書籍

日本静脈経腸栄養学会静脈経腸栄養ハンドブック

編集 : 日本静脈経腸栄養学会
ISBN : 978-4-524-26398-1
発行年月 : 2011年6月
判型 : B5
ページ数 : 500

在庫あり

定価5,076円(本体4,700円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

NSTの新手法、新栄養剤、基準・法律等の改正を盛りこんだ医師にもふさわしい内容。栄養サポートチームの一員として栄養療法に携わる医師・薬剤師、ナース、栄養士などに向けて、基本的な知識、手技、管理の実際をまとめた。日本静脈経腸栄養学会の認定NST専門療法士をめざすスタッフ必携の一冊。

第1章 栄養療法理解のための基礎知識
 I 解剖
  A.上部消化管
  B.肝、胆、膵
  C.下部消化管
 II 消化、吸収
  A.上部消化管の機能と役割
  B.肝、胆、膵の機能と役割
  C.下部消化管の機能と役割
 III 生化学
  A.同化と異化
  B.糖質代謝
  C.タンパク代謝
  D.脂質代謝
  E.微量元素
 IV 水分・電解質輸液
 V 酸・塩基平衡
 VI 絶食と侵襲に対する代謝反応

第2章 栄養療法の基礎
 I 栄養不良と生理機能
 II 栄養評価
  A.栄養障害のスクリーニング
  B.身体計測方法
  C.ODAと生化学的指標
  D.免疫能評価
  E.窒素代謝および窒素平衡
  F.エネルギー代謝とエネルギー必要量
 III 日本人の食事摂取基準

第3章 経腸栄養法と静脈栄養法
 I 栄養療法の選択
 II 栄養素投与量の決定(処方作成の実際)
 III 経腸栄養法
  A.経腸栄養の各種投与法
  B.経腸栄養剤の種類と特徴
  C.経腸栄養法の器材と取り扱い、管理
  D.経腸栄養法における薬剤・栄養素
  E.経腸栄養の合併症とその対策
  F.胃瘻の作製と管理
 IV 静脈栄養法
  A.静脈栄養の各種投与経路
  B.静脈栄養剤の種類と組成、特徴
  C.静脈栄養法の器材と取り扱い、管理
  D.静脈栄養法における薬剤・栄養素
  E.中心静脈カテーテル挿入時の機械的合併症と対策
  F.中心静脈カテーテル感染と管理方法
  G.静脈栄養法の合併症と対策―静脈栄養法におけるリスク・マネジメント
  H.末梢静脈栄養の方法と実際
 V 栄養療法における小児の特殊性と栄養必要量

第4章 病態下の静脈・経腸栄養法
  A.消耗性疾患に対する栄養療法
  B.癌化学療法時における栄養療法
  C.心疾患に対する栄養療法
  D.肝疾患に対する栄養療法(肝硬変も含む)
  E.膵疾患に対する栄養療法(急性膵炎、慢性膵炎)
  F.炎症性腸疾患に対する栄養療法
  G.短腸症候群に対する栄養療法
  H.腎不全、腎疾患に対する栄養療法
  I.周術期の栄養療法
  J.救急時の栄養療法
  K.神経性食思不振症に対する栄養療法
  L.肥満患者に対する栄養療法
  M.糖尿病患者に対する栄養療法
  N.脳神経疾患に対する栄養療法
  O.COPDに対する栄養療法
  P.摂食・嚥下障害に対する栄養療法
  Q.消化管機能異常、先天性代謝異常の小児に対する栄養療法
  R.腎機能不全の小児に対する栄養療法
  S.悪性腫瘍、造血幹細胞移植の小児に対する栄養療法
  T.呼吸障害を有する小児(新生児)に対する栄養療法
  U.小児救急疾患に対する栄養療法

第5章 在宅栄養療法
 I 在宅経腸栄養法
 II 在宅静脈栄養法
 III 入院から退院・在宅への移行に必要な知識
 IV 在宅栄養法における看護師の関わり

索引

本書のいわば初版である「コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック」(南江堂、2008)の「序」に記載したとおり、本書発行の意義はそもそも『医師を含めた臨床に関わる総ての医療従事者にとって日常の患者管理に有用なもの』となるべく、最新の知見に基づき出来るだけ詳細かつ理解しやすい記述とすると同時に、必要と思われる事項についてはもれなく記載するように心掛け、かつ臨床を理解するうえで必須の基礎的分野(解剖、生理、生化学、代謝)に重点を置くことに留意した編集方針で製作にあたった。
 2011年より日本静脈経腸栄養学会においても「認定医・指導医制度」が発足することとなり、本書が初版で掲げた編集方針が生かされ、医師の教育についても本書が活用されることとなったのは、ひとえに初版からの執筆者各位が責任編集者の意図を的確に理解し、栄養治療に関わる一人ひとりが職種に関わらず共有すべき知識と技能の理論的根拠について、妥協することなく記述された結果であると思われ、深甚なる謝意を表するものである。
 「コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック」発行以来4年余であるが、この領域についても知見の更新や製剤・機器の進歩は著しく、今回「認定医・指導医制度」の発足に伴って新版の機会を得たことはまことに時宜を得たものと考える。
 本書では、各項目での重要事項の抜粋と、最近の知見の加筆、記述の正確性の検証程度に止め、大幅な内容の修正や増加はなるべく避けた。書籍として大幅な頁増を避けることで、読者の負担を増加させないことにも配慮した。しかしながら内容の充実のためにはやむをえない部分もあり、ご理解を頂きたい。
 責任編集、編者校正に当たっては基本的に各執筆者の熱意と意図を尊重し、全体の記載内容の整合性について検証し、内容については介入しなかった。書名についても本書が学会員を中心に広く受け入れられていること、専門療法士や認定医制度において学会としての一定の基準を満たす内容であることから、「日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養ハンドブック」とし、学会名を冠することとした。
 本書が学会員はもちろん、栄養療法に関わる総ての医療従事者の臨床栄養教育の一助となり、日常の患者管理に還元されれば幸甚である。
2011年5月吉日
責任編集者一同(五十音順)
日本静脈経腸栄養学会認定資格検討委員会委員長 岩佐正人
日本静脈経腸栄養学会教育委員会委員長 竹山廣光
日本静脈経腸栄養学会認定医・指導医制度委員会委員長 田中芳明

1990年の夏、忘れもしないおそろしい瞬間を迎えた。当時筆者は、米国Cincinnati大学外科学のJosef E Fischer教授のもとで連日研究とnutrition support team(NST)活動に邁進していた。Fischer教授は当時まだ54歳で、ちょうど現在の筆者と同じ年齢であったが、今の疲れ果てた筆者と違って脂の乗り切った外科医であり、また代謝学の研究者であり、強大な力をもった世界の指導者であった。そのころ数あるFischer教授の研究所の中で日本人は筆者だけであり、しかも直系研究所の主任研究員として雇われていた。若手医師や研修医、医学生の研究の面倒をみる(計画・実験・発表・論文などすべての面倒をみるのであるから当然たいへんであった)のが筆者の仕事なので、当然かなりのプレッシャーがあり毎日悶々とした日々を送っていた。
 そんなある日、米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)の年次集会にアプライするため、指導中の数名の研修医と筆者自身の抄録を数編、ご高閲をいただこうと教授室へ持って行った。事件はそこで起こった。Fischer教授は筆者たちの抄録を一瞥するなり、いきなりそれらを破り捨て、「こんなん出さんでよい!(ちなみに英語ですが)」と叫びながら、筆者たちの大事な抄録をごみ箱に捨ててしまった。「げっ! よっぽど内容がわるかったのだろうか? でもFischer先生ほとんど何も読んでへんやん…? 何が起こったのか…?」。まったく意味不明ですごすごと教授室を後にして、すぐさま教授秘書のJudyに原因を尋ねた。どうもASPENの内部分裂が起きたらしい。これまで世界の重鎮として静脈経腸栄養の領域を支えてきた主に多くの外科医たちが、一斉に追い出されるかたちでASPENから身を引くことになったとのことであった。その後、Fischer教授はしばらくの間ASPENへの論文投稿や学会発表を禁じることになるのであるが、その瞬間からASPENおよび米国のNSTや栄養療法に陰りがみえてきたのである。
 筆者はこの状況をリアルタイムに当事者として体感し、わが国では決してそうなってはいけない! せっかく、和をもって貴しとなす国なのであるから、常に穏やかに仲良く、しかも皆で協力し合って前を向いて歩いていける体制を構築・維持していかねばならないと思った。1998年に鈴鹿中央総合病院で全科型NSTを立ち上げた際に、絶対にASPENの二の舞を踏んではならないと思った。そのためにはどうすればよいか? (1)わが国に相応しいNSTシステムを確立、(2)チーム医療の長い目での確実な育成、(3)医師はもちろんのこと、ほかのメディカル・スタッフも共通の言語で同じレベルで討議できる環境づくり、(4)エンブレムとしての個人認定制度の制定、(5)NST稼働施設の質を評価する施設認定制度など数々の対応法があげられる。そしてこのような活動にもう一つなくてはならない大切なものがある。それが教育体制であり、本書はまさしくその任を背負って生まれ出た重要な教科書であると思う。
 あれから20年が過ぎ、日本静脈経腸栄養学会もおよそ15,000名の会員数を誇る世界最大の栄養学術団体となり、平田公一理事長をはじめ、本書を編集・執筆された先生方のご尽力で、確実に質の高い栄養管理が医療の現場へ届けられるようになった。そして、将来の日本の代謝・栄養学がより栄え、発展し、より多くの患者を幸せにするためには、本書をぜひともフルに活用していただき、新しい栄養療法をわが国全体にしっかりと植え付けていってほしいと心より願うものである。
評者● 東口高志
臨床雑誌外科74巻1号(2012年1月号)より転載

本書は日本静脈経腸栄養学会がこれまで出版してきた『コメディカルのための静脈経腸栄養ガイドライン』(2000年)や、『コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック』(2008年)の最新版にあたるものである。「コメディカルのための」という文言が本書で消えていることからもわかるように、本書は臨床栄養学に関わる医師をも明確に対象としている。当初、NST(nutrition support team)専門療法士を目指すコメディカル向けとされていた初版が、日本静脈経腸栄養学会の認定医・指導医制度の発足に伴って医師の教育にも活用されるべく作成し直されたものといえる。
 栄養治療に関わる各専門職種が「共有すべき知識と技能の理論的根拠について、妥協することなく記述された」と序文にあるが、確かに読み応えがある。脂肪酸の長さでの吸収の相違、同じ飢餓でも単純な飢餓(simple starvation)と術後の絶食状態(stress starvation)とでの生体反応の相違といった基礎的な話から、栄養処方作成の実際、各種栄養法の利点と問題点、さらにはトラブルシューティング、在宅栄養療法のあり方といった臨床的な内容まで網羅している。そして、栄養剤については商品名ごとに成分の説明がなされていたり、カテーテル類については写真で説明がなされていたりしており、非常に実用的でわかりやすい。
 恥ずかしながら、小生は「3回穿刺ルール」という言葉を本書ではじめて知った。これは中心静脈の本穿刺は3回までとするというルールである。3回以上穿刺しても成功率は上がらず、穿刺回数が増えれば合併症も増えるとされているらしい。そして、3回穿刺して失敗したら術者を変えることから考えるという本書の指示は、とても実臨床に即している。こうした点を見てみると、本書は確かに“臨床栄養学に関わる医師”を対象にしてはいるが、“すべての内科医”が読んでおいたほうがよいように思われる。実際、病態下の静脈経腸栄養法として、癌、心疾患、肝疾患、膵疾患、腸疾患、腎不全、肥満、糖尿病、脳神経疾患、嚥下障害、COPDといった疾患が項目にあげられている。どんな内科領域においても栄養療法が必要であるということがわかる。栄養状態や食事摂取量に問題のある患者を診療される際には、少なくとも該当する部分だけはお読みになっていただきたい。
 問題をあげるとすると、ハンドブックとは到底呼ぶことのできない書籍の大きさである。B5判で486頁、厚さが2cm以上ある。ガイドブックと呼称するほうが適切ではないかと思われた。
評者● 山田悟
臨床雑誌内科108巻3号(2011年9月号)より転載