書籍

あなたの頭痛診療,間違っていませんか?

失敗しないためのワザと秘訣

: 平田幸一
ISBN : 978-4-524-26597-8
発行年月 : 2015年5月
判型 : A5
ページ数 : 130

在庫あり

定価2,808円(本体2,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

種類・原因が多岐にわたることからおよそ半数が正しく診断されていないといわれる頭痛について、エキスパートがその診療のノウハウや治療・予防薬の使い方などを非専門医向けにやさしく解説。前半で非専門医がもつ疑問や質問とそれに対する簡潔な回答をQ&A形式で掲載し、後半の診療各論を読み進めやすい構成になっている。実際に陥りやすい診療の落とし穴(「見逃すな!頭痛診療の落とし穴」)やこれだけは「知っておきたい診断・治療のコツ」のコラムが随所に配置されすらすら読める。失敗しないためのワザと秘訣を凝縮した一冊。

A.こんなギモンを持っていませんか?〜正しい頭痛診療へのファーストステップ〜
 I.分類
  Q1 患者さんのどのような訴えに注目すればよいかわかりません!?
  Q2 片頭痛なのか緊張型頭痛なのかが鑑別できません!?
  Q3 「慢性片頭痛」って何ですか?
  Q4 すぐに専門医に送ったほうがよい頭痛ってどういうものですか?
  Q5 年齢と頭痛には関係がありますか?
 II.検査
  Q1 片頭痛の診断に画像検査は必要ですか?
  Q2 片頭痛の診断に血液検査はどう活かすのですか?
  Q3 片頭痛の診断に脳波検査は必要ですか?
 III.診断
  Q1 片頭痛診断のバイオマーカーはありますか?
  Q2 診断基準って重要なのでしょうか?
  Q3 神経学的診察は必須ですか?
 IV.治療
  Q1 トリプタン系薬の上手な使い方はありますか?
  Q2 予防療法ってどのようなものですか?その適応はどうなっているのでしょうか?
  Q3 非薬物療法ってどのようなものですか?天気,温度,騒音などとの関係は?
B.失敗しない頭痛診療〜正しい頭痛診療へのステップアップ〜
 I.頭痛診療の要は問診である!〜なぜ患者さんは頭痛外来にくるのか?〜
  1.時間がないのに30分診療?〜問診票を効果的に用いた頭痛診療〜
   a.患者さんとのコミュニケーションを円滑にしよう!
   b.キーアイテム「問診票」
  2.問診場面で重要なこと〜患者さんが求める満足とは?〜
  3.頭痛ダイアリーとその使い方
 II.誘発因子と疫学〜頭痛はなぜ起こるのか?〜
  1.低血圧や貧血などは関係するのか?
   a.頭痛と血圧
   b.頭痛と貧血,レストレスレッグス症候群
  2.環境,ストレスと頭痛
   a.ストレスの影響
   b.気圧の影響
   c.気温,体温の調節
  3.香水・匂いと頭痛
  4.年齢と頭痛の関係
  5.頭痛の最新疫学
 III.分類・診断
 III-1.分類〜どんな頭痛があるのか?〜
  1.一次性頭痛
   a.片頭痛
   b.緊張型頭痛〜片頭痛より多いのか?〜
   c.群発頭痛〜毎日同じ時刻に激しい頭痛?〜
  2.二次性頭痛
   a.頭頸部血管障害による頭痛
   b.感染による頭痛
   c.三叉神経痛による頭痛
   d.その他の疾患に関連する頭痛
   e.心因性頭痛
   f.てんかん性頭痛
  3.その他の頭痛
   a.アイスクリーム頭痛
   b.雷鳴頭痛
   c.睡眠時頭痛
 III-2.診断
  1.問診・身体所見の取り方〜はずせないポイント〜
   a.時間的背景を捉えよう
   b.家族歴を捉えよう
   c.頭痛の性状を聴こう
  2.神経学的診察〜おさえておきたい所見とは?〜
  3.バイオマーカー
  4.診断基準
  5.共存症の有無のチェック
  6.鑑別診断のコツ
  7.専門医へコンサルトするタイミング,エマージェンシー(緊急時対応)
   a.頭痛を主訴とする急患が来院した場合
   b.片頭痛や群発頭痛などの激しい発作でどうしようもない場合
 IV.検査
  1.画像検査はCTが良いのか?MRが良いのか?
  2.血液検査の項目は何?
  3.なぜ脳波検査が必要なのか?〜光に対する反応をみるべし!〜
  4.起立試験とは?〜立ち上がると余計に痛い?〜
  5.心理検査は有用なのか?
 V.治療
  1.非薬物療法〜頭痛対策ですべき工夫とは?〜
   a.睡眠衛生のススメ
   b.簡易認知行動療法のススメ〜頭痛ダイアリーを使って患者さんの気持ちになり成功体験を共有する〜
   c.誘因を減らそう
   d.運動プログラムを取り入れよう
  2.片頭痛の薬物療法〜治療薬を上手に使うポイント〜
   a.発作治療薬
   b.発作予防薬
  3.緊張型頭痛の薬物療法
   a.急性期薬物療法
   b.慢性期予防的薬物療法
  4.群発頭痛の治療
   a.薬物療法
   b.その他の治療法
  5.神経痛の診断と治療
付録
 1.国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)
 2.頭痛診療に役立つ問診票一覧
   a.片頭痛スクリーナー
   b.HIT-6(Head Impact Test,version 1.1)
   c.MIDAS(Migraine Disability Assessment)
   d.獨協医科大学神経内科頭痛外来問診票
参考文献
索引

序文

 “最も”多く、“最も”自然に治ることが多い一方で、“最も”治療が難しい場合があり、“最も”予後の悪いものもある。この4つの“最も”がつく症状・疾患が頭痛です。
 誰かが「たかが頭痛、されど頭痛」と言ったのは、改めて名言だと思います。
 頭痛は、第一線の診療において最も多い症状・疾患の一つであり、きわめて重要なものです。たとえば、風邪に伴った頭痛で来院する患者さんもいますが、死に直結する頭痛を抱えた患者さんもいます。
 また、重要な頭痛としては、少子高齢化社会での働き手、あるいは未来の働き手が困る「片頭痛」をはじめとする一次性頭痛も挙げられます。その患者さんは、片頭痛が慢性化した状況に困りに困って来院してきます。もちろん系統的な頭痛診断・治療のやり方はあります。現在、できたてホヤホヤのEBM(evidence-based medicine)に基づいた頭痛診療のガイドラインや診断分類も発表されており、片頭痛の急性期治療薬である種々のトリプタン系薬や、予防薬の認可もなされています。一昔前に比べれば頭痛診療に対する認識や、そのレベルは着実に向上してきていることは明白な事実です。しかし一方で、片頭痛をはじめとする一次性頭痛の診療では、世界最大数のMRI保有国であるわが国の力、すなわち画像診断技術力が本質的な部分では役に立たず、EBMを越えた知識(ここではあえて経験と述べます)、それが必要なのです。
 筆者自身、いまでも「こんな頭痛があった!」「こんな経過があった!」「こんな治療があった!」と驚きをもって、頭痛の患者さんを診ています。頭痛診療の匠を育てるお師匠さんは患者さんであることを、毎日肌で感じ、患者さんに感謝しています。
 本書は筆者の頭痛診療に対する経験と考え方の集大成です。しかし、巻末の文献をみていただければわかるとおり、この本の真髄は獨協医科大学神経内科教室員の日々のたゆまぬ診療と研究の成果でもあります。教室員には心から感謝いたします。
 頭痛診療を行う読者が、「なるほど、こうなんだ!」「こんな方法もあるんだ!」と共感や新たな発見をしてくだされば、筆者にとって望外の喜びです。

2015年4月
獨協医科大学神経内科
平田幸一

 頭痛診療のエキスパートによる診断、検査、治療のコツ。読者に語りかけるスタイルで、わかりやすい。イラストも豊富で楽しく読める。頭痛診療における著者の長年の豊富なご経験がこれだけコンパクトにまとめられて世に出ている。プライマリケア医、勤務医、研修医、医学生、看護師、薬剤師など、みんなにお勧めしたい。
 片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などの一次性頭痛における診療での大きなハードルは、診断の境界線があいまいなこと。これが初心者を悩ます。二次性頭痛の除外には使用されるが、原則として一次性頭痛の診断にバイオマーカーや画像、病理検査などはない。問診が診断の鍵であり、ゴールドスタンダード。1に問診、2に問診、3・4がなくて、5も問診……。
 では、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛の「診断基準」を読めば、数分で頭痛診断のエキスパートになれるかというとそうではない。一次性頭痛の問診による診断は、疾患スクリプト(illness script)に適合するかどうかという、総合的で統合的な仮説検証を患者との対話のなかからうまく引き出すアートな作業なのだ。それには、エキスパートの脳内作業を覗くことができればもっとも効果的な学習となりうるが、本書がその理想的な学習ツール。
 本書の特徴は明日からの診療にすぐに役立つコラムが豊富なこと。「落とし穴」コラムでは、日常診療で地雷を踏まないためのパールが盛りだくさん。頭痛診療の奥の深さを垣間みることができるコーナーとなっている。
 「忘れられない症例」では、長年の著者のご経験から印象に残るケースがナラティブなスタイルで記述されている。週末の頭痛、ディズニーランドに行くと起こる頭痛、受験勉強で増悪した頭痛、ひどい片頭痛が離婚後に……など。疾患スクリプトを超えた、人間ドラマが展開しており、臨床医の貴重な経験をシェアしてくれたことはとてもうれしい。
 評者にとってもっとも印象的なケースは結婚直前の若い女性。頭痛の診断は片頭痛。しかし、患者の希望で撮像した脳MRIで脳幹部付近に血管腫を認めた。「その後に出かけた新婚旅行は楽しくなかった」という患者の気持ちで完結となる実ケース。脳ドックなどが全国で行われるなかで、同様な不安感を心のなかの傷として負ったケースも多数あるのであろう。画像検査花盛りな日本の医療シーンのなかで、疾患スクリプトを超えた人間のストーリーを語るエキスパート医の語りは医学書以上の価値がある。広く読まれることを期待する。

臨床雑誌内科116巻6号(2015年12月増大号)より転載
評者●JCHO本部総合診療顧問 徳田安春