書籍

重症筋無力症診療ガイドライン2014

監修 : 日本神経学会
編集 : 「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会
ISBN : 978-4-524-26648-7
発行年月 : 2014年2月
判型 : B5
ページ数 : 156

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

日本神経学会監修による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。疾患概念、診断、疫学、予後等の基礎的な内容から、治療指針や具体的治療法、小児期発症MG等の実診療までを網羅。臨床上重要となるクリニカルクエスチョン(CQ)について、その回答・推奨グレード、背景・目的、解説をエビデンスに基づいて詳述。臨床医の日常診療を支援する必携の一冊。

I.総論
 1.疾患概念・臨床的特徴
  CQ1-1 MGの病因は何か
  CQ1-2 MGはどのような症状を呈するか
  CQ1-3 運動症状以外に注意すべき症状や合併疾患は
 2.診断・評価
  CQ2-1 MGの診断・評価はどのように行うか
 3.疫学・予後
  CQ3-1 わが国にはどのくらいのMG 患者がいるか
  CQ3-2 MGの長期予後や死因は
II.成人期発症MGの治療総論
 ●成人期発症MGの治療ガイド
 4.成人期発症MGの治療指針
  CQ4-1 治療の基本的な考え方は
  CQ4-2 非胸腺腫MGに対する胸腺摘除はどのような患者で行われるか
  CQ4-3 胸腺摘除術の周術期における注意点は
  CQ4-4 AChR 抗体陰性(MuSK 抗体陽性を含む)での治療上の注意点は
  CQ4-5 後期発症MG(late-onset MG;50歳以上発症)の臨床的特徴は
  CQ4-6 後期発症MGや高齢MG 患者の治療はどのように行うか
  CQ4-7 MGの増悪因子として知っておくべきものは(禁忌薬剤を含む)
  CQ4-8 妊娠・出産における注意点は何か
  CQ4-9 どのように生活指導を行うか
 5.成人期発症眼筋型MG
  CQ5-1 眼筋型MGの診断は発症後どの時点で行うか
  CQ5-2 眼筋型MGの免疫療法はどのように行うか
  CQ5-3 早期からの免疫療法は眼筋型MGから全身型MGへの進展を阻止するか
  CQ5-4 眼瞼下垂に対する対症療法はどのように行うか
 6.成人期発症全身型MG
  CQ6-1 経口免疫療法はどのように行うか
  CQ6-2 メチルプレドニゾロン静脈内大量投与(ステロイドパルス療法)はどのように行うか
  CQ6-3 免疫グロブリン静注療法(IVIG)はどのように行うか
  CQ6-4 血液浄化療法はどのように行うか
  CQ6-5 どのような場合、リツキシマブ使用を考慮するか
  CQ6-6 クリーゼの治療はどのように行うか
  CQ6-7 非侵襲的換気療法(NIV)はどのような場合に用いるか
III.成人期発症MGの治療各論
 7.抗コリンエステラーゼ薬
  CQ7-1 抗コリンエステラーゼ薬は有効か
  CQ7-2 抗コリンエステラーゼ薬の副作用にはどのようなものがあるか
 8.副腎皮質ステロイド薬
  CQ8-1 副腎皮質ステロイド薬は有効か
 9.免疫抑制薬
  9-1.カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)
   CQ9-1-1 カルシニューリン阻害薬は有効か
   CQ9-1-2 カルシニューリン阻害薬の副作用にはどのようなものがあるか
  9-2.アザチオプリン
   CQ9-2-1 アザチオプリンは有効か
   CQ9-2-2 アザチオプリンの副作用にはどのようなものがあるか
  9-3.シクロホスファミド
   CQ9-3-1 シクロホスファミドは有効か
   CQ9-3-2 シクロホスファミドの副作用にはどのようなものがあるか
  9-4.ミコフェノール酸モフェチル
   CQ9-4-1 ミコフェノール酸モフェチルは有効か
   CQ9-4-2 ミコフェノール酸モフェチルの副作用にはどのようなものがあるか
 10.免疫グロブリン静注療法
  CQ10-1 免疫グロブリン静注療法(IVIG)は有効か
  CQ10-2 免疫グロブリン静注療法(IVIG)の副作用にはどのようなものがあるか
 11.血液浄化療法
  CQ11-1 血液浄化療法は有効か
  CQ11-2 血液浄化療法の副作用・合併症にはどのようなものがあるか
 12.胸腺摘除術
  CQ12-1 胸腺摘除術は有効か
  CQ12-2 胸腺摘除術にはどのようなリスクがあるか
IV.小児期発症MG
 13.疾患概念
  CQ13-1 小児期発症MGの特徴は何か
 14.小児期発症MGの治療総論
  CQ14-1 小児期発症眼筋型MGはどのように治療するか
  CQ14-2 小児期発症潜在性全身型MGはどのように治療するか
  CQ14-3 小児期発症全身型MGはどのように治療するか
  CQ14-4 小児期発症MGの視機能維持はどうするか
 15.小児期発症MGの治療各論
  CQ15-1 小児期発症MGにおいて抗コリンエステラーゼ薬はどのように用いるか
  CQ15-2 小児期発症MGにおいてステロイド薬はどのように用いるか
  CQ15-3 小児期発症MGにおいて免疫抑制薬はどのように用いるか
  CQ15-4 小児期発症MGにおいて胸腺摘除術はどのように行うか
  CQ15-5 小児期発症MGにおいて免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)・血液浄化療法はどのように行うか
索引

重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は病因・病態の解明が進み、治療方針も大きく変化してきている。そのため、2003年に作成された旧治療ガイドラインが実情と合わなくなってきており、見直しの必要が指摘されてきた。2011年、日本神経学会、日本神経治療学会、日本神経免疫学会、日本小児神経学会の4学会と厚生労働省難治性疾患克服事業免疫性神経疾患に関する調査研究班の5者合同でガイドラインの改訂を行うことになった。同時に、現行の診断基準も現実にそぐわない点があり、新たに診断基準案を作成し、今後の診断基準見直しのたたき台として提案した。新ガイドラインは治療のみではなく、病態の解説、診断をも含め、診療ガイドラインとし、日常臨床で問題となるクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、それらに対する推奨を簡略に説明し、エビデンスレベル(表1)に基づきその推奨グレード(表2)を記載した。同時に、背景・目的、解説・エビデンス、推奨を用いる際の注意点を加えた。本ガイドラインは一般の神経内科医にとってわかりやすいものをつくることを目的とし、エビデンスレベルの高いものはそのように推奨し、エビデンスレベルの高くないものについては、全委員のコンセンサスの得られるレベルの記載にとどめた。推奨の根拠となる文献は1983年以降の文献をPubMed、医学中央雑誌で検索し、それらで検索できない文献についても、重要なものは参考文献として採用した。
 全体の構成は、総論(病態、病因、診断基準)、治療総論(どのように治療すべか、注意点など)、治療各論(治療薬、治療法の有効性)からなり、その後に小児期発症MGを配置した。

表1 本ガイドラインで用いたエビデンスのレベル分類(質の高いもの順)
 I システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
 II 1つ以上のランダム化比較試験による
 III 非ランダム化比較試験による
 IV a 分析疫学的研究(コホート研究)
 IV b 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
 V 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
 VI 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
(Minds 診療ガイドライン選定部会監修:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007、
医学書院、東京、p15、2007より転載)

表2 本ガイドラインで用いたグレード分類
 推奨グレード内容
 グレードA 強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる
 グレードB 科学的根拠があり、行うよう勧められる
 グレードC1 科学的根拠はないが、行うよう勧められる
 グレードC2 科学的根拠はなく、行わないよう勧められる
 グレードD 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる
(Minds 診療ガイドライン選定部会監修:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007、
医学書院、東京、p16、2007より転載)

 診断基準の改訂案の要点は、臨床症状、病因性抗体、神経筋接合部異常を同格として位置づけ、false negativeがより少なくなるよう工夫した。治療法の改訂の要点は、ステロイドの使用法と胸腺摘除の適応である。従来、全身型MGでは胸腺腫の有無にかかわらず胸腺摘除を行い、副腎皮質ステロイドを漸増し、高用量で維持し、漸減するのが一般的であり、これらの効果が不十分な場合に免疫抑制薬を追加していた。しかしながら、非胸腺腫例での胸腺摘除については有効性のエビデンスも不明なままであり、長期にわたるステロイドの投与は患者のQOLを著しく損なうことが明らかになっている。今回のガイドラインは、胸腺腫合併例を除き胸腺摘除については慎重な立場をとり、高用量のステロイドを漫然と長期に投与することを避け、選択基準、除外基準に配慮しつつ、治療初期から比較的強力な免疫療法で短期間に症状を改善させることを推奨している。また、カルシニューリン阻害薬を病初期から積極的に投与することを推奨した。いずれも、MGが長期にわたる疾患であり、長期的にQOLを良好に保つことを目的としている。さらに、完全寛解が得られにくい疾患であることを踏まえて、治療の目標点を定め、経口プレドニゾロン5mg/日またはそれ以下でminimal manifestation(MM;軽微症状)を保てるレベルとした。さらに、近年、高齢発症MGが増加していることをから、高齢発症MGの特徴と治療法についても別に記載した。また、小児期発症MGでは成人とは異なった治療法がとられており、別に小児期発症MG 総論と各論に分けて記載した。
 本ガイドラインが一般神経内科医の日常臨床に役立ち、MG 患者さんの予後、ADL向上に寄与することを委員一同強く期待している。

2014年2月
「重症筋無力症診療ガイドライン」作成委員会委員長
錫村明生