書籍

多発性骨髄腫治療マニュアル

編集 : 木崎昌弘
ISBN : 978-4-524-26488-9
発行年月 : 2012年4月
判型 : B5
ページ数 : 324

在庫あり

定価7,560円(本体7,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

白血病、悪性リンパ腫とならび、血液内科において重要な疾患の一つである多発性骨髄腫について、その診療のノウハウをまとめた実践テキスト。診断基準、検査所見などの基礎的事項から、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミドなどの使い方と有害事象対策、従来の標準治療と新規治療の選択法、造血幹細胞移植の適応判断など、治療の実際、移植、支持療法、緩和ケアまで余すところなく解説。多発性骨髄腫の新たな治療指針を示す決定版。

第I章 治療の前に
 A.多発性骨髄腫の疫学
 B.骨髄腫細胞の形態学的特徴と細胞表面マーカー
 C.骨髄腫幹細胞
 D.多発性骨髄腫発症と進展の分子病態
 E.骨髄腫細胞の増殖機構
 F.多発性骨髄腫における染色体異常と臨床像
 G.多発性骨髄腫における骨破壊の分子機構
第II章 多発性骨髄腫の診断基準と臨床病期
 A.多発性骨髄腫における臨床症状
 B.多発性骨髄腫における検査所見
 C.多発性骨髄腫および類縁疾患の診断基準
 D.多発性骨髄腫の病期分類と予後因子
 E.多発性骨髄腫における画像診断
第III章 多発性骨髄腫の治療手段
 A.多発性骨髄腫に対する治療の進め方と治療指針
 B.多発性骨髄腫に対する化学療法
 C.多発性骨髄腫治療における造血幹細胞移植
 D.新規治療薬
  1.ボルテゾミブ
  2.サリドマイド
  3.レナリドミド、ポマリドミド
  4.新規抗がん薬(ベンダムスチン、ペグ化リポソーマルドキソルビシン)
  5.次世代分子標的治療薬開発の状況
 E.多発性骨髄腫に対する放射線治療
 F.ガイドラインに基づく骨病変に対するビスホスホネート製剤の使い方
第IV章 治療の実際
 A.MGUSのマネジメント
 B.治療効果判定基準
 C.初発多発性骨髄腫の治療
  1.若年者移植適応骨髄腫の治療
  2.高齢者移植非適応骨髄腫の治療
  3.多発性骨髄腫の地固め療法・維持療法
 D.再発・治療抵抗性多発性骨髄腫の治療
 E.多発性骨髄腫における新規治療薬の有害事象対策
 F.支持療法の実際
 G.緩和ケア
第V章 骨髄腫類縁疾患の診断と治療
 A.原発性マクログロブリン血症
 B.原発性アミロイドーシス
 C.Castleman病
 D.POEMS症候群
 E.H鎖病

索引

この度、『多発性骨髄腫治療マニュアル』を上梓することとなった。南江堂発刊の本シリーズの『白血病治療マニュアル』および『悪性リンパ腫治療マニュアル』がすでに第3版を数えていることを考えると、他の造血器腫瘍に比べて多発性骨髄腫の治療がいかに遅れていたかが実感される。
 多発性骨髄腫はこれまで治癒の難しい難治性造血器腫瘍と考えられ、1960年代から行われているMP療法を上回る治療法が存在しなかった。しかしながら、2000年以降サリドマイド、ボルテゾミブ、レナリドミドなどの新規治療薬が次々に臨床導入されるようになり、多発性骨髄腫の生存期間は延長し、治療成績は大幅に改善された。現在では、これらの新規治療薬を上手く組み合わせ、さらにup-frontに用いることにより、治癒を目指した治療戦略が立てられるようになってきた。このような急速な多発性骨髄腫治療の進歩は、欧米での大規模な臨床試験の結果を反映しており、これらの結果をいかにわが国の実臨床に取り込むかがわれわれ臨床医の責務である。しかし、われわれ日本人を対象とした臨床試験の結果は極めて少なく、またわが国の保険制度の中では実際に使用できないレジメンも存在するのが実情である。
 多発性骨髄腫の治療は、近年の分子病態の解明とそれに伴う新規治療薬の開発、臨床への導入により、白血病と同様に寛解導入療法、地固め・維持療法と段階的に行われるようになり、より深い寛解を目指すことが生存期間の延長や治癒に重要であることが明らかになってきた。しかし、複数ある新規治療薬の併用をどのように行い寛解導入を目指すか、地固め・維持療法をどのように行うか、自家造血幹細胞移植をどのように取り入れた治療レジメンを用いるかなど、実際には明らかでない点も多く存在する。このような状況の中で、本書は多発性骨髄腫の病態、診断、そして種々の治療薬の基本を十分に理解した上で、実際の治療をどのように行っていくかの指針となることを目的に編集した。執筆者はすべて現在の骨髄腫治療の第一線で活躍されているエキスパートにお願いし、各項目について最新の知見や臨床試験の結果に基づいて、分かりやすく且つわが国の現状に即して解説いただいた。
 忙しい臨床の現場において日夜頑張っている臨床医にとってすべての新しい知見をcatch-upすることは至難の業である。そのような時に、わが国の実情に即した最新の治療マニュアルである本書が多くの臨床医にとって座右の書として活用され、骨髄腫診療に役立つであろうことを編者として願っている。
 最後に、忙しい中に執筆をお願いした先生方に心より御礼申し上げます。
平成24年春
木崎昌弘

この度南江堂から上梓された『多発性骨髄腫治療マニュアル』は、『白血病治療マニュアル』(1996年発行)、『リンパ腫治療マニュアル』(1998年発行)に続くシリーズものである。多発性骨髄腫における薬剤やエビデンスは白血病・リンパ腫に比べるとこれまではるかに乏しく、出版が遅れたことは驚くには当たらない。しかしこの10年間、多発性骨髄腫の治療法は一変したといえる。
 最初のきっかけはthalidomideが登場した1999年にさかのぼる。しかし日本での承認までには多くの紆余曲折があったし、このことは本書でも触れられている。thalidomideに加えて、その誘導体lenalidomide、はじめてのプロテアゾーム阻害薬bortezomibには、いずれもいまだ未知の作用機序があり、従来の抗がん薬・分子標的薬を超えた新鮮さも感じられる。いずれにしてもこれらの登場は多発性骨髄腫のエビデンスを一新させ、さらに併用療法が開発されている今日、その成績は日進月歩で向上している。この先、優れた新薬が続々登場するので、これまで誰も口にしたことはないが、“治癒を目指す多発性骨髄腫治療”の実現も夢ではなかろうという感じさえしている。
 このような時期に、埼玉医科大学総合医療センター血液内科・木崎昌弘教授を本書が編集されたことは誠にタイムリーといえるであろう。木崎教授は厚生労働省班研究でも多発性骨髄腫の研究をリードする立場にあり、標的薬の開発などで小生とも接点が多い。海外での学会などで一緒になることも多く、柔和なお人柄と話題の豊富さから、いつも親しくさせていただいている。
 本書はその分野のエキスパートが最新の情報を漏れなくまとめた、読み応えのある概説書となっている。出版されている多発性骨髄腫の本としてはもっとも詳しいのではなかろうか。残念なのは、欧米のデータが中心であることで、今後、骨髄腫に関心をもつ若い血液研究医が増えて、日本からの情報発信が盛んになるよう祈念している。また個人的には木崎カラーをもっと出して、thalidomide 開発のこぼれ話や、分子生物学研究の最前線などを、たとえばコラムとしてもよかったかなと、感じている。また、気軽に病棟・外来へ持って行けるポケット版も期待したい。
 本書が多くの血液・臨床腫瘍を専門とする医師・研修医に読まれて、早く改訂を迎えられることを願っている。

評者● 直江知樹
内科110巻1号(2012年7月号)より転載