書籍

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー,多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013

監修 : 日本神経学会
ISBN : 978-4-524-26644-9
発行年月 : 2013年6月
判型 : B5
ページ数 : 220

在庫あり

定価4,644円(本体4,300円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本神経学会監修による、エビデンスに基づいたオフィシャルな診療ガイドライン。疾患概念・疫学・病態から、診断基準・鑑別診断、合併症、治療法の詳細までを網羅。臨床上重要となるクリニカルクエスチョン(CQ)について、その回答・推奨グレード、背景・目的、解説をエビデンスに基づいて詳述。臨床医の日常診療を支援する必携の一冊。

I.慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー
<総論>
 1.疾患概念
  CQ1-1 CIDPとはどのような疾患か
  CQ1-2 CIDPの歴史的背景はどうなっているか
 2.疫学など
  CQ2-1 CIDPのわが国および海外における有病率と発症率はどの程度か
  CQ2-2 CIDPに好発年齢、性差はあるか
  CQ2-3 CIDPの遺伝的な背景はどのようなものか
 3.病態など
  CQ3-1 CIDPにはどのような病態がかかわっているか
  CQ3-2 CIDPにガングリオシド抗体の関与はあるか
  CQ3-3 CIDPの発症を誘発する可能性のある疾患にはどのようなものがあるか
  CQ3-4 CIDPを悪化させる因子にはどのようなものがあるか
  CQ3-5 CIDPの発症と薬剤との関連はあるか
  CQ3-6 CIDPの発症と先行感染との関連はあるか
  CQ3-7 CIDPの発症と予防接種との関連はあるか
  CQ3-8 CIDPの発症と悪性腫瘍との関連はあるか
<各論>
 4.診断基準
  ■診断の考え方
  CQ4-1 CIDPはどのように診断するか
  CQ4-2 CIDPの病型にはどのようなものがあるか
  CQ4-3 脱髄の電気診断基準にはどのようなものがあるか
  CQ4-4 軸索障害を示す臨床的・電気生理学的所見にはどのようなものがあるか
  CQ4-5 髄液検査の意義はあるか
  CQ4-6 画像検査の意義はあるか
  CQ4-7 神経生検の意義はあるか
  CQ4-8 自己抗体を検査する意義はあるか
  CQ4-9 M蛋白を検査する意義はあるか
  CQ4-10 遺伝子検査の意義はあるか
 5.鑑別診断
  CQ5-1 CIDPの鑑別診断にはどのようなものがあるか
 6.合併症
  CQ6-1 CIDPと併存しやすい疾患・病態にはどのようなものがあるか
  CQ6-2 治療に関連して発症するCIDPにはどのようなものがあるか
  CQ6-3 長期経過あるいは重症例で気をつけるべき合併症にはどのようなものがあるか
 7.治療
  ■治療の考え方
  CQ7-1 第1選択の治療法は何か
  CQ7-2 副腎皮質ステロイド薬は有効か
  CQ7-3 ステロイドパルス療法は有効か
  CQ7-4 副腎皮質ステロイド薬の副作用にはどのようなものがあるか
  CQ7-5 経静脈的免疫グロブリン療法は有効か
  CQ7-6 経静脈的免疫グロブリン療法とはどのようなものか
  CQ7-7 経静脈的免疫グロブリン療法の副作用にはどのようなものがあるか
  CQ7-8 経静脈的免疫グロブリン療法を行う間隔はどのように決定するか
  CQ7-9 経静脈的免疫グロブリン療法の1回の最適量は
  CQ7-10 経静脈的免疫グロブリン療法で1回目の治療が無効であった場合、2回目以降を試みる価値があるか
  CQ7-11 経静脈的免疫グロブリン療法が有効であるが、再発を反復し症状の安定した状態を期待できない症例をどのように治療するか
  CQ7-12 血漿浄化療法の有用性は
  CQ7-13 血漿浄化療法とはどのようなものか
  CQ7-14 血漿浄化療法の副作用にはどのようなものがあるか
  CQ7-15 推奨される血漿浄化療法はどれか
  CQ7-16 どのような症例にどの第1選択治療法を選択するか
  CQ7-17 第1選択治療法が無効であると判断する基準は
  CQ7-18 補足的治療法にはどのようなものがあるか
  CQ7-19 治療効果の判定には何が有用か
  CQ7-20 治療開始が遅れても回復は望めるか
  CQ7-21 治療効果の予測には何が有用か
  CQ7-22 維持療法とはどのようなものか
  CQ7-23 維持療法はどのように行うか
  CQ7-24 抗MAG活性を有するIgM単クローン血症を伴うニューロパチーはどのように治療するか
  CQ7-25 単クローン性免疫グロブリン血症を伴うニューロパチー(MAG抗体陽性例を除く)はどのように治療するか
  CQ7-26 疼痛の顕著な症例の治療はどうするか
  CQ7-27 筋萎縮の著明な症例の治療はどうするか
  CQ7-28 運動失調が著明な症例の治療をどうするか
  CQ7-29 小児のCIDPの治療はどうするか
 8.リハビリテーション
  CQ8-1 リハビリテーションはCIDPに有効か
 9.妊娠・出産
  CQ9-1 妊娠を望むCIDP患者ではどのように対応すべきか
  CQ9-2 CIDPの治療中に妊娠した場合はどのように対応すべきか
 10.その他
  CQ10-1 ワクチン接種はCIDP再発に影響するか、またワクチン接種は可能か
  CQ10-2 患者、家族にどのようなアドバイス(精神的・社会的配慮)が必要か
  CQ10-3 CIDPに罹患している場合、外科手術および麻酔は可能か
  CQ10-4 CIDP・MMN患者をサポートする制度、団体にはどのようなものがあるか
■付録:検索式について
II.多巣性運動ニューロパチー
<総論>
 1.疾患概念
  CQ1-1 MMNとはどのような疾患か
  CQ1-2 MMNの歴史的背景はどうなっているか
 2.疫学など
  CQ2-1 MMNのわが国および海外における有病率と発症率はどの程度か
  CQ2-2 MMNに好発年齢、性差はあるか
  CQ2-3 MMNの遺伝的な背景はどのようなものか
 3.病態など
  CQ3-1 MMNにはどのような病態がかかわっているか
  CQ3-2 MMNにガングリオシド抗体の関与はあるか
  CQ3-3 MMNの発症と薬剤との関連はあるか
  CQ3-4 MMNの発症と先行感染との関連はあるか
  CQ3-5 MMNの発症と予防接種との関連はあるか
  CQ3-6 MMNの発症と悪性腫瘍との関連はあるか
<各論>
 4.診断基準
  CQ4-1 MMNはどのように診断するか
  CQ4-2 伝導ブロックの電気診断基準にはどのようなものがあるか
  CQ4-3 髄液所見の特徴は何か
  CQ4-4 画像検査の意義はあるか
  CQ4-5 神経生検の意義はあるか
  CQ4-6 自己抗体を検査する意義はあるか
  CQ4-7 遺伝子検査の意義はあるか
 5.鑑別診断
  CQ5-1 MMNの鑑別診断にはどのようなものがあるか
 6.合併症
  CQ6-1 MMNと併存しやすい疾患・病態にはどのようなものがあるか
  CQ6-2 長期経過あるいは重症例で気をつけるべき合併症にはどのようなものがあるか
 7.治 療
  CQ7-1 MMNの第1選択治療薬は何か
  CQ7-2 経静脈的免疫グロブリン療法の有効性はどうか
  CQ7-3 経静脈的免疫グロブリン療法が有効だが、再発が反復する例をどのように治療するか
  CQ7-4 副腎皮質ステロイド薬は有効か
  CQ7-5 経静脈的免疫グロブリン療法難治例をどのように治療するか
  CQ7-6 自己抗体(ガングリオシド抗体を含む)の種類や有無で治療効果・予後に差異はあるか
  CQ7-7 通常の神経伝導検査で検出が可能な伝導ブロックの有無は、治療効果の予測に有用か
 8.リハビリテーション
  CQ8-1 リハビリテーションはMMNに有効か
 9.妊娠・出産
  CQ9-1 MMNの治療中に妊娠を望む場合、あるいは妊娠した場合はどのように対応するべきか
 10.その他(以下のCQはCIDPの章を参照)
  CQ10-1 ワクチン接種はMMN再発に影響するか、またワクチン接種は可能か
  CQ10-2 患者、家族にどのようなアドバイス(精神的・社会的配慮)が必要か
  CQ10-3 MMNに罹患している場合、外科手術および麻酔は可能か
  CQ10-4 CIDP・MMN患者をサポートする制度、団体にはどのようなものがあるか
■付録:検索式について
索引

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)ならびに多巣性運動ニューロパチー(multifocal motor neuropathy:MMN)の国内における診療のガイドラインとしては、平成16年の日本神経治療学会・日本神経免疫学会による治療ガイドラインがこれまで広く利用されてきた。本ガイドラインはそれを継承・発展させ、日本神経学会を中心に関連学会(日本神経治療学会、日本神経免疫学会、日本末梢神経学会)と厚生労働省研究班の協力のもと、診断から治療に至る最新の知見を盛り込むとともに、リハビリテーションや妊娠・出産など日常診療で遭遇しうる診療全般にわたる疑問に答えるべく作成された。ちなみにCIDPは厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野における対象疾患であるとともに、平成21年からは「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」として特定疾患治療研究事業対象疾患に追加されたことから、神経内科を専門とする医師のみならず一般内科医にも広く知られるようになった。このようにCIDPの社会的認知やサポート環境は大きく変化したが、一方で診断や治療に関するスタンダードも以前の治療ガイドライン作成時から刷新されつつある。診断では従来の米国神経学会による診断基準から、臨床的利便性を重視したEFNS/PNS(European Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society)による診断基準が新たな標準としてコンセンサスを得ている。治療では2008年に報告された間欠的経静脈的免疫グロブリン療法の有効性を検証したICE studyを契機に、維持療法の概念が欧米を中心に定着しつつある。さらに2010年以降になり副腎皮質ステロイド薬や経静脈的免疫グロブリン療法などファーストラインとされる治療の各々の特性や優位性に関するランダム化比較対照試験が実施されるなど、ここ最近のCIDPの治療の考え方も変化を迎えつつある。本ガイドラインは、国内外における最新の知見を反映してわが国における診療の国際的標準化を促進し、臨床現場で予想される疑問に対し現時点におけるエビデンスから最善と思われる解決法の参考となるよう心掛けた。
 なお本ガイドラインの作成にかかわる経費は、日本神経学会の負担を受けるとともに、売上による利益がそれに充当される。作成に携わった委員長をはじめとする各委員は、参加にあたり「日本神経学会診療ガイドライン作成に係る利益相反(conflict of interest:COI)自己申告書」の提出と承認を日本神経学会より得ている。一般に診療ガイドラインは臨床医が適切かつ妥当な診療を行う参考となり臨床的判断を支援する一助として現時点における医学的知見に基づき作成される。したがって個々の患者の診療は、臨床データなどをもとに主治医によって個別の決定がなされるべきものであり、本ガイドラインが医師の裁量を拘束するものではないこと、さらに本ガイドラインはすべての患者に適用される性質のものではなく、患者の状態を正確に把握したうえで診療の参考になるべく作成されていることを付記する。
 本ガイドラインにはこの分野における多くのエキスパートに協力いただき、多くの時間をかけて議論を重ねた。多忙にもかかわらず作成の労を厭わなかった委員の方々にはこの場を借りて深謝申し上げる。本ガイドラインが広く医療現場における日常診療の参考になることを祈念するとともに、今後のさらなる進化の必要性も感じている。

2013年5月
「慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン」作成委員会委員長
祖父江元

臨床神経免疫学分野では、近年の分子生物学的研究成果を反映して、診断技術と治療法が大きな転換期を迎えている。本書に取り上げられている、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)は、代表的な免疫介在性末梢神経疾患であり、頻度が高く、厚生労働省の特定疾患(難病)にも指定されている。
 これらの疾患に対する従来の標準的な治療法は、副腎皮質ホルモン、ヒト免疫グロブリン、血液浄化療法の単独あるいは複数使用であり、多くの例では著効から有効まで一定の治療効果を上げてきた。しかし、従来の治療法では対応困難な再発例や難治例が相当数あることも事実で、これらに対しては新しい免疫抑制薬、生物学的製剤や分子標的治療薬が手さぐり的に試みられ(多くは保険適用外使用)、著効例も報告されている。しかし、適応や薬剤選択については標準化された基準がなかったために、文献を参考に手さぐり的に治療することを余儀なくされ、最新の研究知見とエビデンスに基づいた、新しい診断指針と治療ガイドラインの作成が俟たれていた。
 本書の前身は、2004年の日本神経治療学会と日本神経免疫学会によって作成された「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)治療ガイドライン」[「神経免疫疾患治療ガイドライン」(協和企画)の一項目として]である。その改訂作業のために、2011年に日本神経学会を中心に、先の2学会と日本末梢神経学会の4学会からなる合同ガイドライン作成委員会が設置され(祖父江 元委員長)、厚生労働省研究班の協力も得て、2年間の精力的な活動によって完成したのが本書である。
 本書の構成は、CIDPとMMNを対象に、総論(疾患概念、疫学、病態など)と各論(診断、鑑別診断、合併症、治療、リハビリテーション、妊娠・出産など)に分かれ、記述は最近のガイドラインに共通のクリニカル・クエスチョン(CQ)方式となっている。すなわち、最初にポイントを突いた質問項目に対して、明快な回答がエビデンスレベルとともに簡潔に提示されるので、結論が非常に理解しやすい。その後に、回答の根拠になったエビデンスの紹介と解説があり、最後に参照文献が紹介されているので、読者は必要と興味に応じて読み進み、最後は文献まで遡ることもできる。また、エビデンスレベルの高い標準的治療法の紹介が主体ではあるが、エビデンスレベルは低くても、難治例に試みる価値のある少数例報告まで紹介されているので、読者はさまざまな重症度と難治度の患者に対して、多くの選択肢を知ることができる。
 CIDPとMMNは、寛解と再発を伴う慢性疾患であるが、症例ごとに正しく診断し適切な治療を施すことによって、長期の寛解状態を維持することも不可能ではない。未治療例の初回の標準的治療法から、再発例や難治例の対応まで、読者に適切・有用な回答を与えてくれる良書として、本書を強く推薦するものである。

臨床雑誌内科113巻1号(2014年1月号)より転載
評者●鈴鹿医療科学大学保健衛生学部教授 葛原茂樹