書籍

ポケット呼吸器外科ハンドブック

編著 : 近藤丘
ISBN : 978-4-524-26168-0
発行年月 : 2015年3月
判型 : B6
ページ数 : 288

在庫あり

定価4,860円(本体4,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

外来・病棟から手術室までの呼吸器外科領域のエッセンスをポケット版に凝縮。診断・機能評価・治療学の総論各章をふまえ、腫瘍性疾患・気腫性肺疾患・炎症性疾患・肺血管疾患・小児先天性疾患・胸部外傷などの幅広い呼吸器疾患の中から日常診療で遭遇することの多い主要疾患の診断・手術適応・治療を重点的かつ実践的に解説。肺移植についても章を割いて最新情報を記載。研修医や呼吸器外科専門医を目指す医師必携の一冊。

第I章 診断学
 1 診察法
 2 検査法
第II章 機能評価
 1 肺手術時の機能評価
 2 米国胸部疾患学会(ACCP)ガイドライン
第III章 治療学
 1 胸腔ドレナージ
 2 気管支鏡下手術
 3 術前管理
 4 特殊な麻酔管理
 5 手術法
  5-1.開胸法
  5-2.胸腔鏡下手術
  5-3.肺葉切除・区域切除・全摘除
  5-4.リンパ節郭清
  5-5.気管・気管支形成術
  5-6.血管形成術
  5-7.隣接臓器合併切除術
 6 術後管理
第IV章 腫瘍性疾患
 1 肺良性腫瘍
 2 肺悪性腫瘍
 3 悪性胸膜中皮腫
 4 縦隔腫瘍
 5 胸壁腫瘍、骨・軟部腫瘍
第V章 気腫性肺疾患
 1 気腫性肺疾患、嚢胞性肺疾患の概念
 2 気胸
 3 特殊な病態の気胸
第VI章 炎症性疾患
 1 膿胸
 2 肺アスペルギルス症
 3 肺結核
 4 非結核性抗酸菌症
 5 肺放線菌症
 6 肺寄生虫症
 7 感染性肺嚢胞
 8 縦隔炎・縦隔膿瘍
第VII章 肺血管疾患
 1 肺動静脈瘻
 2 肺底(区)動脈下行大動脈起始症
 3 一側肺動脈欠損症
 4 Swyer-James症候群
第VIII章 小児先天性疾患
 1 先天性肺気道奇形
 2 先天性気管支閉鎖症
 3 肺分画症
 4 先天性気管狭窄症
第IX章 胸部外傷
 1 総論
 2 各論
第X章 肺移植
 A.肺移植の歴史
 B.世界の現状
 C.国内の現状
 D.今後の課題と展望
■索引



 昨今、医療の高度化や専門分化が急速に進んでおり、医学生はもとより、メディカルスタッフや初期研修医にとっても、学習し習得すべき知識や技術が膨大な量になっている。このため、さまざまな領域における領域ごとのスタンダードをまとめあげたテキストブックにおいても、できるだけコンパクトで実践的なものであることが求められている。
 結核外科の時代は別として、この30年から40年かけて今の姿が築かれてきた現代の呼吸器外科という専門領域では、これまで数多くのテキストブックや手術書が発行されてきたが、それらはすべて書棚に置き机上で学ぶための書であり、さまざまな使用場面を想定したハンディな書は皆無であった。一方で、わが国の医学教育は、少しずつその姿を変えており、講義や教科書で知識を学ぶことよりも、実際の医療現場での実践的な学習に、より重きを置くようになってきている。これに伴って、テキストブックも机上での学習を想定したものよりも、より可搬性に優れたものが求められるようになってきているといえる。
 本書は、呼吸器外科テキストブックとしては従来なかった、学習や日常業務の現場など、どこにでも持参でき、必要な時にパラパラとめくって必要な情報を得ることができるような、初めてのポケットサイズのものを企画段階から目指したものである。
 ポケットサイズとはいえ、執筆者には東北大学呼吸器外科出身である、わが国有数の呼吸器外科教授陣という錚々たるメンバーを揃え、呼吸器外科の基本的な事項のすべてを網羅する、質量ともに充実したものとなっている。また、臨床医学を学ぶ学生や初期研修医、専門医を目指す医師の教材として用いることはもちろん、呼吸器外科の病棟や手術室で働く看護師やメディカルスタッフのための実用書としても使われることを想定し、一つひとつわかりやすく丁寧な記載につとめた内容とし、多職種の方に十分にお役に立つものに仕上がったと自負している。
 数多くの方のお手元に置いていただき、ぼろぼろになるまでご活用いただければ望外の喜びである。

2015年2月
近藤丘

 呼吸器の疾患、特に肺癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)は現在増加傾向にある。肺癌は本邦の5大癌の一つであり、悪性腫瘍の中では死亡原因の第一位の癌である。現在も死亡者数が増えており、早期発見、早期治療、治療手段の確立による治療成績の向上が望まれる。悪性腫瘍の罹患率の増加に伴い、転移性肺腫瘍の診療機会も増えている。良性疾患ではあるが、COPDによる死亡も今後急速に増加すると予測されており、社会的な関心も高い。
 呼吸器疾患の増加に伴い、過去20年間にわたって呼吸器外科手術症例も増加している。日本胸部外科学会の学術調査では、全国の呼吸器外科専門医の修練施設における1年間の手術件数は2002年の47,065例に対して、10年後の2012年には72,899例であり、10年間に55%の増加があった。肺癌手術数も20,440例から35,667例へと74%の急増を示している。この背景には、高齢化に伴う癌年齢人口の増加もあると思われるが、high resolution CTによる画像診断学の進歩やCT検診の普及による発見率の向上も考えられる。実際、スリガラス状陰影[ground-grass opacity(GGO)あるいはground-grass nodule(GGN)]を主体とする肺胞上皮癌と高分化腺癌などの早期の肺癌手術症例が増加している。さらには多発GGOなどで新しい病態が認識されつつある。日本肺癌学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内視鏡学会による肺癌登録合同委員会の調査でも、早期肺癌の手術症例の増加が明らかになっており、早期の小型肺癌への手術機会の増加は、区域切除による積極的な縮小手術の適応を増大させている。それに加えて、高齢者の手術症例も急速に増加している。
 呼吸器外科の治療対象疾患として、原発性肺癌だけではなく、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、胸壁腫瘍、縦隔腫瘍、気胸や嚢胞性肺疾患、悪性胸膜中皮腫、重症筋無力症に対する胸腺摘出、結核・非結核性抗酸菌・真菌などの薬剤耐性の難治性肺感染症、胸膜炎、膿胸、間質性肺炎・COPD・肺高血圧症による慢性呼吸不全など、多種類の疾患がある。慢性呼吸不全に対する肺移植は、2014年末には脳死ドナー・生体ドナーからの肺移植が合わせて通算400例以上になり、定着しつつある。呼吸器外科領域の手術術式も従来の開胸手術から胸腔鏡手術による低侵襲化がすすみ、近年ではDa Vinci systemによるrobotic surgeryも試験的に採用されつつあり、急速に技術的な進歩も達成されている。
 呼吸器外科治療対象の疾患と領域が拡大するだけでなく、また手術技術的にも選択肢が多岐にわたっている現在、呼吸器疾患を専門とする医療者には専門的知識がより一層必要とされるのは当然であるが、治療対象の患者数が増加する中、一般診療としても医療者の役割は増大している。
 本書は、呼吸器外科医が担当するほぼすべての呼吸器疾患について、病態・診断・治療まで幅広く網羅しており、素早く必要な知識が得られる優れた参考書である。記載内容は非常にup-to-dateであり、最新の学術報告に基づいている。図と写真も多数掲載されており、理解に役立つ。日々の診療にあたっている医師だけでなく、看護師、理学療法士の方々にもきわめて実践的な参考書といえる。呼吸器診療を担当する医局や病棟においていただければ、日常臨床にきわめて役立つことは間違いない。また、研修医や学生にとっても呼吸器外科のエッセンスを短時間で修得することができる教科書としても有用であることを付言する。本書の活用が、本邦の呼吸器診療のさらなるレベルアップにつながることを願っている。

胸部外科68巻7号(2015年7月号)より転載
評者●大阪大学呼吸器外科教授 奥村明之進