書籍

CDによる聴診トレーニング 呼吸音編改訂第2版

監修 : 川城丈夫
ISBN : 978-4-524-26316-5
発行年月 : 2011年9月
判型 : B5
ページ数 : 134

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

呼吸音の聴診は、心音聴診と同じく感覚に頼る診断技術であり経験と修練が要求される。本書は、呼吸器聴診の基本を把握し、音の識別に習熟するためのトレーニングブックで、添付CDには多くの病態の聴診所見が解説付きで録音されている。今改訂では、解説書の判型を大きくし2色刷のみやすい紙面構成にすると共に、CD収載症例を増やし、動画も加えて、一層の充実を図った。

I章 呼吸音聴診の歴史
1 HippocratesとLaennecの原点
2 命名の歴史
3 聴診に関する研究の歴史

II章 聴診法
1 胸郭の解剖・構造
2 患者の姿勢
 A.坐位での聴診
 B.臥位での聴診
 C.セミファウラー位での聴診
3 聴診部位
 A.胸部の聴診
 B.頸部の聴診
 C.口腔(口元)での聴診
4 呼吸法
 A.安静換気
 B.最大呼気位までの呼出
 C.努力呼出
5 聴診のポイント
6 聴診器
 A.聴診器の周波数特性
7 聴覚
 A.音の大きさのレベル
 B.聴診と聴覚

III章 サウンドスペクトログラム

IV章 呼吸音の分類

V章 正常呼吸音とその変化
1 呼吸音の特徴と聴取部位
 A.肺胞呼吸音[CD1]
 B.気管支呼吸音
 C.気管支肺胞呼吸音[CD2]
 D.気管呼吸音[CD3]
2 呼吸音の発生機序と部位
 A.肺胞呼吸音
 B.気管および気管支呼吸音
3 呼吸音と局所換気
 肺胞呼吸音と局所換気[CD4]
4 呼吸音の減弱・増強

VI章 副雑音
VI-1.ラ音
1 連続性ラ音
 A.低音性連続性ラ音(類鼾音)
  1)気管支喘息の低音性連続性ラ音[CD5]
  2)喀痰量が多い喘息の低音性連続性ラ音[CD6]
  3)主気管支狭窄の低音性連続性ラ音[CD7]
 B.高音性連続性ラ音(笛音声)
  1)気管支喘息の高音性連続性ラ音[CD8]
  2)気管支喘息(発作中)の高音性および低音性連続性ラ音[CD9]
  3)気管支狭窄による高音性連続性ラ音[CD10]
 C.スクウォーク[CD11]
2 断続性ラ音
 A.細かい断続性ラ音(捻髪音)
  1)肺線維症の細かい断続性ラ音[CD12] 47
  2)肺線維症/特発性間質性肺炎の細かい断続性ラ音[CD13]
  3)過敏性肺臓炎の細かい断続性ラ音[CD14]
  4)比較的大きな音の細かい断続性ラ音[CD15]
  5)心不全の細かい断続性ラ音[CD16]
 B.粗い断続性ラ音(水泡音)
  1)慢性副鼻腔炎を伴う気管支拡張症の粗い断続性ラ音[CD17]
  2)気管支拡張症の粗い断続性ラ音[CD18]
  3)軽度の浸潤陰影を呈した肺炎の粗い断続性ラ音[CD19]
  4)大葉性肺炎の粗い断続性ラ音[CD20]
  5)心不全(急性肺水腫)例における粗い断続性ラ音[CD21,CD22]
  6)副鼻腔気管支症候群で聴取された多様な断続性ラ音と連続性ラ音[CD23]
VI-2.その他の副雑音
1 胸膜摩擦音[CD24]
2 Hamman's sign[CD25]

VII章 呼吸音の伝達の変化
1 胸水貯留による変化
 A.肺胞呼吸音[CD26]
 B.声音聴診[CD27,CD28]
2 気胸による変化
 A.肺胞呼吸音[CD29]
 B.声音聴診[CD30]

VIII章 人工呼吸器の聴診[CD31-CD34]

IX章 症例提示
 症例1 結核の空洞近くで聴取された罎子音[CD35]
 症例2 気胸によるcrunching sound(Hamman's sign)[CD36]
 症例3 喘息と診断されていた結核性気管気管支狭窄の呼吸音[CD37]
 症例4 甲状腺癌気管浸潤による気管狭窄の手術前後の呼吸音[CD38]
 症例5 気管支カルチノイドによる右主気管支閉塞の呼吸音[CD39]
 症例6 肺癌による気管支狭窄の低音性連続性ラ音[CD40]
 症例7 右下葉切除後の断端瘻の呼吸音[CD41]
 症例8 肺動静脈瘻の血管性雑音[CD42]
 症例9 結核性気管気管支狭窄の手術前後の呼吸音[CD43]
 症例10 放射線性肺臓炎における治療前後の呼吸音[CD44]
 症例11 細菌性肺炎の断続性ラ音[CD45]
 症例12 肺水腫の断続性ラ音[CD46]
 症例13 皮下気腫の音[CD47]
 症例14 自然気胸の呼吸音[CD48]
 症例15 喘息の頸部聴診[CD49、CD50]

参考文献
索引

【付属CDについて】
・本書には呼吸音を収録したCDが2枚ついています.
・Disc A[オーディオCD形式]:音声解説付き呼吸音(CD1―50)を収録しています.
・Disc B[エンハンスドCD形式]:Disc Aの録音内容から音声解説を除いた呼吸音部分のみの再録(CD1―50;ただしCD28については聴き比べ部分の呼吸音を除いています)と、CD49と50の音声解説付き動画を収録しています.
・Disc A、BともにCDプレーヤーで呼吸音の再生が可能です.
・CD-ROMドライブやDVD-ROMドライブ等のディスクドライブ装置を搭載(または接続)したパソコンで、音楽再生ソフトおよび動画再生ソフトを用いることにより、呼吸音と動画を再生することが可能です.
・パソコンの動作環境(OS)
 Windows XP、Windows Vista、Windows 7
 Mac OS X 10.39以降
 (Disc Bをパソコンで再生する場合、Windows OSとMac OSで再生法が異なります→次ページ「Disc Bの再生方法」参照
・CDプレーヤーの操作については、ご使用になるプレーヤーの取扱説明書などをご参照ください.

近年、日常の診療に用いられる機器の種類が著しく多くなり、精度も向上しました。しかしながら、診察の第一歩であります問診・視診・聴診・触診・打診の重要性は、昔ながらのものではありますが、まったく変わっていません。機械化された今こそさらに重要になったと思います。医師が聴診器を用いることは当然のことでありますが、看護師および理学療法士などのコメディカルのスタッフが聴診器を用いる場面が最近著しく多くなってきております。ある大学病院で「フィジカルアセスメントの技術を持つ薬剤師を増やす方針のもと薬剤師の聴診器の使用が促進されている」とつい最近の医療界のニュースにありました。このように医療の多くの職種のスタッフが聴診器を用いるようになってきております。
 一方、呼吸音に関する国内および国外での研究成果も着々と蓄積されてきております。呼吸器の聴診技術とその所見の解釈の勉強会も継続的に行われております。このような状況のもとでこそ、呼吸器の聴診の正しい方法と正しい解釈が聴診器を使用する医療人の間に、より普及することがますます大切になってきております。
 本書は1993年に初版が上梓され、幸いにして読者の皆様から高い評価をいただくことができ増刷を重ねて参りましたが、今回、研修医はもとより各種医療職や学生の方々にも広く呼吸器聴診の基本を習得してもらえるようにとの考えから、基本となる呼吸音の録音データ以外の部分を全面的に見直し、解説書小冊子を判型の大きな2色刷りの書籍にリニューアルして、さらに使いやすいものに改訂いたしました。
 解説書にはサウンドスペクトログラムの章を新設するとともに、提示症例として新たに7例を追加して計15症例を収載しました。CDには追加症例の呼吸音8本と、頸部聴診の動画2本を新たに収録し、より多くの病態についての聴診所見に習熟できるように配慮いたしました。また、CD収録呼吸音の音声解説のナレーションもすべて新たに録り直しており、より一層“聴きやすくわかりやすい”CDになったものと自負しております。
 医療界に正しい呼吸器の聴診技術と正しい聴診所見の解釈がより普及するために、本書が少しでも役に立つことを願っています。
2011年盛夏
川城丈夫

聴診は、患者への負担が少なく、容易にベッドサイドで行うことのできる診察手技の一つである。病態の程度を評価したり、経過観察の指標にしたり、時には早期発見の契機ともなりうる。本書は、なかでも呼吸器の正しい聴診方法とその所見の正しい解釈について、わかりやすく解説し、習熟できるように呼吸音の付録CDがついたものである。
異常に気づくには、正常を知る必要がある。胸壁の厚みや肺活量、肺の状態によって正常呼吸音には多少の個体差もあり、日々聴診しておくことがまず大前提と思われる。その中で出現してきた異常呼吸音をどう解釈するかであるが、本書では具体的な症例も提示しながら解説してあるため実践的といえる。喘息や肺炎、気道狭窄など主要疾患が並んでいるのはもちろんのこと、治療前後の呼吸音がCD収録されており、その違いを比較できるのはありがたい。またサウンドスペクトログラムを用いて音の発生機序や特徴を可視化しながら説明するため、理解しやすい。
知っておきたいポイントも満載である。局所でしか喘鳴を聴取しないような軽度の喘息における頸部聴診や、喘息と診断されて長年治療されていた気管支腫瘍の聴診による鑑別など、悩ましい狭窄音の喘鳴とラ音は使い分けられるよう習得したい。また縦隔気腫や断端瘻で聴取される異常呼吸音など、一度聴いておきたいがそうそう出会わないまれなケースは、CDで繰り返し学ぶことができる。
印象的であった症例提示が一つある。X線像で所見を認めないが、聴診で連続性ラ音を聴取し、心不全に迅速に対応することができたという症例であった。近年、医療機器の開発や精度向上が著しいが、それらに過度に依存していないか、患者をみることを怠っていないかと初心を振り返った。やはり患者をみて、聴いて、触ってと、「診察」は患者に寄り添う医療に必須である。臨床医らの首から聴診器を下げる姿はかわらずあり、また看護師をはじめとするコメディカルスタッフが聴診器を用いる場面もめずらしくない。たゆまぬ聴診能力の向上が求められているのではないだろうか。
これまで述べたように、本書は正常と異常を比較しながら主要疾患を筆頭に系統的にまとめ、提示症例とともに解説してあり、より実践的である。CD収録の呼吸音や提示症例が増えて第2版が出版されたのは、支持されている証といえる。筆者は医師をはじめコメディカルスタッフや医学生など、臨床現場に立つ方々に本書をおすすめしたい。
評者● 佐藤雅美
胸部外科65巻5号(2012年5月号)より転載

19世紀のはじめフランスのルネ・ラエンネックによってもたらされた肺聴診は、近代科学技術の発達した21世紀の医療現場においても、フィジカル・アセスメントの基本として用いられている。
 近年の肺聴診学は肺聴診に科学の光を与えた英国のポウル・フォジャクスによる書籍『Lung Sounds』(1978年)に始まる。また、米国の二人の教授、レイモンド・マーフィーとロバート・ラウドンによって1976年に設立された国際肺音学会(ILSA)と、1983年に設立された日本の肺音(呼吸音)研究会によって、肺聴診で聴かれる音の分類と用語の統一、音の解析技術、病態との関連と発生機序の解明、臨床応用などが検討されてきた。1985年、第10回国際肺音学会(東京)における「肺聴診に関する国際シンポジウム」では、米・英・仏・独・日、5ヵ国の聴診用語が検討され、国際的な統一が図られた。この35年の間に発表された研究論文(英文)は900篇を超える。
 肺聴診の教育では文字だけではなく、実際の音を聞かなければならない。わが国では1962年、『レコードによる肺臓の聴診』(上田英雄、籏野脩一、柳井嘉共著、南山堂)が、はじめて音を収録した教材として出版された。1979年には、『テープによる肺聴診法』(レイモンド・マーフィー著、石川定、工藤翔二訳、三上理一郎監訳、日本ベーリンガーゾーン)が流布され、広く用いられた。そして、1993 年に出版された、本書の初版『CDによる聴診トレーニング呼吸音編』(石原恒夫監修、川城丈夫、菊池功次、阿部直、米丸亮著、南江堂)は、それまでのレコードやカセットテープに替わってCDを用い、1980年代に始まる近年の肺聴診と肺音研究の成果を取り入れた画期的な教材であった。
 今回、『CDによる聴診トレーニング呼吸音編 改訂第2版』(川城丈夫監修、阿部直、菊池功次、米丸亮、清川浩著、南江堂)が出版された。本書の著者は、国際肺音学会、肺音(呼吸音)研究会の主要メンバーであり、その記述は初版以上に正確で理解しやすいものになっている。
 解説書には、初版の肺聴診で聴かれる音の発生機序や病態との関連などに加えて、サウンドスペクトログラムの章が新設され、音を耳で聴くだけでなく視覚でも理解できるように工夫されている。新たに追加された症例を含め、15例の提示症例も適切な選択である。さらに、頸部聴診の動画2本を加えて、より多くの病態に関する聴診所見に習熟できるように配慮されており、完成度がきわめて高いものとなっている。
 肺の聴診は、医師、看護師、理学療法士など医療に従事するものにとって、欠かすことのできない臨床技術であり、この『CDによる聴診トレーニング呼吸音編 改訂第2版』が、医療従事者の教育と自主学習の場で、基本教材として広く用いられることを願っている。

評者● 工藤翔二
内科110巻1号(2012年7月号)より転載