書籍

日本整形外科学会診療ガイドライン

骨・関節術後感染予防ガイドライン2015改訂第2版

[CD-ROM付]

監修 : 日本整形外科学会,日本骨・関節感染症学会
編集 : 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,骨・関節術後感染予防ガイドライン策定委員会
ISBN : 978-4-524-26661-6
発行年月 : 2015年5月
判型 : B5
ページ数 : 134

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

術後創部感染(SSI)の疫学的事項や術前・術中・術後にいたる周術期全般の感染予防策、またサーベイランスに関して37のクリニカルクエスチョンを設け、初版以降の新たなエビデンスを加えて推奨gradeを定めた。整形外科領域だけでなく、周術期感染制御に携わる医療職に必要な知見をまとめた。付録のCD-ROMに文献アブストラクトを収載。

前文
第1章 骨・関節術後感染予防のための疫学
 CQ1.整形外科手術サーベイランスにおけるSSIの定義は
 CQ2.SSI発生率は
 CQ3.SSIの原因菌で頻度の高いものは何か
 CQ4.易感染性宿主はSSI発生率が高いか
 CQ5.生物学的製剤の使用は整形外科手術においてSSIのリスクとなるか
第2章 術前・術中での術後感染予防のための管理・対策
2.1 患者,術野および創閉鎖に対する管理・対策
 CQ1.術前の鼻腔およびその他の部位の除菌はSSI発生率を減少させるか
 CQ2.周術期血糖コントロールにより,SSIのリスクが減少するか
 CQ3.術野の剃毛を行うことにより,SSIが減少するか
 CQ4.術野の術直前ブラッシングはSSI発生予防に有用か
 CQ5.骨関節手術において手術野に使用する消毒薬によりSSI発生率に差があるか
 CQ6.術中のドレープ使用はSSIのリスク減少に有用か
 CQ7.SSIを予防するためには,創閉鎖にどのような縫合糸を使用すべきか
2.2 術者に対する管理・対策
 CQ8.SSI発生予防に対する術者の必要な手洗い方法は
 CQ9.人工関節置換手術などの骨関節外科において,
  a.不織布製のガウンは綿製のガウンよりSSIを減少させるか
  b.閉鎖性のガウン,全身排気スーツ(body-exhaust suits),手術用ヘルメット(Steri-Shield filtered exhaust helmet)などの使用でSSIが減少するか
 CQ10.人工関節置換術などの骨関節外科手術では手術用手袋を二枚重ねで使用することによりSSIが減少するか
2.3 手術室の管理・対策
 CQ11.人工関節手術でバイオクリーンルームを使用することでSSIが減少するか
 CQ12.手術室入室時の履物の変更は必要か
第3章 術後感染予防のための抗菌薬の適正使用
 CQ1.人工関節置換術を除く整形外科領域の清潔手術において,抗菌薬の予防投与はSSI発生率を低下させるか
 CQ2.人工関節置換術における抗菌薬の予防投与はSSI発生率を低下させるか
 CQ3.SSI発生予防のための抗菌薬の適切な投与経路は
 CQ4.SSI発生予防のための抗菌薬の適切な静脈内投与時期はいつか
 CQ5.SSI発生予防のための抗菌薬投与後,いつ駆血帯を使用すべきか
 CQ6.人工関節置換術においてSSI発生予防のための抗菌薬の1回投与量は
 CQ7.人工関節置換術においてSSI発生予防のための抗菌薬の投与間隔は
 CQ8.人工関節置換術においてSSI発生予防のための抗菌薬の投与期間は
 CQ9.SSI発生予防のために第一選択とする抗菌薬は何か
 CQ10.抗MRSA薬の予防投与の適応は
 CQ11.術野に使用する洗浄液に抗菌薬を入れることは有用か
第4章 術後での感染予防のための対処・管理
 CQ1.SSIの有無を判定するための有用な検査法はあるか
 CQ2.術後のドレナージとその管理について,
  a.術後ドレナージはSSI発生予防に有用か
  b.術後創部のドレーンの留置期間は
 CQ3.高頻度に感染をきたす創外固定用ピンのSSI発生予防のために術後どのような対応・管理がよいか
  a.創外固定用ピン刺入部の清潔処置は毎日行うべきか
  b.創外固定用ピン刺入部は清潔な被覆材で覆っておくべきか
  c.創外固定用ピン刺入部の清潔処置に消毒薬は必要か
  d.消毒薬として何がよいか
  e.創外固定用ピン刺入部に感染が疑われた場合の対処はどうするか
 CQ4.術後の創処置について消毒および被覆は必要か
 CQ5.術後創部に対する湿潤閉鎖療法(ハイドロコロイドドレッシング材)はSSIを減少させるか
第5章 SSIサーベイランス
 CQ1.適切な追跡期間は
 CQ2.カルテ確認のみでSSI診断は十分に行えるか
 CQ3.SSIの退院後調査は必要か
 CQ4.SSIサーベイランスを行うことでSSI発生率は改善するか
索引

2015(第2版)の序

 2006年5月に骨・関節術後感染予防ガイドラインの初版が刊行されて、すでに9年の歳月が経過した。2008年5月に改訂作業に着手し、計12回の委員会およびmailでの審議を経て骨・関節術後感染予防ガイドライン2015(改訂第2版)の刊行に至った。
 作成方法は、初版と同様に日本整形外科学会診療ガイドライン委員会の基本方針にしたがった。初版の文献検索期間以降の2003年3月20日から2011年8月24日までの間で、骨・関節手術に関連した感染症について検索することができた論文のすべての抄録を査読し、その結果選んだ論文を全文査読した。このように作成したガイドラインは、ある程度の信頼性をもった公平な内容を示せることが利点である。しかし、文献検索期間以降の新たなエビデンスを紹介できないという欠点がある。したがって、どうしても紹介したい文献検索期間以降のエビデンスは、各章のまとめのところに記載したので、ぜひ一読していただきたい。
 日本人工関節学会のホームページによると、年間12万件以上の人工関節置換術が本邦で行われている。手術部位感染(surgical site infection:SSI)の発生率を1%としても、年間1,200例のSSIが発生していることになる。Centers for Disease Control and Prevention(CDC)のGuideline for Prevention of Surgical Site Infection(1999)も改訂作業中で、今年中には公開されるとの情報がある。われわれは、整形外科独自の特徴のあるガイドラインを目指したが、本ガイドラインがSSI発生率の低下に少しでも役立てば幸いである。
 本ガイドラインの作成には多くの方々の御支援・御協力をいただいた。日本整形外科学会診療ガイドライン委員会担当理事、委員長の先生方、日本骨・関節感染症学会の役員の先生方および会員諸氏、骨・関節術後感染予防ガイドライン策定委員会の7名の委員および2名のアドバイザー、構造化抄録を作成していただいた名の先生方、作業を支援して下さった一般財団法人国際医学情報センターの諸氏に深く感謝いたします。

2015年4月
日本整形外科学会
骨・関節術後感染予防ガイドライン策定委員会
委員長 松下和彦

 本ガイドラインの第2版が発刊された。初版は2006年5月であるから9年ぶりの改訂となる。本ガイドラインは初版発行以来、われわれ整形外科医の扱う骨・関節手術の術後感染を可能な限り阻止するためにどのような点に注意し、何を行っていくべきかを示す道標として整形外科医必携の書となっている。
 四肢・体幹機能を高めることを目的として施行されたはずの手術で感染を生じることにより、逆に機能の損失ならびに患者に多大な苦悩を負わせることとなってしまう。整形外科領域の手術の多くはクラスIの清潔手術創であり、またそこにインプラントなどの異物が挿入されることは感染の危険性を高める可能性がある。したがって感染予防といった観念からは正にスーパークラスIと考えるべきであり、あらゆる面で細心の予防対策がなされるべきと考える。
 本ガイドラインは、編集時点までに収集された論文のエビデンスレベルとそれぞれのclinical questionに対する要約に推奨度が段階的に提示されており、われわれが診療を行っていくうえでベストプラクティスを選択するために非常にわかりやすい構成となっている。本改訂にあたっては2003〜2011年の骨・関節手術に関連した感染症について検索された2,518編(追加検索665編)の抄録が査読され、その結果382編(追加検索33編)の論文が全文査読されたうえで委員会において議論・検討され、エビデンスレベルと推奨度の判定がなされている。さらに必要と判断されたハンドサーチ論文104編が追加されている。策定委員および査読委員の先生方のご苦労・ご努力に心より敬意を表したい。主な改訂内容としては、第5章として「SSIサーベイランス」(SSI:手術部位感染)の章が新たに設けられている。サーベイランスをはじめ、種々の院内感染予防活動が他職種間で適切に行われていくための重要な内容が組み込まれている。また初版作成時に日本の論文が少ないことが課題となっており、本版には日本整形外科学会学術研究プロジェクト調査「人工関節置換術および脊椎instrumentation術後感染症例の実態調査」の結果を含めて、日本のデータが多く加えられている。医療構造・保険システムなどを含め海外と本邦では大きな違いがあり、本邦のデータが増加しつつあることは意義深いことと考える。
 各章別にみてみると、第1章では「整形外科手術サーベイランスにおけるSSIの定義は」、「生物学的製剤の使用は整形外科手術においてSSIのリスクとなるか」、第2章では「周術期血糖コントロールにより、SSIのリスクが減少するか」、「SSIを予防するためには、創閉鎖にどのような縫合糸を使用すべきか」、「手術室入室時の履物の変更は必要か」、第3章では「抗MRSA薬の予防投与の適応は」(MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、第4章では「術後の創処置について消毒および被覆は必要か」、「術後創部に対する湿潤閉鎖療法(ハイドロコロイドドレッシング材)はSSIを減少させるか」などの新たなclinical questionが新設されている。いずれの新設clinical questionも、時代の変遷に伴い変化していく薬物療法の変化や医療材料の開発によって近年われわれが日常診療において常に疑問を感じている興味深い内容であり、現時点でのエビデンスを知ることは重要なポイントである。
 冒頭でも述べたが、SSI予防を考えるうえで、無菌状態が求められる(スーパー)クラスIであるわれわれ整形外科領域での感染予防対策の理論はすべての領域のSSI予防の基本となる。日本整形外科学会および日本骨・関節感染症学会監修のもと、整形外科領域の手術を対象とした整形外科独自のガイドラインの改訂版が発刊されたことは、SSI発生率の減少に深く寄与するものと確信している。手術業務に多忙な整形外科医にとって、本書は術後の重篤な合併症の一つであるSSI発症ゼロをめざすためのバイブルとなる一冊であるといえよう。

臨床雑誌整形外科66巻10号(2015年9月号)より転載
評者●東京医科大学整形外科主任教授 山本謙吾