書籍

わかりやすい血栓と止血の臨床

編集 : 日本血栓止血学会編集委員会
ISBN : 978-4-524-26449-0
発行年月 : 2011年5月
判型 : B5
ページ数 : 292

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

血栓止血学は、内科・外科・小児科等領域を問わず横断的に関わる学問領域であり、臨床的にも重要なテーマである。本書は、日本血栓止血学会編集委員会による血栓止血学の網羅的な解説書である。診療が難しいとされる血栓性疾患、出血性疾患について、日常臨床で生じる疑問や臨床上有用な事項を中心にエキスパートがわかりやすく解説。全科医師に必携のテキストブック。

I 臨床血栓止血学オーバービュー

II 血栓止血異常の病態と臨床検査
 1.臨床検査室から臨床へ
 2.凝固・線溶と臨床検査
 3.血液凝固異常症の臨床と検査―血栓性素因の診断
 4.血栓止血関連マーカーの標準化
 5.術前検査としての凝血学的検査―出血と血栓症の対策
 6.血栓止血異常と皮疹の種類・鑑別
 7.小児科で遭遇する出血性/血栓性疾患

III 血小板関連疾患
 1.血小板と臨床検査
 2.血小板数の低下する疾患・病態の鑑別
 3.網血小板/幼若血小板比率測定の臨床応用
 4.血小板機能異常症の診断と対応
 5.本態性血小板血症の診断と治療
 6.血球貪食症候群の病態・診断・治療

IV 出血性疾患
 1.出血傾向の鑑別
 2.出血斑の種類と病因
 3.特発性血小板減少性紫斑病の診断と治療
 4.特発性血小板減少性紫斑病と妊娠中の問題点
 5.血友病の診断と治療
 6.その他の先天性凝固因子障害症の診断と治療
 7.von Willebrand病の診断と治療
 8.後天性血友病・後天性von Willebrand病の診断と治療
 9.血友病症例の手術と止血管理
 10.ビタミンK欠乏症の臨床

V 血栓性疾患
 1.血栓性疾患を診たときの考え方
 2.先天性凝固阻止因子欠乏症―アンチトロンビン欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症
 3.脳血管障害と抗血栓療法
 4.心疾患と抗血栓療法
 5.線溶療法の考え方と治療薬剤
 6.末梢動脈疾患の診断と治療
 7.静脈血栓塞栓症の予防・治療ガイドラインについて
 8.深部静脈血栓症の病態と臨床
 9.肺血栓塞栓症の診断と治療
 10.肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症の診断・治療マーカー(フィブリン関連マーカーを中心に)
 11.整形外科領域における深部静脈血栓症
 12.下肢静脈エコーの実際
 13.頸動脈エコーの実際

VI 血小板数減少を伴う血栓性疾患
 1.血栓性血小板減少性紫斑病の診断と治療
 2.造血幹細胞移植後血栓性微小血管障害症の診断と治療
 3.HELLP症候群
 4.ヘパリン起因性血小板減少症の診断
 5.ヘパリン起因性血小板減少症の治療
 6.抗リン脂質抗体症候群の診断
 7.抗リン脂質抗体症候群の治療
 8.抗リン脂質抗体症候群の不育症
 9.播種性血管内凝固症候群の病態・診断
 10.播種性血管内凝固症候群の治療
 11.救急領域における播種性血管内凝固症候群の診断と治療

VII 抗血栓療法
 1.抗血小板療法の実際
 2.経口抗凝固薬の適正使用
 3.ヘパリン類の適正使用
 4.抗血栓療法と観血的処置―消化器内科の立場より
 5.抗血栓療法と観血的処置―循環器内科の立場より
 6.抗血栓療法と観血的処置―救急/外科の立場より
 7.抗血栓療法と観血的処置―産婦人科の立場より
 8.抗血栓療法と観血的処置―歯科の立場より

VIII 血液製剤輸血の適応と使用法
 1.血小板製剤
 2.新鮮凍結血漿
 3.血液凝固因子製剤(VWF、fibrinogen、factor XIII)
 4.血液凝固因子製剤(AT、APC)
 5.Factor VIIa製剤
 6.トロンボモジュリン製剤(リコモジュリンR)
 7.血漿分画製剤(免疫グロブリン)
 8.活性型プロトロンビン複合体製剤

IX 止血薬、抗線溶薬の適応と使用法
 1.血管強化薬と局所止血薬
 2.凝固促進薬(ビタミンK、プロタミン)
 3.抗線溶薬(トラネキサム酸)
 4.DDAVP

索引

日本血栓止血学会は昭和47年に「血栓及び止血に関する討議会」として発足し、その後昭和53年に日本血栓止血学会と改められ、平成元年には第12回国際血栓止血学会を成功裡に開催した歴史を有しています。
 平成19年の学術集会は第30回の記念大会でしたが、その機会に学会が辿って来た歩みを改めて振り返ってみました。当初は血小板機能、凝固因子測定などに関する話題が多く、その後血友病、von Willebrand病、血小板無力症などの出血性疾患に関する発表がみられるようになり、更に分子生物学、細胞生物学などの基礎医学の華々しい展開もあって、血小板・凝固因子・線溶因子の分子構造、構造・機能相関などの基礎的に掘り下げた研究に大きな発展がみられるようになりました。最近では病的血栓形成のメカニズムの解明と共に、心筋梗塞、脳梗塞等の動脈硬化を基礎として発症するアテローム血栓症にスポットライトが当てられるようになり、血栓止血学の学問領域は大きな拡がりをみせています。
 血栓止血学は既存の内科・外科・小児科等の基本診療科や循環器、血液、神経といったsubspecialtyをまたぐ横断領域の学問として発展して来た重要な学問分野でありながら、卒前・卒後教育の中に十分組み込まれていないことから、学生は勿論のこと、若い医師にとってやや距離をおいてみられているようです。現在、心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓などの血栓性疾患は我が国の死因の約1/3を占め、その診断・予防・治療を確立することの重要性が強く叫ばれています。即ち、これらの疾患の病態を血栓止血学の観点から眺めることは臨床医にとって非常に重要なのです。
 そのような背景もあって、私共は臨床医が日常臨床で疑問に思っていることをわかりやすく解説し、出血性・血栓性疾患の病態理解や、診断・治療に役立つことを目的として本書を企画し、日本血栓止血学会で中心となって活動して下さっている先生方に執筆をお願いしました。
 臨床医の座右の書として役立つものと念願していますが、同時に若い医師がこの学問領域の面白さを十分に感じとって、将来の我が国の血栓止血学を担う人材に育ってくれることも願っております。
2011年3月
一般社団法人日本血栓止血学会
理事長 池田康夫

『わかりやすい血栓と止血の臨床』が手元に届いた。実は、この書評の依頼状が届いたとき、数多くの原稿依頼が重なっていたこともあって、承諾するかどうかを迷ったのであるが、タイトルをみて本書が欲しくなり、これは依頼を受けるしかないという結論に至った。
 一般的な血液内科医の診療業務の大半は造血器腫瘍を対象としている。しかし、他科からのコンサルテーションとなると、血栓、止血関係の相談が多い。そんな時、血栓、止血に自信のない私は叫ぶ。「血液内科医は誰かいないか?!」待つこと数秒。返事が返ってくるわけもなく、ようやく気づく。「あ、自分か…」そんな時、これからは開くであろう、この本を。日本血栓止血学会が編集しているこの本を。「わかりやすい」と表紙に品質保証されているこの本を。
 執筆者の一覧を見ればこの領域の錚々たるメンバーが並んでいる。そして特徴的な点は消化器内科、産婦人科、心臓血管外科など、様々な分野からも執筆者が選ばれているということである。これは序文にも書かれているとおり、血栓止血学が多くのsubspecialtyをまたぐ横断的学問として発展してきたこと、多くの疾患に血栓、止血の問題が関わっており血栓、止血の理解をなくしては適切な診療ができないということを反映している。
 目次を開くと項目の構成が系統だったものであることがわかる。血栓、止血異常の基礎的な知識の整理から始まり、血小板関連疾患、出血性疾患、血栓性疾患、血小板数減少を伴う血栓性疾患と続く。そしてコンサルテーションの非常に多い抗血栓療法、血液製剤輸血の適応と使用法、止血薬、抗線溶薬の適応と使用法で締めくくられる。すなわち、一冊全てを通読する読み物としても、問題に生じたときに活用する辞書としても役立つ書籍に仕上がっている。特に抗血栓療法の章は実際の薬剤の使用法から、順に消化器内科、循環器内科、救急・外科、産婦人科、歯科のそれぞれの幅広い立場からの抗血栓療法に関する見解が示されており、抗血栓療法の継続あるいは中断の利点と欠点に関する微妙なバランスについての具体的な記述は、診療現場で即戦力として用いることができる。
 序文で日本血栓止血学会理事長が危惧されているとおり、全医師をみた場合はもちろん、血液内科医だけを眺めてみても、血栓、止血に強い関心を持っている医師は少ない。その背景には卒前、卒後教育での組み込まれ方にも問題があるようである。しかし、本書をしっかりと読み込んだ若手医師の中から、新たに血栓、止血を自身の主要なテーマに定めて、将来的にこの領域を担っていく人材が育っていくことは95%以上確実であろう。
評者● 神田善伸
臨床雑誌内科108巻6号(2011年12月増大号)より転載

本書は日本血栓止血学会が編集したもので、「わかりやすい」という形容詞がついているが、まぎれもなく「成書」である。整形外科医は日常的に抗血栓療法を施行している患者の手術を行い、手術では出血、術後は静脈血栓塞栓症という、まさに「血栓と止血」に深くかかわっているが、実はこの方面の知識に疎いのも事実である。
 整形外科医の大部分が治療に携わる外傷例では、受診時にすでに大量出血となっていることもまれではなく、また外傷以外でも、術中に大量出血が予想される手術や、出血傾向をもつ患者に対する手術も行う必要がある。そうしたときに出血に対する適切な輸血や、出血傾向の原因疾患を理解して、周術期に適切な凝固因子や血小板の補充を行うことが整形外科医にも求められており、本書はその助けとなる。
 また手術時の出血とは問題が異なるが、整形外科疾患においても重症感染症や悪性疾患で全身状態が悪化した場合には、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併しうるので、これを早期に診断して対応することが必要となる。また、いろいろな病態に対してヘパリンを使用することも多くなっているが、ヘパリン投与による副作用としてのヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に遭遇する可能性もある。整形外科治療中にもDICやHITは目の前の症例に起こることであり、これに対して適切な処置を行うためにも本書が役立つと思われる。
 人口の高齢化により高齢者手術が増加している。高齢者変性疾患は整形外科手術の大きな対象であるが、高齢者では血栓性疾患の合併が多く、血栓性疾患治療中に整形外科手術を行う頻度も増加している。抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者がなぜ抗血栓薬を服用しているのか、周術期に抗血栓療法を中止することでどのようなリスクがあるのか、あるいは中止しないで手術を行う場合にはどのようなリスクがあるのかについて十分に理解しておかないと、手術は行えない。手術のインフォームド・コンセントにもこれらの知識は必要であるが、本書はこの知識を整理して吸収できるように記載されている。
 血栓には、血小板血栓である動脈血栓とフィブリン血栓である静脈血栓があることは周知の事実であるが、それぞれの血栓を生じる疾患は異なり、予防する薬剤も異なっている。静脈血栓塞栓症は整形外科手術の合併症として知られており、日本整形外科学会から予防ガイドラインも出版されているが、静脈血栓塞栓症の基礎的知識を得るのにも本書は役立つと思われる。まず止血・線溶に関する検査の意味の解説に始まり、凝固亢進状態を生じる疾患の解説、予防薬の機序から使い方にいたるまで、基本的事項が「やさしく」解説されているからである。
 本書の内容は血栓や止血の異常を伴う多くの疾患も解説しているために、一部専門的すぎるように感じるかもしれない。また「血栓と止血」というタイトルからも、一般整形外科医は読破をためらうかもしれない。しかし本書を一読しておけば、「困ったときに」すぐに求める知識の部分を開くことができ、治療中の症例に対して適切に対応できると思われる。このような意味から、整形外科医局あるいは救急外来にぜひ備えておきたい図書として推薦する。
評者● 冨士武史
臨床雑誌整形外科62巻12号(2011年11月号)より転載