書籍

不整脈診療のトラブルシューティング

65のシークレット

編集 : 山下武志/高橋淳/栗田隆志
ISBN : 978-4-524-26461-2
発行年月 : 2011年9月
判型 : B5
ページ数 : 230

在庫あり

定価5,076円(本体4,700円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

テキストでは解決できない不整脈診療のトラブルに、すっきり・明快に答える実践書! 実臨床で本当に役立つコツやテクニックが満載、起きてしまったトラブルはもちろん、これから起こるトラブルも想定できる一冊、循環器医、不整脈医はもちろん、レベルアップを目指す若手医師、研修医に必ず役立つ。

I 検査・診断のトラブル
 1.上室頻拍!? 心室頻拍!?
 2.心房頻拍:起源はどこ!?
 3.心室頻拍:起源はどこ!?
 4.発作時心電図が記録できない!?
 5.失神既往患者の運動負荷試験はどうする!?
 6.房室ブロックの検査:どこまでする!?
 7.無症状のBrugada型心電図:どうする!?
 8.QT延長症候群・QT短縮症候群の診断はどうする!?
 9.narrow QRS頻拍:EPSでどう診断する!?
 10.EPSで誘発されない頻拍発作:どうする!?
 11.徐脈性不整脈:EPSは必要!?

II 薬物療法のトラブル
 1.I群薬無効の発作性心房細動:次はどうする!?
 2.心房細動のQT時間はどのように測定する!?
 3.抗不整脈薬服用中の失神:どうする!?
 4.抗不整脈薬の効果はどう判断する!?
 5.心房細動の心拍数はどこまで下げる!?
 6.I群薬で治療中に心拡大が増強:どうする!?
 7.心不全既往のある発作性心房細動:どの抗不整脈薬を使う!?
 8.無症状の洞性徐脈:心拍数を上げるべき!?
 9.拡張型心筋症の無症候性非持続性心室頻拍:アミオダロンを使う!?
 10.アミオダロン導入時の注意点は!?
 11.心不全を合併したジギタリス抵抗性心房細動:どうする!?
 12.アミオダロン服用中のelectrical storm:次の手は!?
 13.他科から「抗凝固療法中断」の依頼がきた心房細動:どうする!?
 14.治療域を外れたPT-INR:どうする!?イベントや合併症が生じていない場合)
 15.抗凝固療法中に加わった抗血小板薬:大丈夫!?

III カテーテルアブレーションのトラブル
 1.His記録部位に近いslow pathwayアブレーション法は!?
 2.房室結節リエントリー性頻拍のslow pathwayアブレーション:どこまでHisに近づけるか!?
 3.焼けない通常型心房粗動:電位もみえない!?
 4.副伝導路アブレーション:至適部位で出力が上がらない!?
 5.His束近傍副伝導路で通電中にjunctional rhythmが出現:どうする!?
 6.洞調律を維持できない偽性心室頻拍:どうアブレーションする!?
 7.最早期心房興奮部位通電無効な潜在性副伝導路:どうアブレーションする!?
 8.ATP感受性心房頻拍時:どう安全にアブレーションする!?
 9.A波とV波が重なった心房頻拍:どうする!?
 10.停止するが誘発可能な特発性心室頻拍:どうする!?
 11.アブレーション治療困難な右室流出路の心室頻拍、心室期外収縮:どうする!?
 12.焼灼ラインが食道に重なる心房細動アブレーション
 13.3Dマッピングシステム下の肺静脈アブレーション中:いくら焼いても隔離できない!?
 14.上大静脈隔離中に伝導間隙で横隔膜捕捉:どうする!?
 15.経中隔穿刺時、穿刺針が左房に抜けない!?
 16.CFAEアブレーション中に心房細動が停止しない:どうする!?
 17.隔離が成功している心房細動の再発例:次の手は!?
 18.起源が同定できないnon PV起源
 19.心房細動アブレーション中に下壁誘導でST上昇:どうする!?
 20.ワルファリン投与下の心房細動アブレーション中に心タンポナーデ合併:どうする!?

IV デバイス治療のトラブル
〈心臓ベースメーカー〉
 1.植込み前に抗血小板薬、抗凝固薬の投薬調節を忘れてしまった!?
 2.心臓ベースメーカー植込み中に心房細動になった!?
 3.リード固定後にペーシング閾値が急に上がってしまった!?
 4.植込み手技中、急に血圧やSpO2が低下してきた:どう対応する!?
 5.植込み手技中、急に患者が胸痛を訴えた:何を考える!?
 6.リード操作中にリード先端が動かなくなってしまった!?
 7.静脈が急に狭窄し、リード操作が困難になった:どうする!?
 8.心臓ペースメーカーを植込んだのに失神を訴えて緊急来院した!?
〈ICD〉
 9.十分に低い除細動閾値が得られない:どうする!?
 10.体外式除細動器を用いても除細動できない:どうする!?
 11.心房細動患者の術前に経食道心エコーで左房内血栓がみつかった!?
 12.永続性心房細動だと思っていたらDFT測定時に洞調律に戻ってしまった!?
 13.多枝病変患者へのPCIとICD植込みはどちらが優先!?
〈CRT-D〉
 14.冠静脈に解離が起こってしまった:どうする!?
 15.冠静脈洞にカニュレーションができない:どうする!?
 16.冠静脈リード挿入に適した側枝が全くない!?
 17.最大出力ペーシングすると横隔神経刺激が生じてしまう!?
 18.突然両室ペーシングができなくなった:どうする!?
 19.術後に心不全症状が悪化した:どうする!?

索引

世の中に「不整脈」をテーマとした教科書は数多くある。私たちが不整脈の診療に従事し始めた時代と比較すると教科書の量は雲泥の差で、まさに隔世の感すらある。そして今、私たちは不整脈の教科書の「量」にもう十分満足している。手を変え品を変え、ややもすればとっつきにくいと思われがちな「不整脈」をできるだけ身近に感じてもらうために、これまで多くの努力が払われてきた。このような教科書で不整脈を勉強し、興味を持ち始めた方は数多くいるに違いない。
 では、もう教科書はいらないのだろうか?実は、まだそうは思っていない。まだまだ教科書の「質」は、満足すべき状況にない。それは不整脈の初学者ではなく、むしろ不整脈を面白く感じ始めたときに誰もが気づくことだろう。
 本書は、不整脈に興味のある医師すべてを対象に想定して企画されたトラブルシューテイング集である。編集者3名が集まり、自らが経験する臨床的な課題を列挙し、その中で応用性の高い課題を厳選したうえで、さらにその課題を答えるにふさわしい専門家を選定し、執筆していただいた。編集会議では「この課題は自分でも答えにくいな」というような会話まで行われるほど、徹底的に現場感覚で磨かれた「実践的」なトラブルシューティング集となっている。現場で困る課題に対して専門家はこのように対処している、あるいは同じように困っているということを知れば、明日からの診療にもっと自信が生まれることだろう。
 このような企画で生まれた本書をあらためて読んでみると……、これは「質の高い」教科書であると言ったほうがよいことに気づいた。トラブルシューテイングは臨床現場の悩みの現れであり、それを解決することが科学の使命であり、進歩であると言える。自身のもつ課題を選んで読むのもよし、また最初から通読するもよし、本書はこれまでの満たされなかった読者の要求に答えていることを願っている。また、この質の高い教科書に貢献していただいた執筆者にあらためて謝意を表したい。
2011年9月
山下武志
高橋淳
栗田隆志

不整脈の教科書は数多く出版されている。オーソドックスな教科書、特定の不整脈に焦点を当てたもの、電気生理検査、アブレーション、抗不整脈薬などさまざまな切り口から編集され、勉強を始めたばかりの初学者にとってどれを選べばよいのか迷うような状況といっても過言ではない。これらの教科書から知識を得たつもりであっても、実際の臨床の現場に立つとどうしてよいのかわからない問題、しかも切実な問題が次から次へと湧き出てくる。質問できる専門家がそばにいれば苦労はないが、不整脈の専門家といっても、すべての問題、とくに実践的な問題に対して自信をもって答えられないこともありえる。
 本書は、不整脈の分野で中堅というよりはすでに大御所の風格のある3名が編者となって企画された。山下先生はJ−RHYTHM試験を実施した研究者で基礎的な電気生理学や薬物療法を主な専門とし、多くの書籍を上梓しており、その名前はつとに知られている。高橋先生は不整脈のアブレーションの分野ではわが国を代表する若手の専門家である。栗田先生は致死性不整脈やデバイス関係の専門家で、講演が大変上手な第一人者である。その3名が集まり、「…自らが経験する臨床的な課題を列挙し、その中で応用性の高い課題を厳選し、その課題に答えるに相応しい専門家を選定した結果、徹底的に現場感覚で磨かれた実践的なトラブルシューティング集」となったものである。
 本書は4章から構成されている。「検査・診断のトラブル」、「薬物療法のトラブル」、「カテーテルアブレーションのトラブル」、そして「デバイス治療のトラブル」で、最後の章はさらに心臓ペースメーカー、ICD、CRT−Dに分けられている。合計65の実践的な質問に具体的な回答がされている。評者自身が興味を引かれた項目を列挙すれば次のようになる。「発作時心電図が記録できない!?」、「EPSで誘発されない頻拍発作:どうする!?」、「抗不整脈薬服用中の失神:どうする!?」、「心不全を合併したジギタリス抵抗性心房細動:どうする!?」、「他科から抗凝固療法中断の依頼がきた心房細動:どうする!?」、「抗凝固療法中に加わった抗血小板薬:大丈夫!?」、「心臓ペースメーカーを植込んだのに失神を訴えて緊急来院した!?」などである。その他のトラブルも診療の現場では遭遇する機会が多く、多くの臨床家が頭を悩ましているものが取り上げられている。
 このような悩ましい問題に対して個々の分野で活躍中の、若手を中心とした専門家が、具体的かつ丁寧に解説を加えていて、なるほどと感心させられる。最近経験した例であるが、完全房室ブロックに対するペースメーカー植込み後に2回の失神を起こした高齢の患者さんが入院してきた。当初ペーシング不全あるいはオーバーセンシングを原因として疑ったが、結局のところ神経調節性失神と診断された。この鑑別疾患も本書ではしっかり記載されている。
 以上のように本書は、不整脈の臨床現場に飛び込んだばかりの若手医師のみならず、不整脈の分野での中堅といわれる医師にとっても、十分参考になるものである。各項目は数分の時間で読むことができ、何かと多忙な臨床家には便利なものである。本書が不整脈クリニックや循環器病棟に置かれ、広く不整脈診療の参考になることを期待したい。
評者● 井上博
臨床雑誌内科109巻4号(2012年4月号)より転載