書籍

骨転移診療ガイドライン

編集 : 日本臨床腫瘍学会
ISBN : 978-4-524-26534-3
発行年月 : 2015年3月
判型 : A4
ページ数 : 90

在庫あり

定価2,700円(本体2,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本臨床腫瘍学会編集による、がんの骨転移における診療ガイドライン。腫瘍内科、整形外科、泌尿器科、放射線科、リハビリテーション科など、骨転移診療にあたる各科の医師・医療スタッフにより26のClinical Questionについて解説。本書冒頭には総説を設け、骨転移の病態・診断・治療とケアの要点を整理。がん診療に携わる医師、チーム医療で患者ケアにあたる医療者の必携書。

・骨転移診療ガイドライン発刊にあたって
・骨転移診療ガイドライン発刊によせて
・はじめに
・略語一覧
・骨転移診療のアルゴリズム
総説
 1 骨転移の病態
 2 骨転移の診断
 3 骨転移の治療とケア
Clinical Question
 CQ1 骨転移の有無は予後を規定するか?
 CQ2 緊急に対応が必要な骨転移の症状は何か?
 CQ3 骨転移の診断に画像検査は有効か?
 CQ4 骨転移の診断に病理学的検査は必要か?
 CQ5 Cancer Boardや院内骨転移登録は骨転移診療に有用か?
 CQ6 脊髄圧迫症状を呈する転移性脊椎腫瘍の治療に手術は有効か?
 CQ7 病的骨折や切迫骨折のリスクのある四肢長管骨の骨転移に手術は有効か?
 CQ8 骨転移の治療に装具は有効か?
 CQ9 骨転移の痛みの緩和に外照射は有効か?
 CQ10 骨転移の治療に経皮的椎体形成術(セメント充.術)は有効か?
 CQ11 骨転移の治療にラジオ波凝固療法は有効か?
 CQ12 肺がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 CQ13 乳がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?
 CQ14 前立腺がんの骨転移の治療に薬物療法は有効か?
 CQ15 多発性骨髄腫の骨病変の治療に薬物療法は有効か?
 CQ16 消化器がん、その他のがんの骨転移の治療に薬物療法は有効か?
 CQ17 骨髄がん症に有効な薬物療法は何か?
 CQ18 骨修飾薬(BMA)において注意すべき有害事象は何か?
 CQ19 骨転移の治療に外照射と骨修飾薬(BMA)の併用は有効か?
 CQ20 骨転移治療のモニタリングに骨代謝マーカーは有用か?
 CQ21 画像による骨転移の治療効果の判定で有効な方法は何か?
 CQ22 骨転移の痛みの緩和に非オピオイド鎮痛薬は有効か?
 CQ23 骨転移の痛みの緩和にオピオイド鎮痛薬は有効か?
 CQ24 骨転移の痛みの緩和にストロンチウム−89などの内照射は有効か?
 CQ25 骨転移のある患者にリハビリテーションは有効か?
 CQ26 骨転移のある患者に対する看護介入にはどのようなものがあるか?
用語集
文献

骨転移診療ガイドライン発刊によせて

 ガイドラインは、根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)が浸透し、進歩し続ける医療技術を適正に利用することの必要性から生まれてきたものである。近年、厚生労働省の後押しのなか、わが国の各種学会や研究会、団体において、様々な疾患や病態のガイドラインが作成されるようになった。結果、今やまさに百花繚乱の如く多数のガイドラインが刊行される状況になっている。しかし、これだけ多くのガイドラインが世に出てきていても、日進月歩の医療が高度に専門分化している臨床現場では、錯綜する医療情報とともに、相も変わらず混乱と誤解が渦巻いており、適正な医療がすべての医療機関で実現できているとは言い難い。実直な多くの医療者は、実践的で確かな臨床上の指針を常に求めている。
 日本臨床腫瘍学会は、国内外の学会あるいは団体が作成していない、がん関連領域のガイドラインやガイダンスの作成・発刊を推進しており、今まで多くのものを学会ホームページ上に公表、あるいは出版物として刊行してきた。最近では、欧州臨床腫瘍学会(European Society of Medical Oncology:ESMO)と協調して共通のガイドライン策定の模索やお互いのガイドラインを承認する作業を行っており、国際化に向けた動きも活発化し現実的になってきている。
 さて、骨転移診療ガイドラインであるが、本書の作成着手が決定した当初、日本臨床腫瘍学会内では、ESMOと共同で作成すべきでは、はじめから英語版として作成すべきでは、などの議論と方向性に揺れた。これら以外にも様々な紆余曲折と困難が目の前に立ちはだかったが、これらをすべて乗り越えて、文字通り難産の末にようやく誕生したものである。日本整形外科学会、日本泌尿器科学会、日本放射線腫瘍学会など関連学会の協力を得て、幅広い領域から多数のガイドライン作成部会委員が招集された。柴田浩行ガイドライン作成部会長が中心となって関根郁夫副部会長と加藤俊介副部会長がこの大所帯のメンバーを束ねて、face-to-faceの会議、メール上の議論、執筆、編集、校正など、膨大な時間と労力の末に完成した、まさに珠玉の賜物である。最終的には、極めて質が高く世界にも類を見ない、貴重なガイドラインが完成したと自負している。部会長、副部会長、作成部会委員の先生方、作成手順のアドバイスを頂いた吉田雅博先生、そして、日本臨床腫瘍学会事務局とガイドライン委員会委員など、関係者すべての、無償と不断の努力に最大限の敬意を表する。また、根気よくかかわって頂いた南江堂の方々に心より深謝申し上げる。
 本ガイドラインが、臨床腫瘍医のみならず、様々な分野・領域のメディカルスタッフの診療にお役に立てることができればこれ以上の喜びはない。ガイドラインが“生きた指針”であり続けるためには、多くの人が実際利用して厳しく評価をいただくこと、客観的な有用性を検証すること、日進月歩の医療に即していくこと、そしてこれらをもとに適切に改訂していくことがもっとも重要であると認識している。

2015年3月
日本臨床腫瘍学会ガイドライン委員会委員長
室圭

 「腫瘍はどうも苦手だな」と思っていないであろうか。現在の日本は2人に1人が癌になり、3人に1人は癌で死亡する時代といわれている。悪性腫瘍を扱うことが比較的少ないといわれてきた整形外科であるが、時代はかわりつつある。少し前までは、一般の方だけでなく医師の中でも骨転移を生じた癌の予後はきわめてわるく、長生きはできないと思われている傾向があった。しかし以前より腎癌、前立腺癌、乳癌、甲状腺癌などでは骨転移を生じてもずいぶん長生きされる方が多く、最近ではさまざまな進行性の癌に新規治療法が出現したため、骨転移をもちながら長期間にわたって癌と共存しながら人生を歩まれる方が増えている。また骨修飾薬(ビスホスホネートやデノスマブ)、ストロンチウム-89といった放射線医薬品の出現で長期に生活の質(QOL)を保てる方が少なくない。骨転移の初診医となったり、生検、病的骨折、神経麻痺のため手術を担当することがある整形外科医も、腫瘍と向き合う必要性がたいへん高くなっている。
 本書は日本臨床腫瘍学会が主体となり、日本整形外科学会、日本泌尿器科学会、日本放射線腫瘍学会が協力学会となり、幅広い医師の共同作業として作成されたものである。一読して感じることは、多数の診療科にまたがる作成委員の協力のもと、ガイドライン委員会委員長の室圭先生の言葉にあるとおり「膨大な時間と労力の末に完成した、まさに珠玉の賜物」であるということである。年々かわる癌診療の中で、必ずしも十分なエビデンスの確立していない部分も多い中、2015年現在における生きた指針がここに完成した。整形外科からは、第一人者である荒木信人先生(大阪府立成人病センター)、川井章先生・小林英介先生(国立がん研究センター中央病院)、保坂正美先生(東北大学)、森岡秀夫先生(慶應義塾大学)が作成部会に、片桐浩久先生(静岡県立静岡がんセンター)、中馬広一先生(国立がん研究センター中央病院)が作成者に名を連ねている。
 総説として「骨転移の病態」、「骨転移の診断」、「骨転移の治療とケア」がたいへんわかりやすく簡潔にまとめられており、医師だけでなく、この分野にかかわるメディカルタッフにも十分役立つ内容である。臨床的課題(Clinical Question)として「骨転移の治療に装具は有効か?」、「肺がんの骨転移の治療に骨修飾薬(BMA)は有効か?」などの具体的な問いかけがなされている。これは日常診療で他科の先生からわれわれ整形外科にも実際によく質問されることで、それに関する推奨とその推奨度、合意率、エビデンスの強さが多数の引用文献とともに説明されている。このような質問に自信をもって、「現時点でのエビデンスはこうです」と答えられることがこれからの整形外科医に必要とされるであろう。
 「腫瘍はどうも苦手だなあ」と感じている人にこそぜひ一読していただき、日常診療の友としていつでも繙ける位置に常備していただきたい一冊である。骨転移の患者はしばらく増え続け、さまざまな医療行為が求められている。骨の専門家である整形外科医もその診療に積極的に参加し、QOL向上に寄与する必要がある。骨転移を前にしたとき、「腫瘍の専門家でないから」と逃げてしまうのではなく、本書を片手にどうしたら患者のためになるのかを真摯に考える、「腫瘍と向き合う整形外科医」をめざしませんか。

臨床雑誌整形外科66巻7号(2015年7月号)より転載
評者●新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院整形外科特任教授 生越章

 がんの治療は、近年、大きな変化を遂げている。抗がん薬などのがん細胞そのものに対する治療の進歩はもちろんだが、がん治療を支持する治療法の開発が大きく進歩した。抗がん薬の最大の副作用であった嘔吐・嘔気の制御、がん性疼痛の制御をはじめとする緩和医療、そして本ガイドラインに示される骨転移病変の制御に関する治療薬や集学的治療の開発が進み、仕事や家庭生活など日常生活を続けながら「がんとともに普通に生きる」時代へと変わってきた。これらの視点からも本書は、今後きわめて重要な役割を果たすと考えられる。
ガイドラインとしての質の高さ
 本書を手にした最初の感想は、きわめて質の高いガイドラインであるということである。第1点は、ガイドラインの骨格である。ガイドラインの作成手順から始まり、評価、改訂、利益相反にいたるまでのガイドラインの兼ね備えるべき要件がほぼ満たされている。世界に通じるガイドラインであると思われる。とくに、ガイドライン作成に関わるメンバーが、各サブスペシャリティ領域の腫瘍内科、整形外科、放射線科に加え、泌尿器科、リハビリテーション、緩和ケア、核医学、がん専門薬剤師、看護、歯科、病理の各専門家が作成部会のメンバーとして参加、議論のうえに作成されている。まさに「オール・ジャパン」の骨転移診療ガイドラインであることが、ガイドラインの性格上、きわめて重要な要素となっている。
内容の充実と質の高さ
 第2点は、充実した内容とその質の高さ、記載方法の工夫である。わかりやすく短くまとめられた総論は、初学者にも十分理解できる内容であり、教育的効果が高いものである。また、総論に引き続いた26のClinical Question(CQ)の設定は、いずれも臨床において投げかけられる有用なCQである。その記載についても、内容に応じて「回答」と「推奨」を切り分けることにより、利用者の理解を助ける。「推奨」については、推奨度、専門家の合意率、エビデンスの強さと質、推奨判定の要因がわかりやすく記載されていることにより、「推奨」の内容の理解を客観的に深める効果がある。
 本書は、骨転移を有する患者の治療とQOLの向上に寄与することが多大であり、がん患者のケアに関わるすべてのメディカルスタッフの手元に置いていただきたい必携の一冊である。

臨床雑誌内科117巻3号(2016年3月号)より転載
評者●名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野教授 長谷川好規