書籍

プロブレム・オリエンテッド神経救急Q&A

編集 : 河村満/中島雅士
ISBN : 978-4-524-26305-9
発行年月 : 2011年11月
判型 : B5
ページ数 : 230

在庫あり

定価6,480円(本体6,000円 + 税)


正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

救急室における迅速かつ正確な神経学的評価とそれに基づく治療に焦点をあて、脳神経系の基礎知識から診療の実際までを解説。Q&A形式で、日常、臨床の現場で感じる疑問に「基礎知識」→「実践知識」→「深い知識」の3段階で明解に答える。広範なテーマを凝縮し、神経救急の現場で活躍する救命救急医、脳神経系の専門医、コメディカルスタッフほか、全ての医療者に役立つ内容とした。

第I章 神経学的問題をとらえる
 1.脳神経系の構造と機能
 2.この救急患者に神経学的問題はあるのか
第II章 神経症候と緊急性の判断
 1.息切れ
 2.歩けない、立てない
 3.めまい
 4.みえない、二重にみえる、変なものがみえる
 5.不随意運動
 6.激しい頭痛
 7.熱っぽく、ぼんやりする
 8.気を失った(失神)
 9.心因性疾患
第III章 重篤な脳神経系損傷
 1.急性せん妄から昏迷・昏睡
 2.脳浮腫、頭蓋内圧亢進
 3.てんかん重積
 4.急性脊髄症
 5.中毒性神経疾患
第IV章 神経救急患者の全身管理
 1.肺合併症
 2.心臓合併症
 3.体液量と電解質異常
第V章 神経救急疾患各論
 1.脳血管障害
 2.脳・脊髄外傷
 3.中枢神経感染症
 4.非感染性脳炎・脳症
 5.運動制御異常(パーキンソニズム、不随意運動)
 6.末梢神経・筋疾患
第VI章 小児と妊婦の神経救急
 1.小児神経救急
 2.妊娠関連神経救急

索引

昭和大学神経内科の診療・教育・研究における、2本の柱は「神経救急」と「高次脳機能障害」です。後者についてはすでに何冊かの本を出版していますし、新規の企画もあります。しかし、前者については定期の病棟回診・カンファランスなどで日常的に実践し、多くの時間をかけているにもかかわらず、モノグラフとして出版したことはありませんでした。そこで編者2人で相談し、私たちの診療内容を膨らませて、一般診療で神経救急に直接かかわる神経内科・脳神経外科・救急医、さらにコ・メディカルの方々にも役立つように工夫をしたのがこの本です。この本の出版によって、ようやく私たちの教室のもう1本の柱を立てることができたような気がして、ホッとした気持ちです。
 この本の成り立ちを少し説明しておくと、読者の方々のお役に立つと思います。
 書名、それにQ&A形式、それも3つの段階で説明する工夫をまず発案しました。救急場面では何より、わかりやすい形式・内容が必須の事項であるからです。3つの段階は、(1)「基礎知識:これだけは知っておかなきゃ!」、(2)「実践知識:ここを押さえればとりあえずOK!」、(3)「いざ、達人への道:一歩進んだ「深い知識」」で、急いで項目についての知識を得たいときには(1)を読むだけで要点をつかむことができます。(1)-(3)まで読み通しても、それほど時間はかかりません。次に、必要項目の選択を厳密に行い、内容をI。神経学的問題をとらえる、ll。神経症候と緊急性の判断、III。重篤な脳神経系損傷、IV。神経救急患者の全身管理、V。神経救急疾患各論、VI。小児と妊婦の神経救急の6部に分けて、組み立てました。V、VI実践のためには、I-IVの前提が必須です。全文を読み通すときには、章立ての順番にお読みになることをお勧めします。
 執筆者は、昭和大学神経内科(正確には、昭和大学内科学講座神経内科学部門)のメンバーが主体で、関連施設の脳神経外科医と整形外科医にも協力していただきました。記載を生き生きとしたものにするために、実際に症例を経験し、学会などで症例報告をしたメンバーに執筆をお願いすることを基本にしました。
 さらに、内外の神経救急に関連する本をリストアップし、入手できるものはすべて手元に置き、相互の矛盾点をチェックし、解決しました。
いちばん苦労したのは用語の統一と、正確な文章表現です。編者2人で全文を読んで、照らし合わせ、推敲しました。
2011年10月
河村満、中島雅士

救急医療の中でも、神経救急はもっとも多岐にわたる疾患・症状を含んでおり、臨床神経学の知識、応用、センスが問われる分野である。たとえば意識障害で搬送されてきた患者に対してまず病歴・発症様式(突発、急性、亜急性)と巣症状の有無から、脳血管障害、ウイルス性脳炎、代謝性脳症などの鑑別診断を可能性の高い順に考えてオリエンテーションをつけ、次に結果を予想しながら補助検査(脳画像診断、髄液検査)の所見をみて確定診断と、即時に適切な治療に進むことが求められる。このオリエンテーションを得るために臨床情報の採取は多くの場合に2〜3分で十分であろうし、この臨床的オリエンテーションなしに効率的で適切な神経救急医療は行いえない。
 この度出版された『プロブレム・オリエンテッド神経救急Q&A』では、この神経救急におけるコンセプトが見事にまとめられている。監修されている昭和大学内科学講座神経内科部門の河村満教授、中島雅士准教授は、序文に書かれているように神経症候学を究められた平山惠造先生(千葉大学名誉教授)の指導をもっとも濃厚に受けた方々である。筆者の千葉大学病院での研修医時代には、平山教授、河村病棟医長、中島指導医(当時)から指導を受け、平山神経学の素晴らしさと厳しさを目の当たりにしてきた。河村、中島両先生は平山神経学の代表的な継承者である。
 それとともに河村先生からは症例のプレゼンテーションから論文執筆に至るまで、「わかりやすくなければ他人には伝わらない。伝わらなければ進展はない」ということを繰り返しご指導いただいた。本書においては各Q&Aに対して「基礎知識」、「実践知識」、「深い知識」の3段階で説明がなされるように工夫が施されている。この構成は非常に斬新かつ見事である。拝読してみて「基礎知識」では基本的な事項をわかりやすく解説し、「深い知識」では深い内容がわかりやすく記述されていることを実感している。わかりやすくすぐに理解できる本書こそ、神経救急の現場で真に必要とされる書籍であると確信している。
 本書は、はじめから通読することも抵抗なくできる。繰り返すがわかりやすいからである。神経救急を実践されているすべての方々にとって必携の書として、診療に役立つ本書の出版に、心から賛辞を表したいと思う。
評者● 桑原聡
臨床雑誌内科109巻5号(2012年5月号)より転載