書籍

2週間でマスターするエビデンスの読み方・使い方のキホン

すぐにできるEBM実践法

: 能登洋
ISBN : 978-4-524-26654-8
発行年月 : 2013年9月
判型 : A5
ページ数 : 96

在庫あり

定価1,728円(本体1,600円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

EBMとその実践に必要な臨床統計学を“非数学的”にやさしく解説した入門書。重要な内容は具体例を通して繰り返し解説し、統計学に苦手意識をもっている方にもお薦め。1日1章ずつ読み進めることで、EBMを実践する知識が2週間で身につく。好評書『やさしいエビデンスの読み方・使い方』と合わせて使うとさらに効果的。

1日目 Evidence-Based Medicine(EBM)とは
−エビデンスの正しい使いこなし方−
 1.日常診療を見直しましょう
 2.EBMとは
 3.EBMの実践法
 4.EBM実践上の注意点
 5.EBMの発展
2日目 Evidence-BasedMedicine(EBM)の実地応用
 1.EBMのカテゴリー
 2.EBMの意義
 3.診療ガイドライン
 4.Evidence-Based Nursing(EBN)
3日目 統計学はこわくない
 1.感覚的理解
 2.統計学用語の非数学的解説
 3.生きた統計学用語の習得法
4日目 客観的な判断をしましょう
 1.統計解析の意義
 2.臨床と統計の接点
 3.数量化の限界
 4.エンドポイントの評価法
5日目 不確実と向き合うワザ
 1.不確実性
 2.不確実性への対応
 3.統計学的推測
 4.補足事項(標準偏差と標準誤差)
6日目 エビデンスの読みほぐし方
 1.エビデンスの落とし穴
 2.エビデンスの批評
 3.速読・速解
 4.読む価値の査定
 5.結果の評価
7日目 因果と関連の違い
 1.リスクファクター(危険因子)
 2.相関係数
 3.因果
8日目 誤診の指標
 1.どんな検査にも誤診がある
 2.正常と異常の境
 3.感度・特異度の臨床的優先順位
 4.誤診を減らすには
 5.検査の臨床的価値
 6.スクリーニング検査(検診)の意義
9日目 Evidence-BasedMedicine(EBM)の実践
 1.EBM実践術
 2.補足事項
10日目 臨床研究の創り方
 1.臨床研究の目的
 2.倫理問題
 3.臨床能力の重要性
 4.臨床研究の概要
 5.臨床研究の実際
11日目 推定と検定(1)
 1.統計の種類
 2.推定とは
 3.推定の仕方
 4.補足事項(標準偏差と標準誤差)
12日目 推定と検定(2)
 1.検定とは
 2.検定の限界
 3.検定法
 4.補足事項
 5.研究のまとめ方・発表の仕方
参考推薦図書ほか
索引

本書は、EBM(Evidence-Based Medicine)とその実践に必要な臨床統計学を入門者向けにやさしく解説した「エビデンス探訪」シリーズ(『医薬の門』誌、2011〜2013年連載)を編纂し、書籍化したものです。EBMを正しく理解し実践するには、統計学を活用することが要となりますが、現状では統計学の習得は容易ではありません。そのため、生きた統計学知識を体得するために非数学的解説をしたり、特に重要な点は具体例で繰り返し解説したりしている点が本書の特長です。1日1章ずつ通読すれば、消化不良予防のための1週間に1日の「休読」日を含み、2週間でマスターできる構成です。もちろん辞書としても活用できます。
 書籍化に際し、前著『やさしいエビデンスの読み方・使い方−臨床統計学からEBMの真実を読む』(南江堂)へのリンク※を追記し発展学習に役立つようにしましたので、こちらもぜひご参照下さい。

2013年7月
能登洋

コンパクトだが、必要なことはすべて書いてある。初心者にも読みやすいが、ある程度の知識がある人であれば深く考えさせられる。そんな一冊である。
 著者の能登 洋氏は、一連のわかりやすいEBM解説書で定評があるだけでなく、糖尿病とがんのリスク、低炭水化物ダイエットと死亡率の関連など、重要な研究成果をたて続けに発表している臨床統計学の第一人者でもある。
 本書は雑誌『医薬の門』に連載されていた「エビデンス探訪」シリーズをもとに単行本化されたものである。著者は1日1章ずつ読み進めて、消化不良予防のため、途中で1日、休読日を入れ、2週間かけて読むことを勧めている。1日あたりの分量はそれほど多くなく、だいたい10〜15分あれば読める。しかし、内容が濃いので、一気に読もうとすると、かなり頭が疲れる。そこで、このような配慮がなされているのだろう。
 なかでも冒頭の1日目「Evidence-Based Medicine(EBM)とは−エビデンスの正しい使いこなし方」、2日目「Evidence-Based Medicine(EBM)の実地応用」の2章は、EBMの本質に迫る部分で、本書のなかでもとくに重要な印象を受ける。すなわち、繰り返し「EBMは、患者に始まり患者に帰着します」と書かれているように、EBMは患者本位の個別化医療を実現するためのものである、という視点である。
 科学は客観的で再現性があることを前提とするため、臨床統計学には一般化のため個別性を消去していく側面がある。たとえば、ある治療法それ自体の有効性を検討するため、X%の患者さんでは有効で、Y%の患者さんでは無効であったとしたとき、その結果は数字として取り扱われ、統計的に処理される。その際、年齢、性別、リスクファクターなど、計測可能な要素は数学的に調整されるが、個別の患者さんの人生観など計測困難な要素を解析結果に反映することは、きわめて困難である。
 このような問題を解決するため、著者は1日目の末尾で、EBMの発展のためNarrative-Based Medicine(NBM)、いわゆる「ものがたり医療」の重要性についても言及している。「EBMは人間性重視の医療ですが、個別化の点(「EBMの手順」のSTEP 4)ではどうしても限界があります。近年脚光を浴び始めているNBMは、まさにその不足を補填するもので、EBMとバランスをとると、いっそうよい診療の提供につながります」との一節を読んで、「なるほど」と思う読者は多いのではなかろうか。
 医療の現場における意思決定において、患者さんの自己決定権は非常に重要である。しかし医療の領域では、一般の人と医療従事者で専門知識に大きな隔たりがある。そこで、患者さんが自らの人生観に基づき、悔いがなく満足のいくような自己決定ができるよう、エビデンスをコミュニケーションの道具として使いこなすことが重要になる。「わかりにくいことを、わかりやすく伝える」というのは、著者のモットーと思われるが、誰もが心がけなくてはならないことである。EBMには興味があるけれども敷居が高く感じる人、EBMのことは少し知っているけれどもどこかしっくりこないところがある人、いずれにもお勧めの一冊である。

臨床雑誌内科113巻6号(2014年6月増大号)より転載
評者●独立行政法人国立病院機構 京都医療センター糖尿病センター 村田敬

1996年David L.Sackett氏らによって提唱されたevidence-based medicine(EBM)とは、「個々の患者の治療方針を決定する際に最新のもっとも優れたエビデンス(臨床研究による『統計学的根拠』)を良心的かつ明確に、思慮深く用いること」と定義される(BMJ 312:71-72)。そして、EBMの実践とは「臨床研究によって得られた最善のエビデンスを医師の臨床的専門知識・技術および患者の価値観と統合すること」とされる。今日では、EBMはnarrative-based medicine(NBM)とともに医療に際し不可欠な存在と考えられているものの、その実践に際し私たちは本当にEBMを正しく理解し的確に使いこなせているのであろうか。金科玉条のようにEBMを画一的に振り回し、その本義である個々の患者の価値観に配慮しながら運用することを忘れ、かえって患者主体の医療から遠ざかっているとはいえないであろうか。
 本書は、能登洋氏が2011〜2013年まで『医薬の門』誌上で連載した「エビデンス探訪」シリーズを編纂し書籍化したものである。日常診療でのEBM実践において先の問いに答えるべく、その基本をわかりやすく示した内容となっている。すなわち、EBMとは何か、EBMを臨床に応用するとはどういうことか、そしてEBMを実践するうえで必要な臨床統計学とはどういうものなのか、についてのエッセンスが入門者向けにわかりやすく解説されている。以下に内容を簡単に紹介する。
 第1、2章ではEBMの定義や意義、またEBM実践上の注意点や診療ガイドラインの留意点などが述べられている。EBMは「人間性を喪失したマニュアル医療では決してなく、価値観・意向・ニーズを重視した個人化医療を提供していこうとするアクション」であって、「患者と社会に最善の診療を提供するという最大の目的のための手法であるEBMは、患者に始まり患者に帰着する」という著者の主張にはまったく同感である。第3〜5章では、統計学の基礎知識や、臨床医学での統計学の用い方やその不確実性を見抜くコツなどが説明されている。ただしここでは、難解な数学的解説ではなく、臨床医学上の意味づけに主眼がおかれている。
 第6〜8章ではエビデンスにだまされずに客観的に読み解くワザや因果と関連の違い、感度、特異度、尤度比からみる検査の臨床的価値やスクリーニング検査の意義などに言及しており、その的確な指摘に目から鱗が落ちる。第9章ではEBMの実践術として、The Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese(MEGA)スタディを例に“クイック批評手順”に従って、批判的で的確な速い論文の読み分け方を提示している。そして、第10〜12章ではエビデンスを創出する臨床研究の創り方を研究の方針、手順、推定や検定、解釈上の注意点などに沿って詳しく解説している。特に、検定にもバイアスや偶然性の限界があるということや、「数値は臨床の枠組みの中ではじめて意味をもつ」ということは、EBM創出において改めて銘記しておかねばならない事柄である。
 本書は以上の12章に分かれ、各章は独立した内容になっており、どこからでも読むことができる。著者がいうように、「各章を1日ずつ通読すれば、消化不良予防のための1週間に1日の『休読』日を含み、2週間でマスターできる」のである。日々の診療で多忙な医師にとって誠にありがたい。また、章ごとの構成は用語や内容を検索する辞書的な使い方もできる。さらに、本書は著者の前著『やさしいエビデンスの読み方・使い方−臨床統計学からEBMの真実を読む』(南江堂)や各種ガイドラインへのリンク先が明示され、発展的学習にも役立つ構成となっている。
 加えて、本書は2色刷でみやすくA5判96頁にコンパクト化され、白衣のポケットにも収まって持ち運びにも便利である。本書は診療の合間や通勤中にすぐに繙くことができる。
 本書を熟読することでEBMの正しい理解と的確な実践が可能となり、患者と社会に最善の医療を提供するという私たちの使命遂行の一助になるものと考える。本書は研修医のみならず指導医にもぜひ推薦したい良書である。

臨床雑誌整形外科65巻3号(2014年3月号)より転載
評者●島根大学整形外科教授 内尾祐司