書籍

抗菌薬コンサルトブック

監修 : 大曲貴夫
編集 : 滝久司/坂野昌志/望月敬浩
ISBN : 978-4-524-26459-9
発行年月 : 2015年7月
判型 : B6変型
ページ数 : 368

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

抗菌薬を使用する医療者が、適切かつ安全に薬剤を選択し使用するためのポケットブック。主な抗菌薬の構造式、作用機序、薬物動態、用法・用量、禁忌や相互作用など、日常診療に有用な抗菌薬の知識をコンパクトかつ明解に解説した。医師と薬剤師が協力して執筆し、臨床現場で即実践に活かせる一冊。

第I章.総論
 A.抗菌化学療法の基本的な考え方
  Step1.感染症診療〜思考の筋道を持つ〜
  Step2.患者背景を理解する
  Step3.どの臓器の感染か
  Step4.原因となる微生物を特定する
  Step5.どの抗菌薬を選択するか
  Step6.適切な経過観察を行う
 B.抗菌薬の分類
  1.化学構造の観点から
  2.作用機序の観点から
  3.PK-PD理論の観点から
  4.殺菌的抗菌薬・静菌的抗菌薬の使い分け
 C.抗菌化学療法における用法・用量の設定
  1.PK-PD理論を用いる
  2.TDMを行う
  3.臓器障害時の用量調節のしかた
 D.微生物の特定
  1.微生物の分類
  2.臨床上重要な微生物
  3.抗菌薬耐性化のメカニズム
 E.抗菌薬が効かないときの考え方
  1.「抗菌薬が効かない」ときこそ,注意が必要
  2.考えるべきこと(1):そもそも診断が違うのでは?
  3.考えるべきこと(2):そもそも自然経過ではないのか?
  4.考えるべきこと(3):膿瘍や閉塞はないか?
  5.考えるべきこと(4):感染以外の要因による発熱では?
 F.抗菌化学療法における薬理遺伝学
  1.ゲノム薬理学と薬理遺伝学
  2.薬理遺伝学の臨床応用(抗がん薬の場合)
  3.抗菌化学療法における薬理遺伝学
 G.本邦未承認の重要な抗菌薬
第II章.各論
 ■抗菌薬の見取り図(抗結核薬,抗真菌薬除く)
 A.ペニシリン系
  ●ペニシリン系抗菌薬の一覧表
  ●ペニシリン系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.ベンジルペニシリン(PCG)
  2.アンピシリン(ABPC)
  3.アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)
  4.スルタミシリン(SBTPC)
  5.ピペラシリン(PIPC)
  6.タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)
  7.ベンジルペニシリンベンザチン(DBECPCG)
  8.アモキシシリン(AMPC)
  9.アモキシシリン・クラブラン酸(AMPC/CVA)
 B.セフェム系
  ●セフェム系抗菌薬の一覧表
  ●セフェム系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  (第1世代)
  1.セファゾリン(CEZ)
  2.セファレキシン(CEX)
  (第2世代)
  3.セフォチアム(CTM)
   セフォチアム ヘキセチル(CTM-HE)
  4.セフメタゾール(CMZ)
  5.フロモキセフ(FMOX)
  6.セファクロル(CCL)
  (第3世代)
  7.セフォタキシム(CTX)
  8.セフトリアキソン(CTRX)
  9.ラタモキセフ(LMOX)
  10.セフタジジム(CAZ)
  11.セフォペラゾン・スルバクタム(CPZ/SBT)
  12.セフジニル(CFDN)
  13.セフカペン ピボキシル(CFPN-PI)
  14.セフジトレン ピボキシル(CDTR-PI)
  (第4世代)
  15.セフェピム(CFPM)
  16.セフピロム(CPR)
  17.セフォゾプラン(CZOP)
 C.モノバクタム系
  ●モノバクタム系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.アズトレオナム(AZT)
 D.カルバペネム系
  ●カルバペネム系抗菌薬の一覧表
  ●カルバペネム系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.イミペネム・シラスタチン(IPM/CS)
  2.パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP)
  3.メロペネム(MEPM)
  4.ビアペネム(BIPM)
  5.ドリペネム(DRPM)
  6.テビペネム ピボキシル(TBPM-PI)
 E.ペネム系
  1.ファロペネム(FRPM)
 F.ST合剤
  ●ST合剤の抗菌スぺクトラム
  1.スルファメトキサゾール・トリメトプリム(SMX/TMP)
 G.マクロライド系
  ●マクロライド系抗菌薬の一覧表
  ●マクロライド系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.エリスロマイシン(EM)
  2.クラリスロマイシン(CAM)
  3.アジスロマイシン(AZM)
 H.リンコマイシン系
  ●リンコマイシン系抗菌薬の一覧表
  ●リンコマイシン系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.クリンダマイシン(CLDM)
  2.リンコマイシン(LCM)
 I.ストレプトグラミン系
  1.キヌプリスチン・ダルホプリスチン(QPR/DPR)
 J.テトラサイクリン系
  ●テトラサイクリン系抗菌薬の一覧表
  ●テトラサイクリン系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.テトラサイクリン(TC)
  2.ドキシサイクリン(DOXY)
  3.ミノサイクリン(MINO)
 K.アミノグリコシド系
  ●アミノグリコシド系抗菌薬の一覧表
  ●アミノグリコシド系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.ストレプトマイシン(SM)
  2.トブラマイシン(TOB)
  3.ゲンタマイシン(GM)
  4.アミカシン(AMK)
  5.アルベカシン(ABK)
  6.カナマイシン(KM)
 L.キノロン系
  ●キノロン系抗菌薬の一覧表
  ●キノロン系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.レボフロキサシン(LVFX)
  2.パズフロキサシン(PZFX)
  3.シプロフロキサシン(CPFX)
  4.ノルフロキサシン(NFLX)
  5.プルリフロキサシン(PUFX)
  6.モキシフロキサシン(MFLX)
  7.ガレノキサシン(GRNX)
  8.シタフロキサシン(STFX)
 M.グリコペプチド系
  ●グリコペプチド系抗菌薬の一覧表
  ●グリコペプチド系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.バンコマイシン(VCM)
  2.テイコプラニン(TEIC)
 N.オキサゾリジノン系
  ●オキサゾリジノン系抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.リネゾリド(LZD)
 O.その他の抗菌薬
  ●その他の抗菌薬の抗菌スぺクトラム
  1.ホスホマイシン(FOM)
  2.メトロニダゾール
  3.コリスチン
  4.ポリミキシンB(PL-B)
  5.ダプトマイシン(DAP)
  6.チゲサイクリン
 P.抗結核薬
  ●抗結核薬の一覧表
  ●抗結核薬の抗菌スペクトラム
  1.イソニアジド(INH)
  2.エタンブトール(EB)
  3.リファンピシン(RFP)
  4.ピラジナミド(PZA)
  5.リファブチン(RBT)
 Q.アゾール系
  ●アゾール系抗真菌薬の一覧表
  ●アゾール系抗真菌薬の抗真菌スペクトラム
  1.ミコナゾール(MCZ)
  2.フルコナゾール(FLCZ)
  3.ホスフルコナゾール(F-FLCZ)
  4.イトラコナゾール(ITCZ)
  5.ボリコナゾール(VRCZ)
 R.その他の抗真菌薬
  ●その他の抗真菌薬の一覧表
  ●その他の抗真菌薬の抗真菌スペクトラム
  1.アムホテリシンB(AMPH-B)
   リポソーム化アムホテリシンB(L-AMB)
  2.ミカファンギン(MCFG)
  3.カスポファンギン(CPFG)
  4.ペンタミジン(PM)
  5.テルビナフィン(TBF)
付録 ■CYP3A4の基質となる主な薬剤一覧
索引

序文

 本邦では過去10年ほどで適切な感染症診療への関心と理解が高まり、この影響か日本語で書かれた抗菌薬の使用法のマニュアルが数多く発刊された。これらは日本における感染症診療の質の向上に大いに貢献してきたと考えている。
 さて、10年経てば時代も変わる。この10年で起こった大きな変化は、日本の医療全体の大きなうねりと流れを同じくして、感染症診療の世界も多職種協働の枠組みの中で行われるようになってきているということである。つまり薬剤師、臨床検査技師、看護師との有機的な協力の中で診療が行われるようになったのである。
 抗菌薬に対する医療者の関わり方は、その職種によってさまざまである。従来発刊された抗菌薬のマニュアルは、その多くが医師が主たる読者で、抗菌薬の臨床現場での使い方に主眼が置かれてきた。それはそれで重要である。近年は薬剤師が感染症診療の現場に積極的に参加するようになり、重要な役割を果たしている。そうすると、抗菌薬のマニュアルにもまた違った一歩進んだ専門的な視点が求められる。添付文書上の用法用量、腎障害・肝障害時の用法用量の設定、他の薬剤との相互作用など、薬剤師が感染症診療に関わるには、医師が関わる以上に患者の背景や投与中の薬剤などの全体像をきめ細やかに把握し、その場において適切で安全な治療の選択に資する内容を提供する必要がある。そしてそのような目配りをしているマニュアルは、翻って医師にも有用である。
 本書は上記のような目的を果たすため、薬剤師と医師が協力して執筆した。両職種が互いの得意な領域を出し合うことで、相乗効果を生み、結果的に医療現場でのリファレンスとして大いに役立てていただけることを狙いとしている。単に「分かりやすい」ことを安易にうたわず、現場のプロに役立つ内容とすることを目指したマニュアルである。

2015年5月
大曲貴夫

 薬剤師をしていた1990年代、感染症治療で選択される薬が、医師によって明らかに違うことをよく経験した。どうしてこんな違いがあるのか聞いてみると、“私の指導医が、このような抗菌薬の使い方としていたので”とのこと。当時抗菌薬の点滴も、朝夕1日2回とか3回という指示で間隔をあけるように指示があっても、看護師サイドの都合もあり、1日2回の投与は、朝は10時、夕は16時なんてことも普通にあった。薬学部時代、生物薬剤学で薬物血中濃度の理論を学ぶのであるが、臨床現場で血中濃度を測定していたのは、抗てんかん薬やジギタリスなどの一部であった。それから約10年後、医師になった私は、たまたま感染症診療で有名な藤本卓司先生の元、研修指導を受ける機会に恵まれた。研修前のオリエンテーションで、vancomycinの血中濃度を薬剤師が測定し、濃度が不適当であったら連絡があること、またその年から抗菌薬の投与指示は、薬物血中濃度の理論から、時間指定して投与するように説明があった。そのとき私は、「やっと薬学部で学んだことが臨床で活かされるようになったんだなあ、長かったなあ」と感動したことを覚えている。当時の医学部でも感染症治療の講義はなく、微生物学の講義を中心に病院実習中に各科で少しずつ勉強するくらいで、系統立てて感染症を習ったことはなかった。臨床で唯一頼みにしていたのが青木眞先生の名著、「感染症診療レジデントマニュアル(第1版)」くらいであった。その後、藤本先生をはじめ、若手を中心としたさまざまな先生方が臨床にすぐ活用できる感染症の本を次々に発売された。本屋に行くと、以前は選択肢がなくて困ったのに、いまでは逆にありすぎて選ぶのに困る時代になった。本当に、ここ10年で感染症診療は劇的に変化した。便利になった反面、まだまだ感染症診療を専門とする医師を育てる研修施設は少ない。また、都市部の大病院を除き、その他中小の病院には頼りになる専門の医師はほとんどいない。その穴を埋めるべく、今では感染症に関わる多くの専門薬剤師が、医師の代わりに抗菌化学療法の適正使用に、その能力をいかんなく発揮する状況になりつつある。
 このような状況のなか、今回「抗菌薬コンサルトブック」が南江堂から発売された。まず表紙をめくって執筆者一覧をざっとみたところ、感染症で有名な医師の方々以外に、薬剤師もその執筆名に名を連ねているのが目に留まった。これは今までの本にはあまりなかったことである。さらに頁をめくると、他書とは違う際立った特徴が目についた。それは、私にはとても懐かしいものでもある構造式や、薬物動態、蛋白結合率、相互作用などである。これらは薬剤師の本来得意とするところで、実臨床においても必要不可欠な情報であり、それらがコンパクトにまとめられ網羅されていた。
 このような今までの感染症マニュアルと違う視点で、それも医師と薬剤師がともに協力して作り上げたこの「抗菌薬コンサルトブック」を私は待っていた。
 私は循環器専門医でありながら、赴任病院に医師が少なかったこともあり、感染症治療もかなり行ってきた。今ではもうほとんど循環器疾患しかみなくなったが、当時このようなマニュアルがあればよかったのにと、本当に残念に思うとともに、今このマニュアルに出会えたことで、現在感染症診療の現場で奮闘している感染症非専門医の医師は本当に恵まれていると心から感じる。誰もが数々ある感染症マニュアルで、心の支えとなっているお気に入りの一冊があるものだ。本書はその1つになりうるのではないかと私は確信し、本書を推薦したいと思う。

臨床雑誌内科117巻3号(2016年3月号)より転載
評者●JCHO大阪病院循環器内科医長 大八木秀和