書籍

エキスパートによる消化器外科静脈血栓塞栓症(VTE)診療指針

監修 : 森正樹/土岐祐一郎
編集 : 左近賢人/池田正孝
ISBN : 978-4-524-26663-0
発行年月 : 2014年3月
判型 : B5
ページ数 : 206

在庫あり

定価4,860円(本体4,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

消化器外科のエキスパートによる、術後「静脈血栓塞栓症(VTE)」の予防対策や早期発見、早期治療の診療指針を示した実践書。診療ガイドライン形式で、臨床現場で直面する疑問を、41のクリニカルクエスチョンとその回答で構成。さらに、「エキスパートによる実臨床」、各施設で実際に使われている「クリニカルパス」によりVTEの予防、治療法が手に取るようにわかる。消化器外科医必携の一冊。

I.疫学
 CQ1.消化器外科周術期(術前、術後)のVTEの発症頻度は?
 CQ2.VTEの発症に関し、欧米人と日本人に差異があるか、欧米のデータを日本人に適応できるか?
 CQ3.消化器外科周術期にVTEが発症した場合の予後(生存率)は?
II.リスク評価
 CQ4.消化器外科周術期のVTE発症にかかわるリスク因子は?(性別、付加因子を含む)
 CQ5.上部、下部、肝胆膵手術におけるVTE発症リスク因子と分類は?
 CQ6.小手術(ヘルニア、虫垂、肛門)におけるVTE発症リスク因子と分類は?
 CQ7.開腹手術と腹腔鏡下手術でVTE発症リスクは異なるか?
 CQ8.術前スクリーニングは必要か、必要であれば何をすべきか?
III.予防
A.総論
 CQ9.VTEの予防方法にはどのようなものがあるか?
 CQ10.理学的療法の注意点は?
 CQ11.薬物的予防の注意点は?(外科手術以外)
 CQ12.薬物的予防に伴う出血リスクはどのように評価するか?
 CQ13.硬膜外麻酔は薬物療法と併用可能か?
 CQ14.ERAS(enhanced recovery after surgery)時のVTE予防の考え方は?
B.各論
1.上部消化管
 CQ15.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ16.上部消化管手術後のVTE予防策は?
 CQ17.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ18.術式別出血リスクの考え方は?
2.下部消化管(IBDを除く)
 CQ19.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ20.下部消化管(IBDを除く)手術後のVTE予防策は?
 CQ21.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ22.術式別出血リスクの考え方は?
3.炎症性腸疾患(IBD)
 CQ23.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ24.IBD手術後のVTE予防策は?
 CQ25.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ26.術式別出血リスクの考え方は?
4.肝
 CQ27.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ28.肝切除後のVTE予防策は?
 CQ29.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ30.術式別出血リスクの考え方は?
5.胆・膵
 CQ31.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ32.胆・膵手術後のVTE予防策は?
 CQ33.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ34.術式別出血リスクの考え方は?
6.小手術(ヘルニア、虫垂、肛門)
 CQ35.開腹・腹腔鏡、良性・悪性の違いでVTE発症リスクは異なるか?
 CQ36.小手術後のVTE予防策は?
 CQ37.術後合併症発症時のVTE予防策は?
 CQ38.術式別出血リスクの考え方は?
IV.診断
 CQ39.どんなときにVTEを疑うか?
 CQ40.VTEを疑ったときの診断の進め方は?
V.治療
 CQ41.消化器外科手術後に発生したVTEに対する初期対応の方法は?
付録
1.クリニカルパス
 1.食道癌
 2.胃全摘術
 3.幽門側胃切除術
 4.結腸切除
 5.低位前方切除術
 6.腹会陰式直腸切除術
 7.結腸切除(患者用)
2.圧迫ポンプ・弾性ストッキング 販売会社一覧
3.関連ホームページ一覧
索引

わが国では産婦人科や整形外科領域で静脈血栓塞栓症の臨床的重要性が認知され、理学的予防のみならず抗凝固療法による薬物的予防も行われている。一方、外科、特に消化器外科領域では理学的予防は広く行われているものの、薬物的予防については出血リスクに対する危惧から、高リスク症例に対しても行われないことが多い。しかし、高リスク症例における静脈血栓症を理学的予防だけで予防することは困難であり、抗凝固薬による薬物的予防の重要性も指摘されて久しい。
 薬物的予防は出血リスクと血栓リスクのバランスを考慮して判断する必要がある。したがって、消化器外科医は個々の手術患者に対してこれらのリスクを総合的に評価し、安全かつ適切な抗凝固療法を行わなければならない。しかし、癌や炎症を伴う手術患者では凝固能が術前より亢進しており、静脈血栓症のリスクが高い。また、癌の姑息手術では血栓リスクと腫瘍出血のリスクがともに高い。このように消化器外科領域では静脈血栓症の予防や治療に難渋することが多く、より実臨床に即した診療指針が求められている。
 言うまでもなく診療ガイドラインはエビデンスに基づかなければならない。しかし、最も重要なアウトカムである症候性静脈血栓塞栓症、なかでも致死性の肺血栓塞栓症や抗凝固薬の合併症である致死性出血の検討には非常に多くの症例を必要とし、欧米でもエビデンスは限られている。また、わが国では高リスク症例に対する薬物的予防の保険適用は近年なされたばかりであり、十分なエビデンスは得られていない。このような状況を鑑み、先進的に静脈血栓症の予防に取り組んでいるエキスパートの先生方に術後の静脈血栓塞栓症に対する基本的な考え方や欧米の臨床データをふまえた推奨をお願いした。基本的に個々の症例に対する診療内容は担当医師の責任のもと、患者との合意のうえで決定されるべきものであり、本指針はそれを支援するツールと考えられる。
 今回の診療指針の刊行に際しては、大変多忙なエキスパートの先生方にエビデンスに乏しいなか、実臨床に役立つ推奨を行うというご無理をお願いした。このような編者からの注文に対し、短い執筆期間にもかかわらず、速やかに脱稿をいただき、予定通り刊行することができた。心から感謝の意を表したい。

2014年3月
大阪府立成人病センター 左近賢人
国立病院機構大阪医療センター外科 池田正孝