイドラインは現在存在しない。本書の16〜43ページには、“代表的疾患と疾患別の注意点”がまとめられている。国際心肺移植学会などが示した各疾患のガイドラインをもとに、日本で肺移植適応となることの多い造血幹細胞移植後の肺障害についても言及されている。それに続く44〜49ページには、“適応を考える上での問題点”がまとめられている。人工呼吸器の装着、B型肝炎、C型肝炎、悪性腫瘍、気道感染症など、実際に多くの肺移植希望患者を診察し検討してきたエキスパートによって、悩んだときに役立つ情報がまとめられている。
 肺移植は、多くの専門職が協力して行う究極のチーム医療と位置づけられている。リハビリテーションの重要性、レシピエント移植コーディネータの役割、費用と医療福祉制度などは、コメディカルスタッフにより執筆されており、将来肺移植認定をめざす施設には、特に役立つものと思われる。
 全体的に図表が多く、内容もたいへんわかりやすく記載されている。値段が3,000円と比較的安価で購入しやすく、A5サイズなので持ち運びにも便利である。医師だけでなく、肺移植にかかわるすべての医療従事者にとって、机の上においておきたい一冊といえよう。

胸部外科68巻9号(2015年8月号)より転載
評者●京都大学呼吸器外科教授 伊達洋至