書籍

遺伝カウンセリングマニュアル改訂第3版

監修 : 福嶋義光
編集 : 櫻井晃洋
ISBN : 978-4-524-26667-8
発行年月 : 2016年4月
判型 : A5
ページ数 : 494

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

遺伝疾患の患者さんとその可能性のあるクライエントに対するカウンセリングについて包括的にまとめる。総論では家系図の作成法や再発率・変異率の推定法や計算法、および遺伝学的検査法などの最新情報と今日的課題を解説。各論では300以上の遺伝性疾患・病態について、原因・再発率・臨床像・遺伝カウンセリングのポイントの順にまとめている。臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーおよびそれを目指す医師・学生必携。

総論
 1.遺伝カウンセリングの基本理念
  A.遺伝カウンセリングの歴史
  B.遺伝カウンセリングとは
  C.遺伝カウンセリングの流れ
  D.これからの遺伝カウンセリング
 2.家系図の基本
  A.家系情報の重要性
  B.家系図の表記法,記載内容
  C.家系図作成に際しての注意事項
 3.再発率,変異率の推定
  A.理論的再発率
  B.経験的再発率
  C.Bayesの定理
  D.変異率
 4.遺伝カウンセリングにおける基本的なコミュニケーションスキル
  A.遺伝に関する「カウンセリング」とは
  B.コミュニケーションスキルの概要
 5.遺伝カウンセリングと生命倫理
  A.医療における倫理原則
  B.遺伝医療における生命倫理学的問題
 6.遺伝カウンセリングの診療体制
  A.一次遺伝医療
  B.二次遺伝医療
  C.三次遺伝医療
 7.遺伝カウンセリング担当者の資格
  A.臨床遺伝専門医
  B.認定遺伝カウンセラー
 8.分子遺伝学的検査
  A.遺伝子関連検査の分類と生殖細胞系列の遺伝子情報の特殊性
  B.遺伝カウンセリングにおける分子遺伝学的検査
 9.遺伝生化学的検査
  A.一般臨床検査として実施される遺伝生化学的検査
  B.特殊な代謝産物の測定
  C.酵素活性の測定
  D.負荷検査
 10.細胞遺伝学的検査
  A.検査法
  B.対象・適応・目的
  C.検査結果の解釈
 11.出生前診断の実際
  A.出生前診断とは
  B.適応
  C.検査方法
  D.出生前診断と遺伝カウンセリング
  E.出生前診断の留意点
 12.遺伝医療に関連するガイドライン
  A.ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針
  B.遺伝学的検査に関するガイドライン
  C.医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン
  D.ファーマコゲノミクス検査の運用指針
  E.医療・介護関係事業者における適切な取扱いのためのガイドライン
  F.その他
 13.遺伝カウンセリングと情報ネットワーク
  A.専門家向け遺伝医学情報サイト
  B.一般市民向け情報サイト
  C.遺伝関連学会サイト
  D.遺伝性疾患診断補助サイト
  E.インターネットを利用した情報ネットワーク
 14.患者会・サポートグループとの連携
  A.遺伝性疾患患者の状況
  B.患者会・サポートグループの現状
  C.患者・家族会の意義
  D.医療サイドとの連携
各論
 1章 神経疾患
  1.ハンチントン病
  2.脊髄小脳変性症
   A.マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳失調症3型
   B.脊髄小脳失調症6型
   C.脊髄小脳失調症31型
   D.歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症
   E.常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症
  3.痙性対麻痺
  4.アルツハイマー病
  5.プリオン病
  6.軸索腫大を伴う遺伝性白質脳症
  7.副腎白質ジストロフィー
  8.常染色体優性遺伝性小血管病
  9.常染色体劣性遺伝性小血管病
  10.パーキンソン病
  11.一次性遺伝性ジストニア
  12.シャルコー・マリー・トゥース病
  13.トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
  14.筋萎縮性側索硬化症
  15.球脊髄性筋萎縮症
  16.脊髄性筋萎縮症
  17.レット症候群
  18.ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群
  19.結節性硬化症
  20.てんかん
   A.良性家族性新生児てんかん
   B.素因性てんかん熱性けいれんプラス
   C.ドラベ症候群
   D.常染色体優性夜間前頭葉てんかん
   E.てんかん性脳症(大田原症候群,ウエスト症候群)
  21.脳形成異常
  22.ナルコレプシー
  23.統合失調症
  24.気分障害
  25.自閉症/自閉症スペクトラム障害
  26.知的障害(精神遅滞)
  27.脆弱X症候群
 2章 筋疾患
  1.デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー
  2.福山型先天性筋ジストロフィー
  3.筋強直性ジストロフィー
  4.その他の筋ジストロフィー
   A.エメリ・ドレイフュス型筋ジストロフィー
   B.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
   C.肢帯型筋ジストロフィー
  5.悪性高熱症
  6.重症筋無力症
   A.自己免疫による重症筋無力症
   B.先天性筋無力症候群
  7.ミトコンドリア脳筋症
  8.先天性ミオパチー
  9.先天性筋強直症(トムゼン病,ベッカー病)
  10.周期性四肢麻痺
 3章 眼科疾患
  1.網膜色素変性症
  2.レーベル遺伝性視神経萎縮症
  3.その他の視神経萎縮症
  4.網膜剥離
  5.脈絡膜萎縮症
  6.網膜芽細胞腫
  7.ノリエ病
  8.角膜ジストロフィー
   A.顆粒状角膜変性症
   B.フックス角膜内皮変性症
   C.メースマン角膜上皮変性症
   D.格子状角膜変性症II型
  9.白内障
  10.緑内障
  11.屈折異常
  12.無虹彩症
  13.色覚特性(色覚異常)
  14.眼振
  15.斜視
  16.眼瞼下垂
  17.小眼球症
 4章 耳鼻科疾患(遺伝性難聴)
  1.遺伝性難聴総論
  2.GJB2遺伝子による難聴
  3.SLC26A4遺伝子による難聴(ペンドレッド症候群,前庭水管拡大を伴う非症候群性難聴)
  4.CDH23遺伝子による非症候群性難聴
  5.KCNQ4遺伝子による難聴
  6.TECTA遺伝子による難聴
  7.WFS1遺伝子による難聴
  8.COCH遺伝子による難聴
  9.ミトコンドリア遺伝子m.1555A>G変異による難聴
  10.ミトコンドリア遺伝子m.3243A>G変異による難聴
  11.アッシャー症候群
  12.鰓・耳・腎症候群
  13.ワーデンブルク症候群
 5章 頭部・顔面疾患
  1.FGFR関連頭蓋骨癒合症候群
  2.セトレ・コーツェン症候群
  3.トリーチャーコリンズ症候群
  4.ピエールロバンシークエンス
  5.鰓弓症候群
  6.口腔・顔・指趾症候群I型
  7.口唇裂/口唇口蓋裂/口蓋裂
  8.無歯症,乏歯症
  9.エナメル質形成不全症
 6章 循環器・呼吸器疾患
  1.先天性心疾患
  2.22q11.2欠失症候群
  3.ウィリアムス症候群
  4.肥大型/拡張型心筋症
  5.QT延長症候群
  6.血管型エーラス・ダンロス症候群
  7.遺伝性出血性毛細血管(末梢血管)拡張症
  8.遺伝性肺動脈性高血圧症
  9.α1アンチトリプシン欠損症
  10.カータゲナー症候群
  11.バート・ホッグ・デューベ症候群
 7章 消化器疾患
  1.乳児肥厚性幽門狭窄症
  2.消化性潰瘍
  3.無カタラーゼ血症
  4.ヒルシュスプルング病
  5.消化管奇形
   A.食道閉鎖±気管食道瘻
   B.横隔膜ヘルニア
   C.十二指腸閉鎖/狭窄
   D.臍帯ヘルニア
   E.肝外胆道閉鎖
   F.鎖肛,直腸肛門奇形
  6.遺伝性高ビリルビン血症
   A.クリグラー・ナジャール症候群
   B.ギルバート症候群
   C.デュビン・ジョンソン症候群
   D.バイラー病,進行性家族性肝内胆汁うっ滞症
  7.アラジール症候群
  8.アカラシア
  9.バレット食道
  10.congenital short bowel and malabsorption syndrome
  11.セリアック病
  12.炎症性腸疾患
 8章 腎・泌尿器疾患
  1.先天性腎尿路奇形
  2.常染色体優性多発性嚢胞腎
  3.遺伝性腎炎
   A.アルポート症候群
   B.菲薄基底膜症候群
  4.腎結石
  5.若年性ネフロン癆
  6.デント病
 9章 骨・結合組織疾患
 骨系統疾患
  1.軟骨無形成症/軟骨低形成症
  2.タナトフォリック骨異形成症1型,2型
  3.先天性脊椎骨端異形成症
  4.スティックラー症候群
  5.短肋骨多指症候群/呼吸不全性胸郭異形成症
  6.多発性骨端異形成症I,II,III,IV,V,VI型
  7.偽性軟骨無形成症
  8.骨幹端異形成症
  9.軟骨無発生症/軟骨低発生症
  10.屈曲肢異形成症
  11.点状軟骨異形成症
  12.大理石骨病,およびその他の骨硬化症(硬化性骨異形成症)
  13.骨形成不全症
  14.低ホスファターゼ症
  15.多発性軟骨性外骨腫症,その他の過誤腫性疾患
  16.鎖骨頭蓋異形成症
  17.脊椎肋骨異形成症(脊椎胸郭異形成症,クラリーノ3徴を含む)
  18.ホルト・オーラム症候群
 指趾形態異常
  19.裂手裂足(EEC症候群を含む)
  20.短指(趾)症
  21.多指合指(趾)症
  22.指節関節癒合症
  23.ポーランド奇形
 結合織疾患
  24.マルファン症候群,およびその類縁疾患
   A.マルファン症候群
   B.ロイス・ディーツ症候群
  25.エーラス・ダンロス症候群
  26.皮膚弛緩症
  27.ラールセン症候群,FLNB異常症
  28.関節拘縮を主徴とする症候群
  29.爪膝蓋骨症候群
 10章 皮膚疾患
  1.白皮症
  2.色素異常症
  3.魚鱗癬
  4.角化症
  5.表皮水疱症
  6.へイリー・ヘイリー病
  7.無(低)汗性外胚葉異形成
  8.先天性無汗無痛症
  9.ロースムント・トムソン症候群
  10.色素性乾皮症A〜G群,V
  11.弾性線維性仮性黄色腫
  12.ウェルナー症候群
  13.基底細胞母斑症候群
  14.神経線維腫症(16章参照)
  15.レジウス症候群
  16.コーデン病(16章参照)
  17.色素失調症,伊藤白斑
  18.血管腫症
 11章 代謝疾患
  1.代謝疾患総論
 アミノ酸代謝異常症
  2.高フェニルアラニン血症
  3.高チロシン血症1型,2型,3型
  4.非ケトーシス性高グリシン血症
  5.メープルシロップ尿症
  6.ホモシスチン尿症1型,2型,3型
  7.シスチン尿症
 尿素サイクル異常症
  8.オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症
  9.その他の高アンモニア血症
  10.シトリン欠損症
 有機酸代謝異常症
  11.メチルマロン酸血症
  12.プロピオン酸血症
  13.マルチプルカルボキシラーゼ欠損症
  14.グルタル酸血症I型
  15.グルタル酸血症II型
 脂肪酸代謝異常症
  16.中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠損症
  17.極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症
  18.カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT1)欠損症
  19.カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT2)欠損症
  20.カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠損症
  21.全身性カルニチン欠乏症
 糖質代謝異常症
  22.肝型糖原病
  23.筋型糖原病
  24.ガラクトース血症
  25.Glut-1欠損症
 核酸代謝異常症
  26.レッシュ・ナイハン症候群
 色素代謝異常症
  27.ポルフィリン症
 金属代謝異常症
  28.遺伝性ヘモクロマトーシス
  29.ウィルソン病
  30.メンケス病,オクチピタル・ホーン症候群
  31.無セルロプラスミン血症
 脂質代謝異常症
  32.家族性高コレステロール血症
 ライソゾーム病
  33.ファブリー病
  34.ゴーシェ病
  35.ポンペ病
  36.ニーマン・ピック病
  37.GM1ガングリオシドーシス
  38.GM2ガングリオシドーシス
  39.異染性白質ジストロフィー,サポシンB欠損症
  40.クラッベ病(グロボイド細胞白質ジストロフィー),サポシンA欠損症
  41.ムコ多糖症
  42.ムコリピドーシス
  43.ガラクトシアリドーシス
  44.ウォルマン病/コレステロールエステル蓄積症
  45.神経セロイドリポフスチン症
 ペルオキシソーム病
  46.ペルオキシソーム形成異常症(ツェルベーガースペクトラム)
  47.副腎白質ジストロフィー(1章参照)
 ミトコンドリア病
  48.ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症
  49.ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)欠損症
  50.呼吸鎖酵素欠損症
 12章 内分泌疾患
  1.複合型下垂体ホルモン欠損症
  2.低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
  3.男性限性思春期早発症
  4.家族性下垂体腫瘍症候群
  5.尿崩症
  6.先天性甲状腺機能低下症
  7.自己免疫性甲状腺疾患
  8.甲状腺ホルモン不応症
  9.副甲状腺機能亢進症
  10.副甲状腺機能低下症
  11.偽性副甲状腺機能低下症
  12.遺伝性くる病
  13.バーター症候群
  14.ジテルマン症候群
  15.リドル症候群
  16.apparent mineralocorticoid excess(AME)症候群
  17.多腺性自己免疫症候群
  18.先天性副腎皮質過形成症
  19.先天性副腎低形成症
  20.アンドロゲン不応症
  21.性分化疾患
  22.MODY(maturity oncet of diabetes of the young)
 13章 血液・凝固・免疫不全
  1.遺伝性球状赤血球症
  2.赤血球酵素異常症
  3.サラセミア
  4.鎌状赤血球血症
  5.ファンコーニ貧血
  6.Rh血液型不適合
  7.血友病
  8.血友病を除く血液凝固因子の異常
  9.血液凝固を制御する因子の異常
  10.線溶系の異常
  11.血小板膜糖タンパク異常症
  12.先天性好中球減少症
  13.白血球接着分子欠損症
  14.慢性肉芽腫症
  15.チェディアック・東症候群
  16.重症複合免疫不全症
  17.アデノシンデアミナーゼ欠損症
  18.無γグロブリン血症
  19.高IgE症候群
  20.ウィスコット・オールドリッチ症候群
  21.毛細血管拡張性失調症
  22.補体成分タンパク欠損症
 14章 多発奇形症候群
  1.モワット・ウィルソン症候群
  2.ヴィードマン・ベックウィズ症候群
  3.アンジェルマン症候群
  4.コッフィン・ローリー症候群
  5.ブラッハマン・デランゲ症候群
  6.歌舞伎メイキャップ症候群
  7.ヌーナン症候群
  8.ルビンステイン・テイビ症候群
  9.ラッセル・シルバー症候群
  10.ソトス症候群
  11.髪・鼻・指症候群
  12.CHARGE症候群
  13.VATER(VACTERL)連合
 15章 染色体異常
  1.ダウン症候群
  2.13トリソミー症候群,18トリソミー症候群
  3.性染色体異常症候群
  4.染色体構造異常症候群
  5.均衡型相互転座
  6.不均衡型相互転座
  7.染色体逆位
  8.その他の染色体構造異常
 16章 腫瘍
  1.遺伝性乳癌・卵巣癌症候群
  2.リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)
  3.家族性大腸ポリポーシス
  4.ポイツ・イェーガース症候群
  5.リ・フラウメニ症候群
  6.多発性内分泌腫瘍症1型
  7.多発性内分泌腫瘍症2型
  8.フォンヒッペル・リンドウ病
  9.遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫症候群
  10.神経線維腫症1型
  11.神経線維腫症2型
  12.カーニー複合
  13.PTEN過誤腫症候群
 17章 多因子疾患
  1.糖尿病
  2.過敏症(免疫反応を原因とする疾患群)
 18章 妊娠に関連した遺伝カウンセリング
  A.胎内感染
  B.薬剤の催奇形性
  C.放射線の遺伝的影響
  D.習慣流産
  E.高齢妊娠
  F.近親結婚
 19章 薬理遺伝学
  A.薬理遺伝学とは
  B.分析対象に基づくPGx検査−遺伝学的検査と体細胞遺伝子検査
  C.遺伝学的検査としてのPGx検査の特徴
  D.PGx検査を診療で活用するステップ−実施と情報管理
  E.PGx検査を医療機関内で実施する際には
 20章 遺伝マーケット
  A.体質遺伝学的検査
  B.DNA親子鑑定ビジネス
  C.世界の動向
  D.国内行政
  E.学会の動向
  F.業界の動向
付録
 付図
 付表
  1.遺伝学的検査に関するガイドライン(2003年8月)
  2.医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2011年2月)
索引

改訂第3版の序

 本書の初版が刊行されたのは1996年、第2版の刊行は2003年である。それからすでに13年が経過し、医学の中でも最も進展の速い領域のひとつである遺伝医療の図書としては改訂に時間を要しすぎた感は否めない。2003年といえばヒトゲノムプロジェクトが完了した年である。このプロジェクトではヒトゲノムの解読に13年と3千億円もの費用を要したが、遺伝子解析技術の驚異的な進歩は今や数日、千ドル程度の時間と費用でひとりのゲノム配列を解読できるまでに至っている。
 2003年はまた、わが国で遺伝関連10学会による「遺伝学的検査に関するガイドライン」が公表された年でもある。そこでは、遺伝学的検査は総合的な遺伝医療を行う体制が整った施設において、遺伝カウンセリングを行ったのちに実施すべきこと、遺伝情報は原則として、他の診療情報とは区別して保管されるべきことが記載されていた。まだ解析できる遺伝子には限りがあり、遺伝医療の普及が十分ではない中で、医療における遺伝情報の活用と被検者の保護を両立させるべく策定されたものである。しかしその後の遺伝医学の進歩は多くの疾患における原因遺伝子を明らかにし、遺伝情報に基づいて診断が確定し、あるいは治療方針が決定する疾患も増えてきた。またごく一部とはいえ遺伝学的検査の保険収載も実現した。こうした現状に即し、2011年には日本医学会による「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」が公開された。もちろんこのガイドラインでも遺伝情報の有効活用と被検者保護の精神は変わるところがないが、遺伝学的検査の説明や同意の取得は原則として主治医が行うこと、発症者の遺伝学的検査結果は一般診療録に記載し、情報の共有を図ることなど、遺伝学的検査の一般診療としての普及を反映したものとなっている。
 また第2版から今日に至るまでの、わが国における遺伝医療の大きな変化として、2005年に認定遺伝カウンセラー制度が開始されたことがある。当時はまだなじみのなかった専門職であるが、さまざまな領域において、その必要性が認知されるに至ったことは喜ばしいことである。当初2大学に開設された大学院修士課程の遺伝カウンセラー養成課程も現在は12大学に拡大し、パイオニアとしての認定遺伝カウンセラーたちが全国で遺伝医療を支えている。しかしながらそれでもまだ国内の認定遺伝カウンセラーは200名にも満たない状況であり、今後の爆発的な遺伝医療の需要の増大を考えればまったく不足している。
 遺伝子解析技術の進歩は、かつてのような「見たいもの>見えるもの」の時代から「見たいもの<<見えるもの」の時代に変遷してきた。こうした時代においては臨床型をもとに遺伝型を推定し、確認する医療ではなく、まず遺伝型の情報が得られる“Genotype first”の医療が展開されるようになる。さらに、今は一般市民が医療を介さずに自らの遺伝情報を入手することも可能となっている。遺伝医学の進歩は医療のありように大きく影響することのみならず、社会のあり方にも影響を及ぼしうるものである。そうした時代においては、遺伝医療に関わる者を中心としたすべての医療者が、遺伝学の正確な知識を備え、遺伝情報を適切に扱うとともに、社会に向けての啓発にも関わることが求められる。
 こうした現状に対応できるよう、第3版では疾患の解説の章に新たに「多因子疾患」を加え、その後に「妊娠に関連した遺伝カウンセリング」と新設の「薬理遺伝学」、「遺伝マーケット」の章を配置した。新たに項目を設けて解説した疾患も多数あるので、全体で第2版と比べて100ページ以上の増となり、遺伝医療の広いニーズに応えることができるものになったと確信している。
 一方で、どれほど遺伝医学が進歩しても、単一遺伝子疾患の当事者である患者・家族の悩みに寄り添い、解決に向けての支援をするという遺伝医療の態度は何ら変わるものではない。この第3版でも、紹介される疾患の大多数は単一遺伝子疾患である。章の構成や疾患の選択、そして執筆にあたっては領域ごとの遺伝医療のエキスパートの先生方に知恵を絞っていただいた。また、編集にあたっては南江堂出版部のみなさんに大変にお世話になり、助けていただいた。ここに深く感謝の意を表したい。
 本書が遺伝医療に関わる多くの方々や遺伝医療に関心を持つ方々、また学生諸君に広く利用されることを願っている。

2016年2月
櫻井晃洋