書籍

ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2013

監修 : 日本神経学会
ISBN : 978-4-524-26649-4
発行年月 : 2013年6月
判型 : B5
ページ数 : 206

在庫あり

定価4,320円(本体4,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本神経学会監修による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。疾患の基礎的な知識から、各種診断法、治療法の詳細までを網羅。臨床上重要となるクリニカルクエスチョン(CQ)について、その回答・推奨グレード、背景・目的、解説をエビデンスに基づいて詳述。臨床医の日常診療を支援する必携の一冊。

I.ギラン・バレー症候群
<総論>
 1.疾患概念
  CQ1-1 ギラン・バレー症候群とはどのような疾患か
 2.疫学
  CQ2-1 ギラン・バレー症候群の発症頻度はどれくらいか
 3.予後
  CQ3-1 全般的なギラン・バレー症候群の予後はどのようなものか
 4.病態
  CQ4-1 ギラン・バレー症候群の病態はどのようなものか
<臨床的事項>
 5.先行感染・先行イベント
  CQ5-1 ギラン・バレー症候群の先行感染にはどのようなものがあるか
  CQ5-2 ギラン・バレー症候群の先行感染と病型はどのように関連しているか
  CQ5-3 感染以外の先行イベントとしてどのようなものがあるか
 6.臨床症状
  CQ6-1 ギラン・バレー症候群の臨床症候にはどのようなものがあるか
  CQ6-2 ギラン・バレー症候群は発症後どのような経過をとるか
  CQ6-3 どのような脳神経麻痺がみられるか
  CQ6-4 どのような自律神経障害がみられるか
  CQ6-5 特殊病型にはどのようなものがあるか
  CQ6-6 再発はどのくらいの頻度でみられるか
<診断>
 7.診断総論
  CQ7-1 ギラン・バレー症候群はどのように診断するか
  CQ7-2 ギラン・バレー症候群の診断のために行うべき検査は何か
  CQ7-3 ギラン・バレー症候群の鑑別疾患にはどのようなものがあるか
  CQ7-4 急性発症の慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーとギラン・バレー症候群はどのように鑑別するか
  CQ7-5 治療関連変動・再発性ギラン・バレー症候群と慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーはどのように鑑別するか
  CQ7-6 ギラン・バレー症候群の予後予測因子は何か
 8.電気生理学的検査
  CQ8-1 電気生理学的検査として何を行うべきか
  CQ8-2 ギラン・バレー症候群の診断において電気生理学的検査はどのように役立つか
  CQ8-3 脱髄型ギラン・バレー症候群および軸索型ギラン・バレー症候群はどのように鑑別するか
  CQ8-4 脱髄型ギラン・バレー症候群および軸索型ギラン・バレー症候群の病型を決定する意義は何か
 9.脳脊髄液検査
  CQ9-1 ギラン・バレー症候群の脳脊髄液検査では何を調べるか
  CQ9-2 ギラン・バレー症候群の診断に蛋白細胞解離は必須か
  CQ9-3 脳脊髄液検査で細胞数が正常範囲を超えている場合に考えるべきことは何か
  CQ9-4 脳脊髄液検査における蛋白上昇の程度と神経障害の程度・予後には関連があるのか
 10.血清学的検査
  CQ10-1 ギラン・バレー症候群の血清学的・血液生化学的検査にどのようなものがあるか
  CQ10-2 ギラン・バレー症候群の診断において糖脂質抗体測定はどのように役立つか
  CQ10-3 ギラン・バレー症候群においてみられる糖脂質抗体にはどのようなものがあり、病型との関係はあるのか
  CQ10-4 糖脂質抗体から予後の予測は可能か
 11.画像検査
  CQ11-1 ギラン・バレー症候群の診断に画像検査は役立つか
 12.病 理
  CQ12-1 神経生検は有用か
<治 療>
 13.治療総論
  CQ13-1 ギラン・バレー症候群の治療にはどのようなものがあるか
  CQ13-2 どのようなギラン・バレー症候群に免疫調整療法を考慮するか
  CQ13-3 血漿浄化療法と経静脈的免疫グロブリン療法のどちらを選択すべきか
 14.血漿浄化療法
  CQ14-1 血漿浄化療法の種類とその特徴、治療メカニズムはどのようなものか
  CQ14-2 血漿浄化療法はギラン・バレー症候群の治療に有用か
  CQ14-3 血漿浄化療法のいずれの治療法を選択すべきか
  CQ14-4 血漿浄化療法はどのように施行するのか
  CQ14-5 血漿浄化療法にはどのような副作用があるか
 15.経静脈的免疫グロブリン療法
  CQ15-1 経静脈的免疫グロブリン療法はギラン・バレー症候群の治療に有用か
  CQ15-2 経静脈的免疫グロブリン療法はどのように施行するのか
  CQ15-3 経静脈的免疫グロブリン療法にはどのような副作用があるか
  CQ15-4 どのような場合に再度の経静脈的免疫グロブリン療法を考慮するか
 16.その他免疫療法
  CQ16-1 副腎皮質ステロイド薬の単独療法はギラン・バレー症候群に有効か
  CQ16-2 経静脈的免疫グロブリン療法や血漿浄化療法に副腎皮質ステロイド薬の併用は有効か
  CQ16-3 経静脈的免疫グロブリン療法と血漿浄化療法の併用は有効か
  CQ16-4 経静脈的免疫グロブリン療法、血漿浄化療法、副腎皮質ステロイド薬以外の免疫調整療法(治療法)は有効か
  CQ16-5 妊娠を伴うギラン・バレー症候群の治療はどのように行うか
  CQ16-6 小児ギラン・バレー症候群の治療はどのように行うか
  CQ16-7 高齢者ギラン・バレー症候群の治療はどのように行うか
 17.支持療法
  CQ17-1 ギラン・バレー症候群で補助・対症療法が必要となる病態にはどのようなものがあるか
  CQ17-2 ギラン・バレー症候群に伴う球麻痺にどのように対応するか
  CQ17-3 ギラン・バレー症候群で気管内挿管・人工呼吸管理の適応となるのはどのような場合か
  CQ17-4 人工呼吸管理中のギラン・バレー症候群の患者において、抜管可能かどうかの判断はどのようにすればよいか
  CQ17-5 ギラン・バレー症候群の自律神経障害合併例への治療はどうするか
  CQ17-6 ギラン・バレー症候群に合併する内分泌・代謝異常への対応はどうするか
  CQ17-7 ギラン・バレー症候群では、どのような症例に血栓予防が必要か、また、血栓予防にはどのような方法が推奨されるか
  CQ17-8 ギラン・バレー症候群のリハビリテーションはどのように進めるか
  CQ17-9 ギラン・バレー症候群の疼痛管理はどのようにすべきか
  CQ17-10 急性期ギラン・バレー症候群の精神的支持療法はどのようにすべきか
  CQ17-11 ギラン・バレー症候群の疲労に対してどのように対応するか
  CQ17-12 ギラン・バレー症候群の既往のある人にワクチン接種はどうすべきか
II.フィッシャー症候群
<総論>
 1.疾患概念
  CQ1-1 フィッシャー症候群とはどのような疾患か
 2.疫学
  CQ2-1 フィッシャー症候群の疫学はどのようなものか
  CQ2-2 フィッシャー症候群の自然歴・予後はどのようなものか
 3.病態
  CQ3-1 フィッシャー症候群の病態はどのようなものか
<臨床的事項>
 4.先行イベント
  CQ4-1 フィッシャー症候群の先行イベントにはどのようなものがあるか
 5.臨床症状
  CQ5-1 三徴候以外に合併しやすい神経症状は何か
 6.再 発
  CQ6-1 フィッシャー症候群は再発するか
<診断>
 7.鑑別診断
  CQ7-1 フィッシャー症候群の鑑別診断にはどのようなものがあるか
 8.糖脂質抗体
  CQ8-1 フィッシャー症候群診断における糖脂質抗体測定の意義は何か
 9.電気生理学的検査
  CQ9-1 フィッシャー症候群の電気生理学的所見はどのようなものか
<治療>
 10.治療
  CQ10-1 フィッシャー症候群に経静脈的免疫グロブリン療法、血漿浄化療法が必要か
索引

本ガイドラインは、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象疾患であるギラン・バレー症候群およびその亜型のフィッシャー症候群についての診療ガイドラインである。
 両疾患についてのガイドラインとしては、2004年6月に発表された日本神経治療学会・日本神経免疫学会合同の神経免疫疾患治療ガイドラインのなかに、ギラン・バレー症候群の項目があり、そのなかでフィッシャー症候群についても述べられている。今回は、日本神経学会が中心となり、日本神経治療学会・日本神経免疫学会・日本末梢神経学会および厚生労働省免疫性神経疾患調査研究班が協力するかたちで、新たなガイドライン作成に着手した。本ガイドラインは、治療だけではなく、疾患についての基礎的な情報や各種の検査を含む診断などについても記載した「診療ガイドライン」となっており、近年の血清学的および電気生理学的解析における進歩についても、診療に役立つものを中心に取り入れている。また、フィッシャー症候群はギラン・バレー症候群の亜型であるが、本ガイドラインでは別項目で取り上げることとした。
 ガイドラインの作成はMinds法に基づいて行い、対象は一般神経内科医で、対象となる患者はギラン・バレー症候群およびフィッシャー症候群の日本人患者とした。検索する文献としては、PubMedでは1966年以降の、また医学中央雑誌では1983年以降のデータが使用可能であることから、それらについて検索し、それらで検索できない文献についても、重要と考えられるものは参考文献として採用することとした。特に疫学的データなどについては、わが国の報告が重要となるので、厚生労働省研究班の班会議報告書なども適宜引用した。
 エビデンスレベルはMinds分類(表1)に基づくため、治療以外のクリニカルクエスチョン(Clinical Question:CQ)については、大部分がIV以下となる。また、推奨グレードはAからDまであるが(表2)、グレードをつけるのが難しいものについては、「グレードなし」とすることとした。そしてCQによっては【推奨】の記載が難しい場合があり、その際の答えは【回答】とした。本文中では、わが国で承認されている薬物は、原則としてカタカナ表記とし、未承認の薬物は欧文名で記載した。表3に、本ガイドラインにおいて頻用される病名、薬品名などの、和名、欧文名、略号を示した。また、ギラン・バレー症候群の重症度判定に用いられるHughesの機能グレード尺度は、本文中に頻回に引用されるため、表4に示した。
 本ガイドラインの作成にあたっては、極めて多忙な先生方に何度も集まっていただき議論を重ねた。併行していくつかのガイドライン作成が行われており、複数のガイドラインに関係している先生方もおられた。そのおかげで、ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群の診療について、最新の情報を踏まえたガイドラインができたと考えている。本ガイドラインが多くの神経内科医の日常診療の助けになることを祈るとともに、作成委員の先生方にあらためて感謝する次第である。

2013年5月
「ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン」作成委員会委員長
楠進

日本でEBMが語られ始め、それに基づいたガイドラインが臨床に利用され始めたのは20年以上前だった。そのなかで、エビデンスレベル分類として「(経験に基づくが)患者データに基づかない専門委員会や専門家の個人の意見」が、レベルVIという最低レベルに位置付けられたのには割り切れない思いを抱いたのを懐かしく思い出す。自分がちょうど神経内科教授になったばかりのころであったから、なおさらであった。それから10年を経ずして日本神経学会として、いくつかの疾患についての「治療ガイドライン」を作成することになった。このときも、医療訴訟に利用されるのではないか、と懸念の声も聞かれたが、実際には何事もなくその機能を果たしている。これに触発されてほぼ10年前に、日本神経治療学会と日本神経免疫学会が合同で神経免疫疾患の治療ガイドラインを作成した。そのなかに「ギラン・バレー症候群」の治療ガイドラインもあった。
 そうしたところに今回、免疫性神経疾患の臨床と研究の第一人者である楠 進教授を中心とする委員会から、標記のようなガイドラインが上梓された。今回のガイドラインを通読すると、10年前のそれと比較していくつかの相違点に気付く。第一に、正しい診断があって初めて適切な治療が行われるという思想により、今回は「診療ガイドライン」とされたことであり、question形式で非常に読みやすい。疾患の概念、疫学、予後、病態、先行イベント、臨床症状、臨床診断、電気生理学的検査、脳脊髄液検査、血清学的検査、画像検査、病理、の各項目に分かれているが、それぞれに細分化されたquestionがある。そして、それぞれのquestionには背景・目的、解説・エビデンス、文献、検索式・参考にした二次資料、という統一的記述がある。つまり、この1冊だけを読めばすべてわかるところももちろん多いのだが、それにとどまらず、さらに突っ込んで調べようとするときに非常に役に立つ記述になっている。
 第二に、前回のガイドラインでは紹介されていた「診断基準」の扱いが決定的に違うことである。これまでいくつか発表されている「診断基準」のエビデンスレベルを、すべて専門家の経験に基づくレベルVIにすぎないとして退け、今後に期待したことである。確かに、神経疾患の診断に、たとえば糖尿病や高血圧のような数字を用いた診断基準はなじまない。また、この症状があったらこの病気、と言えるようないわゆるpathognomoticな症候もそう滅多にあるものではない。神経疾患の診断の多くは、症候の組み合わせとそれぞれの症候の経過が重要であり、それにいくつかの臨床検査結果が加わってより正確になると考えるが、その点ギラン・バレー症候群は、多くの患者データによって、将来「近代的で有用な診断基準」が確立される可能性が高いと私も思っている。
 第三に、治療についても前回に比べて副腎皮質ステロイドを明確に退け、血漿浄化療法と経静脈的免疫グロブリン療法の効果をほぼ同等としながら、後者により力点を置く姿勢をクリアにしている。これらは、この10年間のエビデンスの集積によると言ってよいだろう。
 とにかく、本書は非常に読みやすい。そして役に立つ。一読することをお勧めするのはもちろんだが、それだけではなく、強引かもしれないが、「一読は神経内科医の義務である」とさえ言いたい。委員会の方々のご努力に敬意を表する。

臨床雑誌内科113巻3号(2014年3月号)より転載
評者●国際医療福祉大学大学院長 金澤一郎